アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜 〜第48話 臨時の創生者〜 騒がしかった試合会場が一変して静かになる。全ての面々が抗争を繰り広げたため、どの 面々も疲れ切った表情で休憩していた。 それでも暴れたりない面々は、個別にスパーリングを繰り返している。この勢いが一同の 原動力になるのだろうから。 その中でも真敵役陣営の行動が目立つ。ミスヒールを中心にビィルガ達がブレインを務め、 他の面々が実働部隊になる。自ら体当たりで挑む姿勢は、探究心が一番強い現れだろう。 ゆっくり動くはロスレヴ・フリハト両陣営。それに新陣営連合が追随する形である。抗争に 参加はするものの、自分達の足並みを崩そうとはしなかった。 ガルグ「以上が抜粋ロイヤルランブルの内容です。」 手持ちの資料をテーブルに置くガルグ。その内容を窺っていた一同は顔を曇らせている。 戦略で対抗するためには、それ相応のものを考えねばならなかった。それに戦略などを得意と しない面々には重苦しい内容である。 ゼラエルG「我々は元より、他の5陣営から抜粋を得られるかどうかという問題だな。」 ガルグ「ええ。6陣営あるなら、1陣営から5人は輩出しないとなりません。」 シェガーヴァH「そこは何とかしよう。ドクター、お力願えるか?」 ドクターT「了解、当たってみましょう。」 シェガーヴァHとドクターTが他の陣営へと向かって行った。悪陣営最強クラスの人物の2人 なだけに、他の面々は大いに期待を寄せる。 アマギDA「そう言えばよ、悪陣営だけで3つのロイヤルランブルを行うというプランはどうなった んだ?」 アマギDAの発言でハッとした表情になる一同。悪陣営の頂上決戦とも言える戦いを行うと いう計画はあったが、実際には停滞気味に陥っていた。他の試合や新陣営に対しての抗争に 着眼があり、こちらまでには気が回らなかったというのが実情だった。 スカーレット「マズいよなぁ・・・まだ決めてないじゃない。」 ボルガンゼス「創生された順で決めていいんじゃないか?」 アンドレ「だな、それが簡単な解決策でもあるわ。」 ライガス「リストはマスターから頂いている。それを元に抜粋しよう。」 ライガスが悪陣営全員のリストをガルグに手渡す。それを元に彼が指定の面々を呼び出した。 苦肉の策でしかなかったが、ミスターTが決めたリストとあれば黙認せざろう得ない。それに 彼らの方も楽ができるというものだから。 ミスターT「分かった。そこは任せるよ。」 ダークから逐一悪陣営の内情を窺っているミスターT。作成された順序での抜粋で、3大 ロイヤルランブルを行う事にしたようだ。 ミスターT「でもそうすると、参加を辞退したお前さんやディヴォルガル達も戦う事になるが?」 ダーク「ああ、そこは構いません。私達も一緒に戦わねば、周りに失礼ですから。」 ミスターT「一応学んだようだね、偉いよダークちゃん。」 年下みたいな応対をされ、ムッと膨れるダーク。本編の年代から言えば、彼女の方が遥かに 年上なのだから。 その彼女に近づき優しく抱きしめるミスターT。我に返ったダークはシドロモドロになった。 ダーク「あ・・・そ・・その・・・。」 ミスターT「以前、魔剣じゃないお前さんを抱きたいと言わなかったかい?」 ダーク「え・・ええ、言いましたが・・・。」 慌てる彼女だったが、その居心地の良さに我を失っていく。魔剣の時に手に持たれた感覚が 蘇ってきたからだ。何とも言えない感覚は彼女を酔わせ、自然と身を委ねてしまう。 ダーク「何だか・・夢を見ている気がしてきます。エシェラさん達が抱き付きたくなる訳ですね。」 ミスターT「嬉しい限りだよ。」 ダーク「ダークTMさんなら分かりますが、悪役の私なんか構うだけ無駄だと思います。」 ミスターT「俺には善も悪も関係ない、君自身を抱きたいと思っただけ。