第3部 9人の勇士 36人の猛将
   〜第7話 惑星間同時決戦1〜
    翌朝、普段とは静かな朝を向かえた。
   決戦を予感するのか、小鳥は普段の雰囲気から静かになりシンと静まり返っている。

    財閥のガレージでは慌ただしく動き回るレイヴン達がいる。細部に至るまで最終チェックを
   済まされた愛機の武装を再装備、起動実験を繰り返し通信などのチェックも繰り返した。
   やはり不安なのだろう。どのレイヴンも全く喋らない。ただ黙って作業を進める。

    一同が起床する前に行動を開始したリュウジとシェガーヴァ、そしてウィン妹とレイシェム
   の2組。
   ナインボール=セラフの変形型にシェガーヴァやレイシェムが搭乗し、その下側にヴィクセン
   を牽引している。
    またリュウジ・シェガーヴァのペアは火星へ到着すると、火星本社の待機中であるセラフ
   5機と遠隔操作で連携をする。
   間隔空けずにその足で火星平西本社へと侵攻して来るオリジナルSTAIに侵入できるよう
   待機をする。
    同じ時刻、ウィン妹・レイシェムのペアもセラフ5機を引き連れて別の場所から侵入を待ち
   続けた。
    この出撃の前に人間のリュウジとウィン妹は己の意識をコードに残し、それをサイボーグ
   筐体で稼働中のシェガーヴァとレイシェムに託した。

    人としての一時の記憶・経験・思い出。これはコピー体からサイボーグ体へ受け継がれた。
   それと同時にリュウジとウィン妹の存在していた意義も、シェガーヴァとレイシェムに託され
   たのである。

メルア「まぁまぁ・・・表は物凄い事。」
    ポニーテール状に纏めていた髪の毛を綺麗に切り落とし、レイス姉と同じであるショート
   カットヘアーにするメルア。
   そして普段主婦的な出で立ちだった彼女は赤紫色の革のパイロットスーツを纏い、この瞬間は
   レイヴンとしての気品を感じさせていた。
    彼女が示す通り、財閥外には夥しい量産型ダークネス部隊と遺産の数々が待ち構えている。
   上空にはグレイクラウドが轟音を響かせて旋回、そのサポートとしてナインボール=セラフが
   数10機護衛として併進している。
    地上にはファンタズマを筆頭にヴィクセンとナインボールが護衛、その少し真上にはM−9
   が待機している。更にそれらを前方にし、後方では巨体をちらつかせるデヴァステイター。
   今の財閥外は正しく修羅場である。
ウインド「方針を変えるぞ。ライディル・サーベンはファンタズマ改に搭乗。サポートには前回の
     テストバトルで搭乗したジェイン・キュービヌ・シュイル・ディーン。護衛には各陣営が
     付くんだ。クローンファイターズは現在の機体からセラフに搭乗し、個別に配置された
     ヴァスタール部隊と連携を取る。それと少しでも機体が破損したら一旦財閥内部に戻り、
     機体の修復ではなく遺産を用いて闘うんだ。」
   普通なら遺産の使用は用いない。それは己の腕が弱体化するのが目に見えている。過去の運用
   ではテストも兼ねて行ったが、これは明らかにイレギュラーである。
    しかし相手側のレベルはアマギ達ロストナンバーレイヴンズが闘った遺産とは全く異なり、
   どれもハイレベルに纏まったカスタム仕様である。
   更に数がどれも数100体は超えており、これだけでも過去の1000体を遥かに凌駕する。
    毒には毒を盛って制する。苦肉の策だが予備のプランとして考えていた事が役に立った訳で
   ある。

