アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜 〜第40話 存在意義〜 チャンピオン挑戦者を募るGM陣。それでも集まりが乏しく、思うように事は運ばない。 この状況ではビィルガ達も手が出しようがなく、今はメインメンバーの奮起を待つしかない 状態だった。 ミスヒールに気絶するまでの渾身の説得をしたエシェラ。エフィーシュによって医務室へと 運ばれる。その後エフィーシュが彼女の代理で副創生者の役割を担って動く。 今も休むエシェラの看病はターリュSとミュックSが担ってくれていた。 ミスターT「まだ目が覚めないか。」 エフィーシュ「心身ともに問題はありません。本編の医学そのものと言えるシェガーヴァ様に診て 貰いましたので。」 ミスターT「ここ最近の彼女は動き続けていたからね。暫くの休息が必要かな。」 エフィーシュが語る言葉に耳を傾けながらも、手帳にペンを走らせるミスターT。どうやら 新たな企画を考えている様子である。 その浅い答え返しに苛立ちを感じずにはいられないエフィーシュ。ミスヒールが激怒した理由 を身を以て知った。 エフィーシュ「ミスヒール様が激怒されるのが分かります。何故そうも傍観者的な態度を取られるの ですか?」 ミスターT「事が大きければ大きいほど、岩のように静かであれ。過去の賢人が語っていた名言。 一同を纏める存在の私が取り乱したら、一体誰が止めるというのだ。」 正論だった、エフィーシュは何も言い返せない。自分が思っていた結論を言われれば、それに 対しては応対ができない。しかし傍観者に近いという部分に納得できないのもある。言い表せ られない感情が、エフィーシュの中で激しく渦巻いていた。 ミスターT「お前さんの気持ちも分かる。だがこれは私自身の問題だ、お前さんには直接的な関係性 はない。己の役割を演じ切るんだ。」 エフィーシュに我慢という心がなければ、ミスヒールのように激怒して言い返したのだろう。 しかしそこまで吹き上がっている怒りと悲しみは、彼女を混乱させるには充分だった。 その後何事もなかったかのように作業をするミスターT。それを見たエフィーシュはついに 我慢の限界を超えた。思い切って反論しようとしたが、その口を遮る手が現れる。 それは医務室にて休んでいたエシェラのものだった。 エシェラ「ミスヒールさんのように激怒するなら、今度は全力での実力行使で黙らせますよ。」 エフィーシュ「ですがお母様・・・。」 エシェラ「マスターのされるがままにしてあげて下さい。」 気丈なエシェラに押し殺されるエフィーシュ。傍らで支えるターリュS・ミュックSも反論 したい部分があったが、その2人でさえ黙らせるものだ。 ミスターT「ごめんなエフィーシュ。」 作業をしつつも、声には形や偽りはない。彼の言葉に怒りが消沈するエフィーシュだった。 ミスターT「もう大丈夫なのか?」 エシェラ「お陰様で。」 作業を一旦止めて、彼女の安否を気にするミスターT。それにエシェラは微笑み返した。 大人の雰囲気の彼女だが、この瞬間は幼子に見える。 ミスターT「すまない。私がもっとしっかりすれば、お前さんに迷惑は掛けなかっただろうに。」 エシェラ「何を仰います、私が望んでこちらに進んだのですよ。後悔はしません。」 精一杯の笑顔で答えるエシェラだが、その道の凄まじさを思い知っている。全ての面々への 気配りはまだしも、思った事を表に出せない苛立ち。これは彼女には一種の拷問だろう。 それでも彼女の心は据わっている。彼と共にある事を誰よりも望んでいるからだ。 エシェラ「それは?」 ミスターT「ああ、新陣営のプランだ。」 作業を再開するミスターT。手帳片手に頭を捻りペンを走らせている。それにエシェラは 興味心身だ。内容を見られても嫌がる仕草は見せない所は、彼女を信頼している証拠だろう。 エシェラ「追加合計は180人。全ての方々を合わせると、・・・1680人ですか。」 ミスターT「遠い将来、2000人は狙うつもりだ。今は目の前の壁を超えるだけだが。」 絶句するエシェラ。今の人数でさえ前人未到のものだろうが、彼はそれ以上を目指している。 これに驚かない人物はいないだろう。 ミスターT「既に主人公とヒロイン、そして数名のアレンジキャラは作成済みだ。試合は無理だが、 登場だけはさせるとしよう。」 手帳に記述した内容を黒いカードに反映させる。そして9人の人物が召喚される。そのうち 2人は彼が話す通り、既に知っている人物だ。 ミスターT「ようこそ、エルシェス・ティエラ・リオデュラ・ヘシュナ。」 挙げられた4人は全く知らない人物だ。人物像だけは似偏っている部分があるが、その人物 の出すオーラだけは異なっていた。 エルシェス「初めましてマスター。」 リオデュラ「よろしくお願いします。」 丁寧な挨拶をする主人公2人。しかし今までの陣営の主人公とは異なり、未知数の部分も感じ 取れる。