アルティメットエキサイティングファイターズ 〜集いし鋼鉄の勇者達〜
    〜第34話 行き詰まり〜
    ロスレヴ陣営に襲撃を企てたミスターT達。最初に襲撃を受けたリュウル達は為す術なく
   倒れ、それに怒ったファナ達が反撃に転じる。
    そこに現れるは新しい創生者、ビィルガ達である。試行錯誤をしながら動く所を見ると、
   まだ完全に慣れ切ってはいなかった。
ビィルガ「何事だ?」
ファナ「ミスターTが無差別に襲撃をしてきたのですよ!」
トムM「正当防衛だ、このまま戦わせてもらう。」
   戦いに躍起になり、その場の戦闘で決着を着けようとするファナ達。そこにあくまで中立的に
   仲介し、事の終息を図りだしたビィルガ達。
ポーレス「待て待て、試合で決着を着ければよかろう。お前達も無差別に行動しては収集が付かなく
     なってしまう。」
トーマスK「なら試合を行うまでだ。ここは公平に裁いてもらうため、スペシャルレフリーを希望
      する。」
   初の役割とあって緊張気味のビィルガ達。その彼らを落ち着かせるべく、試合という安息の
   場を提供したトーマスK。こうなると試合こそが休息としか考えられなくなるだろう。
ビィルガ「了解した。ミスターTも異存はあるまい?」
ミスターT「創意に従うまで。」
   一言語ると指定のリングへと向かいだすミスターT。応じるは言葉でなく行動で。それを見事
   に実践していると言える。哀愁漂うミスターTの生き様には、一同見入ってしまう程だ。

    リングへと上がる指定の一同。しかし打ち出しをしても、どういった試合展開をさせるのか
   全く未定だった。創生者の役割を担っているビィルガ達も、機転溢れる行動はできていない。
ミスターT「まったく、少しは気を使わさせないでくれ。試合はスペシャルレフリー、形式はタッグ
      マッチ・レフリー2人。リングはバックラッシュ、これでいいだろう。」
   創生者の役割から外れているミスターTが、一同の行動に関して述べる。周りは呆れ返るが、
   それは本来の彼の役割でもある。機転の良さには頭が下がる思いの一同だった。


スペシャルレフリーバトル登場+試合動画



    (スペシャルレフリーバトル終了)
    本来ならミスターTがファナ・トムM・トーマスKの対戦を受けるはずだった。その場合は
   普通にハンディキャップバトルが関の山だ。
   しかし創生者役を担うビィルガ達が慣れておらず、急遽試合でのストレス発散を選んだ。
   これにより試合は変更されたのだ。
    パワーバランスを保つために、在り得ない組み合わせで対戦もした。それは対戦側である
   ファナがミスターTと組み、トムMとトーマスKに対抗したのであった。

    圧倒的な戦闘力でトムMとトーマスKを撃破するミスターT。ファナは完全に足手纏いな
   存在だろう。倒されてはいない彼女だが、役割の手前では2人と一緒に倒れる役をした。

ミスターT「この程度か、笑わせる。」
    ヒールを演じるミスターT。しかし悪役とは程遠く、相手の力を試すトレーナーの役割に
   近いとも言えた。もっとも、禁断覚醒の彼に敵う者は存在しないのだが。
ファナ「こちらを襲撃して何が楽しいんだ!」
   やられながらも言い返すファナ。しかし顔では申し訳なさそうに演じる所、それに苦笑いを
   浮かべるミスターTだった。
ミスターT「それは私を倒してから叫ぶんだな。何時でも相手になってやる。」
   そう語るとその場を去って行く。意味もなく襲撃する事に違和感を感じずにはいられないと、
   ミスターTの表情は曇ったままである。



    そこに彼を狩る者として、独立部隊のエシェラ・シンシア・エリシェが現れた。去ろうと
   しているミスターTを襲撃しようと企てる。この場合はどちらが悪役か分からない。
エシェラ「やっと見つけた。積年の恨み、ここで晴らさせてもらう!」
   何を叫んでいいか悩んでいた彼女だが、狩る者として相応しい言葉が脳裏を過ぎる。その役割
   を復讐者に位置付ければ、追う者としての対応もできた。
    しかし実際の所は恨みも何もなく、ただ彼と一緒にいられれば構わないという一念が強い。
   複雑な心境を抱きつつ、猛烈にミスターTに攻撃を開始した。