ウインド「ヴィクセンで出撃するのか。」
ライア「愛機では限界がありますし。それにこれならサポートにも割り振れます。既に実戦経験は
    積んでありますし。」
ウインド「了解した。だが今回限りだぞ。」
ライア「分かってまさ。」
   パイロットスーツを身に纏った漆黒の女傑が愛機からヴィクセンへと乗り替える。つまりそれ
   だけ相手の戦闘力が高いという事を、戦う前からライアは直感したのである。
レイス姉「私も迷いなく使わせて貰います。」
   レイス姉も愛機からセラフへと乗り替え、いつでも出撃可能と合図を送る。どの面々も不測の
   事態で用意された遺産を迷いなく用いている。
ライディル「先輩、味方識別信号は大丈夫ですよね?」
ウインド「問題ない。出発前にシェガーヴァとレイシェムが対処済みだ。それに相手側のジャミング
     を受けないよう、こちら側の機体には細工を施してある。」
   ファンタズマ改内部のライディルの応答に回答するウインド。他の面々は機体に乗り込んで
   いるが、彼だけはまだ機体に乗り込んでいなかった。
マイア「お父さん、ACには乗らないの?」
   心配してかブロークンブレイダー搭乗のマイアが安否を気にかける。しかし彼は別の目的で
   その場に居続けていた。
ウインド「俺が乗ったら誰が弾薬補給や乗り替えのサポートをするんだ。シェガーヴァ達がいれば
     遠隔操作でやってくれるが、今2人は本命の任務に着いている。戻ってくる間は俺が全て
     のサポートを行うから、安心して闘うんだ。」
マイア「了解。」
   そう言うとガレージの大型ハッチ前へと進み出る。その他の機体も続々と出撃を開始し、何時
   でも外に出られるよう待ち続けた。

ユウタ「表に出た瞬間、蜂の巣にされたり・・・。」
ディーレアヌ「まぁ・・・それはないでしょ。あいつらは真に恐怖を叩き込みたいらしいし。そんな
       姑息な事をしても歓喜しないわよ。」
マキ「皮肉ですが、言えてます。」
サーベン「あぁ〜あ・・・全く、窮屈でいかんねぇ・・・。早く終わらせて一杯やりたいもんだ。」
   サーベンのぼやきで一同苦笑する。それと同時に心の不安が少し和らいだ。
ライディル「まだ腕相撲の決着は着いていないからな。」
サーベン「あたぼうよ。」
チェブレ「体力勝負かい、なら俺も混ぜてくれよっ!」
   この3人は何を考えているのか分からない、一同そう思わざろうえなかった。しかしこんな時
   だからこそ、こういったユーモア溢れる人物も必要なのだと痛感した。
    会話が終わると再び恐怖と緊張が一同を襲う。それは会話を聞く前以上に重く圧し掛かる。
   どの面々も心中では己心の魔と戦い続けていた。
デヴィル「・・・時間だ。」
   突然一同に聞こえんばかりにデヴィルの声が響き渡る。それは開戦の狼煙であった。
    我先にと財閥外へ出て行くレイヴン達。その間の時間稼ぎは財閥外に装備されている迎撃用
   のレーザーキャノンやチェインガンが発砲し、相手の目をこちらに引き寄せていた。

    財閥外へと先に出たのは、クローンファイターズ駆るナインボール=セラフ部隊。颯爽と
   ポジショニングを済ますと、手当たり次第に攻撃を開始しだした。
   その間を縫うようにレイヴンズが出撃し攻撃を開始しだす。どの面々もまずは目の前の敵から
   攻撃していく。
    対するデヴィル軍団も侵攻を開始。量産型ダークネスを筆頭に遺産が続き、サポートに後方
   のデヴァステイターやグレイクラウドが攻撃を開始する。
   どれも一撃必殺を帯びているものばかりで、直撃則ち即死に近いものだ。
    穏やかだった財閥外が一瞬にして戦渦になり、凄まじいまでの轟音と爆風で辺りを覆った。

リュウジ「まだ動きはないな・・・。」
シェガーヴァ「長距離レーダーには反応がある。今までで見た事がないような巨大なシグナルだ。」
    火星平西本社ビルより北西の崖の部分で待機中のリュウジとシェガーヴァ。
   別の護衛機体であるセラフに財閥搭載の超長距離レーダーを搭載し、そのレンジ内で映し出さ
   れる画像をコクピット内部で見続ける。
    今まで見た事がないような巨大なシグナルが、財閥北側約60km先に映し出される。
   その近くには小数ながらも機敏に切り返しをするシグナルが10個あった。