そこに他の感情など無用。 ダークはダークだ、他の何者でもない。もっと自分に自信を持ちなよ。」 自分の存在から、悪役には行為そのものが無駄だと思っているダーク。その彼女に自分自身を 大切にしろと伝えるミスターT。 善も悪も関係ない、目の前の本人に激励を。それがミスターTが信条とする心構えである。 胸の中で余韻に浸るダーク。少しずつ罪悪感が薄れていくが、それでも自分の存在は悪役 なのだと振り返ると遣る瀬無い気分になる。 ミスターT「それだけ君が飢えていたという事か、ごめんな。」 ダーク「いえ・・・本当に優しいですね。」 だが彼は全て見抜いていた。他の女性陣に対しての応対を見続けた彼女は、自然と嫉妬感を 胸に抱いていた。それが自身への不信へと繋がってしまったのだろう。 ミスターT「この顔は誰にでも誇れる顔だ、もっと自信を持っていい。人は外見よりも中身が勝負 だろう?」 ダークの目尻の部分に施されている黒いペイント、その部分にソッ触れる。優しくペイント 部分を撫でられ、それだけで顔が見る見るうちに赤く染まっていく。 ミスターT「ほら、いい顔ができるじゃないか。」 ダーク「そ・・それは・・・恥ずかしいから・・・。」 ミスターT「恥ずかしい感情も全て自身に内在する素晴らしい感情だよ。これも全て誇りに持って いい。人としての生涯は、本当に短いのだから・・・。」 最後に語った言葉の後、物凄い辛い表情を浮かべるミスターT。その重い表情を見ただけで 胸が苦しくなるダーク。 不意に抱く両手に力が込められる。決して痛くはないが、その強さは彼の心の痛みそのもの だろうとダークは感じだ。これも彼女の性格からなせる業物である。 ダーク「・・・できる限り頑張ってみます。」 自然とそう答えるしかないダーク。触れ合うだけで心を感じ取れる彼女だけに、今の彼の 重さは尋常じゃないほどだ。精一杯の笑顔で語る彼女に同じく笑みを浮かべるミスターT。 ミスターT「・・・ありがとう。」 ソッと彼女の顎を持ち上げ唇を重ねる彼。それに驚いた表情を浮かべると同時に、身体中に 電気が走り骨抜きにされるダーク。彼が支えなければ、そのまま倒れてしまうぐらいの脱力感 に襲われた。 ミスターT「君や一同にどれだけ励まされたか。俺もまだまだ膝を折れないという事だね。」 口づけを終えて余韻に浸るダーク。骨抜きにされたのは確かだが、同時に心のリフレッシュ も成されていた。 ダーク「常に貴方と私の心と身体は一心同体です。私にできる事があれば何なりと仰って下さい。」 ミスターT「ありがとな。」 もう一度ダークに力強い抱擁をして解放するミスターT。彼女が抱えていた不安感は一切感じ られない。あるのは自身が自身であるための使命感である。 ダークはミスターTとガッチリ握手を交わし、悪陣営の面々がいる場へと戻って行った。 エシェラ「・・・またスキンシップですか・・・。」 不意に声を掛けられ、飛び上がらんばかりに驚くミスターT。それは彼を以てしても窺う 事ができず、死角にエシェラがいる事は分からなかったのだ。 エシェラ「あまり周りを本気にさせないで下さい。貴方の一途さを直に感じれば男性でさえ力強い 友情が芽生えるのですよ。それが女性となれば落とされない人はいません。」 椅子に座るミスターTの背後から、ソッと肩に手を沿えるエシェラ。それに冷や汗をかく彼。 下手をすればそのまま背後ネックハンギングを喰らいそうな勢いに近い。 エシェラ「でも・・・貴方らしい・・・。その貴方に私は惚れたのですから・・・。」 徐に背中に抱き付くエシェラ。今の彼女は嫉妬感よりも羨ましさが強いと感じたミスターT だった。 ミスターT「・・・君にも感謝している、人としての行動を行える事に・・・。」 エシェラ「うん・・・。」 やはりこの話になると雰囲気が重くなる彼。それを肌で感じたエシェラは、ダークと同じく 心が重たくなった。