アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第06話 聖獣と神獣と魔獣と1〜
    異世界ベイヌディートに到来してから約3週間。ラフェイドの街を活動拠点とし、マイナス
   面の力をプラス面の力に転換する行動を繰り返す。

    先のテスト試合後からが目覚ましく、こちらが遂行者だと知ったテネット達からの助力も
   得られるに至っている。彼らと各依頼を攻略する事で、プラス面の力を得る形だ。


    創生者ティルネアより伺ったが、どうやら異世界組の面々が取り組む事で、全体的にプラス
   傾向に至るのだとか。これは彼女も知らなかったようで、非常に驚いていた。

    そもそも、これらの行動は地球で行う行動と何ら変わりない。言わば、ボランティア精神
   そのものだ。それが異世界でのプラス面に至るのだから、実に皮肉としか言い様がない。逆を
   言えば、それだけベイヌディートにはボランティア精神が根付かなかった感じだろう。

    テネットより冒険者事情も伺ったが、その殆どが私利私欲に近く、ボランティア精神には
   程遠い感じとの事だった。それなりの実力を有する冒険者達だが、本当の冒険心を抱いてない
   現状には落胆してしまう。


    ボランティア精神に冒険心を掛け合わせるのは、非常に烏滸がましい事ではある。しかし、
   何事にも挑戦するという意味合いでは、十分なほど理に適ってもいる。

    挑戦するという概念からすれば、ボランティア精神は正に相応しい。しかも、そこには利他
   の一念が色濃く根付いている。もし、冒険者に利他の一念が根付けば、今より更に良い世上と
   なるだろう。

    プラス面の力とマイナス面の力。これはもう、前者は慈愛の一念、後者は私利私欲の一念
   としか言い様がない。そこに回帰できたのは、これも幸運であると言うしかないだろうな。

    地球での各行動による経験が、異世界でも十二分に通用している。遂行者としての道は、
   臨機応変に対応すれば十分可能だと痛感させられた。



    テスト試合から2週間以上が経過したので、武器屋へと足を運ぶ。店主に依頼した、日本刀
   の模造品の作成だ。この2週間ほど、リドネイは代理品のシミターを使っている。

    シミターやファルシオンは曲剣に分類されるのだが、流石に日本刀ほどの切れ味はない。
   どちらかと言うと、相手の攻撃を逸らす方には非常に向いている。防御を得意とした剣となる
   だろう。

    俺も曲剣を実際に使った事はない。以前、リドネイに借りて扱ってみたのだが、非常に厄介
   極まりなかった。慣れもあるだろうが、どちらかと言えば日本刀の方が性分に合う。

    まあ、俺の場合は携帯シリーズの獲物の方が断然良いのだが・・・。


武器屋店主「何とか完成したぞ!」

    武器屋に入店し、店主の元へと向かう。俺とリドネイを見るなり、やり切ったと言った感じ
   で語り掛けてきた。まるで少年の様な表情だ。

    一旦、店舗の内部へと引っ込み、直ぐに4本の武器を持って現れる。そのうちの2本は、
   サンプルとして預けていた通常日本刀と太刀型日本刀だ。そして、残りの2本が今回の目玉
   となる。

    その目玉となる獲物を受け取り、それぞれを鞘から抜き放つ。見た目からして、通常日本刀
   と太刀型日本刀と全く遜色ない獲物だ。ただ、使われている金属が白銀なため、オリジナルの
   刀身とは全く異なる色を放っている。

ミスターT「うーむ・・・見事な業物だな。」
武器屋店主「強度の問題で苦戦したよ。お前さんが渡してくれたオリジナルが、どれだけ凄い業物
      なのかも痛感させられた。」
リドネイ「折れそうで折れない刀身ですよね。」

    粗方見定めてから、アレンジの方を彼女へと手渡す。それぞれを両手で持ち、じっくりと
   吟味しだした。オリジナルの方も鞘から抜き放ち、それぞれと見比べてみる。

    現状からして、ほぼ寸分狂いなく再現されている。相異点としては、やはりその刀身の色
   だろう。それに、日本刀の特徴となる美しさが、模造品には一切なかった。

    手に持って痛感したのが、その強度だろうか。店主も苦戦したと言っている通り、製造過程
   で色々と悪戦苦闘したようだ。それでも、目の前の模造品は日本刀群に限りなく近付いたと
   言って良い。

ミスターT「費用はどのぐらい掛かった?」
武器屋店主「合計で金貨600枚ぐらいだな。むしろ、時間の方がエラい掛かったよ。」
ミスターT「了解した。残りの金貨400枚は、手間賃として貰ってくれ。」
武器屋店主「すまない、ありがとな。」

    お釣りとなる金貨400枚を、カウンターへと置く彼。だが、現状の業物のクオリティに、
   手間隙を考えれば非常に安過ぎる。依頼を出した時に告げた通り、置かれた金貨群を再度店主
   へと手渡した。

    白銀貨1枚こと金貨1000枚で、この依頼を出したのだ。余った分は彼への追加報酬と
   すべきである。ここまで見事な模造品を作ってくれたのだ、当然の厚意だわな。


    取り引きが終わり、それぞれの獲物を持つ。オリジナルの通常日本刀と太刀型日本刀は、
   俺が持つ事になる。いや、元に戻ったと言うべきか。

    アレンジの通常日本刀と太刀型日本刀は、リドネイが持つ事になった。もっとも、彼女の
   専用武器として製造して貰ったものだ。彼女に持って貰わねば本末転倒である。

武器屋店主「今度、鋼鉄などの素材で、同じ様な獲物を作ってみるわ。」
ミスターT「いいねぇ。上手くすれば、武器のバリエーションが増えるしな。」

    意気揚々と語る店主。既にノウハウは得ているので、後は素材次第で模造日本刀が作れる
   だろう。しかし、大剣などの堅固な獲物ではないため、破損率は非常に高いと思われる。

    ただ、既存品にはない技量品となるため、玄人志向としては申し分ない。何れ、冒険者が
   模造日本刀を振るい、暴れているのを目にする日が来るだろう。盗賊が持っていたら、流石に
   泣けてくるが・・・。

武器屋店主「また何かあったら言ってくれ。」
ミスターT「ありがとう。連絡がある場合は、冒険者ギルドに伝えておいてくれれば助かる。」
武器屋店主「分かった。」
リドネイ「本当にありがとうございました。」
武器屋店主「こちらこそよ。」

    俺とリドネイは、店主と握手を交わす。知り合ってから日は浅いが、実の父親の様な感じに
   思えてくる。こうして逸品を作ってくれた事を考えれば、本当に良い出逢いだったと言えた。

    ともあれ、これでリドネイの装備に関しては申し分ない。防具は軽装備になるが、弱点を
   守れるなら現状は問題ない。むしろ、先のテスト試合を踏まえれば、彼女は攻撃力特化の方が
   性分に合う。

    それに、テスト試合ではシミターとファルシオンを振るっていたが、今度からは模造品の
   日本刀を二刀流の状態で暴れる事になる。火力は以前の比ではない。

    こうなると、実際に討伐依頼に繰り出し、その業物を見せて貰いたい所だ。早速、冒険者
   ギルドへと向かう事にした。

    中半へと続く。

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