    だが結果は目に見えていた。駆け足で近付きクローズラインを放とうとするが、それは彼の
   チョークスラムというカウンターを受けてしまう。勢いが付いたまま突進したため、首に直撃
   した張り手は一撃必殺に近かった。
    チョークスラムを食らったエシェラは気を失いそうなほどのダメージを食らったが、直後に
   ミスターT十八番の体力強制回復を施してもらい立ち直した。
   しかし技を食らったからには、その後の行動も心得ている。床へと叩き付けられた彼女は、
   やられた振りをしてダウンした。
ミスターT「このような腕では私を倒す事など厳しいな。腕をあげて出直してこい。」
   倒れるエシェラを一瞥し、シンシアとエリシェに威圧を掛けながら去っていくミスターT。
   その後を創生者軍団がそそくさげに付いていく。幾分か和やかな場面に、一同笑いを堪えて
   見つめていた。

    その後一同は裏方で雑談などは行わず、この展開に便乗しだす。この流れは巨大なシーズン
   と言えるだろう。それぞれの持ち味を活かしながら抗争を開始した。
   だが心中では迷走しているのが目立ち、それは自然と行動に出始めてしまうのであった。



ミスターT「ここまでくれば、後は何とかなるだろう。」
ミスヒール「皆さん独自に動き出しましたし。」
    率先して一同を牽引していたミスターT達。しかし今では一同独自に動いており、彼らが
   手を下さなくても問題はなかった。
ミスターT「真敵役が聞いて呆れるよな。完全な中立的存在になり、裏方の行動を率先している。
      さながらGM陣営と何ら変わらない。」
ミスヒール「全てマスターのお陰です。目的が一向に定まっていない私達を牽引してくれた。感謝に
      堪えません。」
   ミスヒール達の位置付けは、悪陣営をも凌駕する悪役という存在。またギラガス達もビィルガ
   達を凌駕する中立陣営でもある。その彼らは本来の役割から遠退いた存在となってしまった。
ギラガス「ミスヒール嬢達こそが中立陣営とも言えるでしょう。デュウバD陣営には取って代われる
     ほど悪役ではありません。」
ミスターT「ギラガス達もビィルガ達とは程遠い存在だな。この場合は完全独立の陣営として、今後
      活躍してもらった方がいいかも知れないね。」
   もはやミスヒール達とギラガス達の中立的存在は不動のままになる。むしろ善陣営に近い存在
   であろう。これによりビィルガ達とデュウバD達の真敵役の存在も不動のものとなるだろう。



シンシア「エシェラさん大丈夫?」
    本人は体力強制回復を施してもらっているので何ともない。しかしあれだけの勢いある攻撃
   を食らったのだ、誰もがダメージは残っていると思ってしまう。
エシェラ「大丈夫ですよ。でも、マスターの拳から痛烈な悲しみが伝わります。どんな役割を担おう
     とも、本心は拳から伝わるものですね。」
   思い人の心は意図も簡単に読めてしまう。特にエシェラの場合は、2人より格段にミスターT
   を強く思っている。それ故に簡単な接触でも相手を把握できてしまうのだ。
   これでは敵わないとシンシアとエリシェは思った。ミスターTへの一途な思いは、自分達を
   遥かに凌駕している。格が違いすぎるのだ。


エシェラ「ふむ。面白い展開として、ビィルガ達と共闘するという手段もいいかも知れない。」
    暫くしてからエシェラが話す。それはビィルガ達に荷担し、一時の戦力増強と抗争拡大を
   考えた。これにはシンシアとエリシェも頷く。
エリシェ「似非創生者の力を利用すれば、案外白熱した展開になるかもね。」
シンシア「でも、最終的に帰属するのは決まっています。」
   シンシアが語った言葉にエシェラとエリシェは頷く。3人が追い求める人物こそが、自分達の
   帰属する場所なのだ。そのためには手段は問わない、それが3人の役所としたのである。

    早速動き出したエシェラ達。戦力不足で悩まされているビィルガ達に、用心棒を進み出た。
   これには諸手を挙げて喜ぶ彼ら。勢いと戦闘力だけならミスターT達に匹敵する面々だ。
   この参入は非常に心強いものとなった。