何があったのかと物凄く心配になってしまう。 ミスターT「・・・残り2人、どうしても追加したい人物がいてね。総人数よりも、この2人の為に 創生してきたのだろうと思う。」 暫くして語られる言葉にエシェラは驚く。だがその重苦しさに大きくは驚けず、彼の心中の 決意がどれほど大きなものかだけは窺えた。 ミスターT「・・・幸せだよエシェラは。登場する作品・君達自身の存在は受け継ぐ事で遺せるが、 俺には限界がある。生きられる喜びは・・・本当に素晴らしいのだから・・・。」 更に重苦しさが強くなるミスターT。語る事すら苦しさだと感じ取ったエシェラは、無意識に その背中を強く抱きしめる。これ以上語るなと言わんばかりに。 ミスターT「・・・ありがとう。」 一言、たった一言だけ呟いて沈黙する。しかしその一言が今の彼女にとって大きく癒された。 彼が率先してコミュニケーションを取る裏には、相当な重さを背負っている事を窺えたのだ。 他の面々が相談に訪れるのだが、ミスターTの重苦しさと癒そうとするエシェラを見て動く 事ができない。この場合は時間が解決する事だろうから。 ドクターT「抜粋面々は選べましたよ。後は諸々の設定を決めるだけです。」 シェガーヴァHと共に、他の5陣営から5人の抜粋を催促してきたドクターT。2人とも 誠意ある対応が決め手となり、違和感なく抜粋者を出して貰えたようだ。 やはりリーダーにはこのような人物が選ばれるべきだと、悪陣営の誰もが痛感したのである。 シェガーヴァH「試合の内容はミスターMに告知済みだ。存分に戦って欲しいとの事。」 ドクターT「このロイヤルランブルでどこまで交流が深められるかが勝負です。」 ただ抗争を繰り返すだけではない。他陣営との交流を深める事にこそ意議がある。ドクターT はその点を弁えていた。 戦いたいだけという一念で動いている悪陣営の中では、間違いなく異端児であろう。 シェガーヴァH「ではこちらからは、ワイアット・ゲムス・ガルリーデ・ジャック・グランツの5人 を代表に選ぶ。グランツ以前の面々は3大ロイヤルランブルが控えている。割合 させて頂くよ。」 選ばれた5人が前へと進み出る。大規模ロイヤルランブルとは異なり、抜粋された5人は 緊張した面持ちをしていた。 ドクターT「緊張する必要はないよ、リラックスさ。」 緊張している5人を労うドクターT。この敬いの部分はミスターT譲りのもの。それに5人は 幾分か緊張感が薄らいでいった。 シェガーヴァH「後は他陣営の25人を待つだけだな。」 ゼラエルD「その前に何か試合でもやるかい?」 シェガーヴァH「3大ロイヤルランブルが控えている手前、ここは自重した方がいいだろう。逸る 気持ちは分かるが、我々だけのこの場ではないのだから。」 シェガーヴァHもドクターTの切実さに触れて感化されていく。彼のオリジナルと言える人物 であるリュウジは切実さ溢れる。眠っていたものが開花されていくと言っていいだろう。 スカーレット「陣営決戦の方はどうなるのさ?」 シェガーヴァH「35人が欠けた状態でも問題はないよ。抜粋された面々はこちらを気にせず、思う 存分楽しんでくれ。」 彼の言葉を聞いて安心した面々。抜粋された人物以外は、個々人でスパーリングなどをして 暇を持て余している。何時でも戦えるという気迫が感じ取れた。 一同が抜粋ロイヤルランブルと3大ロイヤルランブルに集中している最中。ミスターTが 動き出した。手帳の内容を黒いカードへと反映させ、30人の面々を召喚したのである。 それに驚く一同だったが、一番驚いているのはクレアTUだろう。 ミスターT「クレアTUの妹としてクレナTUを創生した。まだ非公認だが、ここまで来ると押し 通すしかない。」 クレアTUと瓜二つのクレナTU。しかし妹という事から、背は低く幼さが感じ取れる。 だが戦闘力は計り知れないだろう。 