アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜 〜第52話 時代を超えて〜 一旦大乱闘が終息し、一同休憩となった。確かに終息した事に不快感を抱く面々だったが、 体力的に疲れてきていたのは事実。エシェラの行動は助け船となっただろう。 そして60人の追加により、総数が2340人へと膨れ上がったアルエキファイタの面々。 この大人数自体でいる事こそ、今後どうなるのかという部分が大きい。 それでも一同の目指すべき所は、戦いのある場所の構築。それこそが己らの持って生まれた 宿命なのだから。それを再確認する面々であった。 エシェア「お父さん、これどうぞ。」 ミスターT「ああ、すまない。」 一服しながら休憩をするミスターT。そこにエシェアとエシェナが紅茶を持って現れる。 徐に紅茶を受け取ると啜りだす。その姿はとても創生者には見えないだろう。 ミスターT「どうだ、少しは慣れたか?」 エシェナ「う〜ん、まだ完全じゃないです。」 エシェア「ターリュSさんとミュックSさんに引っ張って貰っていますので。」 ミスターT「頑張るよなぁ。」 ここ最近は目立ったじゃじゃ馬度はでていないターリュSとミュックS。やはり誰かを牽引 する立場になると、幼さは出し難いのだろう。 エシェナ「ところで、今後はどうするのですか?」 ミスターT「一番難しい質問を投げ掛けてくれるな。決定打といえる解決策が思い浮かばない。」 エシェア「う〜ん・・・現実での簡単な出来事を模試してみては?」 ミスターT「現実の簡単な出来事か・・・。」 エシェアが語るは、ミスターTの現実世界での簡単なネタを発掘せよとの事であろう。しかし 酷な事ではなく、本当に日常に起きる事のようである。 ミスターT「・・・1つだけ思い付いた。しかし・・・実現は難しいな。」 エシェア「思い切りが大切ですよ。」 何やら思い付いた様子だが、どうしても渋っているようだ。そこに思い切りが大切だと語る エシェア。その端的だが明快な回答はエシェラが得意としているものである。 ミスターT「フフッ、流石エシェラの娘達だ。分かった、やってみよう。」 エシェナ「その意気ですよ。」 双子に後押しされて、思い付いた計画を実行する事を決意するミスターT。この小さな天使に 感謝する彼であった。 一服を終えたミスターTは、企画発案の猛者であるライアにプランを持ち掛けた。その彼に 付き従うエシェアとエシェナ。まるでエシェラが2人いる錯覚に陥るミスターTであった。 ミスターT「どうだろうか?」 ライアの元へ訪れたミスターT達。エシェアとエシェナに背中を押されて発案したプランを 彼女に伝える。それに絶句するライアであった。 ライア「・・・抗争とは掛け離れそうですが、魅力的なプランではあります。しかし・・・本当に 大丈夫でしょうか・・・。」 ミスターT「後は私で何とかするさ。どういった流れを作れるかが勝負だけどね。」 ライア「分かりました、お付き合いしましょう。」 ようやく承諾のサインを示すライア。自分で考えたプランを超越するものだけに、彼女の脳裏 では色々な考えが交錯しているようだ。 ライア「ところで、そのクロノトリガーでしたっけ。ありとあらゆる世代を超越して、1つの最悪を 阻止するというのは不思議なものですね。」 4人は一旦GM達がいる場所へと向かう。今回の大規模なイベントは、彼らの力なくしては 成し得ないと思ったからだ。 その最中ライアが今回のプランのネタについてミスターTに語ってくる。自分達の世界観とは 全く異なるものだからだ。 ミスターT「ファンタジー要素は大きいが、非常に複雑なストーリーとなっている。感動巨編には 変わりないけどね。」 ライア「私達の世界観は生きるか死ぬか、この部分にしか焦点がありませんから。そもそも外部から 飛来する巨悪ではなく、人間そのものが巨悪ですし。」 ミスターT「何時の時代もそんなものさ。だからこそ戦えるんだがね。」 