アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝 〜覆面の風来坊〜 〜第2部・第12話 故郷の戦い1〜 ヴァルシェヴラームに背中を押され、俺は先へ進む勇気を貰った。他の女性陣にも同じく 勇気を貰い続ける。もう悩むまい、今よりも先に進むだけだ。 数週間後、俺はアメリカへと旅立った。今生の別れではないため、見送りは一切しないで くれと願った。それに素直に従ってくれた面々。これは実に嬉しかった。 現地で活躍するための足であるカスタム・グローブライナー。俺が出発する前にマツミ達が 海路で運んでくれていた。リュウジNとアフィの2人が扱い易いように、最大限カスタム化 したオーダーメイド車に近い。 日本にいる家族達や親友達との連絡は携帯で行う事にした。例の衛星テレビ電話は色々と 問題が起こると取り止めて貰った。我慢し切れない6人が何をしでかすか分かったものじゃ ないからな・・・。 殆どアメリカとカナダを中心に動く事が多かった。特にアメリカが顕著に当たる。初めての アメリカ遠征の時は、アメリカ本土だけの活躍だった。今回は広範囲に渡っての移動である。 英語が全く話せない俺だったが、熱意あるジェスチャーなどは普通に通じた。殆どYesか Noだけのものだが、行動による表現は何でもまかり通ってしまう。便利なものだ。 ちなみに・・・約1年毎に4人の愛しい人が会いにきた。目的は勿論、俺との子供を作る ためだ・・・。動き出してから1年後はシンシア、そしてメルデュラ・エリシェ・ラフィナと 続いていった。 各州にあるホテルが舞台となったが、4人とも望んで挑んだため一発で妊娠してくれた。 またエシェラは無事出産し、今では毎日が大変だと語っている。シュームも同じで、孤児の ヴェアデュラもやんちゃで手が付けられないと言っていた。 しかし・・・何ともなぁ・・・。ついに6人とも俺の子供を身篭らせてしまった・・・。 6人とも大喜びであるが、俺の方は実に遣る瀬無い気分だ。 一番の理由がエシェラ以下の生まれた子供を抱けなかったという事だ。これは6人たっての 希望でもあり、俺のアメリカ大陸での行動を殺がないようにという配慮でもある。 命名だけは俺が考えたリストを用いてくれたが、育児に関しては全て彼女達が担ってくれて いた。本当に申し訳ない思いで一杯である・・・。 この遠征が終われば、本当に地元に骨を埋めようと決意している。それに子供達の面倒も 見なくてはならない。生まれた直後に抱けなかった事を、一生涯掛けて補わねば・・・。 それから時は流れて・・・。長期間のアメリカ遠征を始めて5年が経過した。 5年振りに日本へと帰ってきた。気節は8年前より1ヶ月早い3月中旬。そろそろお花見の 時期だ。 現地で活躍したグローブライナーも一緒に持ってきた。俺の手足となり活躍してくれていた トレーラーヘッドは、生涯の伴侶とも言える存在に思える。日本で走らせる分には問題ない 大きさなので、今後の足掛かりに使おうと思う。無論これはマツミに了承済みだ。 しかし・・・日本は殆ど変わらない。無論いい意味にである。やはり俺の故郷は日本で、 地元こそが大切な愛しい大地だ。それを改めて痛感させられる。 ミスターT「老けたなぁ・・・。」 マツミ「そう言うマスターは全く変わりませんよ。」 今はマツミのオフィスにいる。彼女の会社も今まで以上に拡大し、毎日が大忙しと言う。 そのためか、今のマツミは幾分か老けたようにも思える。 マツミ「これだけ運営が拡大すれば、後は大丈夫でしょう。三島ジェネカンや躯屡聖堕チームとの 連携もありますし。全世界に支社を拡げられましたので。」 ミスターT「これでお役ご免という事かな。」 マツミ「そうですね。」 徐に一服しようとするとマツミが煙草を手渡してくれる。それを口に咥えると火まで着けて くれた。そして彼女も同様に煙草を吸い出す。何時の間にか喫煙するようになっていた。 マツミ「・・・貴方には感謝し切れません。我が身を呈してまで力になって頂きました。」 ミスターT「5年前に言ったでしょう、マツミの懐刀に必ずなると。俺は約束は必ず守りますよ。」 