    瞬発的に切り返しが行えるのはナインボール=セラフ以外に該当しない。
   併進速度ではセラフを超えるグレイクラウドという考えもあるが、あの巨体でこのような機敏
   な切り返しは物理的に不可能。仮に出来たとしても質量の問題から機体が自らを保てず、勢い
   でバラバラに飛散するだろう。
    唯一瞬発的に切り返しが可能な航空機はM−9かナインボール=セラフ。
   しかしM−9は停止状態や低速での切り返しはセラフを超えていても、高速移動を行うほど
   性能が高くない。それにSTAIの直径を軽く行って帰ってこれる程の速度を出せるのは、
   前者で述べたグレイクラウドかセラフのみ。
    大質量から機敏な動きが不可能とされているグレイクラウドが該当外となっている今、護衛
   機体はセラフを置いて他には考えられなかった。

リュウジ「STAIに別の護衛機体が積んであるという仮説はあるかな。」
シェガーヴァ「いや、それはないだろう。第一、先程戦闘を開始した地球側。そこでデヴィルの音声
       が聞こえたそうだ。火星にはデヴィルはいないと見ていい。」
リュウジ「となると・・・本命は地球側STAIか。」
シェガーヴァ「そうだな。」
    徐々に近付く巨大シグナルと小型シグナル10個。ヴィクセン搭乗中のリュウジは相方の
   シェガーヴァに発進を促がし、シェガーヴァ搭乗のセラフと護衛のセラフ5体は徐にその場
   から飛び立った。
    通常のセラフを更にカスタマイズしたセラフ改。ブースター火力を通常の3倍に引き上げた
   これらは、物凄い速度で目標のSTAIへと近付いていった。

リュウジ「ぐぅ・・・物凄い重力だな・・・。」
シェガーヴァ「もう少しの辛抱だ。」
    ものの数分で目標を視野に捕らえられる。それは正しく動く城である。
   その巨体は軽く大都市を超えている。フォルムは逆三角形型。武装は各箇所に設置されている
   グレネードランチャーやミサイルランチャー。
   もっともこれだけでは改造型セラフには敵わないと判断しているのか、護衛にセラフ10機を
   同伴している。
    リュウジ達に気付いたSTAIや護衛セラフは迎撃を開始。夥しいグレネードやミサイルが
   これらに向けて放たれた。
    シェガーヴァも人工知能をフル稼働し、護衛のセラフ改5機をまるでオービットキャノンの
   如く操りだす。迎撃に向かってきたセラフをそれ以上の速度で翻弄し、変型時の弱点である
   大型ブースターにマシンガンを打ち込む。
   大型ブースターを破壊されたセラフはバランスを崩し、そのまま地上へと墜落していった。
    この高々度の戦闘である、地上へと激突したセラフは木っ端微塵に吹き飛んだ。

    STAIを射程に捉えた財閥側も、社内からヴァスタールのロジックを組んだセラフを出撃
   させる。有事に備えてファンタズマやヴィクセンは地上の敵を狙うよう待機していた。
    また相手がSTAIと踏んで、財閥外に長距離レーザーキャノンを特設。それらを用いて
   遠距離からSTAIの外側に位置する突起状の箇所を狙っていった。

