アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜
    〜第3部・第14話 最終話・レミニッセンス・前編2〜
シューム「あ、起きた?」
    不意の声に驚くも、俺の頭を膝の上に乗せているシュームがいた。傍らにはナツミYUも。
   あれから着替えを済ませて自室へ戻るも、高所からの恐怖から窓際に近付く事ができない。
   そこでその近くで寝転がり空を見つめていると、そのまま転寝をしてしまったようだ。
ミスターT「あら、寝ちまってたか。」
ナツミYU「バルコニーに出ていなかったのは、やはり高所からの恐怖です?」
ミスターT「・・・見るだけでも怖ろしい・・・。」
   本当に怖すぎる。これ程までに高所恐怖症に至っている事にも驚くが、その恐怖度は年々増加
   の傾向にある。またそれは水に対してもそうであり、とにかく怖いとしか言い様がない。

シューム「寝ている最中、泣いていたわよ。やはり貴方は今もお2人の事が気掛かりで仕方がない
     ようね・・・。」
ミスターT「ごめんな・・・。」
ナツミYU「謝る必要なんかないですが、できれば心配する私達の事も気にして欲しいものです。
      貴方の苦痛は私達の苦痛、これは昔も今も変わりありません。」
ミスターT「そうだな・・・。」
    俺の事を最大限気遣ってくれているシュームとナツミYU。しかし俺の心に空いた穴はそう
   簡単に癒える事はないとも知っているようだ。

ナツミYU「そうそう、さっき孤児院から緊急の連絡があってね。」
シューム「シェヴ叔母様とディム母さんが向かわれたわ。ナツミAちゃんとミツキちゃんも一緒に
     行ってるのよ。」
ミスターT「緊急か・・・、もしかしたら・・・。」
    今朝から感じている胸騒ぎはこれなのか。孤児院からの緊急とあれば、居住している子供達
   に何かあったという事になる。それ以外ではヴェアデュラなどの不意の孤児の保護だろう。

    ・・・孤児の保護・・・、まさかな・・・。


ミスターT「他の面々は海岸か?」
シューム「今も戯れてるわ。特にメアティナちゃんとメアティヌちゃんが凄い事になってるけど。」
ナツミYU「スーパースターそのものね。」
    バルコニーの一歩手前に椅子を持ち出し、そこに座りながら一服をする俺達。そう言えば
   ナツミYUも最近一服している姿を見るわ。高齢だから身体に害を成すような行動だけはして
   欲しくないのだが。
ナツミYU「・・・また年齢の事を思ったでしょ?」
ミスターT「・・・魔の千里眼め。」
シューム「フフッ。直感と洞察力ならナツミYUの方が遥かに優れてるからねぇ。特に若い頃より
     今が一番凄いわよ。」
ミスターT「心は若かりし頃の女性の状態だからか。心が据わっていれば身体が老いてもそれ以上の
      力を出せる。シェヴやディムが顕著だな。」
   老いて盛んなヴァルシェヴラームとセルディムカルダートの姉妹。目の前の2人よりも高齢
   だが、その直感と洞察力は計り知れないぐらい強い。特に精神力は身内で最強だろう。

ナツミYU「でも君が思ってる通り、あまり吸わないようにするわよ。私は元より君に心配を掛ける
      事だけはしたくないから。」
シューム「私への心配がないのが気になるけど、まあナツミYUよりは若いしね。」
ナツミYU「先輩・・・それは皮肉ですか。」
シューム「褒めているのよ。ミスターT君が思うように、とても80に近い年齢には見えないわ。
     私なんか最近若い来店者さんにお祖母さんって言われてショック受けたし。」
ナツミYU「そ・・それは痛い・・・。」
   その一言が相当聞いたようで、かなり落胆しているシューム。ナツミYUも我が事のように
   落胆していた。俺が見るからには2人ともエシェラ達のような50代に見えるのだが。


