アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第32話 偽りの支配者〜
    団結こそが最大の武器、それはシェガーヴァH率いる新悪陣営を見れば一目瞭然。また他の
   陣営も団結を強くし、陣営の力を高めていった。

    一同を奮い立たせるために悪役を演じているミスターT。その信念と執念を同じく抱き、
   エシェラも率先して対戦を開始した。
   彼女とメフュレーナ・ヴュオリーア・エシュリオス・エフィーシュの5人がチームを組んで
   創生者軍団と真っ向勝負を挑みだしたのである。
   勝敗関係なしに挑むその姿はまるで阿修羅の如くで、凄まじい戦いが展開されていた。

    ビィルガ・デュウバD連合陣営は作戦会議に没頭し、全く動く気配がなかった。今はそれ
   以外の陣営が戦っている状態である。

デュウバD「本当にこんなので上手くいくのか?」
ポーレス「我々の演技次第でどうにでもなりますよ。」
    新たに作成された小道具を見つめ、デュウバDが訝しげに呟く。小道具作りは得意と自負
   するポーレスとハンニバル。その出来栄えは遠めに見つめていたソレに酷使している。
ビィルガ「まあ何にせよ、主導権を握れればそれに越した事はない。」
ハンニバル「後は怖気付けば勝ったも当然。」
   小道具を手にして話すビィルガ、それに同調するハンニバル。この小道具は充分な完成度を
   誇っていると言ってよい。不気味に微笑むビィルガ陣営は、正しく悪魔の如くである。

ミスターT「ミスヒールとギラガス、1つ頼まれてくれないか?」
ミスヒール「私にできる事なら、ですが。」
    そのビィルガ達の作戦を逆利用する事を考えたミスターT。今は悪役を徹底しており、全員
   の意思の疎通から彼らの作戦を窺い知っている。
   滅多に願い事を言わないミスターTが言った事、ミスヒールとギラガスは少々驚きながらその
   内容を伺った。
ミスターT「まさか本当に効果があるとは思っていない、完全な偽物だからね。しかしそれが効果が
      あったとすれば天狗になる。彼らに挑発をしてもらい、その気になって行動した時に
      自分も同じ事をするつもりだ。」
ミスヒール「なるほど、逆利用ですか。」
ミスターT「それに極め付けはギラガスに頼んだ役割だ。それを語れば、彼らは完全に信用するに
      違いないからね。」
ギラガス「面白そうですね、了解です。」
   試合には試合で応対し、演技には演技で応対する。エンターテイメントというのは、こういう
   ものを指し示すのだろう。
    ミスターTの願い事に快く了承したミスヒールとギラガス。真敵役と中立という役の存在
   ではあるが、2人の位置付けは創生者側に近いだろう。

    試合を行いつつ、遠巻きに相手の出方を伺う創生者軍団。またエシェラ達も薄々その作戦を
   感じ取り、彼女側からも独自に動く事を決意したようだ。
   それに便乗するは悪陣営とフリハト陣営。もはやただ試合を行うのではなく、戦略を以ての
   大決戦となりつつあった。

ビィルガ「さて、動くとするか。」
    創生者軍団とエシェラ達がリング上で激戦を行っているそこに割って入るビィルガ達。
   試合という神聖とも言える場に乱入したビィルガ達に、創生者軍団とエシェラ達は大激怒。
   また役割を担ったミスヒール達も激怒し、リングへと雪崩れ込んで行った。
ミスヒール「貴様・・・試合の場をも邪魔する気か!」
ポーレス「今後の試合の流れは我々が取り仕切る。我々の許可なしでは試合は認めない。」
ミスヒール「だったら強行するまでだ。」
   強気の姿勢を示し反抗するミスヒール達。それをチャンスと見たビィルガ達は、早速作戦を
   開始する。
ビィルガ「できるかね?」
ミスヒール「私達の力を甘く見るなよ・・・。」
   ミスヒールが攻めの姿勢をすると、ビィルガは懐から小物入れを取り出した。そうである、
   ミスターTが所持している例の黒いカード入れの黒い箱と全く同じ物だった。
    本物はミスターT自身が所持しているが、彼らの目を欺くために態となくしたといった仕草
   を見せた。これを窺い知ったビィルガ達は完全に騙される形になる。
ミスヒール「貴様・・・どこでそれを・・・。」
ビィルガ「休憩中に寝ていたミスターTの懐から拝借したものだ。しかも我々が持てるように、奴の
     指紋付きの手袋も手配済みだ。最強の力の1つを手に入れた事になるのだよ。」
   無論ビィルガが語るこれは全て嘘偽りである。ミスヒールも知っているが、本物はミスターT
   本人が所持している。
    しかし実際に効果がないとも分かっているビィルガ達。それを本物と思い込ませるため、
   ミスヒールとギラガスは行動に出始めた。

