アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜 〜第1部・第14話 クリスマス2〜 それから数時間後、時刻は午後10時を回った。ようやくエシェラ達が帰ってくる。また エシュリオスとエフィーシュも一緒だ。どうやら抜け出してきたようである。 シンシア「ただいまぁ〜。」 エシェラ「こんばんは、ヴァルシェヴラームさん。」 ヴァルシェヴラーム「お帰りなさい。大変だったでしょう?」 エシェラ「全然大丈夫ですよ。それにこれからが本番ですから。」 怖ろしいまでの笑顔の6人だ。これはとんでもない事になりそうな気がしてならない・・・。 それに便乗するヴァルシェヴラーム、不気味なまでの笑顔である。怖ろしい事この上ない。 エリシェ「あの、初めまして。そちらのスポンサーを任されている三島エリシェと申します。」 ヴァルシェヴラーム「貴方が噂のエリシェさんですね。私達に資金提供をして下さり、大変感謝して おります。」 お嬢様同士の挨拶が始まった。ヴァルシェヴラームも大人の女性を差し引けば、エリシェと 同じくお淑やかなお嬢様だ。というか彼女の実家も不動産業を営む実業家。社長令嬢と言うに 相応しい存在だ。 エリシェ「いいえ、とんでもない。ミスターT様を幼少の頃から面倒を見て下さり、本当に感謝して います。貴方様がいらっしゃらなかったら、私達もこうしていませんでした。」 ヴァルシェヴラーム「そう言って頂けて幸いです。荒波の中を進んできた甲斐がありました。今後も 共々に頑張って参りましょう。」 凄い、凄すぎる。激励に次ぐ激励の連続だ。流石のエリシェも引いてはいるが、自分達を 誉める部分を感じ取り嬉しそうだ。 エリシェが大人になれば、ヴァルシェヴラームと同じになるのだろう。極端に気が強い性格 は似て欲しくないが・・・。 ヴァルシェヴラーム「何か言った?」 ミスターT「い・・いえ、滅相もない・・・。」 ヴァルシェヴラーム「ふ〜ん・・・そう・・・。」 怖い・・・。完全に俺の心中を察知してきた。自分にマイナスになる部分の事にはエラい 敏感だからなぁ・・・。 ラフィナ「初めましてお母様。ラフィナ=レイリヴァイトと申します。」 ヴァルシェヴラーム「初めましてラフィナさん。彼が何時もお世話になっているそうで。」 ラフィナ「いえいえ、こちらもお世話になりっぱなしです。」 今度もお嬢様同士の挨拶だ。エリシェより幾分かお淑やかさが少ないラフィナだが、真面目 さは互角である。ヴァルシェヴラームと根底では同じ境涯なのだろう。 ラフィナ「ミスターTさんの育ての親という事で?」 ヴァルシェヴラーム「監視役とも言いましょうか。放っておけば何をしでかすか分からないのが彼 ですし。」 彼女の言う通りだ。15以前の記憶は憶えていないが、やんちゃだったという事は窺って いる。物静かでやんちゃという、火と水みたいな性格だとも言っていた。何とも・・・。 ラフィナ「あの、ミスターTさんの事は任せて下さい。」 ヴァルシェヴラーム「逆よ、貴方が面倒見て貰いなさい。彼もそこまで馬鹿じゃないから。」 厳しい発言をしてくれる・・・。しかしそれらは嬉しい事でもあるから、ここは素直に感謝 すべきだろう。 シンシア「シンシア=ドゥガと言います。ミスターTさんには色々と面倒を見て頂いています。」 ヴァルシェヴラーム「初めましてシンシアさん。噂通りの活発さですね。」 次は元気の良さ同士の挨拶だ。シンシアは6人の中で特に活発、そして行動派だ。今までも 俺達をリードしてくれた存在でもある。ヴァルシェヴラームも行動派という部分では、この 2人は凄く似ているだろう。しかし噂通りという発言が気になる・・・。 シンシア「噂通りって・・・、私の事はご存知なのですか?」 ヴァルシェヴラーム「妹のセルディムカルダートの孤児院のお子さんでしたよね。彼女から何度も お話を窺っていますよ。手が付けられないほどのお転婆で、周りを困らせて いる存在だったと。偶には帰ってあげなさい。彼女も喜ぶでしょう。」 シンシア「は・・はいっ!」 意外な事実を窺えた。ヴァルシェヴラームの妹が担当する孤児院、そこに所属していたのが シンシアだという事を。それにお転婆という部分も窺えた。 確かに彼女の性格は、怖ろしいまでのお転婆娘だからなぁ・・・。普段の彼女と自分を曝け 出した時の彼女、その差は凄まじいまでのものである・・・。 エシュリオス「初めましてお母様、エシュリオス=ビルティムスといいます。」 エフィーシュ「エフィーシュ=ビルティムスと申します。よろしくお願いしますお母様。」 ヴァルシェヴラーム「初めまして。テレビでよく拝見していますよ。」 またもやお嬢様同士の挨拶だ。特に双子の場合はエリシェにより近い性格。緊張から素の 本人が出るのだろうが、これを窺えばお嬢様属性だというのがよく分かる。 ヴァルシェヴラーム「エシェラさんにソックリね。でもお淑やかさは2人の方が強いけど。」 エシェラ「ひど〜いっ!」 ヴァルシェヴラーム「フフッ、冗談よ。」 従姉妹と比較されてふくれるエシェラ。普段見せない幼さ振りが頬笑ましい。それも相手が 俺の母親的存在だから罷り通るのだろうか。普通ならエラい反論するだろうから。 ヴァルシェヴラーム「エシェラさんと仲良くね。喧嘩しちゃダメよ。」 エシュリオス&エフィーシュ「はいっ!」 テレビで映る双子ではない。今の2人は普通の女の子そのもの。