    しかし役割の手前、以前のようなヒール思考の行動はできずにいる。創生者という凄まじい
   大任を行っている現在、四方八方手探りな状態だからだ。
   以前の彼らであれば力強い助っ人が加われば、間違いなくヒール思考まっしぐらの行動をした
   であろう。今の彼らにはその余裕すらないようである。



ミスターT「強大な力、か。」
ミスヒール「どうなされました?」
    GM軍団から独立したミスターT達は、ミスヒール陣営・ギラガス陣営・ディルヴェズD・
   メルシェードT・ミスEと行動を共にしている。
   そんな中、手帳を見ながら徐に呟くミスターT。それを窺ったミスヒールは、その内容を問い
   質した。
ミスターT「完全な悪役が存在今、新たな悪役が必要なのかも知れない。お前さん達は既に独立した
      中立の存在だからね。」
ミスヒール「私でも充分担えますよ。」
   簡潔に応対したミスヒールだが、ミスターTが何を言いたいのかを理解する。それは汚れ役を
   自分に押し付けずに、自らが担おうというものだ。
   自分を思う心意気に心を打たれるミスヒール。しかし自分の立場を弁え、直ぐさま己の存在を
   示しだす。
ミスヒール「私に哀れみなど必要ありません。それでは真敵役として創生された意味がなくなり、
      存在そのものが無駄になります。」
ギラガス「ミスヒール嬢、マスターは貴方を思って語ってくれているのですよ。」
   口論を聞いたギラガスはミスターTを擁護する発言をしだす。それはミスヒールも擁護する形
   になるが、今の彼女は存在を奪われると勘違いしていた。
ミスターT「お前さんの立場を奪う事はしないよ。だが役割が変わるのは事実だ。それだけは弁えて
      ほしい。」
   何やら手帳にペンを走らせながら、ミスヒールを慰める発言をするミスターT。どうやら彼女
   が納得するような行動を行いだした様子。それは新たなる人物の作成だろうか。
ミスターT「まあここは一同に任せる。私はちょっとした息抜きの場を作るとしよう。」
   どうやら話の内容から人物作成ではなさそうだ。苦肉の策といった雰囲気が色濃い事から、
   この創生はかなり大規模なものだと確信した一同。

    今は彼の言う通り、それぞれの役割を担うしかなかった。ミスヒールとギラガス達は、幾分
   重い足を引きずりながらリングへと向かって行く。

    流石のミスヒールやギラガス達も疲労し切っていた。自分の役割を削られるという部分は
   黙認できても、それ以前に迷走しているこの場の雰囲気に負けてしまっていた。
   それを素で感じ取っているミスターT。だからこそ大きな打ち出しを考えているのだ。



    エシェラ達の加勢でビィルガ陣営は強力な助っ人を得た。だが彼らが迷走しているのは言う
   までもなく、動くに動けない状態が続いている。
   創生者役が動けないというのは、結果的に周りも停滞に陥る。それを一同は身を以て思い知る
   のだった。

    やはり一同が願う所は、以前のような活気がある戦場。それは今も創生者役を演じている
   ビィルガ達も同じ考えであった。



ミスターT「このプランはマズいですかね?」
    新たに考えたプランを確認するミスターT。それを見せる相手は師匠であるミスターMだ。
   それだけこの打ち出しが大きなものだというのが窺える。
ミスターM「プロレスから離れると取り返しの付かない事になるぞ。」
ミスターT「それでも場は求めています、一時の安らぎを。」
ミスターM「それはそうだがな。」
   ミスターMが見ても、今の一同は迷走し切っている。このままでは歓喜ある試合はできず、
   最悪停滞し終焉を迎えるだろう。
ミスターM「まあ最終判断は君に委ねる。後悔だけはしないように。」
ミスターT「心得ていますよ。」
   ミスターTの肩を軽く叩き、一服しながら去っていくミスターM。ミスターTも腹が据わった
   のか、記述した内容を再確認して一服しだす。

ミスターT「・・・今その瞬間を大切に、か・・・。」
    一同を見つめ、小さく呟くミスターT。彼の心中には悩み続ける一同の苦悩が直に流れて
   来ている。そして新たなる決断、今のミスターTには凄まじい重圧が圧し掛かっていた。

    第35話へと続く。

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