アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第53話 剣劇〜
    一同試合会場外にいる。見つめる先にはデュシアEとミスターTがイベントを起こすのだと
   いう事である。再び娯楽の世界に入ってしまうのは、それだけ現状の流れに飽きが来ている
   証拠だろう。

デュシアE「スターウォーズという作品を知らないのですが、剣技と同じものですよね?」
ミスターT「まあそんな所かな。」
    デュシアEが持つ武器は片手剣。それでも片足以上の長さを誇る代物で、腕力がなければ
   扱うのは難しい。技量の問題でもあるが、その点彼はスペシャリストと言えるだろう。
   ミスターTの方はダークが変化した魔剣を手にしている。最初の変化時の本編縁の禍々しい
   姿は一切なく、純粋に美しい片手剣となっている。
ダーク「あぁ・・・何か幸せです・・・。」
ミスターT「酔い痴れるのはまだ早いぞ。これから活躍して貰うんだから。」
   ミスターTの手にある魔剣ダーク。剣の柄から感じ取れる彼の心とリンクしている彼女は、
   案の定その心地良さに酔い痴れていた。
   しかし外見が変化したという事は、それだけ彼女が本気だという事である。酔い痴れる姿は
   表向きだという事だ。


ミスターT「さて・・・どんな流れにするか・・・。」
    準備が整った両者。しかし切っ掛けとなる出来事が思い浮かばず、開始とまではいかない
   ようだ。
ミスターT「そうだな・・・こうするか。」
   そう語ると彼の衣服が変化する。覆面はそのままだが、出で立ちが古臭い姿へと変わった。
   またコートがマントに変わっており、デュシアE達の世界観に合わせたものとなっている。

    一旦距離を置く両者。デュシアEの出で立ちもファンタジー世界観色濃い衣服に変わった。
   これも彼が思う事で瞬時に変化できるものだ。



ミスターT「やっと来たか。姫君は最上階に幽閉されている。この先へ進むのなら、私を倒してから
      進むんだな。」
    珍しく無意識に悪役を演じだしたミスターT。ここはデュシアEの顔を立てる事にした様子
   である。アドリブでの行動しかないので、思い付きがストーリーの流れとなるだろう。
デュシアE「いくぞっ!」
   片手剣を構えて突撃するデュシアE。彼の剣が振り下ろされミスターTを襲う。それを魔剣
   ダークが自ら交差させた。ミスターTに剣技の才能がないため、言い換えればデュシアEと
   魔剣ダークとの一騎打ちとも言える。

    この交差の瞬間、魔剣ダークは驚いた。それは自分に匹敵するレベルをデュシアEが有して
   いる事を知ったためだ。また剣技の師匠であるディルヴェズ自身も驚いていた。

    デュシアEの短期間での技量アップは目覚ましく、同期のデュシアTよりも各段にレベル
   アップしている。

    凄まじい剣劇を繰り広げるデュシアEとミスターT。身体に当たる事はなく、一進一退の
   攻防を繰り広げるに留まっていた。それだけレベルが高い証拠であろう。


    とそこに飛び入り参加する人物がいた。身丈以上の巨大な大剣を2人の間に打ち入れる。
   驚いた2人が見たのは、姿に似合わず巨剣を振るうディルヴェズLKであった。
ディルヴェズLK「2人のその首には賞金が掛かっています、頂くとしますわ。」
   独自の演出も兼ねて動き出す彼女。本編出身ではなく、アレンジの存在だから突出した行動が
   できるのだろう。現に観戦に回っているオリジナルのディルヴェズは微動だにもしていない。