マツミ「でも・・・お子さんの誕生時に立ち会えなかった・・・。」 ミスターT「代わりにマツミに立ち会って貰ったけどね。」 日本での代理と言える行動は、マツミが全て引き受けてくれていた。殆どが6人のサポート だが、彼女達からはどれだけ励みになったか分からないと伺っている。 マツミ「今後は依頼を押し付ける事はしません。貴方は貴方の戦いをして下さい。」 ミスターT「分かった。でも本当に困った時は言ってくれ。再び懐刀になってみせるよ。」 マツミ「ありがとうございます・・・。」 徐に俺の両手を同じ両手で握り締める彼女。そのまま胸に抱き、ソッと口づけをしてくる。 6人とは変わった彼女なりの感謝の表現だろう。 その後グローブライナーを駆って、本店レミセンへと戻った。確か裏手の駐輪場に、大きな 駐車スペースがあった。そこに止めさせて貰おう。 他の面々はどうしているか。会うのが非常に楽しみだ・・・。 5年振りに本店レミセンに帰ってきた。とりあえずグローブライナーを駐車場に止める。 運がいい事に誰も車を止めていなかった。少しスペースからはみ出ているが、後で新しい駐車 場所を考えよう。 ミスターT「・・・誰もいない・・・。」 レミセン内部に入ったが、厨房にもカウンターにも誰もいなかった。お客さんが数人寛いで いるが、肝心の運営サイドがガラ空きである。 俺は急ぎコートを脱ぎ、エプロンを着用する。そして厨房に立った。既にお客さんのオーダー は終わっているようだ。にしても誰もいないとは・・・。 ミスターT「申し訳ない、厨房担当などは何処へ行きました?」 男性「え〜と、確か駅前の店が忙しいようで急遽行く事になったとか行ってましたよ。」 ミスターT「そうですか、ありがとうございます。」 俺は店内で寛いでいるお客さんに運営担当の人物が何処に行ったかを聞いた。どうやら駅前 の店舗が忙しくなったようで、急遽向かったようである。 う〜む・・・店を空けるほど忙しいのだろうか。ローテーションも減ったくれもないものだ。 俺はもう一度お客さんに用がないかを聞いて回る。今さっき5年振りに帰ったため、現状を 把握する必要があったからだ。どうやらこのお客さん達は常連さんのようで、こういった形で 店舗を任されるのは日常茶飯事らしい。 それに俺が担当していた時には見かけなかった常連さんの様子だ。超常連さんは俺の姿を しっかり把握しているしな。 しかし・・・以前は店舗を絶対に空けるなと注意していたのだが・・・。これも俺が離れて いたために起きた不祥事にも思える。後でしっかり言っておかなければ・・・。 ヴェアデュラ「ただいま〜。」 リュリア「あれ・・・誰もいない・・・。」 厨房で食器や調理器具の掃除などをしていると、店内に入ってくる人物があった。5年の 月日により成長したリュリアと、今では普通に歩いているヴェアデュラだ。 リュリアは5年前と見違えるほどに成長している。特にシューム縁の胸の大きさは健在だ。 それにヴェアデュラも6歳になったと思われるが、初めて会った時のリュリアを彷彿とさせる 容姿に驚くばかりである。 ヴェアデュラ「あ・・・姉ちゃん、台所に誰かいます・・・。」 リュリア「え・・・ええっ?!」 ヴェアデュラが俺に気が付く。その言葉にリュリアもこちらを向いてくる。俺を見ると驚愕 した表情を浮かべだした。 ミスターT「誰もいなかったから厨房担当してるよ。」 一旦作業を終えると、そのまま2人の元へと歩み寄る。今も驚愕し続けるリュリアを見て、 ヴェアデュラは不思議そうな表情を浮かべている。 目の前まで行くと、リュリアが抱き付いてきた。6年前のエシェラ達のような泣き顔には ならないが、感情を表に出しての抱擁である。 リュリア「何時・・・帰られたのですか?」 ミスターT「今さっきだよ。久し振りに帰ってみれば誰もいないし。お客さんに店を任せて彼女達は 駅前の店舗に行ってるとも。」 リュリア「ごめんなさい・・・。」 ミスターT「いや、お前のせいじゃないから安心してくれ。」 我が身のように反省しだすリュリア。この言動は5年前では考えられないほどである。