〜第2部 9人の決戦〜
   〜第6話 12人の決戦3〜
    ウインドが過去にまつわる秘話を話そうとした時、財閥内部にサイレンが鳴り響く。
   それはニューフェイスのレイヴン達にとって、決戦のゴングでもあった。
    各レイヴン達は大型ガレージに待機中の愛機に乗り込み、直ぐ様外へと出撃していく。

シュイル「エルディルさん、量産型のダークネスを狙って下さい。自分とディーンさん・ミナさんで
     クローン3騎士を撃破します。」
エルディル「で・・ですが・・・。」
ディーン「任せておきな。自分自身とは戦いたくないもの、俺らがしっかりケジメ付けとくから。」
ミナ「エルディル様・バレヴ様・チェブレ様、後はお任せ下さい。」
    シュイル・ディーン・ミナはエルディル達のクローン3騎士と対決するべく、相手側で後手
   に回っている機体の方へ進んでいった。他のレイヴン達は量産型ダークネスと交戦しだした。
シェガーヴァ「量産機は全部で50体、そのうちクローンファイターが3体。動く姿を見るからには
       大したロジックではない。思う存分戦うんだ。」
レイヴンズ「了解。」
    シュイル・ディーン・ミナ以外のレイヴンはダークネスと交戦を開始しだす。
   シェガーヴァが洞察力を用い、新米レイヴン達をサポートしていく。苦戦はしないものの、
   楽勝とまではいかないようである。
   ウインドはいつ出撃してもいいように、ガレージ内で愛機ウインドブレイドに搭乗していた。

シュイル「この機体は誰のクローンのですか?」
シェガーヴァ「それはバレヴのクローン機体だ。クローンでも本人が猛者だ、慎重にかかれよ。」
バレヴ「もうっ、私は猛者じゃありませんっ〜。」
シュイル「フフッ、了解。」
    エヴュニュイルイヴァイア。バレヴ=ウォイウォレイトが駆る重装甲AC。
   両肩垂直発射ミサイル・右腕のバズーカ・左腕のブレードと、隙がない機体構成だ。
   今のシュイルにとっては強敵の部類に入るかも知れない。
    己の敵と理解したクローンバレヴはフェンリルナイトに目標を定め、ゆっくりと動き出す。
   オリジナルのバレヴと違い、クローン側はその行動に人らしいものはない。目の前の目標を
   殲滅する戦闘マシーンである。
    シュイルは主力武器のスナイパーライフルを放ちつつ、ブースターダッシュで相手の出方を
   待った。
    だがそれを見透かしているかのように、エヴュニュイルイヴァイアは誰もいない場所に両肩
   垂直発射ミサイルを放つ。と同時に主力武器のバズーカをフェンリルナイトに放った。
    当然向かってくる砲弾をシュイルは回避し、同じく反撃に出る。が、その回避した先に先発
   に放ったミサイル群が着弾する。数発は地面へと着弾し爆風を巻き起こし、他の数発は彼の
   機体に直撃してしまう。
    ミサイル群はバックウェポンの発火型ミサイルとレーザーキャノンを破壊、衝撃で体勢を
   崩し倒れ込むフェンリルナイト。
バレヴ「大丈夫ですか?!」
シュイル「大丈夫です、任せて下さい。」
    フェンリルナイトの転倒を見て、シュイルの身を案じるバレヴ。
   もっともだ、己のクローンによって友が傷ついたのだ。黙って見ているわけにはいかなくなる
   のが人情というもの。
   そしてそれはバレヴにとってシュイルが大切な仲間だという事に他ならなかった。
    トドメを刺そうとするクローンバレヴ。シュイルは何かを狙っているのか、体勢を立て直す
   とひたすら間合いを取り続けた。
    それを見たバレヴは我慢がならなくなり、彼に襲いかかろうとしている己の分身に両肩垂直
   発射ミサイルを全弾放った。
    感情がないという事は目の前の目標を撃破するま狩り続ける。という事は後ろから迫り来る
   己自身など眼中にないという事だ。放たれた全てのミサイル群はクローンバレヴを襲った。
    ミサイルはバックウェポンの両肩垂直発射ミサイル及びヘッドパーツを破壊。また爆発の
   勢いで前へを押し出された。
    これを待っていたとばかりにシュイルは動きだし、レーザーブレードを発生させ目の前に
   迫るエヴュニュイルイヴァイアに斬撃を見舞った。
    斬撃はコアユニット部分とレッグユニット部分を見事に切断する。
   シュイルが離脱後、クローンバレヴが乗るエヴュニュイルイヴァイアはジェネレーターの爆発
   と共に粉々に飛散した。
バレヴ「大丈夫ですか?」
シュイル「フフ、バレヴさんを利用してしまいましたね。貴女の事です、絶対に放っておかないと
     思いまして。ああやってチャンスを伺っていました。」
バレヴ「もうっ、心配かけさせないでよね・・・。・・・でもよかった・・・。」
シュイル「ありがとうございます。」
   会話もそこそこに、2人はダークネスを撃破するべく仲間達の元へ向かっていった。