現実世界の色が濃いロスレヴ系列のライアは、ミスターTの現実で体験した作品の世界観に 共感を示している。ファンタジーではあるが、そこはどこか親密感を抱かずにはいられないと いった雰囲気が強いのだろう。 今回の大規模イベントは面白くなりそうだと直感するライア。それだけミスターTが心に 響いた作品なのだろうから。 ミスターT「・・・というものだ、どうだろうか?」 GM達がいる場所へと赴いた4人。そこで彼らに今回のプランを語るミスターT。ライアは 細かい事を決めだしており、近くのテーブルに向かって資料を漁っていた。 ミスターM「クロトリかぁ・・・また懐かしいものを。」 ナツミDTA「原始・古代・中世・現代・破壊前・破壊後・時の狭間の7つの世界を行き来するか。 この設定をどうやって出すつもりだい?」 アビスTT「プロレス世界観と完全に掛け離れているような気がしますよ。」 ミスターT「しかしネタがない以上、何らかの形による試合に持ち込まねばならんさ。オリジナルの 流れに乗りさえすれば、後はこちらものさ。」 イベントの再現はかなり難しいと語る面々。特にミスターTが持ち掛けたネタを知る人物達は 口を揃えて難しさを語っている。 ミツキTN「まあそれでも、面白ければ楽しいですからね。何とかなりますよ。」 クレアTU「何とかしないといけない現実もありますけど・・・。」 ミツキTN「それをいっちゃあ〜おしまいわぅ〜。」 ミスターM「明るくていいよなぁ・・・。」 ミツキTN「明るさも私の取り柄の1つだからねぇ〜。」 この場合は明るさよりも、ごり押しが似合うと一同思った。しかし明るさで乗り切っている ミツキTNを見れば、誰もが実現可能だと思わざろう得ないだろう。 ミスターM「主人公は誰にするんだい?」 ミスターT「デュシアEだろう。リアルで何度も使用している名前でもあるし。」 早速イベントを練りだす一同。その中でミスターMが中心となる人物を知りたがる。それに ミスターTが間隔開けずに答えた。 ミスターM「まさか・・・魔王は自分がやるとか言うんじゃ・・・。」 ミスターT「あら・・・分かっちゃったか。」 ナツミDTA「ダメだなぁ・・・。」 ミツキTN「わぅわぅ。」 ミスターT「いいじゃないか、イレギュラー要素に打って付けなんだから。」 反論しだすミスターTに、更に反論返しをする周り。ネタを知っている面々だけに、絶対に 似合わないと思っているようだ。 ミスターT「あの作品はなぁ・・・ローマ字が使えないから、改造で無理矢理ネクストのTを名前に 使ってアレンジしたんだがね。」 ミスターM「何とも・・・。」 ライア「と・・・とにかく、プラン通りに行きましょう。」 ようやく細かいイベントや設定を決めたライア。手書きで纏め上げた資料を一同に配りだす。 その手際の良さは流石イベントの女王とも言えるだろう。 早速ライアが作成した資料通りに動き出したGM陣営。主力メンバーを集めに奔走しだす。 また試合をどういったタイミングで行うのかを練り出すライア。ここも彼女の手腕が問われる だろう。 デュシアE「また大変なイベントを・・・。」 ミスターT「そこは黙認してくれ。」 主力メンバーを招集したGM陣営。デュシアEを筆頭に、新陣営の面々が大多数である。 またロスレヴ・フリハト・マジブレ・悪陣営から抜粋された面々も集っている。これだけを 見れば、このイベントが大規模なものであると誰もが思わざろう得なかった。 ドクターT「私が魔王役ですか・・・。」 ミスターT「私では周りがブーイングするんだもの、お前が適任だよ。」 ミスターTと同じ人物として創生され、しかも悪役としての位置付けのドクターT。こちらは 創生者ではない一般のレスラーである。それ故にイレギュラー要素として選ばれたようだ。 ミスターT「まあボチボチ始めるとしますかの。」 デュシアE「流れはネタ作品通りでいいのですか?」 ミスターT「いや、我流でいいよ。キャラの位置付けだけはネタ本編に近いが、流れは各自で自由に 起こしていい。」 