5年間 という月日は、お転婆娘をお淑やかな美女へと成長させるには十分だったようだ。 ヴェアデュラ「姉ちゃん、この人誰?」 リュリアとの久し振りの再会を抱擁で味わっていると、徐にヴェアデュラが語り出した。 その言葉に俺はショックを受ける。まあ覚えてないのも無理はない。最後に会ったのが1歳の 時だからな・・・。 リュリア「フフッ、ヴェアちゃんのお父さんだよ。」 ヴェアデュラ「え・・・ええっ?!」 何ともまあ・・・リュリアと同じ反応をするヴェアデュラ。おそらくこの数年間、リュリアと 一緒に行動していたからだろうな。 俺はリュリアとの抱擁を終えると、ヴェアデュラと同じ目線にまで腰を下げる。5年前は まだ赤ん坊だった彼女が、今ではリュリアと変わらないお転婆娘か・・・。何とも・・・。 ミスターT「大きくなったな、ヴェア。」 ヴェアデュラ「・・・本当に・・お父さんなのですか?」 ミスターT「5年前はまだ赤ちゃんだったからなぁ、覚えてないのも無理はないか。」 俺はソッと彼女を抱き締める。そのまま胸に抱いて持ち上げた。う〜む・・・結構重いな。 あのヴェアデュラがここまで大きくなるとは・・・。 言葉では表せないため、優しく背中を叩き頭を撫でてあげた。幼少の頃からずっと行ってきた 癒しの行為だ。 ヴェアデュラ「あ・・・お・・お父さんだ・・・お父さんだぁ・・・。」 俺の行動で思い出したのか、泣きながら呟くヴェアデュラ。生まれて間もない頃に抱き締めた 事を、まるで鮮明に記憶しているかのような表現である。 泣き続ける彼女の背中を優しく叩き続け、そして頭を優しく撫で続けた。言葉は要らない、 この行為に全てを込めて・・・。 ミスターT「リュリアも料理できるのか。」 リュリア「はい。お兄さんがアメリカに行かれた後、私も母さんや姉さん達に習いました。」 泣き疲れて寝てしまったヴェアデュラ。その彼女を胸に抱き続ける。その俺の代わりに厨房 にはエプロン姿のリュリアが立つ。一端に喫茶店のマスターが似合うほどに成長している。 リュリア「一応調理師免許は取得してますよ。2年間の実技訓練に、国家試験を受けましたから。」 ミスターT「凄いな・・・。俺は確か・・・過去の数年間の実技訓練の経験が特例的に通り、国家 試験だけで通ったっけ。」 リュリア「常日頃から努力なされている証拠ですよ。」 う〜む、実に行動派なリュリアだ。元来から我武者羅に突き進む姿がウリなだけに、前向きな 姿勢は何よりの強力な武器になるだろう。 ミスターT「そう言えば警察官になるんだっけ?」 リュリア「ですよ。ライディルさんやナツミYUさんの計らいで、実戦も含めた訓練もしてます。」 ミスターT「殆どシークレットサービスに近いんじゃないか・・・。」 リュリア「エヘヘッ、そうとも言います・・・。」 はにかみながら語るリュリア。今年19歳になる彼女は、まだ警察官になっていないのに。 何だかライディル達に無理強いさせているみたいで悪い・・・。 それでも見違えるほどに成長したリュリアには、感動を覚えるしかなかった。彼女なら必ず 夢を実現させる。何たってあのシュームの娘なのだから・・・。 エシェラ「終わったぁ〜・・・。」 それから数時間が経過、お客さんは全員帰られた。誰もいない店内で、俺とリュリアは雑談 を繰り返していた。ヴェアデュラは相変わらず胸の中で寝ている。余程心地が良いのだろう。 そこにエシェラ達が帰ってくる。ラフィナ・エリシェ・シンシア・シューム・メルデュラも 一緒で、傍らには幼い子供達も一緒である。間違いない、この子達は彼女達との間に生まれた 子供だ。 シューム「あ・・・。」 カウンターの近くでヴェアデュラを抱きながらいる俺に真っ先に気付いたシューム。それが 伝染するかのように、他の5人にも伝わっていく。流石に泣き顔にはならないが、その表情 から歓喜が滲み出てくるのが痛烈に分かる。 一気に駆け寄ろうとする6人だが、胸でヴェアデュラが寝ている事に気付き思い止まる。 う〜む、彼女がいなかったらどうなっていたやら・・・。 後半へと続く。 |
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