アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第38話 大いなる安らぎ・完結〜
    徐々に賑わいを取り戻すリングサイド。そこにロスレヴ系列・フリハト系列・伝秘ウイブレ
   系列・流界ベルムカル系列の面々も戻ってくる。一気に活気付く試合会場は、凄まじいまでの
   熱気に包まれた。

ターリュS「やっぱこうでなきゃ〜。」
ミュックS「ACもいいけど、肉弾でしょ〜。」
    十分に本編世界観を堪能したそれぞれの陣営。満足したといった雰囲気が強く、どの面々も
   表情は爽やかである。
   それに陣営を超越して本編に触れたという事で、区分けされていた面々とのスキンシップも
   図れている。つまりは今まで以上に団結力が強くなったと言ってよい。
    顕著に表れるのがフリハト陣営の面々だろう。同じ世界観に位置する伝秘ウイブレ陣営と
   流界ベルムカル陣営、この2陣営との友好拡大の高さは凄まじいものだ。

ミスターT「一応試合会場外の娯楽施設などはそのままにしておく。息抜きをしたい場合は、各自
      向かっても構わない。しかし、ここでは本編の力は用いないように。」
    試合の準備をする中、ミスターTが今後の行動を話す。気になっていた本編娯楽施設は、
   彼が言う通り残される形になる。だがプロレス世界観のこの場には持ち込むなとも釘を指す。
   息抜きでは構わないだろうが、ここにまで持ち込めばバランスが崩れるのは言うまでもない。



ディルヴェズ「剣技も魔法も、その基礎となるのは肉弾戦。やはり原点はここなのでしょうね。」
ミスターT「そうだな。」
    模擬試合のプランを見せに来たディルヴェズ。本編に回帰する事で、今まで浮かばなかった
   戦いが多く浮かんだようだ。その中でミスターTに原点とは何かと語りだす。
ディルヴェズ「ヴァルから聞きましたよ。エシェラがご迷惑をお掛けしたそうで。」
ミスターT「いや、構わないさ。彼女の思いは理解している。男として期待に応じなければ、創生者
      はおろか野郎とも言えなくなる。」
ディルヴェズ「そうですね。」
   変わったとしか言いようがない。ディルヴェズに映るミスターTは、以前のように役割に束縛
   されている存在ではない。独立した一個人として存在している。それにエシェラが関与して
   いるのは、紛れもない事実だとも痛感していた。

ミスターT「そうか。お前さんにとって、本編ではエシェラとエシェツは娘当然なのか。」
ディルヴェズ「エシェツと出会った時は既に家族はおらず、直後本人も病死。後に姉のエシェラが
       現れましたが、身寄りがない存在です。まあ養い親でもありますけどね。」
    ミスターTが言いたい事を把握するディルヴェズ。エシェラが行動をしたという事で、その
   了承を得なければという考えだろうと。
ディルヴェズ「え〜・・・一応述べさせて頂きますが、私達の父親と母親はマスターなのですよ。」
ミスターT「ああ、それも分かっている。でも一応弁えねば納得がいかないからな。」
   どこまでも生真面目なのだろう。ディルヴェズは一途過ぎるミスターTの姿に笑ってしまう。
   それに苦笑するミスターTだが、彼が笑う意味を充分理解しているディルヴェズだった。
ディルヴェズ「娘の事をお願いします。」
ミスターT「期待を裏切る事はしないよ。」
   形なりにと述べるディルヴェズ。父が娘の一切を託したと同じ意味合いだ。それに愚問だと
   述べるミスターT。エシェラにも話しているが、期待を裏切るような事はしないのが彼だ。