ユキヤ「簡単に言ってくれますねぇ・・・。」 ディルヴェズ「まあ何とかするしかないですよ。」 代表者達は渋々動き出した。心中は定まっていない様子であり、行く先は不透明であろう。 しかし自信に溢れた表情を浮かべているミスターT。彼は確信があって今回のイベントを切り 出したのだろう。それに一同は賭けて行動しだした。 望むがままに世界を変えられるという特技を持つ一同。それをこの大規模イベントに当て はめる。試合会場のリングはそのままに、ドームはまるでファンタジー世界観へと変貌した。 中央にポツリとリングがある様は、まるでそこだけタイムワープしたみたいで異様である。 デュシアE「今日は騎士団の入団テストですね。」 トーマスJ「そうだな。君なら必ず入れるさ。」 世界観は中世の世界。主人公たるデュシアEが、騎士団へ入るためのテストに挑むという 部分から始まった。これも模擬シーズンに似ているが、役者の世界観を前面に出すのは初めて のケースである。 トーマスJ「今回の中心者はディーラという騎士団長らしい。今までにかなりの数の騎士を育成して きたようだ。」 デュシアE「ならなれるチャンスはあるという事か。」 トーマスJ「奢ると一発で落第になるぞ。そもそも何故騎士になるのかを念頭に入れるんだ。」 トーマスJが語る言葉に一同心に痛みが走る。何のために戦うのか、その意味を問い質された 感じがしてならなかったからだ。 自分達の存在、それは何なのか。ミスターTが心に抱く苦悩が理解できた。 入団テストに挑むデュシアE。補佐にトーマスJがいるが、他にもエシェムL・リティム・ エリヒナ・ビアリナ・セオリアがいる。同時期に騎士団の入団テストを受ける者達のようだ。 ディーラ「さて、騎士団に入団するのはいい。肝心なのは自分達の生き様を残せるかだ。そして騎士 とは人に尽くす事を最大の目標とする。ここを勘違いする者が多くてね。」 リングサイドでディーラが熱弁する。傍らにはガードン・グランデス・ラーサーがいる。 フリハト系列でのディーラ四天王の面々だ。 また一同にリングが戦場と見えるようになってもいる。これはミスターTの計らいで、肉弾戦 で戦うプロレスの部分を実際の剣劇に見えるようにしているためだ。 実際の所は肉弾戦のプロレスバトルでしかないのだが、この場にいる一同には実際の展開に 見えているようである。 ディーラ「さあ、お前達の力を見せて貰おう。」 ビアリナ「勝てば入団できるんだね?」 ディーラ「甘いな。勝利する事が入団勝ち取りとは限らん。その真意を知れる者こそが騎士道に相応 しいだろう。」 意味ありげな言葉を口にする彼に、デュシアE以外の5人は真意が掴めていない。唯一彼だけ その真意を掴めており、静かに修練所へと向かっていく。 勝とうが負けようが、その真意を見定めなければ先に進めない。デュシアEはそれを把握 していた。他の5人は今も理解できていないようだ。 ミスターT(悪い、試合を取り損ねてしまった。ここは試合なしで進んでくれ。) 試合の流れになろうとしたその時、一同の脳裏にミスターTの言葉が過ぎった。既に試合の 流れを記録している筈なのだが、この場合は完全に忘れてしまっていたようだ。 これには一同呆れるが、創生者たる彼の言葉に素直に従うしかなかった。 ディーラ「決まったな、デュシアEをトップとして抜擢する。無論他の5人も抜擢するが、階級は 下がるので覚悟してくれ。」 騎士団にも階級が存在するのかと、ファンタジー世界観を知らない面々は思った。まあどの 世界観でも縦社会が一般的だ。唯一それを無視している世界観がロスレヴ系列であろう。 場所が兵舎へと移動する。6人とも騎士の出で立ちをした。しかし実際は通常の衣服だが、 これも仮想空間での認知度によるものである。 ラーサー「では早速で悪いが、北にある異空間ゲートの守備を行ってくれ。」 エリヒナ「モンスターが出没するのですか?」 ラーサー「モンスターなら話は早いが、盗賊や山賊が荒らしに入る場合がある。