ミスターT「・・・心こそ大切に、だな。」
シューム「それは愚問よ、私達の共通の合言葉だからね。」
ナツミYU「その言葉にどれだけ励まされ続けたか。」
ミスターT「それに彼女達が一番体現していたわな・・・。」
    不意に涙が流れる。約1年前の劇的な出会いと別れがあった、ナツミEとミツキEの事を
   思い出してしまう。彼女達ほど心こそ大切にを体現している人物はいない。
ナツミYU「大丈夫ですよ。その何度も思われる一念は必ず次の彼女達に伝わっています。」
シューム「そうですよ。常々日々に強き給え、心こそ大切に。そして思い立ったら吉日と。ミツキ
     ちゃんの坐右の銘でもあり、貴方の坐右の銘でもある。それがあのお2人にしっかりと
     受け継がれていますから。」
ミスターT「そうだね・・・。」
   両側から俺の肩を軽く叩いてくるシュームとナツミYU。その2人に頭を下げた。この美丈夫
   達には本当に気苦労をさせてしまっているわ。

シューム「気分転換に3人でどこか出掛けましょうか。」
ナツミYU「いいですね、行きましょう。」
ミスターT「他の面々に捕まらないうちにいくか。」
    こちらの心情を察知したのか、気分転換にと散歩を提案してくるシューム。それに便乗する
   ナツミYUと俺。夜にはまだ時間があるため、歩いての行動なら問題ないだろう。


    ホテルの玄関先で海水浴から上がった娘達や女性陣に遭遇するが、こちらの心情を察知して
   か気に掛けないでくれていた。その彼女達に小さく頭を下げる。

    しかし僅か数時間でよくぞまあ日焼けしたものだわ。後々のヒリヒリ感が大変そうだが。
   まあそれも夏のいい思い出の1つとなろう。


    その後、俺達は海岸通りを雑談しながら散策した。2人には察知されてはいると思うが、
   とても高齢とは思えないほど若々しい。まるで初めて出会った全盛期の頃の2人のようだ。

    この一時の幸せを心から満喫したい。今の俺達でしか味わえない、本当に大切な瞬間だ。
   何れその瞬間が来るまで、俺は彼女達の背中を支え続けていく決意だ。



ミスターT「う〜ん、迷子か・・・。」
    何気ない雑談でも今の俺には究極の癒しと言えた。それを自然的に応じてくれるシュームと
   ナツミYU。そんな中、浜辺で迷子の双子を見付ける。容姿からして、どう見ても双子としか
   思えないものだ。更に驚くのがディルヴェズ・ディルヴェズLKと同じ様に、異なる性別の
   双子だった。あの東京駅の一幕が脳裏を過ぎる。
ミスターT「そう言えば君達の名前を聞いてなかったよね。俺はミスターT、彼女達はシュームと
      ナツミYUという。」
双子の男の子「デュシアEです。」
双子の女の子「デュシアLといいます。」
   双子の名前を聞いてずっこけそうになる。ディルヴェズ・ディルヴェズLK兄妹と同じく、
   こちらもデュシアE・デュシアLという兄妹だった。同じ名前を使うとは・・・、2人の母親
   の考える事は驚きである。

ミスターT「迷子とは言っても、凄い落ち着いているのが何ともまあ・・・。」
シューム「デュシアEちゃんとデュシアLちゃんは何歳なの?」
デュシアE「今年で6歳です。」
ナツミYU「この肝っ玉で6歳か・・・。アサミとアユミでは考えられないものだったわねぇ。」
デュシアL「大人びているとよく言われます。」
    そう言えばヴェアデュラも久し振りの再会時も6歳だったな。今時の子供達の発育は本当に
   凄いとしか言い様がない。というかデュシアEとデュシアLの母親が優れた育児をしていると
   言うべきか。

    デュシアE・デュシアLを連れて砂浜を散策する俺達。シュームやナツミYUの雰囲気から
   安心できるのだろう、その表情はとても迷子状態とは言えなかった。


    暫くして地元の警察官と一緒に母親らしき人物が現れる。しかも近くにウインドとダークH
   もいるではないか。地元の警察官がエラい緊張気味になっているのが何とも言い難い。