    怖ろしいまでに気合が入っているディルヴェズLKは、2人相手に凄まじい剣劇を演じる。
   デュシアEとミスターTは2人して彼女の攻撃を弾くだけであった。

    流石はディルヴェズのアレンジとあり、技量はそのまま受け継がれているようだ。つまり
   剣技のレベルはアルエキファイタ内最強である。

ディルヴェズLK「面白くなってきましたね。」
    武器の大きさからディルヴェズLKの方が圧倒的に不利である。武器が大きければ取り回し
   が大きくなり、その分小回りが利かなくなる。デュシアEやミスターTの武器の方が有利で
   あろう。
   にも関わらず、彼女の方はそれを超える動きをしてくる。この部分が彼女と2人とのレベルの
   差であろう。
ミスターT「う〜む、得意分野でいくか。デュシアE、これを使うんだ。」
   ミスターTはデュシアEに手に持つ魔剣ダークを投げ渡す。それを左手で受け取ると二刀流で
   ディルヴェズLKの攻撃を弾いていく。
デュシアE「マスターはどうするのですか?」
ミスターT「お前さんを使うよ。」
   そう言うとデュシアEの身体を抱き寄せると、ヌンチャクの様に扱い出した。以前ラフィナに
   対して同じ事を行った、人を使っての剣舞である。
   それに彼のトリッキーな行動は女性に対して行うのかという概念が強かった。しかし相手が
   男性でも構う事なく同じ扱いをする。この部分で女性陣だけ特別扱いはされないと男性陣は
   安堵感に包まれたようだ。


    凄まじい剣舞の嵐である。デュシアEは右手の片手剣を投げ捨てると、魔剣ダークを中心に
   剣技を繰り広げる。その彼を振り回すミスターT。プロレス技からの発祥に近い行動ならば、
   剣技に疎い彼でも十分対応できるからだ。

    そんな2人の行動に怯む事なく迎撃をするディルヴェズLK。今まで以上に剣舞が冴え、
   まるで4人してダンスを踊るかのようであった。


    しかし総合的な戦闘力はディルヴェズLKにあった。流石の意思を持つ魔剣ダークも彼女の
   猛攻に耐え切れず弾き飛ばされてしまう。武器がなくなったデュシアEに容赦なく大剣が振り
   下ろされた。

    するとミスターTがデュシアEを空中へと放り投げると、迫り来る大剣を白羽取りしたので
   ある。
ミスターT「今だっ!」
   彼が大声で叫ぶと、空中にいたデュシアEが大剣目掛けてキックを放つ。落下速度を利用した
   一撃は凄まじい打撃となり、傷1つない大剣を真っ二つに折ったのである。
   そして着地したデュシアEを再び抱きかかえると、ディルヴェズLKとの間合いを調整した。

    着地時に硬直したデュシアEは、ディルヴェズLKにとって格好の的である。これだけの
   強豪ともなれば、武器がなくとも凄まじい強さを誇るからだ。
   しかし実際の所は絶妙な行動をする2人に呆気に取られている彼女。追撃はできないのが実情
   だった。


ミスターT「女剣士さん、これでイーブンだ。」
デュシアE「貴方の希望は折りました、次はどう戦われますか。」
    間合いを取ってからデュシアEを抱き下ろし、2人してディルヴェズLKと対峙する。彼女
   の武器が折れたとしても、まだ戦闘は続いているのだから。
ディルヴェズLK「何も武器は金属という訳ではありませんよ。」
   そう語る彼女は、何と魔法による剣を出したのだ。それに闘気も合わせ、眩い輝きの光の剣を
   構成しだしたのである。
   フリハト系列やファンタジー世界観の面々は苦笑いを浮かべるしかない。ディルヴェズLKの
   今の現状は、本編の世界観を完全に再現している形だからである。

    闘気と魔力で構成させた光の剣は折れる事がない。それだけに受け止めるには同様の物質で
   構成された武器が必要である。
ミスターT「デュシアE君は魔法は無理か。」
デュシアE「使えるかどうかも定かではありませんよ。」
ミスターT「ああ、そうだった。」
   まだ明確な世界観が定まっていない流界ベルムカルの面々。それ故に誰がどの魔法などを使用
   できるかなどは決まっていないのだ。
ミスターT「う〜む・・・、ここは私に任せて先に進むんだ。」
デュシアE「マスターはどうなされるので?」
ミスターT「対抗し得る武器はこれしかない。」
   そう言うと折れた大剣の刀身を掴み、思いっ切り握り締めた。刃が肉に食い込み、夥しい血が
   流れ出す。それに観戦側は驚愕した。

    すると滴れ落ちる彼の血が、何と折れた大剣の刀身に付着していくのだ。白色だった刀身が
   真っ赤な刃へと変わっていく。
   また同じく折れた大剣の柄を手に持つと、折れた刃先と合わせだした。するとまるで何事も
   なかったかのように巨剣に戻ったのである。