これらの撃退が君達 の最初の任務だ。」 セオリア「了解した。」 早速現地へと向かう5人の女性陣。デュシアEはトーマスJと打ち合わせをし、それから現地 へと向かって行った。この点での格差が開いてしまうのが分かるだろう。 グランデス「本当に大丈夫ですかね。」 ディーラ「何だ?」 ガードン「最近異空間ゲートが不安定と聞いています。よからぬ事が起きなければいいのですが。」 ディーラ「その場合は魔法使いディルヴェズ殿に任せればいい。我々はあくまでここの守備だ。」 デュシアE達を主人公に配置しているため、その他の面々はサブキャラ要素である。特に 一番古参のディルヴェズが剣士ではなく魔法使いという部分。これは既にフリハトでの最終 形態となった彼を抜擢しているからである。 エシェムL「暇だなぁ・・・。」 異空間ゲートの前で守備をする7人。暢気に地面に座り空を見つめるエシェムL。リティム は素振りを、エリヒナとビアリナは雑談をしていた。 デュシアE「トーマスJは騎士団に入団しなくてよかったのか?」 トーマスJ「俺は君に大きな借りがあるからね、自分の身は後回しさ。それに歳がかなりいってる。 君達を補佐する方が向いているよ。」 言わばトーマスJは従者の役割だろう。しかし単に従者ではなく、それ相応の実力を持っての 存在のようだ。 セオリア「・・・君は不思議だな。外見からは騎士の素質は一切感じられない。しかしディーラ殿が 目を付けたのは君だ。」 デュシアE「膝を折れない理由がありますからね。それに人は外見だけで判断してはいけませんよ。 貴方も一見淑女に見えますが、かなりの腕を持っていると確信してます。」 セオリア「フフッ、そうか。」 外見だけで判断するな。これは以前抗争の時に語られた言葉。その時は彼ら新陣営は存在しな かったが、誕生と共に過去の流れた歴史は命に刻まれている。 トーマスJ「む・・・何だ?」 トーマスJが立ち上がり、異空間ゲートの方を見つめる。突如ゲートが歪みだし、凄まじい 放電が辺りを襲った。慌てて7人は遠くへと逃げる。 しかし放電の威力は凄まじく、逃げる彼らを瞬時に飲み込んでしまった。そして異空間ゲート は何事もなかったかのように沈黙した。 周りの背景が一瞬にして変化する。そこは金属でできた倉庫の中だ。その中で7人は倒れて いた。中央にはリングがあるのがご愛嬌だろう。 ビアリナ「う・・・ううっ・・・。」 デュシアE「気が付いたか?」 リティム「ここは・・・。」 トーマスJ「見当も付かんよ。」 先に目を覚ましたのはデュシアEとトーマスJだ。トーマスJは倉庫の内部を調べている。 デュシアEは他の5人を介抱していた。 トーマスJ「おっ・・・ここから出られそうかな。」 出口を発見と思ったトーマスJは、躊躇なくその扉を開いた。その先には彼らには信じられ ない光景が広がっていた。それは彼らの世界観ではなく、まるで異世界に来たかのような風景 であった。 エリヒナ「な・・・何なんですか・・これは・・・。」 デュシアE「俺に聞くな俺に。」 デュシアEの左腕にしがみ付き、一緒に表を見つめるエリヒナ。役割的に怖さを表現している 様が上手く、観賞する一同を感情移入させるには充分な演出であった。 セオリア「どうやら・・・私達が住んでいる世界では・・なさそうだな。」 エシェムL「どこなんですか?」 リティム「・・・分かるのは、私達がどうなるのかという事かな・・・。」 7人とも異世界の風景に先の事を気に掛ける。全く見た事がない世界なだけに、自分達の安否 を気にしてしまうのは言うまでもないだろう。 そこに現れるは巨人の如し存在だった。ファンタジー系列ではジャイアントと位置付けて いる存在だが、それはロスレヴ系列では一般的な量産型MTである。しかも複数とあった。 そうである。デュシアE達はロスレヴの世界観に迷い込んでしまったのだ。 そして突然放たれる石つぶてのような塊。ロスレヴ系列では弾丸なのだが、それを知らない 彼らは石としか思えないだろう。