それだけ真新しい陣営という事だ。 ミスターT「一同に陣営の紹介をしよう。エルシェスとティエラが所属はウインドストライカー。 リオデュラとヘシュナが所属するはザ・レジェンド・オブ・ブレイド。両陣営共に現形 はマンガとゲームだ。」 エシェラ「ロスレヴ系列と同じく、リアリティが強い陣営のようで。」 誕生したての4人の能力を把握するエシェラ。普段から陣営の戦力調査やコミュニケーション を行っているためか、瞬時に相手を見極めた。 ミスターT「細かい設定は、180人完成時に施すよ。今は仮の姿として先駆してくれ。」 ティエラ「試合はまだなんだよねぇ、戦いたいなぁ〜・・・。」 ヘシュナ「今は我慢するしかありません。」 大人びいて見えるティエラだが、どこか子供染みた言動が見られる。逆にヘシュナは外見から 想像もできないほどお淑やかだ。 エシェラ「背が高い・・・。」 ヘシュナ「力もしっかり備わっていますよ。」 言うか否か、小柄なエシェラを持ちあげ肩に乗せるヘシュナ。エイラやリタナーシュのような 巨女に属するだろう。それでいてお嬢様に近いのだ、ある意味怖ろしいとも言える。 ミスターT「ヘシュナの仮設定は巨人族の位置付け。しかしグレスやグランデスとは異なり、人間の 外見と同じ異なるタイプだ。」 ティエラ「マスター、私はどうなの?」 ミスターT「お前さんはエルフの位置付け。本編ではしっかりと耳は尖っているよ。」 自らの耳に触れるティエラ、しかし普通の耳と同じだった。有言実行を信条としている事が 窺えよう。 エシェラ「こちらはウインドさんとダークHさん?」 ミスターT「精神体という位置付けで、ディルに親しいライトヴァイルの称号を与えた。ロジックは 従来と同じだが、存在では23闘神に匹敵する。」 伝秘ウイブレ所属のウインドとダークHの改良が2人だ。精神体という位置付けと、何より 属性の神々に匹敵する強さを併せた存在。同陣営では最強クラスだろう。 ウインドL「究極の聖剣ですね。単体でも戦闘が可能で、剣に変化できる存在。正しく戦闘兵器その ものですよ。」 ダークHL「言わば竜族と同じで、闘神とも言えます。」 ミスターT「まあ他に挙げるとすれば、お淑やかな美女という異名もある。私も惚れるぐらいの美人 だよ。」 2人をからかうミスターT。それに頬を赤くして俯くウインドLとダークHL。生まれ持った 役割に縛られそうだった2人を、彼は冗談を以て和ませる。これを感じた2人は、瞬時に労い をしてくれたミスターTに感謝した。 他の女性に親しくする姿を見たエシェラ・ターリュS・ミュックS・エフィーシュ。労いの 部分は彼らしいと思っていたが、恋する乙女はそれに嫉妬心を抱かずにはいられない。 エシェラ「最後にこちらの3人は・・・、まさかと思いますが・・・。」 姿形を見るエシェラは、どうしても親しい人物しか思い浮かばなかった。しかしその人物は 男性である。だが今目の前にいる3人は女性だ。 ミスターT「ユキヤLを作った時に、性転換という部分も面白いと思ってね。今度はフリハトから 強者3人を選んだ。まあ何だ、ディル・ヴィド・メルの女性バージョンをだな。」 目の前にいる女性3人は、ディルヴェズ・ヴィドリーガ・メルシェードの女性タイプだった。 ここまでやるのかと、エシェラは完全に呆れ返っている。 ディルヴェズLK「何かマスターに遊ばれている気がしてなりません。ですが同時期に私達の名前を 用いたゲームを止めたのも窺っています。独立した形でなければ、ここまでの 行動はできないでしょう。」 ディルヴェズLKの発言はオリジナルと同じだが、声色が女性そのものだ。普段から敬語を 話すため、お淑やかな性格になってしまうのだ。 エシェラ「・・・そのうち私の男性バージョンを作りそうで怖いですよ。」 ミスターT「私が野郎である限り、同性に目を向けても仕方がないだろうに。やはり華は多い方が 嬉しい限りだよ。」 エロ親父モード全開のミスターTに、流石のエシェラ達も嫌気が差し出した。それは別の人物 に対しての思い入れも含まれている。 どうあっても彼に振り向いて貰いたい。それが今のエシェラ達を支配していたからだ。 ミスターT「まあ何だ、家族が増えた事には変わりない。私の一存で迷惑を掛けるが、それでも原点 回帰は一同の中と己の中にある。」 ディルヴェズLK「レミニッセンス、ですね。」 しかしそれを払拭させる発言が飛ぶ。ミスターTの原点回帰は定まっており、一切動じる事は ない。ディルヴェズLKもそれを痛感していた。 ミスターT「コミュニケーションはいいが、試合は控えてくれ。まだ微調整をするからね。」 リオデュラ「了解です。」 ディルヴェズLK「ヴァルを驚かせてこよう。」 コミュニケーションだけは構わないというお墨付きを貰い、誕生した9人はそれぞれの陣営 へと向かって行く。