母親「ああっ、よかった・・・。」
地元警察官「無事で何よりですね。」
    デュシアEとデュシアLの安否を気にする母親だが、当の双子はケロッとしている。この
   2人は大物になりそうだ。
ミスターT「何でウインドとダークHがいるんだ?」
ウインド「皆さんが身支度を済ませてホテルへと戻る際、こちらのデュリシラ様と遭遇しまして。」
ダークH「地元の警察官の方と一緒にお子さんを探して回っていた次第です。」
ミスターT「なるほど。それとこちらのお母さんはデュリシラ嬢と言うのか。」
   双子の母親、デュリシラ。その出で立ちに過去の記憶が脳裏を過ぎる。どこかで見たような
   風景が俺の青春時代を呼び起こす。これは何時だっただろうか。

シューム「フフッ、ミスターT君も思ってるようね。君と初めて出会った頃の私と同じと。」
ミスターT「あ・・そうか、草創期のシュームとリュリアに似てるのか。」
デュリシラ「あ、初めまして。デュシアEとデュシアLの母、デュリシラと申します。」
ミスターT「ミスターTと言います。こちらはシュームとナツミYU。」
    本当に綺麗な母親だ。全盛期のシュームを彷彿とさせる。その凛とした姿は女性というより
   は男性に近い。メアティナとメアティヌに近いのだろう。
デュリシラ「本当にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。私の不注意でこの子達と
      はぐれてしまって・・・。」
デュシアE「母さん、電車の時間は大丈夫?」
デュリシラ「あ・・・そうだったわ、急がないと帰れなくなる!」
デュシアL「ミスターTさん。出会って小時間でしたが、楽しかったでした。」
デュシアE「そろそろ家に帰りますね。」
ミスターT「あ・・ああ、分かった。今度喫茶店に遊びにおいで。」
デュシアE&デュシアL「分かりました!」
   ・・・この双子がデュリシラの子供とはとても思えない。まだ6歳だというのに、この自立心
   は凄まじいものだわ。今時の子供の発育は本当に尋常じゃない。


    再会の余韻も虚しく、帰路の時間が間に合わないと去っていくデュリシラ親子。一応連絡先
   は聞いているので、後日改めてお礼をしたいと言ってきている。

    そそくさげだが手を繋ぎ去っていく後姿は、遠い昔にシュームとリュリアがそうしていた
   姿とダブる。そして近々ではナツミEとミツキEと手を繋いで歩いていた姿が・・・。

シューム「あのお2人を思い出し涙?」
ミスターT「あ・・ああ、すまない・・・。」
    俺にハンカチを手渡してくるシューム。それを受け取ると、サッと目元を拭った。運命は
   本当に残酷だな・・・。
ナツミYU「大丈夫ですよ、全て承知済みです。貴方の限りない優しさには脱帽していますから。」
シューム「私達は私達の生き様を、ね。」
ミスターT「そうだな・・・。」
   両手を握ってくるシュームとナツミYU。心から労ってくる姿に、再びナツミEとミツキEを
   ダブらせてしまう涙が溢れてきた。俺は本当に弱い・・・。


    デュリシラ親子を見送った後も、俺達は散策に歩いた。地元の警察官とウインドとダークH
   と別れて、癒しの一時を満喫する。

    それでも俺の心にはまだモヤモヤが残っている。こればかりは時間が解決するしかないの
   だろうな。



ヴェアデュラ「あ、帰ってきましたよ。」
    色々と長い雑談をしながらの散策だったため、ホテルへと戻ったのは夜の6時であった。
   約4時間近く散歩していた事になる。最上階の専用部屋に戻るとヴェアデュラが駆け付けて
   来た。その奥では何やら身内が集まって何かをしている。

ヴァルシェヴラーム「お帰り。一時の幸せを満喫できた?」
ミスターT「フフッ、シェヴには全てお見通しなんですね。」
ヴァルシェヴラーム「まあね。それよりも驚く事があるわ。」
    そう言いながら俺を手招くと、女性陣の中心へと案内される。そこにはバスケットに寝か
   されている赤ん坊がいるではないか。しかも2人。姿形からして双子のようだ。
ミスターT「緊急連絡は孤児の引き取りだったか、ヴェアと同じ様に。」
ヴァルシェヴラーム「それもあるけど、驚くのは胸のアザよ。」
   それぞれの赤ん坊の胸を見せるヴァルシェヴラーム。それを見て驚愕した。その形は生前の
   ナツミEとミツキEのそれと全く同じだったのだ。しかも左右対称の形から、それが当の本人
   である事を錯覚させてしまう。