    しかし元に戻った大剣は、血の色で真っ赤に染まった禍々しいものである。これこそが本当
   の意味での魔剣と言えるだろう。


ミスターT「行くんだデュシアE君、ここは任せろ。」
デュシアE「でも・・・その武器を扱えるのですか?」
ミスターT「相手が本気なら、こちらも本気を出すしかあるまい。」
    あくまでも役割に徹底している2人は、冒頭の役割を変えた動きになった。この場合では
   ディルヴェズLKが悪役となってしまうだろう。
   姫の救出という設定を遂行するべく、デュシアEはその場をミスターTに任せて去って行く。
ディルヴェズLK「貴方にその武器は扱えないわよ。」
ミスターT「それはどうかな。」
   重そうに見える真っ赤な大剣を手に持つミスターT。周りはとても持てないだろうと思って
   いたが、何とその姿が縮小していくのだ。気付くと大剣は曲線美が美しい刀へと変貌する。
   しかし相変わらず刀身は真っ赤なままだ。

ミスターT「血の刀・・・か。これなら彼女の病も断ち切れるのかね・・・。」
    手に持つ赤い刀を見つめ、ふと呟きだした。その瞬間一同の胸に去来する凄まじいまでの
   悲しみ。それは創生者の彼からリンクする形で一同に流れ込んでいったようである。
ミスターT「・・・今はこちらに集中するか。」
   そう語ると一同に戦慄が走った。ミスターTから尋常じゃないほどの殺気と闘気が放たれる。
   例の風来坊でのゼラエル達を黙らせた究極の力の1つでもある。
ミスターT「さあ、やるとするか。」
   静かに、本当に静かに動き出すミスターT。それに恐怖に震えるディルヴェズLK。一歩一歩
   進んでくる彼に光の剣を構え突撃していく。


    凄まじい攻防になった。剣技が使えないミスターTとは思えないほどの凄まじい剣舞を繰り
   出している。ディルヴェズLKも出し得る最大限の力を出して迎撃していった。

    この剣舞のやり合いでミスターTから感じられる負の感情。それが徐々に強くなっていく。
   剣舞自体はディルヴェズLKに武があるが、精神的に押されだしてきているのだ。

ミスターT「・・・ダークサイドとはこの事か。」
ディルヴェズLK「取り込まれてどうするのです、目を覚ましなさいっ!」
    次の第一声から役割が一変した。暴走するミスターTを阻止するべくディルヴェズLKが
   動いている形になっている。言わばスターウォーズでの決戦と同じだろう。
ミスターT「この道に走らなければ、自分が自分ではなくなってしまう。怒りに身を任せ、自分の
      弱さを強く憎む。この強大な力は・・・まるで絶品の美酒だ。」
ディルヴェズLK「心が強ければ負ける事などありません。負の感情に走る事もないのです。それが
         分からないのですか!」
ミスターT「・・・貴方には分かるまい、今も彼女を思えば涙する悲しみを・・・。」
   役割なのか本当なのか、ミスターTの言動に戸惑う一同。その中でナツミDTAやミツキTN
   達はその意味を痛烈に理解しているようだ。

ディルヴェズLK「必ず止めてみせますっ!!!」
ミスターT「・・・止められるさ。」
    激しい攻防を繰り返すうちに、ミスターTが持つ赤い刀が折られてしまう。その隙を逃がさ
   ないディルヴェズLK。光の剣を彼に向かって一閃させた。刀剣はミスターTの身体を斬り
   付けて一撃の元に下したのである。
ディルヴェズLK「・・・結局、このような結末になってしまうのですか・・・。」
   無念にも倒れるミスターTを見つめ、呟くディルヴェズLK。この一部始終を見ていた一同は
   大拍手で彼らを称える。


    しかし倒れたままのミスターTが起き上がる仕草を見せない。それに気付いたエシェラが
   慌てて駆け付ける。安否を気に掛けるが命に別状はない。だが脱力した形で倒れ込む姿に、
   彼女は胸騒ぎを覚えずにはいられなかった。