ルデュファス「何です、私がどうかしましたか?」
    ディルヴェズの真剣な会話に引き寄せられ、彼の本当の娘達が駆け付ける。ついでに母親で
   あるヴァルラームと、エシェラの娘であるエシュリオスとエフィーシュも一緒だ。
ミスターT「エシェラの保護者であるディルに了承を得た。」
ヴァルラーム「なるほど、あの一件ですか。そこまでしなくてもいいと思いますが。」
ディルヴェズ「娘の門出を真剣に言わない父親にはなりたくない。」
   ディルヴェズも生粋の真面目さから、ミスターTの成し得たい事を理解している。ここは家族
   の誰もが思っている事だ。
ルファディナ「でもさ、エシェラ姉さんにはお子さんがいるのですよ。そうすると旦那さんがいる事
       になりますが。」
エシュリオス「案外、私達の父親はマスターだったりして。」
エシェラ「な・・・何を言い出すのですかっ!」
   本編の親しい人物が愛しい人といる事を知って、妹のエシェツと一緒に駆け付けるエシェラ。
   そんな中、エシェラの娘であるエシュリオスがとんでもない発言をした。それに慌てふためく
   彼女。息抜き時に慌てていたよりも、凄まじいまでに取り乱している。
エフィーシュ「でもお母様、そうでなければ私達が生まれない事になりますよ。」
エシェラ「ほ・・他にいるでしょ、ほ・・ほら本編で結ばれた人物というのが・・・。」
エシェツ「でも今はどうなのさ〜、マスターとの一件はなかった事になるの〜?」
   ここまでシドロモドロになるエシェラに可笑しくて仕方がない一同。自然とからかってしまう
   のは言うまでもなかった。
ミスターT「ハハッ、人妻に手を出した事になってしまったのか。」
エシェラ「マスターもいい加減にして下さいっ!」
   耳まで赤くなるエシェラ。顔は真っ赤で揚がりっぱなしだ。この機を逃さぬと周りはからかい
   続けていた。

    この瞬間を大切に、ふとエシェラの脳裏に過ぎる。総合的なコミュニケーションの1つと
   なっている今現在。先ほどの行動は無駄ではないという事を、身を以て思い知ったのだった。
   ふとミスターTと目が合うと、微笑みながら頷いている。そしてその意図を直ぐに知った。

    この瞬間を大切にするのだ、と。

    からかわれるエシェラだが、一同との絆はより一層深いものになっていく。それを静かに
   感謝する彼女であった。



ミスターT「設定があまりにも曖昧すぎる。」
    その後彼らと雑談をするミスターT。話題は別になっており、それぞれの疑問などを彼に
   ぶつけている。その中で彼が呟いた言葉に、一同は自然と意味を知った。
ティフュリナ「確かに。エシェラさんの場合でも、旦那さんが未設定のままですし。」
エシェラ「ここでの色の方が濃いですから。」
   フリハト系列の基礎設定だけは存在している。その後の大規模陣営であるロスレヴ系列も。
   しかし今だに設定をなされていない陣営があり、勢いで作られただけの存在も多々いるのだ。
   このアルエキファイタという世界観でキャラ作りが成され、本編に反映されているというのが
   実情であろう。
ミスターT「本編を色濃い作品として作る手段はある。しかしそれは手に余るし、実の所行いたくは
      ない。」
エシェツ「いいんじゃないかな、みんなが盛り上がる作品ができれば。」
   その言葉の真の意味を知らずに語るエシェツ。既にエシェラやディルヴェズは把握しており、
   生真面目で優しすぎる故にできない事も知っていた。
ミスターT「ミスターMから何度も伺っている。より一層リアリティを追求するには、犠牲という
      究極の武器が必要だと。」
   2人が睨んだ通りだった。それを知ったエシェツは何も言い出せなくなる。そもそも彼女自身
   も本編ではその流れを辿っている。犠牲という悲惨な結果が、よりよいストーリー作成に一役
   買っているのだから。
ミスターT「本当はお前さんもデェルダGI達も殺したくなかった。それでも元祖本編から見れば、
      まだ緩くなった方なんだよ。」
   過去の例を挙げれば、本編にてデュウバDの首を跳ねる件だろう。それはディルヴェズが一番
   理解していた。