右も左も分からないエルシェス・ティエラ・リオデュラ・ヘシュナは、 先輩格のターリュS・ミュックS・エフィーシュが進んでエスコートをしている。 活発な双子の性格と面倒見いい姉子肌が相まって、凄まじいまでの行動力だ。 ミスターT「自分の居場所がなくなりそうで怖いか?」 エシェラ「え・・・あ、いや・・・そうではありません。」 新しい人物の追加とあって、既存陣営は大いに盛り上がる。特にオリジナルから性転換した ディルヴェズLK・ヴィドリーガLA・メルシェードLPは凄まじいまでの人気ぶりだ。 その彼らを見つめ、淋しそうな表情を浮かべるエシェラ。作業を続けているミスターTが、 徐に語り掛けてきた。 ミスターT「難癖を付けるのではない事を、前もって話しておく。お前さんの決意を受諾した時、 こうなる事は目に見えていた。独立した存在は、本編回帰が難しくなる。お前さんの 本当の姿に戻る事を勧めるが。」 エシェラ「・・・やっぱダメでしたね。一時でも一緒にいられればと思ったのですが、皆さんと一緒 でなければ話に付いていけません。かといってマスターの傍から離れると胸が張り裂け そうで・・・。」 ミスターT「ありがとう。」 困惑するエシェラの頭を撫でるミスターT。純粋に思うからこそ、どちらも大切だと痛感して いる。故に答えが出ずに悩んでいるのだ。 ミスターT「エシェラの誠心誠意は十分に伝わっている。お前さんの期待を無駄にするような事は しない。しかしエシェラ自身の回帰は、私ではない筈だ。お前さんの本当の存在意義に 戻る事が、私が一番望んでいる最高の幸せだ。」 エシェラ「・・・分かりました、皆さんと一緒に行動します。でも忘れないで下さい。マスターは 私の心を掴んで離さない事。そして貴方を心の底から愛しているという事も。」 彼女の言葉に、額への口づけで応じる彼。一瞬戸惑うエシェラだが、心の篭った行動に感謝 するのだった。 その後踏ん切りが付いたエシェラは、本編に属する面々の元へと向かって行く。愛しい人物 の傍から離れるのは辛かったが、原点回帰できる事には素直に喜んでいる。先発して戻った ディルヴェズLK達に紛れて、大いに盛り上がっていた。 ミスターT「・・・落ち着いたか?」 作業をしつつ、遠巻きに一同を見つめるミスターT。そこに近付いてくる人物がある。先程 激励し慰めたミスヒールだ。 ミスヒール「辛うじて落ち着いています。」 ミスターT「そうか・・・。」 下手な慰めの言葉は逆効果になる、それらを踏まえて冷めた対応になってしまう。それは充分 理解している彼女。だが同じ扱いをされ、再び激怒しそうになる。 ミスターT「お前さんの心中は理解している。こういう奴だから、慰めの言葉すら浮かばない。酷い 奴だよな。」 ミスヒール「そんな事はありません。人一倍気遣いが強いというのに、それ以上を望んで何になると いうのですか。」 ミスターT「フフッ、お前さんも充分矛盾してる。でも嬉しいよ、ありがとう。」 意外な言葉が発せられ驚くミスヒール。一瞬にして激怒しそうになった感情が失せていく。 まあ激怒する意味合いは、彼女もまた彼を好いているからではあるが。 ミスターT「私が望むのはただ1つ。お前さんが自分の存在意義を示せるか、原点回帰ができるかと いうもの。それに突き進むというのなら、私は何でも担うとしよう。」 ミスヒール「そのお心だけで充分です。もう停滞も悩みもしません。自分の進むべき、行うべき事を するだけです。」 ミスターT「分かった。」 そう語ると陣営へと戻っていく。その彼女を見つめ続けるミスターT。心身共に気丈な人物の ミスヒールを羨ましく思った。 作業を再開しようとしたミスターT。突然凄まじい言い表せない衝動に駆られる。それは 今までにない、ありとあらゆる感情。 自分の本当の存在意義とは何か。 今の自分のままで本当に大丈夫なのか。 踏み止まって突き進む勇気が湧くのか。 一同を支え続ける事はできるのか。 彼らに心休まる場と瞬間を提供できるのか。 自分は、正しい事をしているのか・・・。 凄まじいまでの自己嫌悪をしだす彼。自問自答を繰り返し、己との葛藤を続ける。苦しい、 辛い。這い上がろうとしても、その先の見えぬ不安に潰されそうになる。 一同を牽引する人物として動かねばと奮起し続けてきた。だが一瞬の気の弛みで怖ろしいまで の負の感情に囚われだしたのだ。 無意識に涙が流れる。感情を制御できずに泣くのは、彼にとって珍しい事でもあった。 本陣に戻ろうとしていたミスヒールは、彼の異変に気が付く。直ぐさま戻り、ミスターTの 安否を気に掛けた。この時の彼女は胸が締め付けられる思いになる。 また本陣で仲間達と騒いでいたエシェラも、凄まじい胸の苦しみに驚く。と同時に愛しい人の 苦しむ姿が眼前に現れ、彼女もミスターTの元へと向かって行った。 第41話へと続く。 |
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