ヴァルシェヴラームの一言 に一瞬にして童心に帰っている。流石は孤児院の母親的存在だ。 ヴァルシェヴラーム「ところでミスターT君。エシェラさん・エシュリオスさん・エフィーシュさん の経緯は分かるわ。それよりもラフィナさん・エリシェさん・シンシアさんの 経緯を、懇切丁寧に詳しく教えて貰おうかしら。」 うわっ、いきなり怖い状態の彼女に戻る。そりゃそうだろう。一番親しいエシェラを公認の 中と言ったのにも関わらず、3人の美女が一緒なのだ。怒るのも無理はない。 俺は3人の経緯を詳しく話した。それを窺い知ったヴァルシェヴラームは、納得した表情を 浮かべだしている。言わばさっきの言い回しは、聞き出すための手段という事だろう。 それにしても心臓に悪い言い方だ、少しは加減をして欲しいものだ・・・。まあ彼女らしい と言えばそうではあるが・・・。 ヴァルシェヴラーム「君らしいね、自分の事のように怒るのは。それにプロレス好きが功を奏して 人助けになるのも。更には心の癒しもできるようになって。」 う〜、周りの視線が痛い。シンシアとの別れ際の経緯は3人とも知らない。エシュリオスと エフィーシュはともかく、エシェラ・ラフィナ・エリシェは寝ている間に行動していた事に ヤキモチを妬いている。むう・・・勘違いはして欲しくないんだがなぁ・・・。 ヴァルシェヴラーム「それでも君の生き様はよく分かったわ。私達が命懸けで育てたのは、紛れも なく正しかったという事。」 ミスターT「ですね。シェヴさんが育ててくれなければ、今こうしていられません。人を助けると いう原点回帰を、シェヴさんの生き様を受け継いでいきます。」 ヴァルシェヴラーム「ありがとう。」 感無量といった雰囲気のヴァルシェヴラーム。我が子のように育てた子供に、自分の生き様 を受け継ぐと言われたのだ。感動しない訳がない。 それに彼女、根は怖ろしいほどの生真面目だ。そして純然たる優しさも兼ね備える。心から 誇れる、我が愛しい母君なのだから・・・。 重要な用件を聞き出すと、そそくさと退散してしまうヴァルシェヴラーム。まあエシェラ達 が帰ってくるまでの繋ぎでもあった。2つの役目を終えて、満足そうに帰っていった。 エリシェ「素晴らしいお母様ですね。」 ミスターT「誇りに思うよ。」 紅茶を飲みながら語り掛ける。自分に素直にという部分が強くなったのか、今までにない ほどお淑やかさが冴えるエリシェ。その上品さはヴァルシェヴラームを凌ぐほどだ。 ミスターT「ああ、4人にもクリスマスプレゼントだよ。」 スケッチブックに認めた4つの作品を、それぞれ4人に手渡していく。さながら卒業証書の 授与式のようである。 エシェラは子供好きという事から、保母として子供達と笑顔でいる姿を図にした。普段から 勉学に励む姿が、見事に実った未来を表した。 ラフィナは歌手デビューをしたという想定で、ステージで歌を歌っている図だ。大人びいた 姿は未来の彼女を想像して、そして夢へ向けて突き進めという意味合いを込めて。 エリシェは大企業を受け継いだと同時に、民衆の中へと入っていく図を。地域に貢献する お嬢様という変なものだが、彼女の決意をそのまま表した。 シンシアは喫茶店のマスターとして大活躍する図を。男勝りの性格から男女問わず慕われる 姿を想像し、己の生き様を貫いている姿を表す。 どれも俺の独断の考えによるものだが、渾身の思いを込めての力作だ。これを書き終える までは時間は掛からなかったが、出すタイミングだけは凄まじく時間が掛かった。 しかし本当のクリスマスプレゼントと言えるだろう。普通に何らかの好むものを買うのでは なく、自分自身で描いたものなのだから。 エシェラ「・・・ありがとう。」 ラフィナ「大切にします・・・。」 エリシェ「この姿は未来の私の姿と信じて進みます。」 シンシア「負けないよ、どんな事があっても。」 涙を浮かべながら感謝を述べる4人。しかし心中の決意は固まったようである。そう、この 絵は進路に悩む6人の背中を押したものだ。 ミスターT「間違っても絵の内容に縛られるなよ。それはあくまでも素直な気持ちで書き示した。 そうなって欲しいという意味合いで書いたのではないから。」 エリシェ「ご存知ですよ。」 シンシア「あの時と同じく、背中を押してくれたんでしょ?」 エシェラ「私達の明確な行く末を見定めています。それは間違いなく私達の未来を示していると。」 ラフィナ「頑張ります、必ず達成してみせますよ。」 エフィーシュ「姉も私も先へと進みます。」 エシュリオス「任せて下さい。」 彼女達に自分の想像する未来を押し付ける形になった事に戸惑いを感じる。彼女達はそれに 向けて進むと述べているが、どうしても束縛している気がしてならない。 決意溢れる6人の姿を見ると、罪悪感を募らせるしかなかった・・・。俺は間違った事を してしまったのだろうか・・・。 貸し切られた本店レミセンで、クリスマスパーティー二次会を行いだす6人。その彼女達に 付き合うが、心中では徐々に罪悪感が募っていく。 平然さを装って過ごしてはいるが、物凄く辛い・・・。下手をすれば他の将来への道も存在 したのに、半ば将来を押し付ける形にしてしまったのだから。 しかし、彼女達に贈り物をできたのは事実だ。それは素直に喜ぶべきだろうな・・・。 第1部・第15話へと続く。 |
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