    創生した我が子達を生かすも殺すも、彼の一存に掛かっている。その場面に直面した時、
   同じ判断を下せるだろうか。エシェツは浅はかに述べた言葉に、痛烈な重みを感じていた。
エシェツ「ごめんなさい・・・。」
ミスターT「世話を掛けさせてごめんな。」
   エシェツの頭を撫でながら、逆に詫びをしだすミスターT。全ては創生者の一存だと言い切れ
   れば楽なのだろうが、そんな事は絶対に言わないのが彼だ。
エシェツ「・・・姉さんがマスターの事を好きになる理由、何となく分かった気がする。」
ヴァルラーム「エシェツちゃん。何となくと言ってるうちは、まだまだ甘い証拠よ。」
   恋路はもっと深いものだ、それを簡潔に述べるヴァルラーム。それに頷くエシェラだった。
ミスターT「今もハーズダントの謎を手掛けているが、エシェツの思い人はカシスじゃないのか?」
エシェツ「あ・・・そうでした〜。」
ヴァルラーム「あら、しっかりいるじゃない。」
   使用前使用後の面々とは別行動をしているため、本編での考えが薄らいでしまう。エシェツは
   言われて初めて頬を染めながら頷いた。
ヴァルラーム「ディルさんと同じなのに、今では独立した人物になっているのが不思議ね。」
ルデュファス「使用前使用後の人物は、どうしても印象が薄らいでしまいがちですよね。」
ミスターT「それに関しては黙認してくれ。」
   間に合わせで作ってしまった人物なだけに、存在そのものが薄らいでいる。ここは創生者たる
   ミスターTの浅はかな行動が原因でもあろう。
   しかし結果的に人員増強は成し得ており、今の一同を沸かせる存在の一部分でもある。決して
   無駄ではないという事だけは理解できる一同だった。



    本編内容で大いに盛り上がるフリハト軍団。そこに息抜きを一緒に満喫した伝秘ウイブレ
   軍団と流界ベルムカル軍団のメインメンバーが訪れる。
   どちらも歴史が浅いため、フリハト系列の面々に色々と教えて貰ってもいた。特に一番効果的
   だったのは、剣術や魔法などでの戦い方であろう。
ミスターT「ダブルデュシアの登場だ。」
デュシアT「その言い方やめて下さいよ〜。」
デュシアE「まあ仕方がないさ。」
   主人公とヒロインが同名というのも、この2陣営の共通点だろう。周りを構成する面々も、
   やはり現形があってこそ成り立っているのだから。
セオリア「ディルヴェズさんには感謝しています。いくら格闘家という位置付けでも、実際に戦闘を
     行っていない私達には把握できません。模擬戦闘で戦い方を学べたのは幸運です。」
   セオリアの言う通りだった。新しく確立した2つの陣営。流れはフリハト系列と同じだが、
   基礎となる戦闘訓練を全く知らない。仮想空間であれ、学べた事は紛れもない経験である。
ディルヴェズ「私達の基礎は、マスターが色々な作品を体験されて学んだ事と同じです。それがこの
       ような形でお役に立てたのは光栄な限りです。」
ミスターT「お前さん達の基礎は、ファイアーエムブレム外伝か。懐かしいな。」
   過去にプレイした事を振り返り、懐かしい表情を浮かべている。彼の体験した作品は数多い。
   我流ではあるが、基礎設定はそれらから拝借しているようだ。
ミスターT「エムブレム系列は戦死が凄まじく、一度死ねば個人戦績に敗数が付く。いかに効率よく
      キャラを進めるのか、ここが勝敗を左右する。まあ後半のプレイでは、改造を用いた
      無理矢理の行進だったがね。」
リティム「無茶してるねぇ〜。」
ミスターT「まあ再確認に時間短縮は仕方がないさ。」
   どうやらストーリーの見直しが要因らしい。普通にプレイすると膨大な時間と手間が掛かる
   のがファンタジーゲーム。そこをイレギュラーである改造を用いて、時間の短縮を図ったと
   いう意味だ。
ミスターT「しかしリティム達の基礎は、ドラゴンクエスト3リメイク。これはエミュレーターを
      用いたものだが、改造は一切使っていない。アイテムなどを手に入れる喜びは、今も
      健在だよ。」
リティム「嬉しいなぁ、思い入れがある作品から生まれたというのは。」
   創生者直々にプレイした作品からの登場は嬉しいもの。彼が手掛けた陣営全て、一度は体験を
   した作品からの登場だからだ。