    簡単に護衛のセラフを全機撃墜したシェガーヴァ。落ち着いてSTAIに着艦し、牽引して
   いたヴィクセンを切り離した。その間の周辺警護はセラフ改5機が行っている。
リュウジ「いよいよだな。」
シェガーヴァ「内部に敵がいると予測し、セラフを2機同伴させる。敵が現れたら2機に任せ、お前
       は炉心部まで向かうんだ。」
リュウジ「了解。」
    遠隔操作で2機のセラフが人間型へ戻り着艦。ヴィクセンに寄り添い、リュウジ共々内部へ
   向かって行く。
シェガーヴァ「・・・ごめんな。本来は私が行うべき事なのだが・・・。」
   徐にシェガーヴァが口を開く。そして内部通信を通してリュウジに詫びをする。しかし彼は
   明るく問い返してきた。
リュウジ「な〜に気にしなさんな。お前さんはこれから娘達や息子達を守っていく使命があるんだ。
     そのお前さんが死んでは誰が彼らを守るんだ。」
シェガーヴァ「・・・そうだな。了解した、もう迷わない。」
リュウジ「その意気だ。」
   ヴィクセンの右腕のグレネードレーザーライフルを上に掲げ、それを大きく上下左右に振る。
   その後3機は中央塔から内部へ侵入し、一路炉心部へと向かって行った。
シェガーヴァ「・・・頑張れよ。」
   去って行ったリュウジを一瞥し、シェガーヴァはセラフを動かしその場を後にする。
    とりあえず邪魔な対空対地の攻撃手段を封じるため、変形型のセラフで片っ端から砲塔や
   爆撃手段となるものを破壊していった。当然それは内部にいるリュウジに影響がない程度で
   ある。
   粗方破壊が完了したシェガーヴァは、残りの3機のセラフ改と共にSTAIを離れて行った。

リュウジ「全く過去のマップ通りだな。」
    シェンヴェルンやデヴィルのこれらを予測した対処策を考えていたリュウジ。だが予想を
   裏切り、全くトラップなどの対処をしていなかった。普通なら内部に砲台や無人機を配置する
   だろうがその気配すらない。
    同伴のセラフ改に搭載の超長距離レーダーを長距離レーダーに切り換え、STAI内部の敵
   シグナルを検索する。しかし敵と思えるシグナルは全く検索されず、あるのは目的である炉心
   制御装置のマーカーだけであった。

    ものの数十分で炉心制御室へと到着。内部に入ると巨大なジェネレーターが数十機可動して
   おり、物凄い熱量が3機を襲った。
リュウジ「蒸し暑いな・・・。」
    辺りを検索すると停止装置などといったものは見当たらず、STAIを停止させるのはこの
   巨大ジェネレーターを破壊するしか方法がないようだ。
リュウジ「壊される運命だが、態々俺と心中する意味はない。お前達はここから脱出するんだ。」
    遠隔操作でヴァスタールロジックのセラフ改2機を脱出させる操作を行う。だが2機とも
   その命令には従わず、その場所に黙ったまま立ち尽くしていた。
   それはまるでヴァスタール自体が意思を持っているようで、リュウジの護衛を任された2機に
   とっては彼との心中は誇りに思っているようである。
リュウジ「・・・馬鹿野郎。」
   ヴァスタールコアの行動を見つめ、リュウジは2機・・・いや2体の人工知能に感謝をした。

    リュウジが科学者となった由縁は、その類を見ないメカ好きな性格が発端だった。
   最初はコンピューターを操作する・改造するといった事から、後々は遠隔操作が出来るほどの
   ロボットの製造。そしてネストの雛型やシェガーヴァやレイシェム、ヴァスタールコアの原型
   ともなるマスターコアを作成した。
    家族をも犠牲にして一心に研究を続けたマスターコア。昨日のシェガーヴァやレイシェムの
   行動でそれらが無駄ではなかったと痛感した。
   そして今、こうやって自ら手掛けたヴァスタールコアも自分を慕ってくれている。研究者と
   して、これほど嬉しい事は他にはないだろう。
    死ぬ間際に見れた安息の光景。これがシェガーヴァに伝えられないというのが一番の悔やみ
   だと思った。