    無意識だった。徐に2人の赤ん坊を胸に抱き寄せる。するとまだ幼いながらも、まるで俺を
   分かるように手を顔に当ててきた。その姿を見た瞬間、声こそ挙げないが大泣きしてしまう。

    間違いない、この双子はナツミEとミツキEの生まれ変わりだ。目元のホクロ、胸のアザ。
   それも左右対称と彼女達と全く変わらない。そして俺に向けてくる一念が、彼女達だと直感
   せざろう得なかった。

ミスターT「・・・そうか、戻って・・きてくれたのか・・・。」
    泣けて仕方がない。今さっきまでナツミEとミツキEを思えば涙が溢れて仕方がない状態が
   続いていたのに、その生まれ変わりとなる彼女達が目の前に現れたのだ。これはもはや運命と
   しか言い様がなかった。

    地より湧きでし菩薩の再来、か。本当に生きている間に奇跡と言うのは起きるものだと、
   この時ほど痛感させられた事はないわ・・・。

ナツミYU「・・・凄いわね。この子達から発せられるオーラは、間違いなく彼女達と全く同じ。
      生まれ変わりとしか取れないわ。」
    胸の中にいる双子の頬を人差し指で撫でるナツミYU。すると今度は彼女に手を向ける。
   それを見たナツミYUも声には出さないが大泣きしてしまった。
ナツミYU「・・・この77年間生きてきて・・・、これ程までの奇跡の体験をしたのは生まれて
      初めてよね・・・。実際に生まれ変わりかどうかまでは確信は掴めないけど、この子達
      の言動を見れば・・・そう信じたくなるわ・・・。」
ミスターT「・・・俺達が約1年間思い続けていた一念は・・・、時を超えて舞い戻るか・・・。」
   今も涙が溢れて仕方がないが、悲しみは全くない。むしろ今は歓喜で一杯である。約1年前に
   逝去したナツミEとミツキEの再来とも言える双子が舞い戻ったのだから。


ミスターT「シェヴ、この2人の身体検査はしたのか?」
ヴァルシェヴラーム「一応はしてきたけど、結果が出るのは数日後になるわ。それよりもこの子達を
          どうするかなんだけど。」
ミスターT「それは愚問、俺が命を賭して育て上げます。あの時、心から支えられなかった分まで
      誠心誠意支え抜きますよ。」
    胸に抱いている双子の赤ん坊と身内全員に固く決意を述べた。今の今まで、当時の後悔と
   罪悪感しか残っていなかった。しかし今では限りない慈愛と愛情が湧き出てくる。俺の命を
   賭けてでも、この双子は必ず守り通してみせる。

メアティナ「及ばずながら、私達も最大限支え抜きます。このお2人があのお2人の生まれ変わりで
      あれば、支え抜かないのは愚者というもの。」
メアティヌ「お父さんの年齢からして、最後まで支え抜く事ができないかも知れません。その時は
      私達が母親代わりに育て上げます。」
ミスターT「ありがとう、メアティナ・メアティヌ。」
    メアティナとメアティヌが女性言葉で真剣な決意を述べだす。2人もナツミEとミツキEに
   関して、今も後悔感が残っているのは知っている。それ故の決意なのだろう。それに2人が
   言う通り、この双子が大人になった頃には俺はいないかも知れない。その時は彼女達に保護者
   役になって貰うしかない。

ミツキ「というかみんなで育てるわぅね。この子達がリュアちゃん・リュオちゃんぐらいまで成長
    するまで、何が何でも支え抜くわぅ。」
ナツミA「そうね。それこそが今までマスターが私達に与えてくれた事の報恩と師恩でしょう。」
リュア「私達も同じです、育児は任せて下さいな。」
リュオ「新しい家族が増えて嬉しいにゃ。」
    俄然やる気を出し始めた身内。メアティナやメアティヌは無論、リュアとリュオもそうだ。
   それにミツキとナツミAを始め、周りの面々の表情が歓喜以外にも凄まじい決意の一念が感じ
   取れる。