リシューナ「マスター、私達は異界の戦士という位置付けですよね。」
フィーシェ「詳しい設定をお聞かせ願えたら幸いです。」
    流界ベルムカルで異界の戦士として登場するリシューナ達。その存在は定まっておらず、
   どういった経歴で現れたのか不明だった。
   丁度いい機会だと思ったリシューナ達、作り主のミスターTに詳細を伺った。
ミスターT「一応ディルが召喚した四天王という事にしてあるが、まだ完全には決めかねている。
      彼を師匠とする存在なのだが、それがどういったものかまでは定まっていない。」
エシェムL「髪の毛の色から、隠し子だったりして。」
   エシェムLがぼやいた直後、凄まじい殺気が彼女を襲う。それはヴァルラームから発せられた
   もの。恐る恐る彼女から離れようとするエシェムLだが、背後から優しく抱きしめられる。
   そう、怖ろしく優しく抱きしめられた。
ヴァルラーム「エシェムLさぁ〜ん、それはどういう意味ですかぁ〜?」
エシェムL「え・・え〜と・・・。」
   返答によってはそのままジャーマンスープレックスを喰らうであろう。青褪めるエシェムLは
   言い返しの内容に困っているようだ。
ディルヴェズ「まあまあ、あまり本気にしないように。」
ヴァルラーム「これを本気と取らないでどうするのですっ!」
ミスターT「この妻ありて、この夫ありだな。リシューナ達は髪の色からウィルデュル達の娘という
      のもいいだろう。そもそも彼らの生誕も、どの発祥かまでは決めていない。ここは私に
      免じて許してあげてくれ。」
ヴァルラーム「マスターがそう仰るなら黙認しますけど・・・。」
   恐妻に近いヴァルラームでも、ミスターTの前では赤子同然だ。悪かったとエシェムLを解放
   するが、彼女の方も浅はかだったと詫びている。



ミスターT「異界の戦士、か。惑星が異なるだけで、異界の戦士と言えるのだろうか。ネタとしては
      充分だが、何だか遣る瀬無いものだ。」
    意味深げに語るミスターT。それは流石のディルヴェズも理解できず、一同と共に呆気に
   取られるしかなかった。
エシェラ「まあマスター、私達の願う所は1つのみ。それは活躍の場ですよ。」
ミスターT「そうだな。」
   どのような世界観であれ、活躍できる場があるのは幸せな事。それを再確認する一同だった。
    だが一同の脳裏に過ぎる思い。それは創生者という位置付けを除いたミスターT。彼が役所
   を失った時、一体どのような事になるのか。
   無意識に恐怖が一同を襲う、それは彼が何も持っていないという事だからだ。
ミスターT「そこは心配しなさんな。お前さん達が生きられれば、私の存在意義もそこにある。」
   軽く言い放った彼だったが、その発言は非常に辛いものだった。存在意義の消失、これほど
   怖ろしいものはない。

    一同が存在できるのはミスターTのお陰だ。しかし彼には回帰する場所がない。自分達は
   本編へと戻る事はできる。オリジナルの面々も、回帰の場所はプロレスという場だ。

    だが彼はどうだろう。創生者の役割と一同を回帰した場合、ミスターTには何も存在しなく
   なってしまう。これは耐え難い現実でもあった。

ミスターT「・・・私の存在意義か、難しいものだな。私が私でなくなるのは、私が役割を失った
      瞬間なのだろう。」
    更に意味深げに語る。それはもはや哲学のレベルで、一同が思い付く簡潔策ではないのだ。
   彼の胸中を察してか、何も言い出せなくなる一同。
ミスターT「それでも私は私自身、何も変わる事はない。恩師も言うだろう。誰彼がどうこうでは
      なく、テメェはどうするのかと。まだまだ負けられない、己自身にね。」
   自分に言い聞かせるように語るミスターT。一服しながら話す彼の目は、一切の曇りがない。
   それを窺った一同は、先ほどまでの苦しさが一気に払拭された。
ミスターT「さて、動くとするか。ビィルガ達がチェアマンとして独自に動いてくれているから、
      私は創生者を思う存分演じれる。無論、それぞれの応対には応じるけどね。」
    一服を終えて身体を解しながら語るミスターT。そしてそのままリングの方へと向かって
   行った。その背中は今までにないほど大きく感じる一同。