ミスT「マスターは少し疲れたようです。お気になさらずに休息して下さい。」
ビィルガ「今度は私が企画しよう、全員で挑むんだ。」
    ミスターTの異変に気付いたミスTとビィルガは、周りの気を引くためにイベントを持ち
   掛ける。2人に便乗したターリュSとミュックSが率先して暴れだした。
   それに乗り出した一同が剣劇のイベントを始めだす。全く無知のビィルガだったが、今現在の
   現状から気を引かねばならないと確信しているようである。



エシェラ「大丈夫ですか?」
ミスターT「・・・ああ・・・。」
    少し離れた場所にミスターTを移動させる。ミスT・ビィルガ・ターリュS・ミュックSが
   周りを引っ張ってくれているため、一同の気はそちらに向いていた。
ディルヴェズLK「やはり現実での出来事が尾を引いているのですか・・・。」
ミスターT「・・・俺は無力だ。力があれば・・・少しでも助ける事ができるのに・・・。」
デュシアE「マスターほどの人物が無力なはずがありません!」
ミスターT「そうでもないさ・・・君達の方が立派だよ。」
ダーク「それは私達が貴方の理想となる虚像から生まれた存在だからですよ。私達の方こそ本当の
    意味で無力ですから。」
エシェラ「貴方を心から癒す事ができない煩わしさ、これを無力と言わずして何というのですか。」
   4人は思った。今の彼は相当参っていると。現に彼の目が死んでいるのだ。今までの活力ある
   瞳ではない。これにはどうする事もできないと思ってしまう。

    そこに訪れる5人の人物。彼の心境と密接な関係がある存在だ。彼らに気付くと、申し訳
   なさそうに頭を下げるミスターT。
ナツミDTA「まだ目を覚まさないんだね・・・。」
ウエストTM「我々はオリジナルから発展した存在ですが、具現化するのはマスター自身ですから。
       実際に私達のオリジナル本人との関係性は一切ありませんし。」
エンルイTP「でもムカツクよな・・・この遣る瀬無さは。」
ナッツTH「忘れていく人物も多々いる、本当に腹立たしい事だ。」
ミツキTN「私も現実面では動けない状態ですから。」
   5人ともミスターTの心境と完全にリンクしている。ミスターM・アビスTT・リンダイTM
   と同じように、オリジナルは現実世界を生きる存在だからだ。
ミスターT「大丈夫・・・俺達が忘れなければいいだけの事ですから。」
ウエストTM「何だ、分かっているじゃないか。」
ミスターT「分かっていても・・・悲しみたい時はあります。俺達は人間なのですから。」
ナッツTH「俺達も出来る限りの事はしないとね。」
ミスターT「愚問ですよ。」
   何とも見事としか言いようがないとエシェラ達は思った。5人の激励でミスターTが復活した
   のである。目が活力ある瞳へと戻っているのだ。
   やはり彼を助ける場合は現実世界を生きる存在でしか無理だとエシェラ達は嘆いてしまう。


    元に戻ったミスターTを確認すると、5人は安心して一同の輪の中に戻っていく。彼らも
   この場を大いに満喫したいという思いが強いのだ。

    徐に上半身だけ起こすミスターT。その彼を支えるエシェラ。手際の良さはまるで現実世界
   を生きる人物に等しいものであろう。

ミスターT「ごめんな、迷惑を掛けたね。」
デュシアE「俺達が望むのは、一同と共に和気藹々と楽しむ姿です。悲しまれるのは構いませんが、
      皆さんを心配させる事はなさらないで下さい。」
ミスターT「そうだね。」
    一服しようとするが、手が若干震えていて定まらない。その煙草を取り上げ、自分が吸う
   のはダークである。その姿を見た彼は小さく笑ってしまう。
デュシアE「一緒に戦えて光栄でした。マスターとなら本編に回帰しても、凄まじいペアが組める
      かと思います。」
ミスターT「そうだな。でも共に戦うのは彼女達にしておいた方がいい。」
   ミスターTが指差す方には、デュシアEに縁あるエシェムL達が心配そうに見つめていた。
   それに気付くと、そそくさげに彼女の元へと向かって行くデュシアE。彼の存在する場所は
   彼女達の場所なのだから。