威嚇射撃で放たれたものだが、敏捷性が高い彼らには当たる ものではない。 しかしこの時に限ってデュシアEの左腕に被弾し、勢いで左腕全体が粉々に吹き飛んだ。 これには観客側は度肝を抜かされたが、よく見ると左腕が透明になっている事に気が付く。 これも演出の1つである。 エシェムL「だ・大丈夫?!」 デュシアE「き・・気を付けろ・・・当たれば命はない・・・。」 最大限の演技を行う7人に、周りは感情移入させられる。全く見た事がない兵器に曝され、 為す術なく傷付いていく。 左腕を失ったデュシアEを気遣うエシェムL。彼らの本編をも超越するストーリーに、演じる 7人も惹かれていった。 再び放たれようとする弾丸。直後そのMTは真上から光を帯びた弾丸が着弾し爆発飛散。 7人が空を見上げると、そのMTよりも巨大でより人型に近い巨人が降りてきた。 ロスレヴ系列に所属する面々は沸き上がった。その巨人こそ彼らが愛用するACそのもので ある。 地面へと降り立つACにターゲットを切り替える複数のMT。しかしMT以上に機敏な動き をするACに為す術なく、相手からの攻撃で次々に破壊されていった。 格の違いを見せ付けられた7人。たった1機のACに10体近くいたMTは簡単に葬られた のだ。しかも圧倒的戦闘力でだ。ロスレヴ系列の世界観を改めて知った彼らは、その戦闘力の 凄さを思い知らされた。無論観客側のファンタジー世界観出身の面々もである。 トーマスJ「災難だったな。」 それからは助けてくれたACのパイロットの計らいで、彼らのガレージへと赴く事になる 7人。デュシアEの左腕はサイバネティック工学というサイボーグ技術で復元される。何事も なかったかのように左腕全体は復活した。 もちろん演出サイドでは透明にしてあった左腕を元に戻し、そこにサイボーグ的銀色のリスト バンドを着用しているだけではあるが。 デュシアE「急死に一生を得るとはこの事かと。」 ビアリナ「あんなの勝てっこないよ・・・。」 セオリア「生身での対決なら負けないんだがねぇ・・・。」 人間以上の巨大さを誇るACを前としては、人間など無力に過ぎない。世界観が違うと誰もが 思わざろう得ない。 そこに現れるは赤色のボディスーツを纏った女性。デュシアE達からは兜に似たものを、 女性からはヘルメットを持っている。その役割を担うのはフュチャレヴ系列のトモミだ。 トモミ「大丈夫ですか?」 デュシアE「お陰で助かりましたよ。」 リティム「ところでアンタは誰なんだい?」 デュシアE「リティム、それは騎士道に反する。」 徐に立ち上がるデュシアEはトモミに片膝を付く。それを初めて見る彼女はアタフタした。 デュシアE「お初にお目に掛かります、私はデュシアE。先程は我々の命を救って頂いて、本当に ありがとうございました。」 フリハトやファンタジー世界観が色濃い面々は、デュシアEの騎士たる姿に共感を覚える。 彼の本編は騎士などの世界観は薄いと聞いている一同だが、この言動は騎士道まっしぐらの ディーラ仕込みのものだと確信した。 デュシアE「ところで、貴方のお名前は?」 トモミ「私はトモミと言います。」 デュシアE「トモミ殿、感謝します。」 何時までも跪いている状態にトモミは違和感を感じずにはいられない。しかしファンタジー 世界観では当たり前の言動である。ここが世界観による異なった挨拶方法だろう。 デュシアE達はトモミに今までの事を語った。彼女の方も7人の出で立ちを問い質すなど、 お互いの現状を語っていく。 そこにトモミの仲間達が現れる。テリヌ・ファロル・ラウリス・キャルテ・ジフィヴルの 5人だ。 ジフィヴル「俄に信じられない事だが、現に貴方達がいるのが何よりの証拠だな。」 セオリア「今はそうとしか言えません。」 今までは何げなく会話していたお互いだったが、役割を演じるため初対面度を貫いている。 しかしこの場にいる13人が思うのは、この先どの様な流れにするかと悩んでいた。 トモミ「まあ今は落ち着くまで待ちましょう。」 デュシアE「そうだね。」 