エシェムL「エシェラさんが好きになる訳ですね。悩んでも迷っても絶対逃げず、必ず這い上がり
      突き進む。これほど己を叱咤し続ける人物はいません。」
エシェラ「ええ、だからこそ助けねば。マスターが苦悩するなら、私が身を呈してでも助けます。」
    この美丈夫も彼と同じだとしか言えない。どこまでも純粋に思うからこそ、己を犠牲にして
   まで動けるのだとも。まあ本当に犠牲にしてまで動く事まではないのだろうが。
ディルヴェズ「本編は一切気にせず動くんだ。今のマスターにはエシェラが必要だから。」
エシェラ「無論、そのつもりですよ。」
   言われるまでもないと張り切るエシェラ。両腕を回しながら、彼の後を追って行った。

    その後3陣営の面々もリングサイドへと向かって行く。どの面々もウォーミングアップを
   繰り返し、何時始まるとも分からない戦いに備えて待機した。

    安らぎの一時は終わりを告げる。これからはリングが全ての面々の本編となるのだ。



    大規模な息抜きを終えた一同。原点たる本編への回帰で得られたものは多かったようで、
   それぞれ異なった動きをしだした。

    ビィルガ達も創生者の役割を降り、一同を導くチェアマンとしての役割を自ら受け持つ。
   創生者役の足枷から解放された彼らは、その経験もあってか凄まじいまでの行動を見せる。
   回りくどい道を辿った一同だったが、それぞれが担うべき役割を知ったのであった。



リュウジN「マスター、そろそろチャンピオンバトルを展開して下され。」
ミスターT「そうだったな。」
    かねてから打ち出されていた、新しいチャンピオンバトル。その催促をしにリュウジNが
   話し掛けてきた。これは他の面々も気になる内容だったため、ミスターTは手帳の内容を大型
   スクリーンへと映し出した。
ミスターT「チャンピオンの候補は次の通り。シングルチャンプ・ファーストブラッドチャンプ・
      3ステージチャンプ・ケージチャンプ・アイアンチャンプ・ラストマンチャンプ・
      サブミッションチャンプ・TLCチャンプ・ウーマンズチャンプの9種類だ。」
   大規模なチャンピオンバトル構想で、これなら他の面々にも充分チャンスは訪れるだろう。
   この打ち出しに凄まじい歓声で燃え上がる。
ミスターT「チャンピオンになれない悪陣営のために、ノーチャンプとしてこれらの試合も行う。
      ファーストブラッドは男性陣専用、ウーマンズは女性陣専用となる。これはチャンプも
      ノーマルも同じだ。」
   後続の打ち出しを聞いた悪陣営の面々は、先の善陣営の盛り上がり以上に燃え上がる。戦い
   こそが己の存在意義である彼らにとって、戦いの場が作られるのは嬉しい限りだった。

ミスターT「ビィルガ達には新たにチェアマンという役割を担ってもらう。プロレス本編での位置
      付けは、GM陣営よりも格上だ。しかしこの場では別のものと捉えて欲しい。言い換え
      れば、チェアマンは試合とその流れの裁定者だ。全ての裁定者はGM軍団に任せる。」
ビィルガ「お任せを。」
    改めて自分の役割を知ったビィルガ達。16人しかいないが、その誰もが重役である事は
   間違いない。
ミスターT「デュウバD達は真敵役という本来の役割に戻ってもらう。独立した形で動いて貰って
      構わない。4人しかいない少数派だから、ディルヴェズDとメルシェードTに所属して
      貰いたい。」
ディルヴェズD「任せて下さい。」
メルシェードT「これは本来の役割そのものです。」
   デュウバDと他の3人が真敵役の存在。それだけでは心許ないだろう。そこは同じ属性である
   ディルヴェズDとメルシェードTが合流する形になった。
ミスターT「GM陣営は言うまでもないかな。それぞれの試合に立ち会い、中立役として裁定を。
      ミスヒールとギラガス達は完全中立になるが、専ら私側に回って貰う事になる。」
ミスヒール「役割さえ頂けるなら、どのような役でも演じましょう。」
   デュウバD達が真敵役になった事で、ミスヒールとギラガス達は完全に浮いた存在になる。
   しかしそれは完全中立という役割を担うのは打って付け。この場合は創生者軍団に所属する
   形になろう。