ミスターT「幸せ、か・・・。」
ディルヴェズLK「私達にも幸せになる権利はあります。」
ミスターT「ハハッ、そうだね。でも俺が言ったのはそれじゃないよ。」
    彼の言葉を聞いて失言だったと黙り込むディルヴェズLK。彼が思うは今も苦しみ戦う存在
   を指し示しているのだから。
ミスターT「それでも・・・俺が悲しめば彼女も悲しむ。苦悩し停滞しても、逃げず膝を折らずに
      再び立ち上がる。それしか俺にはできない。」
ダーク「私達も出来る限りお力になります。貴方の悲しむ姿を見たくありませんから。」
ミスターT「フフッ、ありがとな。」
   自分を労う3人に頭を下げるミスターT。自身から具現化させた存在の彼女達だが、それでも
   独立した存在にあるのは言うまでもない。

    人は1人では生きていけない。それは仮想現実のこの場でも同じ事である。それを痛感した
   ミスターTであった。



ゼラエル「撃破最大数を競うというのは乙なものだな。」
    巨大な斧を振り回し、迫り来るモンスターを撃破していくゼラエル。ミスTやビィルガが
   打ち出したのは、一同でどれだけのモンスターを撃破できるかという挑戦だった。
ユウト「それに皆さんと一致団結して戦えるのは幸せですよ。」
   小剣を片手に凄まじい勢いで相手を薙ぎ倒すユウト。彼はレイピアなどの剣が得意のようだ。
   一撃が重いが取り回しが利かないゼラエルを、一撃が軽いが取り回しが利くユウトがカバー
   する。この連携は凄まじいものであった。

    今回の企画は各々が戦うのではなく、集団戦で戦い抜く事ができるかというのが着眼点の
   ようである。創生されたモンスターの数は尋常じゃないほどだ。
ターリュS「極悪とも言えるモンスター相手なら、私達が一致団結できるからねぇ。」
ミュックS「そうだねぇ。」
   思う存分暴れられるとあって2人の突き進み方は凄まじい。それにただ暴れるだけではなく、
   周りへの気配りもかなりのものである。
ディルヴェズ「モンスターも生まれる場所さえ異なれば、ブラックドラゴンのようにこちら側で戦う
       事になったのだがね。」
リヴュアス「それも全て我々がマスターより授けて頂いた宿命ですよ。」
リデュアス「戦える生き様がそこにありますから。」
ディルヴェズ「そうだね。」
   リヴュアスもリデュアスもフリハト本編では、ディルヴェズ達に敵対するモンスターから発祥
   する存在である。それだけに相手がモンスターの場合は同情してしまうのだろう。


ミスターT「もう少し暴れるとするか。」
    凄まじい戦場と化した娯楽施設。倒しても倒しても湧き出るモンスターを、とにかく撃破
   していく一同。そこに落ち着きを取り戻したミスターTがエシェラ達と共に戻ってくる。
エシェラ「ダークさん、剣を貸して下さい。一緒に暴れましょう。」
ダーク「了解です。」
   再び魔剣ダークの姿に変化したダーク。今度の具現化された武器は小太刀のような短い刀身。
   しかもエシェラの戦術に合わせるように2本に分かれる。それを手に持って一同の中へと飛び
   込んでいく。

ディルヴェズLK「マスター、1つお願いが。」
    片手剣を手に持ち、ウォーミングアップをしだすミスターT。その彼にディルヴェズLKが
   歩み寄ってくる。武器は闘気と魔力を合成させた光の剣だ。
   そのディルヴェズLKが申し出ようとした内容を行動で返す。彼女をソッと抱き寄せると、
   敵陣の中に放り投げたのだ。
ミスターT(着地と同時に回転剣舞いくぞ。)
ディルヴェズLK(了解です!)
   空中に放り投げられたディルヴェズLK。そのまま敵目掛けて光の剣を投げ付ける。見事相手
   に突き刺さった剣は、モンスターを一撃の元に倒した。
   その後地面へと着地する瞬間、後から走って駆け付けて来たミスターTに抱きかかえられる。
   と同時に再び光の剣を作り出すと、その彼女をヌンチャクのように振り回して戦いだした。

    凄まじいまでの撃破である。風のように現れた2人が次々にモンスターを薙ぎ倒していく。
   意思の疎通による会話で話すため言葉は一切発しない。それだけに心と身体がリンクし合い、
   まるで1人のように動き合えるのだ。