ミスヒール「・・・まあいい。それが本物かどうか、直接試してみようではないか。」
    この発言にはビィルガ達は慌てふためく。表には出さないが、嘘であるという事がバレる
   事になってしまう。しかし表向きは行動しなければならず、あえて偽物の黒いカードを取り
   出し、それを強く握り締めだした。
    待ってましたとばかりにミスヒールは苦しい素振りをしだした。同じ時期にミスターTが
   ズボンのポケットに忍ばせているミスヒールのカードに圧力を掛けてもいる。
   これにはビィルガ達は驚くしかなかった。
ミスヒール「クッ・・・本物か・・・。」
ギラガス「当たり前だ、私が偽物と本物をすり替えたのだからな。」
   更に驚く出来事が起きる。それはギラガスが本物の黒い箱を偽物とすり替えたと発言した。
   これはビィルガ達の作戦を超越する出来事であり、何時すり替えたのかも全く知らなかった。
   創生者指紋付きの手袋というダミーも作ったが、それも本物として位置付けたのだ。
ミスヒール「貴様も裏切る気か・・・。」
ギラガス「師子身中の虫とはこの事だよ。」
エルスーヴ「リーダー、今は引きましょう。相手の力は強大すぎます。」
ミスヒール「仕方がないか・・・。」
   ミスヒール達は渋々リングから退散する。その辛さは本当の事であり、ビィルガ達を欺くには
   完璧すぎる演技だった。
    ギラガス達はビィルガ達に荷担する演技をしだしたが、本来は完全な中立的存在。悪心が
   強いビィルガ達に所属する事を嫌っている。演技でなければ合流など行うはずがなかった。

    一部始終を見ていた一同は暗い雰囲気となる。創生者最大の武器である黒い箱がビィルガ達
   の手に渡ってしまった。これでは迂闊に動く事すらできない状況だ。

    演技であろうと直感したエシェラ達だが、ミスヒールの苦しむ姿は本物だとも直感する。
   この状態では何もできないと、彼女達も抗戦を中止した。

ビィルガ「貴様もなかなかやるな。」
ギラガス「そちらが思っているほど、我らは弱い存在ではない。特にこういった裏方の行動なら、
     間違いなく遂行できる。」
デュウバD「心強い事だねぇ。」
    すっかり騙され切ったビィルガ達とデュウバD達。更に偽りの加入を果たしたギラガス達も
   あって、完全に有頂天極まりない状態である。
ギラガス「陣営の主導権はそちらが担うがよい。我々は戦う場だけ設けてくれれば何も言わん。」
ビィルガ「分かった、一気に他陣営を潰しに掛かるとしよう。」
   絶大な力を誇る黒いカードを手にし、ビィルガ達は完全なる支配を決断した。この力さえ手中
   にあれば、歯向かう者は一切いなくなる。例えそれが創生者であってもだ。
    我が物顔に新たな作戦を考え出すビィルガ達を尻目に、ギラガス達は自分達の役割を担えた
   事を誇りに思った。まだ誕生が浅い彼らの事、どんな理由でもこういった場を設けてくれた
   ミスターTに感謝していた。

エシェラ「マスター、ご質問が。」
    エシェラ達の予想を遥かに上回る出来事に発展した現在。彼女はミスターTの元を訪れ、
   事の次第を問い質しだした。
エシェラ「何故あの力を奪われたりしたのですか?」
ミスターT「私の油断が招いた不祥事だ、私自身で決着を着けねばならない。」
エシェラ「ならば私も手伝います。今までの行動も全て私達を立たせるために動かれたのでしょう。
     言わば今回の不祥事は、私達の責任でもあります。」
   ようやくミスターTと共闘できるとなって、熱く意気込みを語るエシェラ。しかし直ぐには
   首を縦に振らないミスターT。それはそうだろう、今回の出来事は演技なのだから。
ミスターT「・・・分かった、お前さんの好きなようにするがいい。」
エシェラ「ありがとうございます。」
   決断力が鈍っている彼を窺い、この出来事には何か裏があると直感するエシェラ。彼女の思考
   はGMの自分達以上に研ぎ澄まされており、相手の心理も見抜く事ができるようになる。
    しかしこれらを踏まえると、全て自分達のために行動してくれていいる。その部分を踏ま
   えると、表立って反論や非難は一切できなかった。
   それにミスターTに好意を抱いているエシェラの事、彼が行う事に意議を唱える事はしたく
   ないのが実情だった。
    今は流されるままに動くしかない。それはエシェラも全ての当事者のミスターTも同じ考え
   であった。