    エヴディルゴード。チェブレ=オグエアが駆る同じく重装甲AC。
   主力武器こそライフルと落ち着いてるが、バックウェポンにロンググレネードランチャー・
   チェインガン。そしてミサイル迎撃も整っており、要塞ともいうべき機体である。
ディーン「流石チェブレの旦那が操る機体だけある。ウインド先輩と大して変わらない攻撃を繰り
     出してくるぜ。」
チェブレ「流石は俺様のクローンと言いたい所。だが、ディーン殿を苦しめる姿はあまり見たくない
     気分だよ。」
シェガーヴァ「インサイドに自立攻撃型ユニットにブレードはショートレンジ型のものがある。油断
       するなよ。」
ディーン「分かってまさ。」
    ハルヴェールグルヴはレーザーライフルを構え、同じく回避しつつ的確に攻撃していく。
   堅実見溢れる行動だ。
    だがクローンチェブレが駆るエヴディルゴードは回避をせず、高火力な武器で反撃を開始。
   特に機械に似た鋭い攻撃でグレネードなどを放つのだから、ディーンにとってかなり厄介な
   相手である。
チェブレ「おいおいマジかよ・・・、俺様がしないような動きまでするぜ・・・。」
ディーン「戦闘マシーンという事か・・・。」
チェブレ「しかし相変わらず切り返しが鈍いなぁ〜、まあ俺様のクローンだから仕方がないか。」
    チェブレ本人のその発言を聞いたディーンはある戦術が脳裏に浮かぶ。それを早速実行しだ
   した。
    その場にロンググレネードランチャーを展開するべく膝を付きキャノン発射態勢へ。当然
   その間の攻撃は全て回避ができない。
    だが着弾し続ける弾丸やグレネードなどを無視、何故か動けない状態でオーバードブースト
   を展開する。
    オーバードブーストの火力が発動される前にグレネード弾を発射する。と同時にオーバード
   ブーストが発動。目の前の火球の中に入っていくハルヴェールグルヴ。
    機械にとっては全く理解しがたい自殺行為であった。しかしそれこそが機械にとって有効
   手段であり、急所を突く一撃必殺の攻撃であったのだ。
    爆炎を纏うという事は相手側には目眩ましになり、次の攻撃が把握できない。
   ディーンはそれを狙っていたのだ。
    そして回避を行わず攻撃を続けるクローンチェブレにはそのような思考など持ち合わせては
   おらず、ただ爆炎が収まるのを待つというシンプルな対処法でしか行動をしなかった。
    爆炎が収まりディーンの機体が顕わとなった時には既に遅く、発射リミットを解除した地上
   型魚雷が全弾クローンチェブレに襲いかかっていった。
    凄まじいミサイル群がエヴディルゴードを襲撃、全面のライフル及びレーザーブレード更
   には両腕と頭部をも巻き込み大爆発した。
    そこへ体当たりするかのようにディーンが突撃。相手を押し倒すかのように凄まじい激突を
   繰り出した。
   辺り一面に大音響を響かせ、2機のACは地面に倒れ込んだ。
    体当たりによりディーンの機体はほぼ大破し、相手側のエヴディルゴードも全ての武装と
   両腕・頭部がなくなり完全に戦闘不能に陥っていた。
チェブレ「おい大丈夫か?!」
ディーン「・・・まだ終わらんよ。」
    徐に機体を立ち上がらせると戦闘不能に陥ったエヴディルゴードに近づくディーン。
   唯一生き残ったレーザーブレードを発生させ、有無をいわずコクピット部分に突き刺した。
   ハルヴェールグルヴが離脱後ジェネレーターの誘爆により爆発、クローンチェブレは機体と
   共に粉々に砕け散った。
ディーン「すまないな・・・。」
チェブレ「な・なんの。俺様の悪だぜ、こいつは。情けなど無用。それに俺様の代わりに殲滅して
     くれて感謝してるよ。」
ディーン「フフッ、ありがとう。」
    ほぼ戦闘不能に陥ったディーンはガレージへと引き上げ、代わりの分までチェブレが動くと
   言わんばかりに行動を開始。
   野郎同士の通じるものがそれを駆り立たせるのであろう。