    次々に倒されていくモンスター。今度は一同よりも巨大なモンスターが召喚されていく。
   特に巨人族のモンスターは圧巻で、見る者を圧倒してしまう。
シューム「動きが鈍いから足を狙いなさい!」
   両拳のグラブで巨人の棍棒を防ぐと、そこに他の面々が攻撃していく。特に肉弾戦闘を全く
   知らないロスレヴ系列の面々は、シューム達のフォローで大助かりの様子である。
リュウジ「この手の相手は持ち上げられないからなぁ・・・。」
メアリス「その分倒れれば起き上がるのに時間が掛かるわよ。」
   ロスレヴ系列熟年夫婦のリュウジとメアリスは、刀を片手に並み居るモンスターを撃破して
   いく。2人も機械系の世界観出身のため、肉弾戦は得意としていない。

    リアルサバイバルバトル何のその。一同が一丸となり迫り来るモンスターを撃破する様は、
   さながら戦国時代の合戦のようだ。それでも共通の目的を達成していく事は、今の彼らには
   十分な歓喜そのものである。



    十分楽しんだと思う面々が増えてきた頃、徐々に出現するモンスターの数が減っていく。
   長丁場で続ければ飽きが来るのは言うまでもない。この出現調整は創意の思いが現実となって
   表れている。そこまで一同の具現化する意識が強いという事だ。

    その後モンスターの出現が終わりを告げる。撃破最大数を競うという事で開始した剣劇で
   あるが、最終的には一丸となって戦う楽しさを体感した面々。これが最大の要素であろう。
   プロレスの世界観では絶対に味わえない戦いが、この剣劇で味わえた一同であった。



    その後も剣劇を続ける面々もいれば、原点回帰してプロレスへと戻る面々もいる。大体が
   休息する面々が多いのが実情ではあるが。それでも今回のイベントでは得られるものが大きい
   と誰もが思っていた。

ミスターT「オリジナルのディルより技のキレが増していた気がするんだが。」
ディルヴェズLK「気のせいですよ。」
    娯楽施設の庭園で休息するディルヴェズLKとミスターT。エシェラとダークはまだ暴れ
   足りないという事で、今も他の面々と一緒に剣劇を繰り広げている。
ミスターT「まあ考えられる要因は女性化だろうな。それだけ乙女の思いは強いという表れだろう。
      オリジナルのディルでは到底実現できない。」
ディルヴェズLK「お褒めに頂き光栄です。」
   自分を誉められ照れる彼女。それが少なからず好意を抱く相手であれば尚更である。自分も
   エシェラ達のようにミスターTを気にしていると思うディルヴェズLKだった。

ディルヴェズLK「あの、自分を責めないで下さい。悲観的になりすぎると、本当にダークサイドに
         陥ります。」
ミスターT「ああ、分かってる。」
    暫く沈黙すると先程のミスターTの心境を指摘するディルヴェズLK。それにナツミDTA
   達が押し留めたのであり、彼女は何も助ける事が出来なかった。その部分を思っているようで
   ある。
ディルヴェズLK「オリジナルが晒されて貴方が苦悩した時も、同じように負の感情に囚われたと
         シルフィアTL様から聞いています。」
ミスターT「大丈夫だ。今回は当時のような苦悩よりも意味合いが強い。お前さんには失礼だが、
      今の方が各段に厳しく重要視される。膝を折れないのさ、絶対にね。」
   小さく微笑むミスターT。だが苦しさのあまり顔をまともに見れないディルヴェズLK。心に
   抱く苦悩は尋常じゃないほどだと痛感している。それでも周りに気配りを続けるのだ。


    徐に立ち上がるミスターT。そのままディルヴェズLKの傍まで進み、背後に回って座る。
   そして落ち込む彼女を静かに胸へと抱き寄せた。それに驚き焦るのだが、込められた意味を
   知って身を委ねる。
ミスターT「う〜む、女性を胸に抱くのは心地いいね。」
ディルヴェズLK「もうっ、マスターにはエシェラがいるのですよ。完全な浮気じゃないですか。」
ミスターT「風来坊の世界観ではそれ以上さ、気にする事じゃない。それに目の前に悩み苦しむ人物
      がいるのに、手を差し伸べないのは俺の生き様に反する。」
ディルヴェズLK「フフッ、貴方らしい。」
   悩み苦しみ停滞しても再び動き出す。その繰り返しがミスターTの生き様である。一同の胸中
   に刻まれた覆面の風来坊の流れでも、それは彼の生き様がそこにあるのだから。
ミスターT「以前言った約束が守れたね。」
ディルヴェズLK「と言うと?」
ミスターT「お前さんとデートするという約束だよ。」
ディルヴェズLK「あ・・ああ・・・そうでした。」
   ミスターTの言葉にディルヴェズLKは赤面する。何とか答え返すが、意識すればするほど
   シドロモドロになっていく。胸に抱かれる心地良さも相まって、徐々にその感覚に酔い痴れて
   いった。