クレナTU「姉さんと一緒に頑張りますっ!」 クレアTU「何だかなぁ・・・。」 全く同じ容姿をしているにも関わらず、性格は180度異なっている。クレナTUはターリュ やミュックみたいなじゃじゃ馬娘に近い。 ミスターM「君のバリエーションの高さには呆れるわ。」 オリジナルを発展させる事を中心としているミスターT。それにミスターMは呆れている。 彼は根っからオリジナルを創生するために、この概念は考えられないもののようだ。 ミスターT「他にはネット関連の友人を抜粋した。ネットを始め立て草創期からお世話になっている 人物のキャラクターだ。」 ミスターM「俺もリアルでは一度しかお会いしていないよ。」 この4人の人物はミスターTとミスターMしか分からない人物達である。他の面々には誰が 誰だか全く分からない。唯一分かるとすれば、それは彼らが猛者であるという事実だ。 ミスターT「名前はアビスTT・ナイトTC・ピースTT。他に3人ほど存在したが、人員枠の問題 で除外するしかなかったよ。」 アビスTT「こちらは右も左も分からないので、ミスターTや皆さんにフォローして貰わないと。」 ナイトTC「暴れられれば文句は言わんさ。」 雰囲気からして一同と通ずるものがあるのだが、個々人の性格は全く未知数である。それだけ 動きが読めないという現れだった。 ミスターT「最後はミツキTNとナツミDTA・・・。」 人物の紹介で名前を告げた直後、ミスターTは声を詰まらせる。それに気付いた2人は、 彼の代弁と言わんばかりに動き出した。 ミツキTN「ミツキTNわぅ。元気一杯に暴れまくるので、よろしくわぅ!」 ナツミDTA「一応ミツキTNの姉貴分のナツミDTAと言います、よろしく。」 滅茶苦茶元気一杯のミツキTNに、相対する程の大人しいナツミDTA。こちらもクレアTU 姉妹と同じように火と水の間柄と言える。 ミスターM「ミツキTNさんは何処でもその明るさだよなぁ・・・。」 ミツキ「わぅわぅ。」 シルフィアTL「ナツミDTAさんは私に雰囲気が似てるね。」 ナツミD「マスター曰く、恩師に似ている方だと言われました。」 ミスターTの異変に気付いたミスターMとシルフィアTLも彼のフォローに回る。彼が語るで あろう言葉を先読みし、ミツキTNとナツミDTAと接していった。 新たに創生された面々は直ぐに意気投合する。唯一アビスTT達が取っ付き難そうな雰囲気 だが、そこはコミュニケーションの覇者のターリュとミュック。彼らとの会話を行いだし、 馴染ませようと走っている。 エシェラ「大丈夫ですか?」 ミスターT「ああ・・・。」 椅子に座りテーブルに伏せるミスターT。その彼にエシェラが駆け付け安否を気に掛ける。 彼女の心中も押し潰されそうな苦しみが襲い掛かっていた。 エシェラ「・・・ミツキTNさんとナツミDTAさんでしたか。お2人と現実で何らかの出来事が あったのですね。」 ミスターT「鋭いな・・・。」 エシェラ「・・・二股とかだったら叩き潰しますよ。」 冗談半分本気半分で語るエシェラに、ミスターTは小さく笑っている。しかし本当に笑って いる雰囲気には感じられない。 ミスターT「ミツキTNは現実でも元気一杯の活発な女性だ。周りを鼓舞し励まし続ける。どの様な 状態でも己を見失わない。見失っても立ち直れるだけの力を持っている。」 徐にミスターTが2人について語り出す。彼の隣の椅子に腰を掛け、語られる内容を伺う エシェラ。それでも心中は今だかつてないほど重苦しい。 ミスターT「ナツミDTAは・・・いや、これは話さない方がいいだろう。」 内容を知りたいと思うエシェラだったが、あまりにも辛そうな彼を見て思い留まった。これ 以上首を突っ込めば、今以上の苦痛を彼に与えてしまうと直感したのだ。 ミスターT「・・・2人を追加するのには躊躇った。2人と私との間柄をネタにするのが失礼だと 思った。