    究極の力の1つを手に入れたビィルガ達は、今まで以上に動き出した。誰も逆らえないと
   あって、その横暴さは過激に増していく。
   常にちらつかせる黒い箱は相手を威圧し、その行動力をも抑制させてしまっていた。
    そんな中、ミスターTとエシェラも動き出した。創生者軍団とエシェラ軍団が手を組み、
   ビィルガ達に戦いを挑みだしたのだ。

    しかし究極の力を持つビィルガ達の勢いは凄まじいもだった。怖さ知らずという状態は、
   今までにない力を発揮していた。
   低レベルのビィルガ達だが本気が出せている状態、高レベルのエシェラ達だが本気が出せない
   状態。前者の方が遥かに勝っているだろう。

    消滅に近しい力を持たれると、何もできなくなるという事実を改めて思い知ったのだった。

    虚しく負けてしまったエシェラ達。なおも立ち上がろうとするが、相手の究極の威圧には
   何もできない状態である。

エシュリオス「本気が出せないというのは痛いねぇ・・・。」
メフュレーナ「あんなヤツら一捻りなんだが・・・。」
    口惜しさ爆発のエシュリオスとメフュレーナ。他の4人も本気が出せない事に怒りを顕に
   している。
エフィーシュ「でも何だか幸せな気がします。」
ヴュオリーア「この状況のどこが幸せというのですか・・・。」
エフィーシュ「普段裏方で心血を注ぎ、戦いたいのに戦えないマスターと一緒に戦える事ですよ。
       言い換えれば創生者としてではなく、一介のレスラーとして戦っています。滅多に
       できる事ではありませんよ。」
ミスターT「嬉しいやら何とやら、だね。」
   エフィーシュの言う通りだった。創生者という枠から開放されたミスターTは、自分達と同じ
   レスラーそのものだ。
   どんな状況でも戦いを諦めない彼の姿には、6人とも無意識に憧れの視線を送っている。
ミスターT「いっその事、ビィルガ達に創生者を任せるか。その方が楽ができるな。」
メフュレーナ「それ面白そうじゃないですか。ヤツらがどういった対応をするか見物ですよ。」
   善は急げとミスターTはビィルガの元へと向かい出した。遅れて6人と創生者軍団も向かう。
    本当は黒い箱の力は存在しないのだが、この応対にはどう対処するか。ミスターTは非常に
   楽しみであった。無論他の面々も楽しみでもあった。

ミスターT「暴君の限りを尽くしているな。」
ビィルガ「何か用か。言っとくが、この力は渡さんぞ。」
    怖いもの知らず状態のビィルガ達。今までにない気迫で彼らに迫る。黒い箱の力でここまで
   強くなれるのかと、ミスターTは呆れ気味であった。
ミスターT「その事に関してだが、渡さないでもいい。お前さんが創生者となり、私達を導き新たな
      人物の作成を行うんだ。そうすれば私は一介のレスラーとして戦える。」
   この発言にビィルガ達は驚く。それはミスターTが創生者の役を放棄すると言い出したのだ。
   彼らが行いたかったのは完全なる支配で、創生者の役などやりたくもないのが実情だ。
ビィルガ「な・・・何を言う、貴様こそが似合う役割だろうが!」
ミスターT「さっき言っただろう、黒い箱の力は渡さないと。ならお前さんが担え。嫌なら黒い箱は
      返してもらおう。」
ビィルガ「くっ・・・。」
   反論できないビィルガ達。黒い箱の力は自分達の存在を指し示す、すなわち創生者そのもの。
   それを保持するという事は、創生者の役割を担う事になる。
   しかしこれほど絶大な力を安々と渡すのも気が引ける。今現状を維持しつつ、創生者の役割は
   担いたくないのが本心だった。
ミスターT「言っとくが戦いで決着を着けようとかはナシだ。私は創生者の役割を渡しに来ただけ。
      後は任せるよ、新たな創生者殿。」
   肩の荷が降りたと言わんばかりに言い切るミスターT。相手の対応は悩むという一点になり、
   支配者という部分から遠退いた。
    去っていくミスターT達に何も言えず見つめるしかないビィルガ達。所持している黒い箱は
   完全なる支配と共に、一同を纏め上げ導く創生者の役割も付いてきたのだ。