ガレージのハンガーに待機中の6体のAC。それを見つめる7人。ここも7人にとっては初の ACを下側から眺めるというものだった。その圧倒的威圧感に押されてしまう。 テリヌ「すご〜い・・・こんな重たい剣を振り回しているのですか・・・。」 対する6人はデュシアE達の所持する剣などに興味心身だ。娯楽施設での観戦しか見た事が ないため、直に触れる事に歓喜している様子。6人の武装は拳銃やマシンガンだが、それ以上 の重さを誇る大剣や片手剣には圧倒されていた。 トーマスJ「それぞれの世界観、か。」 ふとトーマスJが本音を漏らす。それは役割を演じる部分ではなく、本当の感想であった。 それに12人は小さく頷いていた。また観客側にいる一同も同じ考えが脳裏を過ぎっていた。 確かに大規模イベントとして、それぞれの世界観を立たせるのはいい。しかし明らかに双方 の短所が目立ってしまう。ロスレヴ系列とファンタジー世界観を有する陣営とは、間違いなく 水と油の関係だ。 現実世界観の一匹狼・メカノイドも、先方2つの陣営とは水と油の関係だろう。それぞれの 世界は独立してこそ冴え渡る。オリジナリティをぶつけあっては相殺されて消えてしまう。 ここで一同の脳裏にミスターTの言葉が過ぎった。 ミスターT(プロレスの枠組から飛び出せば、取り返しの付かない事になる。) 一同が世界観を超越して平均としたレベルでいられるのは、プロレスという枠組を維持して いるから成し得る。それを止めて元に戻した形では、このようにオリジナリティの相殺を受け 意気消沈してしまう。 改めて一同は思う。やはりプロレスの枠組からは出る事はできないと。でたとしてもそれは 娯楽程度の扱いが望ましいとの確信も得る。 ミスターT「・・・打ち止めかな。」 突如ミスターTの声が響き渡る。ガレージだったその場は、以前のような殺風景な試合会場 へと戻っていった。その中心にあるリングの上では、ミスターTとミスターMが胡座をかいて 一服していた。 ミスターM「私もミスターTも言っただろう。プロレスの枠組を飛び出せば、取り返しの付かない事 になると。」 ミスターT「あえてイベントを行ったのは、飛び出した先に何があるのかを一同にみせるためだよ。 確かにそれぞれの世界観が交錯して盛り上がりを見せるだろう。だがオリジナリティの 部分に触れだすと、直後バランスを崩してしまう。」 ミスターM「まあでも、俺達も見ていて楽しかったけどね。それでも原点はプロレスさ。そこを超越 すると、今回のようなものになってしまう。」 一同は何も言えずにいた。乗り気でイベントを画策したミスターTは、根底は一同の未知なる 世界を払拭させるために動いていたのだ。 ミスターM「プロレスを脱しても、一同と平均レベルで接せられる世界観。それがミスターTが創生 した、覆面の風来坊の世界観だな。」 ミスターT「自分のリアルの世界観を数多く取り入れていますし。そこに盛り上げ役にオリジナルの 設定を織り交ぜましたが。」 ミスターM「まさか子供の部分まで書くとは思わなかったよ。まあでも、一歩前へ出る事は大切だ。 あまり無理無茶は禁物だがね。」 ミスターT「仰る通りで。」 現実の世界での繋がりがある両者の会話は、本当に現実味が帯びている。色々と試行錯誤を 行っていたという部分が隋書に現れ、それだけ苦労しているのだと確信が持てる一同だった。 ミスターT「さて、どうするね。続けるかい?」 一服を終えてミスターTが告げる。ミスターMは起き上がり、身体慣らしのスパーリングを 行っている。 デュシアE「ここはマスターの仰る通り、止める事にします。」 トモミ「盛り上がりそうでしたが、既に収拾が付かない状態にまでなりそうでしたから。」 トーマスJ「引き際は肝心です。」 残念そうな表情は浮かべているものの、心は止めるべきだと決めている様子の一同だった。 面白い展開になるのを期待していた一同だが、これも仕方がないと諦めつつあるようだ。 再び休息に入る一同。