ヴァルシェヴラーム「ところで、名前はどうするの?」
ミスターT「それも愚問。姉はナツミ=ザ・レミニッセンス、妹はミツキ=ザ・レミニッセンス。
      血の繋がりはなくとも、この子達は俺の正真正銘の娘達です。」
ミツキ「ナツミRちゃんにミツキRちゃんわぅね。」
    ササッと俺の胸からナツミRとミツキRを抱き寄せるミツキ。それに笑顔で微笑んでいる
   双子だった。生まれて間もないのに、この感情表現は驚きである。

シューム「何かお2人に嫉妬しちゃうけど、君が完全に立ち直った事の方が嬉しいわ。」
ナツミYU「そうですね。あれだけ己自身を責め続けていたのですから。」
ミスターT「本当の生まれ変わりかは分からないが、俺はそうだと信じ切りたい。今朝からの胸騒ぎ
      と懐かしい雰囲気は、とても偶然とは思えない。これは必然だろうから。」
ヴェアデュラ「私の時と殆ど同じ、悲運な運命で孤児になってしまった事。それでもこれが必然で
       あれば、それも全て宿命でしょう。こうして再び巡ったのは、お父さんが約1年間
       強く思い続けた結果だと思いますよ。」
ミスターT「そうだね。」
    自然と一服しそうになるが、血相を変えたシュームとナツミYUに煙草一式を奪われる。
   今のナツミRとミツキRにとっては害の何ものでもない。
シューム「この子達に害になるような事は、目の前では絶対に行わない事。いいわね?」
ミスターT「お・・仰る通りにします・・・。」
ナツミYU「フフッ、本気の先輩も久し振りです。それに赤ちゃんか・・・、アサミとアユミの誕生
      時が昨日のように思えるわね。」
アサミ「お母さんもこの様な思いだったのですね。」
アユミ「私達も歳を取りましたね。」
ミツキ「それは皮肉わぅか?」
ミスターT「何とも・・・。」
   旅行前から沈んでいた俺達は、巡ってきたナツミRとミツキRのお陰で180度変わった。
   それはもう劇的としか言い様がない。これを運命と言わずして何と言うのか。


    後日、ヴァルシェヴラームとセルディムカルダートから経緯を窺った。ナツミRとミツキR
   の本当のご両親は交通事故で亡くなったそうだ。双子を守るように亡くなったそうで、全くの
   無傷から限りない愛情が感じられる。

    そのご両親の逝去が双子と俺達が再会するに至るのは、本当に皮肉としか言い様がない。
   しかしこれも全て宿命であり運命なのだろう。ご両親の分までナツミRとミツキRを支え抜く
   決意だ。

    ちなみにご両親はヴァルシェヴラームとセルディムカルダートそれぞれの孤児院出身だった
   ようで、身寄りがないために引き取ったという経緯だ。ナツミRとミツキRは俺の実の娘達と
   言っても過言ではない。

    俺があと何年生きられるかは分からないが、生きられるうちはこの2人を必ず守り通す。
   あの時、胸の中で逝去したナツミEとミツキEへの恩返しをするために・・・。



アマギH「今日のパーティーはナツミRさんとミツキRさんの再会を祝して、ですね。」
ミスターT「そうだの。今日は一杯やりたい気分だわ。」
メルデュラ「フフッ、本当に嬉しいのですね。」
    その後、かねてから打ち合わせていたパーティーを行う事になった。さっきまでは渋って
   いた俺だが、今はこの双子との再会を心から祝いたい。そう思わざろう得なかった。

    そうそう、ナツミツキ四天王のウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイも子育てに参加して
   くれるとの事だった。同じ名前のナツミAとミツキが同じ姿勢なため、同調した形といえる。
   この6人なら多岐多様の分野に精通している事から、凄まじいまでの教育となろう。本当に
   頼もしい限りである。

    アマギHとユリコYも躯屡聖堕チームを挙げてサポートしてくれると言っていた。とは言う
   ものの彼らの代表格がナツミツキ四天王なため、表立っての支援は4人に任せるとの事だ。
   躯屡聖堕チームにもナツミEとミツキEとの理がしっかりと根付いている。それが再び舞い
   戻ってきたナツミRとミツキRに向けられるのは本当に嬉しい。