    メシュレイトリンフォーア。エルディル=デスヴェイグが駆る標準2足AC。
   機体構成こそシンプルなものが多い。だが、主力武器がウインドやミナのACと同じレーザー
   ライフル。また瞬時に45度旋回可能なエクステンション・中型ミサイル・ブレードと隙が
   ない機体である。
エルディル「ミナさん、私がやります。」
ミナ「いえ、私にやらさせて下さい。これは己自身との戦い。ウインド様が仰った己との決戦。そう
   簡単にはやらさせませんっ!」
シェガーヴァ「エルディル、ここはミナに任せてあげてくれ。彼女も必死なのだ、己との対決に。」
エルディル「・・・分かりました。」
    エルディルは己のクローン体とはケリを付けねばと思っていた。
   だがミナもウインドから大きな役目を担われ、自分自身との戦いの最中であると十分理解が
   できる。それ故に己が為すべき事をミナに任せたのだ。
   心中ではハラハラしてはいるものの、エルディルは見守る事にした。
    同じ主力武器を所持するミナとクローンエルディル。後は機体性能かパイロットの技量で
   勝敗が決まる。
    だが大役を任され超えるべき大きな目標があるミナ自身にとって、この戦闘で負けるつもり
   など全くなかった。
    ミナは機動力にものをいわせ、クローンエルディルを撹乱した。だがただがむしゃらに突撃
   を繰り返してはウインドとの戦いの時のように、直ぐに勝敗が決してしまう。
    自分を信頼してくれたウインドとの戦いの時の模様を脳裏で描き、自分が優先的に動いて
   いるようなイメージを想像して動いていた。
   思い描く相手は超えるべき存在のウインド自身。
    それを超える動きを想定しているミナにとって、メシュレイトリンフォーアは止まっている
   ように見えた。
   そして次にどう動くかも全て予測ができ、先手を打って行動をしていた。
エルディル「す・・すごい・・・。仮にも私のクローン体なのに、全く行動を封じられている。何故
      ここまで・・・予測する事が出来るの・・・。」
ウインド「主力武器だよ。俺やお前、そしてミナの機体には同種類のレーザーライフルがある。この
     武器は最も強力なレーザーライフルでもあるが、重量・弾数などを考えると戦術が消極的
     になりやすい。ミナの機体みたいにあの武器だけが主力武器となると乱射はできず、一撃
     一撃を正確に命中させないと意味がない。いかに相手の攻撃を避け、いかにこちらが的確
     に攻撃を当てるか。全てはそこに掛かっている。」
    長年愛用してきた武器なだけに、一番扱い方を理解しているウインド。
   長所もあれば短所もある。それがACの各武装であり、またAC自体もそうなのであった。
    ミナの鋭い洞察力と機動力・火力・使命などが重なり、相手には何もさせないまま決着が
   着こうとしていた。
    ジャイアントハンドが放ったレーザー弾、高速で動いている為メシュレイトリンフォーアの
   ヘッドパーツを意図も簡単に貫く。
    勢いでその場に転倒するクローンエルディル。間隔空けずに素速く接近し、立ち上がろうと
   しているメシュレイトリンフォーアにレーザーライフルを突き付ける。
    そしてゼロ距離射撃から光弾を発射し、コクピット部分を破壊する。
   直ぐ様離脱するミナの直後、クローンエルディルは機体の爆発と共に飛散した。
ウインド「強くなったな、ミナ。」
ミナ「そんな恐れ多い、まだまだです。」
ウインド「しかし現に撃破してるじゃないか。シュイルやディーンが撃破するも苦戦していた相手の
     1人を簡単にな。」
ミナ「ウインド様と対峙した時よりかは楽でした。相手の動きが止まって見えましたから。」
エルディル「・・・私を超えたという事ですね。」
ウインド「まあ気合いや色々な要素が重なった結果でもあるし。あまり有頂天にはなるなよ。」
ミナ「もちろんですよ。まだまだ強くならねば、お約束は守れませんから。」
   ミナらしいとウインドは愛機の中で苦笑した。そしてそれがレイス姉妹にそっくりである事も
   笑える要素であった。

    クローン3騎士が撃破された事によって味方の志気は大いに高ぶった。
   そしてそれは正確さを増し、レイヴンズは今までにないほどの迅速かつ正確さでダークネスを
   撃破していった。
    所詮低レベルな知能である人工知能が人間に勝る事は不可能。そして人工知能を作成した
   人物もシェガーヴァに比べるとまだまだレベルが低く、ユウト達が撃破した破壊神軍団に比較
   すれば天と地との差であった。
ユウタ「これでラストっ!!!」
    ユウタの愛機シャッターウォーリアーは両腕のデュアルブレードを繰り出し、目の前でたじ
   ろぐダークネスに斬撃を見舞う。
    それは十字に相手の機体を切り裂き、後方へ進みでた直後ダークネスはジェネレーターの
   誘爆で粉々に砕け散った。
   50体いた量産型ダークネスはあっという間に全て撃破された。