休息が多いという事は、それだけ切羽詰っている表れだ。特に動くに 動けない状態に陥っているため、必然的に休息や娯楽施設での暇潰ししかなかった。 それでも得られたものはある。時代を超えてのストーリーは一同を燃え上がらせるに至る。 用はそれをバランスよく展開させる必要があるという結論に至った。 それぞれのキャラクターを活かしつつも、オリジナリティの世界観は出さない。基本となる 世界観はプロレスによる肉弾戦しかない。ここはアルエキファイタの流れになっていく。 トモミ「う〜ん、こういった剣技も新鮮でいいですね。」 肉体を使った行動の1つである剣技。それを習っているトモミ達。先程の流れでデュシアE 達が扱う大剣や片手剣に興味津々だった。 ACの操作は直接的ではあるが、どちらかというと遠隔操作に近い。自らが動くのではなく、 巨大ロボットを操作して力を得るのだから。 やはり魅入られるのはデュシアE達の剣技や闘技だろう。生身の身体による攻撃方法は、 例え近未来の世界であっても惚れ込んでしまう。 それにデュシアE達の現形となっているのはディルヴェズ達フリハトの面々である。彼らの 偉大さが切々と伝わってくる思いであった。 デュシアE「あ、マスター。」 その後も本編の剣技をトモミ達に披露するデュシアE達。そこにミスターTが一服しながら 訪れる。傍らでダークが紅茶セットを持っているのが何とも言えない。 ミスターT「娯楽での披露なら問題ないだろう。実際のリアルサバイバルバトルでは色々と問題が 出てくるけどね。」 デュシアE「でも皆さん喜んで頂けますよ。」 ミスターT「そうだね。」 無限大に創生できるこの場を活かし、ダークが紅茶を一同に振舞う。また茶菓子も創生し、 同じく一同に振舞っていった。 デュシアE「マスターは現実では剣技に精通する事はされているのですか?」 ミスターT「私はただのゲーマーだよ、エキプロぐらいしか詳しくない。それにこの道を知る猛者は 数多くいる。私など足元にも及ばない。」 デュシアE「でも創生された人数では凄まじいと仰っていましたが。」 ミスターT「まぁなぁ・・・。2340人も作るアホウなど私だけだろう。だからこそこの場が存在 するんだがね。」 彼の強さは創生者という部分で色濃く出てくる。創生した人数だけなら間違いなくトップで あろう。現実的には無意味で、変な異業でもあるが・・・。 トモミ「デュシアEさんと対決なされては?」 ミスターT「だから剣技には精通していないって・・・。」 剣技に関しては全く無知だと語るミスターTだが、傍らにいるダークが彼の手を引き自分を 指差している。それは魔剣と化した彼女となら、彼女の力で何とかなるレベルだからだろう。 ミスターT「つまりやれと・・・。何だかんだでダークが暴れたいだけなんじゃないか?」 ダーク「そうともいいます。」 はにかみながら語るダーク。しかし彼女の目は怖ろしく据わっており、これが冗談ではない 事を物語っている。 ミスターT「何ならスターウォーズの世界観でやってみるか。あの作品も騎士道が根付いている。 ライトセーバーでの戦いは、時代劇を発展させたものだからね。」 デュシアE「面白そうですね、やってみましょう。」 周りに踊らされて打ち出した催し。これもプロレスの道から反れていると思わざろう得ない。 しかし一同を沸かせられるなら、どの様な娯楽でも用いるべきだと彼らは思っていた。 一旦移動する一同。移動した先は娯楽施設が揃う試合会場外。しかし今回は娯楽施設全体を 使った催しとなるようだ。 何やら始める事を知った他の面々は、彼らの後を追って表へと出て行く。ここでも一同が 思うのは、プロレスの世界観から反れているという事だった。 それでも楽しめれば全てOKと考えている一同。この場は流れに沿った行動をするまでだと 誰もが思ってしまう。実に何ともという話である・・・。 第53話へと続く。 |
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