でも2人の生き様は俺を鼓舞する存在でもある。膝を曲げずに突き進めと。」 エシェラ「そうだったのですか・・・。」 ミスターT「・・・現実でお前がいてくれれば、共に彼女の激励に行けた。お前とならどの様な苦節 だろうが生き抜ける・・・。今の俺は・・・余りにも無力だ・・・。」 彼の頬を涙が伝う。己の無力さをここまで感じる事はないだろう。この場合は彼自身が突き 進む以外に道がないのだから。 ミスターT「・・・エシェラ、これを暫く預ける。」 徐に懐から愛用の手帳と黒いカードが入ったレザーケースを取り出すミスターT。それを エシェラに手渡した。 エシェラ「な・・・何をなさるのですか・・・。」 ミスターT「お前に俺の全てを一時託す、暫く休ませてくれ。既にエディットは山場を超えた。後は 細かい作業のみ。その管理を担って欲しい。」 エシェラ「で・・ですが・・・私では扱えません。」 声色を裏返して語るエシェラ。究極の力の源でもある手帳と黒いカードを手に持ち、身体が 無意識に震え上がる。 ミスターT「実はね、一同はこの力を使える能力はある。それを封印させているだけなんだよ。今は お前だけを解除した形にしてある。お前の描く戦場で一同を沸かして欲しい。」 エシェラ「・・・・・。」 直ぐに決めかねているエシェラを尻目に、ミスターTは徐に立ち上がり歩き出した。慌てて その彼に付いて行く彼女。 ミスターT「大丈夫だよ、今だけの問題だから。時間が解決してくれる。」 エシェラ「で・・でも・・・。」 目の前に置かれた立場に困惑するエシェラ。その彼女の目線まで屈むと、ソッと唇を重ねる ミスターT。単なる口づけだけで一瞬で迷いが吹き飛んだ彼女だった。 ミスターT「俺に絶大な信頼を寄せてくれているのなら、俺もお前に絶大な信頼を寄せたい。暫くの 間だけでいい、担ってくれ。」 エシェラ「・・・分かりました。」 エシェラが小声で了承すると、それに小さく微笑むミスターT。彼女の頭を優しく撫でると、 試合会場を去って行った。 今のエシェラは絶対担えない大役を任された。それに対しては拒んだり逃げようとする心は 一切ない。今の彼女の心が一番辛く重いのは、彼の物凄い辛い心情を察知したためだ。 この場だけは彼の頼みを聞くしかない、エシェラはそう決意する。託された彼の愛用の手帳 と黒いカードが入ったレザーケースを胸に抱く。 心に思い描いた内容を実現するために、彼女は臨時の創生者として動き出した。 突然の30人の出現で流れが止まった試合会場。しかし彼らが打ち解け出した頃、再び動き だす。抜粋ロイヤルランブルと3大ロイヤルランブルに向けて打ち合わせをする面々。 そこに雰囲気が一変したエシェラが戻ってくる。覆面こそしていないが、その出で立ちは ミスターTと殆ど同じである。手帳と黒いカードの力を使ったため、彼女の心はミスターTと 同じ据わりを見せていた。 今のフリハト出身のエシェラは、創生者化したエシェラ=ザ・レミニッセンスである。 ゼラエル「何だぁ〜、何かのデモンストレーションか?」 ベロガヅィーブ「創生者ごっこという訳かね。」 エシェラの出で立ちにお遊びかと勘違いした悪陣営の面々。それに一部のロスレヴ陣営や 新陣営連合の面々が便乗している。何らかの切っ掛けを作ってくれたという意味合いだろうと 判断した彼らは、エシェラの姿をネタとして扱いだしていた。 デュウバD「止めなお前ら、彼女は本気だ。」 ビィルガ「ここまで張り詰めた雰囲気、今まで見た事がない。」 しかし何時もは悪態を付くビィルガやデュウバDが擁護する発言をする。エシェラとは数度に 渡って戦いを演じてきた間柄だ。彼女の身体から滲み出る心の決意をいち早く察知している。 それと同時にただならぬ事態の重さに困惑してもいた。それだけ彼女の行動が物語る意味は 数多い。 ライガス「なら本気かどうか、力を見せてくれよ。そうすれば信用するぜ。」 