    先に戦闘が終わったレイヴン達は束の間の休息を取っていた。
シュリヌ「ふぃ〜・・・。」
ナミ「お疲れ様でした。」
アリナス「以外に呆気なかったわねぇ・・・。」
   クローン3騎士と交戦したシュイルとディーンは機体を損傷しており、ガレージに愛機を待機
   させて表へと出ていた。
   その他のレイヴン達もACから降り、地面へと座って休息している。
マイア「今回の襲撃、呆気なかったですね。」
ライア「でも何か引っかかる点があるのよ。何故クローン体まで作っておきながら他の残党を人工
    知能で済ませたかという事。」
ユウト「自分たちの時は過去の遺物を投入してきましたよね。」
   相手の戦略が読めない一同。
   こちらを確実に潰しに掛かるなら、もっと大規模な戦力を投入し消耗戦に持ち込んだ方が効果
   が高い。それにより相手の体力などを奪い、確実に殺す事ができた。
   しかし今回の襲撃はユウト達の決戦とは異なり、まるで時間稼ぎのようである。

ウインド「・・・どうやら本命のご登場のようだ。」
    ウインドブレイドがガレージより出撃し、休息中の一同の間を大きな振動を起こしながら
   前へと進みでた。
    直後財閥内部からナイラの携帯端末に連絡が入り、未確認の機影が1つ接近中との報告を
   受ける。
    報告確認後ウインドブレイドが向く方向からオーバードブーストによる移動で接近してくる
   ACの姿が一同の眼中にも見て取れた。

ミナ「敵ですか?!」
    13レイヴン中唯一愛機に搭乗していたミナ。今だやる気の彼女も同じく進みでて攻撃態勢
   に移る。
    だがウインド自身によって呼び止められ、そこから更に進み出るウインドブレイド。
   またウインドの行動を目撃し、事態を把握したシェガーヴァも愛機に搭乗。彼の側まで歩み
   寄った。
ウインド「貴様が事の首謀者、デヴィル=オグオルか。」
デヴィル「流石ウインド、博識だな。」
ウインド「忘れるかよ、お前の前世ともいうべき野郎の殺気など。俺達を強く憎む憎悪がヒシヒシと
     伝わってくる。」
デヴィル「フッ、あの時と同じに感に障る奴だな。」
シェガーヴァ「お互い様だろう。」
    次元の違う会話に一同は震え、怯えなど全くしなかったディーンでさえ全身に寒けが走る。
   今目の前にいるレイヴンは自分達を簡単に殺せる力があると言う事が、過去の英雄達の血が
   流れる己自身に危険を感じさせた。それは無意識にである。
デヴィル「この場で直ぐにケリを付けたい所だが、面白いデモンストレーションを企画中だ。今は
     まだ殺すのは待ってやろう。」
ウインド「それはご丁寧に。」
デヴィル「フフッ、楽しみにしているよ。貴様等が断末魔を上げて死に往く様をな。」
    デヴィルのACディエールクラスターは反転し、再びオーバードブーストを展開。
   火力を纏いその場を去っていった。
    財閥の高性能レーダーがデヴィルの機体を範囲外にする報告が告げられると、レイヴン達は
   どっと力が抜けその場に骨抜き状態になった。
ユウタ「せ・・先輩・・・、あ・・あれが・・・相手なのですか・・・?」
ウインド「ああ、諸悪の根元。エルディル達に依頼を押し付けたデヴィル=オグオル。俺達の因縁の
     相手だ。」
ディーン「マズいな・・・。野郎の殺気を感じただけで身震いし動けなくなった。このままじゃ野郎
     の軍団と対戦する時に足手纏いになるな・・・。」
ウインド「なーに、それが普通さ。何も感じず雑魚に感じた俺達の方がまだ危険だよ。」
シェガーヴァ「言えてるな。」
   苦笑いするウインドとシェガーヴァ。この2人の姿を見た一同はやはり大物である事を再確認
   せざろう得なかった。
ミナ「こ・・・これからどうするのですか・・・?」
ウインド「とにかく休もう。野郎の事だ、次の勇者が目覚めるまで待つつもりらしい。それに手駒が
     完全に揃っていないからな。面白味がないと思ってるに違いない。」
シュイル「わ・・分かりました。とりあえず休みましょう・・・。」
    一同は重い足取りで財閥内部へと戻っていく。
   一応シェガーヴァは予備に量産させた人工知能10体を財閥周りに配置、有事に備えて警備に
   着かせた。
    クローン3騎士と量産型ダークネスを撃破したレイヴン達。
   だが真の敵が現れた事によって再度己の使命を理解するのであった。
   目の前の壁は高く険しいが、越えられないとは誰1人として思っていなかったのである。
                               エピローグへ続く

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