ミスターT「ディルとヴァルには色々と世話になっている。2人の存在から一同の発祥が成し得て
      いったのだから。」
ディルヴェズLK「で・・でしたら・・・私じゃなくオリジナルの2人に激励を・・・。」
ミスターT「まあそう言いなさんな。」
    激励する先が違うと語るディルヴェズLK。それはそうだろう。アレンジたる彼女には本当
   の意味での激励とはならない。
ミスターT「オリジナルのディルにはヴァルという癒しの存在がいる。しかしお前さんにはいない。
      なら私が隙間を埋める存在になれるだろう?」
ディルヴェズLK「そ・・それはそうですが・・・。」
ミスターT「お前さんはオリジナルのアレンジだがアレンジじゃない。本当の意味でのオリジナルと
      言える。そのお前さんを支えなくてどうするね。」
   外見は渋って見せても、内面はこの上なく嬉しいディルヴェズLK。徐々にその内面が表に
   出始めてくる。全てにおいての心地良さに酔い痴れて、頭の中は真っ白になっていった。
ミスターT「大丈夫さ。目指すべき目標が存在するのだから負ける筈がない。」
ディルヴェズLK「はい・・・。」
   ソッと頭をディルヴェズLKの肩に乗せるミスターT。そのまま静かに頬を触れ合わせる。
   そこから伝わってくる複雑な感情は、シドロモドロになる彼女を一瞬にして落ち着かせた。
   ただ肌を触れ合わせるだけで相手を落ち着かせる彼の特技に、ディルヴェズLKは驚くばかり
   である。

    実際にエシェラやダークに行った行為を知るディルヴェズLK。端から見れば恥ずかしい
   癒しだと思っても、実際に体感するのとでは全く違うと思う彼女。確かに恋人同士と思われて
   しまう行為に近いが、そこに込められた意味合いは果てしなく深い。
   そして何よりもオリジナルの自分では体験できない行為だ。異性であるから体感できるもの
   なのだから。

    自分が気紛れで女性化にされたと思っていたディルヴェズLK。しかし今この瞬間、初めて
   自分の誕生を正直に感謝できるのであった。


    無意識に顔を相手の方へと向けるディルヴェズLK。その意味を知ったミスターTは静かに
   唇を重ねた。女性になる事により、恋心なども芽生えている。自然と行って欲しい行為を行動
   で表す事ができるのだから。

ディルヴェズLK「・・・何だか幸せです・・・。」
ミスターT「フフッ、よかったね。」
    口づけを終えて再び頬を触れ合わせる。男女観の流れから感じ取れる癒しは、オリジナルや
   アレンジといった概念を超越していた。そう思わざろう得ないディルヴェズLKだった。
ディルヴェズLK「オリジナルが貴方を信頼し切っている思い、それが女性になると純粋な恋心に
         なるとは思いもしませんでした。」
ミスターT「お前が好きだからな。」
ディルヴェズLK「あ・・う・・・そ・・その・・・何て返したらいいか・・・。」
ミスターT「この場合は素直に感謝だよ。」
ディルヴェズLK「あ・・はい、ありがとうございます。」
   恋路はまだまだ未熟だと思う彼女。その点はエシェラやダークが素直に応じれている。ここは
   女性として生まれた彼女達を羨ましく思うのである。

    そんな女心が浅いディルヴェズLK。背後から抱き締めるミスターTは、今より力強く彼女
   を抱き締める。それに驚くのだが、今まで以上に心地良さが襲ってくる。これにより一層酔い
   痴れるのは言うまでもない。

    静かに時が流れる両者。胸中に飛来する思いは抱擁の心地良さが忘れ去っていく。お互いに
   込める思いが自然とリンクし、意思の疎通でなくとも考えが分かるほどであった。