アマギDA「見せてみなよ。創生者モドキを演じるなら、それ相応の力がある筈だ。」 しかしエシェラと交戦経験が少ない面々は、ビィルガ達の言葉に耳を貸さない。完全に一同を 沸かすためのイベントだと勘違いしている。徐々にエスカレートしていく罵倒に、ついに彼女 が動き出した。 胸のジャケットから黒いカードが入ったレザーケースを丁寧に取り出す。そこからカードを 複数枚取り出すと、何と思いっ切り握ったのだ。 直後ゼラエル達が凄まじい叫びを出して悶え苦しむ。ミスターTでさえ圧力を掛ける程度の事 しか行わなかったのに、エシェラは構う事なく全力で握ったのである。 エシェラ「これで満足かな。お前さん達の望むがままに行った。少々ドギツイやり方でね。」 声色はエシェラのものだが、雰囲気がまるで違った。それは言葉を聞いて初めて知った一同。 どこまでも据わった発言は、間違いなく彼女が本気であるという現れだ。 エシェラ「ビィルガさん・デュウバDさん、フォローありがとう。」 ビィルガ「貴方とは何度戦ったのですか。その貴方の心情ぐらい直ぐに察知できますよ。」 デュウバD「どうしてこうなったのかは聞かないよ。私達が望むのは湧き上がる試合を行うだけ。」 エシェラ「そうだね。」 力強く握ったカードは元通りになっている。今の彼女なら何でもできるという表れだろう。 それをレザーケースにしまうと、胸ポケットへと収めた。 ビィルガ「では早速で悪いが、抜粋ロイヤルランブルの面々と顔を合わせてくれ。私達はリングの 設定などを行う。」 デュウバD「普通に戦える方が幸せだねぇ。」 ぼやきながらも行動するビィルガ達。一同を沸かすために動いているだけに、純粋に戦いに 投じれないのも事実だ。この事を臨時の創生者になったエシェラは身に滲みる思いだった。 ミスターM「こればかりはどうしようもないしな・・・。」 シルフィアTL「そうね、暫くは休息が必要かな。」 エシェラ「暫くの間、よろしくお願いします。」 一同の代表格として存在する面々には、事の次第を語るエシェラ。それに一番納得を示す のはシルフィアTL。流石はミスターTの師匠である。 エシェラTB「私達の存在が問われそうだけど、貴方が一番マスターに認められているからね。」 エシェラTA「私達はサポートに回るしかないか。」 同じエシェラ本人から発祥したエシェラTBとエシェラTA。2人もミスターTに心を寄せる 人物でもある。しかし彼が心から信頼を寄せているのは、目の前の臨時創生者を遂行している オリジナルのエシェラなのだ。こればかりは仕方がないだろう。 ミツキTN「やっぱり気にしてるのね・・・。」 ナツミDTA「彼の事だから仕方がない・・・。」 エシェラ「時間が解決してくれますよ。」 途中で異変を見せたミスターTを心配するミツキTNとナツミDTA。その2人にエシェラ が事の次第を述べた。案の定気付いていたと語る2人。それだけでエシェラは心が押し潰され そうになる。 ミツキTN「わた達が頑張らなきゃダメわぅね。」 ナツミDTA「そうだな。エシェラさんもあまり気を落とすなよ。」 エシェラ「分かってます。」 表向きは強がろうとも、心はそれを支えられない。現実と非現実との境目は、こうも大きく 現れている。助けたくとも助ける事ができないのだから。 今だかつてないほどの苦しみを味わうエシェラ。しかしそれだけ相手を思っているという現れ である。 とにかく今は動くしかない、誰もがそう思っていた。一同の産みの親のミスターT自身が ダウンしている現在、自分達だけで頑張らなければならないのだ。 その現状を目の当たりにした一同は、エシェラが思う心を理解する。そして今現在の彼女の 決意がどれだけのものかを身を以て知ったのであった。 第49話へと続く。 |
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