メアティナ「親父、相談があるんだが・・・。」
ミスターT「ナツミRとミツキRの母親になりたい、だろ?」
メアティヌ「・・・分かっちゃたかぁ〜。」
リュア「え〜、私達も同じ事を思ってたんだけどなぁ〜。」
リュオ「ここはメアティナちゃんとメアティヌちゃんが適任かもねぇ。」
    紅茶を飲みながらバスケットの中で眠るナツミRとミツキRを見つめる。本当に今でも信じ
   られない事なのだが、これは紛れもない現実そのものだ。そこにタキシード姿のメアティナと
   メアティヌが現れ、ナツミRとミツキRの母親役を名乗り上げてきた。同じ様にドレス姿の
   リュアとリュオも名乗りを挙げたが、どうやらメアティナとメアティヌに譲るようである。
ミスターT「というかお前達の現状からして、母親というよりは父親じゃないかね。」
メアティナ「そうとも言うかな。」
メアティヌ「父親も母親もこなせるのは便利だからね。」
リュア「となると私達が母親役?」
リュオ「あのメアティナちゃんとメアティヌちゃんが父母かぁ〜。14年前までは赤ちゃんだった
    のにねぇ〜。」
ミスターT「本当だな。」
   赤ん坊時は夜鳴きで有名、そして10代からは男臭さでも有名なメアティナとメアティヌ。
   その2人が赤ん坊のナツミRとミツキRの父母役、か。本当に月日が過ぎるのは早いものだ。
   それにこの2人の執念と信念なら、何が何でも遂行するのは明白である。

ミスターT「育児に関してはメアティナとメアティヌ、それにリュアとリュオに任せるよ。俺もあと
      何年生きられるか分からない。まだまだ若いお前達になら、全てを任せてもいい。」
メアティナ「親父、そう言わないで長生きしてくれよ。」
メアティヌ「俺達だけじゃ不安で仕方がないわ。」
    俺の寿命を語ると不安がるメアティナとメアティヌ。しかし時は残酷で俺もあと29年ほど
   生きれば100歳へと到達する。ナツミRとミツキRのためにも長生きはしたいが、寿命と
   いう人生の終着点という運命は避ける事ができない。
ミスターT「後は全てお前達総出で担ってくれ。シューム達が培ってくれた礎が最大限役に立つと
      確信している。これからの時代はお前達が主役なのだから。」
メアティナ「分かった。親父がそこまで言ってくれるなら、誠心誠意貫き通すよ。」
メアティヌ「普段の生活以外にもこの子達を立派な存在に育て上げるぜ。この子育ては親父からの
      遺言だと思ってね。」
リュア「もちろん私達も補佐に回るから安心してね。」
リュオ「メアティナちゃんとメアティヌちゃんが先陣切って戦えるように頑張らねばの。」
   娘達の中で最年少のメアティナとメアティヌ。そして中間に位置するリュアとリュオ。この
   2組の双子がいれば攻守共に万全だろう。彼女達以外にも11組の双子がいるのだ。更には
   長女たるヴェアデュラもいる。今後の流れは全く問題ない。


ミスターT「まあ・・・唯一不安があるとすれば、ナツミRとミツキRがメアティナとメアティヌの
      ように男言葉を喋りそうな気がしてならないが・・・。」
リュア「それは確定的っしょ〜。」
リュオ「メアティナちゃんとメアティヌちゃんは私達の影響を受けていると周りは言ってるからね。
    それにメアディル叔母ちゃんの男臭さも色濃く受け継いでるしの。」
ミスターT「何とも・・・。」
    俺の不安の一念に不気味に微笑むメアティナとメアティヌ。この2人の男臭さからすれば、
   ナツミRとミツキRはそれを超える男臭さに至るのは明白だろう。確かに今の世上なら男臭さ
   溢れる女性の方が過ごしやすいが・・・。
ミスターT「でもこの2人が世上の荒波を物ともせずに生きられるなら、どんな育児をしてもいい。
      不良・犯罪・忘恩以外なら何でも教え込んであげてくれ。」
メアティナ「お任せあれ!」
メアティヌ「徹底的に強くさせてみせますぜ!」
   俺の育児方針の催促を聞いて、一段とやる気を見せだした2組の双子の娘達。彼女達ならば
   どの様な困難な道であれ、ナツミRとミツキRを強くも優しくも育て上げてくれると確信して
   いる。我ながら素晴らしい娘達を持って、本当に幸せ極まりないわ。