ディルヴェズ「マスター、彼女の事も示してあげて下さい。」
    打ち出しが終わった頃を見計らい、ディルヴェズが割って入った。それは言うまでもない、
   エシェラの事である。彼の言葉に頷き、側にいたエシェラを呼ぶミスターT。
   彼の前へと進み出るエシェラ、その彼女の両肩にソッと両手を置く。2人の間に何があったの
   かは、一部の面々しか知らない事。それを公の場で発表するというものだ。
ミスターT「エシェラには本陣から独立し、私と共に動いて貰う事になった。まあ何だ、彼女に心を
      射抜かれてな。」
   彼の発言を聞いた面々は一気に賑わう。あの堅物なミスターTの心を射止めたエシェラに、
   一同は大拍手で讃えた。
   はにかみながら微笑むエシェラだが、ミスターTの方は苦笑いを浮かべるしかない。しかし
   シンシアとエリシェは今までにないほど落胆していた。
エシェラ「シンシアさんとエリシェさんに負けないよう頑張りますっ!」
   ギョッと驚くシンシアとエリシェだが、それを聞き一瞬にして心が晴れ渡る。
    先ほどの発言は言わば告白であり、それ以上の発展ではない。彼女の最大限努力した行動を
   讃えてのものだ。2人には今まで通りでいて欲しい、それがエシェラの一番望むものだから。
エシェラ「あと自分の分身、エシェラTBとエシェラTAにもねっ!」
   この発言でエシェラTBとエシェラTAも驚く。彼女の全てを見透かした言葉、それは2人の
   落胆をも払拭させたのである。

    ミスターTに思いを述べた事により、内気なエシェラはなくなった。今の彼女は活発その
   もので、その度合いは妹のエシェツをも凌駕している。そして気遣いと思い遣りも強くなる。
   その強さは創生者に相応しいだろう。

ミスターT「チャンピオンに挑みたい者はGM軍団に申し出てくれ。それぞれのGMが応対する。
      試合などの申し出はビィルガ達を通してくれ。」
    賑わいながらも、それぞれの行動を開始する面々。新たに打ち出された9種のチャンピオン
   という事で、一同大いに盛り上がっていた。



ミスターT「後は任せていいか?」
ビィルガ「委細承知。今までのは全て演技でしたからね。ここからが私達の本当の戦いです。」
デュウバD「長かったけど、これからが本勝負だからねぇ。」
    悪役が存在しなかった昔は、彼らが悪役を担ってくれていた。ミスターTの裏での連絡で
   動く特殊部隊と言えた。しかし今はその役割を終え、本当の役割へと回帰している。
   今の彼らは凄まじいほどの爽やかさだ。

    それは苦節の中でも一生懸命に蒔き続けた、希望という種の発芽だ。今のこの場があるのは
   彼らの努力の賜物でもある。
ミスターT「ありがとう、ビィルガ・デュウバD。これからも頼むよ。」
ビィルガ「お任せ下さい。我々の役割を、この身を賭して遂行します。」
デュウバD「マスターは私達を導いて下さい。その貴方の背中を支えるのが、私達の役目です。」
   普段とは言い回しが違うビィルガとデュウバD。これが本当の彼らの姿だ。今までのは徹底的
   に役割を演じていた仮の姿と言えよう。



    息抜きを打ち出す前と実行した後では天と地の差がある。凄まじい熱気と活気にこの場は
   大いに盛り上がっていた。

    その彼らを見つめ、煙草を吸うミスターT。サポートをすると豪語したエシェラは、他の
   ライバルのシンシアやエリシェと騒いでいる。遠巻きにエシェラTBとエシェラTAがいる
   のはご愛嬌だろう。

    この瞬間から、新たなストーリーの開始である。

    第39話へと続く。

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