エシェラ「面白い事になりましたね。」
メフュレーナ「あの様子だと動くに動けないだろうな。」
ミスターT「暫く休むとするか。後は彼らが根を挙げるまで待つだけだからね。」
    究極の力がその人物を縛る。創生者はそう安々となれる存在ではない。それを痛感している
   ビィルガ達であろう。そんな彼らを面白そうに見つめるエシェラ達だった。
エシェラ「そうだマスター、正式に貴方との対戦を希望します。」
メフュレーナ「ずるいよエシェラさん、俺も戦うぜ!」
エシュリオス「私も戦うよ!」
   創生者ではなく一介のレスラーとなっている今なら、ミスターTに対する挑戦は全て可能と
   なる。これほど嬉しい事は他にないだろう。
ミスターT「女傑3人か・・・、なら禁断の力を使うかな。その代わりハンディキャップバトルで
      相手になるよ。」
エシェラ「禁断の力を使っても構いません。貴方と戦えるなら、どんな状態でも喜んで受けます。」
ミスターT「分かった。全力で来い若造ども!」
   一介のレスラーとして応対するミスターT。この場合なら先輩と後輩との間柄である。彼の
   発言がそれを物語っているだろう。


ハンディキャップバトル登場+試合動画



    (ハンディキャップバトル終了)
    真敵役の存在がビィルガ達に流れた事により、ミスターT率いる創生者軍団は通常の位置
   付けに戻る。しかし黒い箱を所持しているのがビィルガ達であり、今の流れでは創生者軍団は
   彼らを位置付けるだろう。

    そこで行ったのが創生者公認のスペシャルバトル。ミスターT自身も率先して試合に応じ、
   その気迫は以前よりも増して強まっている。

    ミスターTはエシェラ・メフュレーナ・エシュリオスの3人を相手に試合を展開した。
   試合はハンディキャップマッチ、形式はワン・オン・スリーで交代なし。ルールはKO・
   ギブアップなし、そしてDQありとリングアウトなしである。
   リング設定はレッスルマニア19だった。

    公式の試合とあって3人は全力で攻めた。相手が禁断の力を使っていようがお構いなしに。
   結果はミスターTの圧勝であるが、気迫では3人に負けた状態だろう。
   一切の柵に囚われず、純粋に試合だけを展開した形になる。
メフュレーナ「やっぱ禁断の力には勝てないかぁ〜・・・。」
   防戦一方だったミスターTだが、相手への返しは凄まじい。返しだけで致命傷を与え、自然と
   気合が溜まった事での極め技を放っている。
    ダメージが尋常じゃない3人に体力強制回復を施し、動けるようにするミスターT。しかし
   凄まじい戦いで、精神的なダメージは蓄積されているようだ。
エシュリオス「でも嬉しいね、マスターと公式に試合ができるのは。」
エシェラ「これで思い残す事はありません。今の所は、ですけど。」
   再び彼と対決したいと願い出る事は明々白々。しかし今は満足といった表情を浮かべている。

メフュレーナ「マスター。以前ターリュSさんやミュックSさんが言っていた通り、その禁断の力は
       常時にした方がいいのでは?」
ミスターT「通常では行動できなくなるぞ。」
エシェラ「そこは何とかなりますよ。これからも私達の代表者として動かれるのですから、それ相応
     の実力は有するべきです。」
    彼女達の執念は勝敗ではなく試合そのものにある。それはターリュSやミュックSと同じで
   あり、試合こそが己の存在意義を示す場なのだと。
    それにミスターTが生身で動くという事もあり、自分達には勝てないという部分も把握して
   いる。それは仕方がない事だろう。だからこそ、この力が必要であると述べるのだ。
ミスターT「力を持ちすぎるものは全てを壊す、か。それに己の弱体化も促してしまうが、安心して
      戦うならこちらの方がいいしな。」
エシェラ「メインで戦われないのですから大丈夫ですよ。」
   言わば彼にやる気を出させたいというのが彼女達の本音だろう。それはじゃじゃ馬娘でもある
   ターリュS・ミュックSも願っている事。
   圧倒的な戦闘力でも構わない、戦いさえできれば。それを行動で示しているのであった。

    重役から解放されたミスターT達は、エシェラ達と一緒に他の面々とも対戦を行った。
   これには大感激する一同。今まで戦えなかった人物まで名乗りを挙げ、彼ら創生者軍団との
   戦いを熱烈に希望した。

    これに嫌がる素振りも見せず応対するミスターT。普段なら渋る所であるが、今の彼らは
   それを一切表に出さなかった。

    対するビィルガ達は創生者という重役を強制的に担わされ、動くに動けない状態に陥る。
   我が物顔で動き回っていた姿が嘘のようで、担いたくない重役というプレッシャーに負けて
   しまっていた。

    凄まじい力は手中にあるが、動けなくなった偽りの支配者。彼らが思う事はただ1つ、
   以前と同じ状態に戻そうという事であった。

    第33話へと続く。

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