エリム「私達三島ジェネカンの総意も最大限補佐致しますが、できれば苦労に満ちた生き方を通せば
    強く育つとも思えます。」
エリア「最終手段としては私達もお力をお貸し致しますが、それ以外はメアティナ様・メアティヌ様
    とリュア様・リュオ様に全てお任せします。」
    娘達の中で一番大人であるエリムとエリアも決意を語ってくる。母と同じ紫色のドレスを
   身に纏う姿は、全盛期のエリシェを彷彿とさせた。今では三島ジェネラルカンパニー連合の
   社長兼会長を務めているのだから驚きである。
ミツキ「良い事言うわぅねぇ。でも・・・もし少しでも誤った方向へ進もうとしたら・・・、その時
    はどうなるか分かっているわぅよね?」
エリム「そ・・それはもちろん・・・。」
エリア「間違った方向には死んでも向きませんから・・・。」
ミツキ「分かればいいわぅ、頼んだわぅよ。」
   普段とは見違えるような黒い妖艶なドレスを纏うミツキ。その彼女がエリムとエリアに楔を
   打った。間違った方向に行こうものなら、徹底的に躾るといった雰囲気である。今年34歳の
   ミツキだが、エリム・エリアと同年代のような気がしてならない。

ミツキ「およ・・・もしかして年齢の事を思ったわぅか?」
ミスターT「・・・お前も魔の千里眼か・・・。」
ミツキ「ふふり。女は年齢や外見に敏感わぅからね。些細な事でも見抜くわぅよ。」
ミスターT「怖ろしい・・・。でもその直感と洞察力は今後の流れに必要なもの。何れ偉大なる母と
      言われるようになる。お前にも大いに期待しているよ。」
ミツキ「お任せ下さい。私にできる事は最大限担って参りますので。それにマスターの娘さん方が
    いらっしゃるのです。皆さんと力を合わせれば恐れるものなどありませんよ。」
    わぅ語末を抜きに真剣な口調で決意を述べるミツキ。またその彼女を遠巻きに見つめている
   黒ドレス姿のナツミA。それに気付くと小さく頷いていた。この双子がいれば全く問題ない。
   それに娘達も役立ってくれる。
エリム「ミツキお姉様とナツミAお姉様がいらっしゃれば、シューム叔母様のように道標は問題ない
    と確信できます。私達も獅子奮迅の戦いを行うまでです。」
エリア「幸いに私達には巨大な力があります。これらを駆使すれば、お父様やお2人が悲願とされる
    世界から孤児を無くすという誓願に近付く事ができるでしょう。」
ミスターT「そうだな。主題はあくまでそこだろう。後の事は全て任せるよ。」
   エリムとエリアにも今後の事を全て任せた。それに力強く頷いている。今回の旅行はナツミR
   とミツキRとの不意の出会いと、娘達に後事の全てを託す誓いの場になった。

    これで覆面の風来坊たる俺の役目は終わったわな・・・。だがまだまだやる事は沢山ある。
   この命が尽きるまで戦い続けてやる。


    その後は恒例の大パーティーとなった。この日ばかりは俺も酒を飲んだのだが、ベロベロに
   ならなかったというのは驚きである。むしろ周りの女性陣に絡む姿に呆れ返っていたが。

    やはりナツミRとミツキRとの巡り逢いが、俺を全ての面から安心させたのだろう。この
   胸の中で眠ったナツミEとミツキEが、同じ胸の中で再会するというのは本当に不思議だ。

    新たに巡ってきた2人の認知度が得られるまでは頑張らねば。それが俺の最後の戦いだ。

    第14話・後編に続く。

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