    

    徐々に娯楽を満喫した面々が試合会場へと戻っていく。そこではビィルガ達が次なる企画を
   打ち出していた。善役だろうが悪役だろうが、一同を沸かせる戦いをするまで。それが彼の
   揺ぎ無い信念である。

ビィルガ「さて、引き続きマジブレ陣営との抗争を続けるとしよう。」
ゼラエル「おうよ。また陣営に分かれての対決だな。」
デュシアE「腕が鳴ります。」
    とにかく何らかの切っ掛けを見つけて動かねばならないと思う一同。進む事さえできれば、
   後は各々が独自に流れを作っていく。そこまで至るのが難しいのだから。
   それにモンスター大決戦を行った面々は別の意識が芽生えだしている。団結心というものだ。
アーディン「で、どうするね。何か流れを作って対決するのかい?」
ビィルガ「そこが悩みの種さ、まだ思い付かない。」
ベロガヅィーブ「しっかりしてくれよ・・・。」
   以前のようなお堅い雰囲気がなくなりつつあるビィルガ達。彼も周りに揉まれる事で、純粋に
   楽しめる存在へとなっているようだ。

    そこに現れるはミスTとミスE。完全な中立的存在の2人だが、何と傍にいたヴェアデュラ
   を襲撃したのである。これには驚愕せざろう得ない一同だった。
デュリバ「何をなさるのです!」
ミスE「あまり使いたくない暴挙ですが、流れを作るにはこれしかありません。」
   そう語るミスEを尻目に、静かにデュリバに詰め寄るミスT。ソッと彼女を抱き締め、その目
   を見入った。女性版ミスターTではあるが、その魅力的な一念は男女問わず感じるもの。

    顔を赤くしてしまうが、瞳を見つめられるミスTから目を背けられないデュリバ。その彼女
   の背中を優しく擦ると、背骨の神経の部分を刺激するミスT。直後デュリバは骨抜きにされ、
   その場に倒れ込んでしまう。
ミスT「暫く寝ていなさい。」
   ただ単に殴る蹴るの暴行ではなく、誘惑による骨抜きを武器としだしたミスT。これに一同は
   驚くしかない。だが女性版ミスターTの誘惑を受けてみたいと思う男性陣が現れるのも事実。
   それに唇に指を当てて不気味に微笑むミスTだった。背筋に悪寒が走るのは言うまでもない。
ミスT「戒厳令を引きます。許可なしに試合を行う事は許しません。」
ミスE「私達の統括の元、行動をして頂きます。」
   精一杯悪役を演じようとするが、どうしても本気と思えない2人。周りは付き合おうとするの
   だが、一同の方も本気になれない状態であった。


    そこに娯楽施設より戻ってきたミスターTとディルヴェズLKが現れる。一同を盛り上げる
   イベントを起こそうとしているミスTとミスEを襲撃したのだ。
ミスターT「悪役は任せな、お前さん達には似合わないから。」
   ダウンした2人をディルヴェズLKが引っ張っていく。彼女もミスTとミスEを介抱しつつ、
   一同と共に行動する側になるようだ。
ミスターT「さて、再び模擬シーズンを行おうと思う。今回は一同参加のものだ。1シーズンの流れ
      を考えると、あまり長いのは厳しい。エンターテイメント形式の流れをベースに、随所
      に試合を挟む形を考えている。」
   再び模擬シーズンを行うと打ち出され、一同盛り上がりを見せる。しかも今回は全員に参加権
   があるとあり、より一層の盛り上がりを見せた。
ミスターT「イベントの内容はライアから聞いてくれ。アドリブの流れでも構わない。一同の熱意
      ある流れを期待しているよ。」
   小さく指を鳴らすと、試合会場が変化していく。そしてライアの脳裏にミスターTが設定した
   流れが入っていった。手帳も黒いカードもないのに何でも行える彼に、周りはただただ驚く
   しかない。

    本命の試合の方が疎かになりつつある。この模擬シーズンで現状打開をしたいと思う一同。
   全ては創意の強い思いで変わっていくのだから。

    とにもかくにも行動あるのみと、一同はそれぞれの決意を胸に秘めて動き出した。

    第54話へと続く。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

戻る