ヴァスタールコア1「・・・シェガーヴァサマモ・・シッカリトリカイシテイマスヨ・・。」
ヴァスタールコア2「ワレワレヲ・・ツクッテクダサレタノハ・・アナタサマデスカラ。」
    我が目と我が耳を疑った。ぎこちない合成音声で問い返すヴァスタールコア。これに驚く
   リュウジ。
   大量生産したヴァスタールコアは人工知能である。自己学習能力は低レベルクラスだ。それに
   駒として量産したコアにそういった学習能力はあまり意味をなさない。壊されて当たり前と
   いう概念から、その意思は除いて作成したのだ。
    それがどうだろう。このヴァスタールコア2体は自らの考えを述べ発言している。それは
   正しく人工知能の最終形態であり、一生命体として生まれた瞬間でもある。
リュウジ「・・・駒として大量生産し、そして惜しみもせず破壊する私だぞ・・・。それでも感謝
     するのか・・・。」
ヴァスタールコア2「・・・ワレワレハ・・アナタナクシテ・・・ソンザイシマセン。」
ヴァスタールコア1「・・・ワレワレヲツクッテクレテ・・・カンシャシテイマス。」
リュウジ「・・・・・ありがとう・・・。」
   不意に頬に涙が伝う。リュウジは感極まって涙を流していた。そしてこれほどまで育った2体
   をむざむざ破壊してしまうのが悲しくもなっていた。
   しかしここで引いてしまっては全く意味がない。自分で進むと決意したのだ。迷う事なく前に
   進むべきだと、リュウジは己自身を叱咤した。

ヴァスタールコア1「マスター・・・コウドウヲ・・・。」
ヴァスタールコア2「ワレワレモ・・オテツダイイタシマス。」
    それぞれのセラフ改は両腕を掲げ、内蔵マシンガンとパルスキャノンを構えた。その動きに
   全くの迷いなし、それは人工知能由縁たるものだった。
リュウジ「・・・シェガーヴァ・レイシェム・ウィン、そしてユキヤ・・・。後は任せるぞ。」
    リュウジ駆るヴィクセンも右腕のグレネードレーザーライフルを構え、射撃の体制を取る。
   そして徐にトリガーを引いた。
   リュウジの攻撃を合図にヴァスタールコア2体も攻撃を開始する。目の前にある数十体の巨大
   ジェネレーターをそれぞれの武器で破壊していった。
    STAIを駆動させるほどの巨大ジェネレーター。その内部の容量は凄まじく、蓄積されて
   いるエネルギーも尋常ではない。
   3機の攻撃で破壊されたジェネレーターが大爆発し、誘爆によって他のジェネレーターも巻き
   込みだした。
    STAI本体を震撼させるほどの大爆発が炉心制御室を包み、内部温度が瞬時に最高温度へ
   上がる。それは周囲の物質を溶かすほどで、先導していたセラフ改2機は木っ端微塵に吹き
   飛んだ。
   リュウジ搭乗のヴィクセンはその衝撃で後方のゲートに激突し、そして熱により機体が完全に
   折れ曲がった。
リュウジ「・・・フフッ。あの時の最期も・・・、こういった溶鉱炉だったな・・・。」
    コクピット内部にまで伝わる凄まじい熱波がリュウジを襲う。薄れゆく意識の中、彼は生前
   の死に間際の時が脳裏に浮かぶ。
   しかし深く考えないうちに死は訪れた。全く痛みを感じないほど、リュウジは熱波により一瞬
   にして焼死した。
    直後全ての巨大ジェネレーターの大爆発で炉心制御室は吹き飛ぶのだった。

    シェガーヴァ駆るセラフ改が爆発に気付いたのはその直後。STAIの各所から炎が出て、
   それが機体全体へと伝わっていく。神々しい炎がSTAIを包むと、大爆発を巻き起こし飛散
   した。
   彼や全護衛機体はSTAIの爆発予想範囲内から外におり、木っ端微塵に吹き飛んだSTAI
   の小さな残骸が機体を襲うも致命的な被害までは受けなかった。
    轟音が火星本社まで鳴り響き、内部の社員はその爆発を目撃していた。STAI自体存在
   しないものに等しく、その大爆発などなかなか見るものではない。
    辺りに黒煙が広がり、それが止むまで一同は静かに待ち続けた。

    どれぐらい経過しただろう。1時間とも2時間とも待っていた気がしたが、実際には僅か
   10分程度である。黒煙が治まり元の火星の空へと戻っていた。
シェガーヴァ「・・・・・リュウジ、・・・・・ありがとう・・・。」
   シェガーヴァ駆るセラフ改と護衛の3機のセラフ改は、今までそこにあったSTAIの場所で
   時計回りで旋回を続ける。それは今自分達にできるせめてもの弔いであった。
                               第7話 2へ続く

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