アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝9 〜覆面の苦労人〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜 〜第1部・第05話 修行と武具作成8〜 俺への猛攻に終始するあまり、仲間の敗退に気付かなかったナディトとエルフィ。背後から 迫る気配を察し、こちらへの猛攻を止めて間合いを取ろうとする。 しかし、そうは問屋が卸さない。手数が多いエルフィにテネットとリドネイが、一撃が重い ナディトにトーラが向かう。その彼女に俺も追撃を開始した。 エルフィに関しては、幾ら双剣を使おうが、同じ手数勝負のテネットとリドネイに為す術が ない。タイマン勝負なら分があったのだが、倍以上の連撃を防いでいるうちに決着が着く。 2つの獲物を弾かれ、無防備になったエルフィ。そこに2人の獲物が喉元に迫る。 アレが本気であれば、その場で喉元を貫かれていただろう。あの2人の本気を見て、本当に 恐怖としか言い様がない。 ナディトへは、トーラの特大剣二刀流の猛撃が襲い掛かる。獲物のリーチは同じだが、その 質量は段違いである。特大剣を軽々とぶん回す彼女に、防戦一方になる彼。 そんなナディトに向かって、携帯十字戟を回転させながら放り投げた。ブーメランを投げる 様な感じだ。重量配分的に、そうできるようになっているとの事である。実際にこうして実践 して、その効果が実証できた。 携帯十字戟が迫り来るのを、その場でジャンプして回避する。そのナディトに対して、左右 から特大剣を振り付けるトーラ。着地した際に、2つの刃が彼の喉元に肉薄した。一切の隙を 排した鋭い一撃に為す術がない。 そうして、エルフィとナディトの敗退が決まった。ウェイスとサイジアの時よりも、実に 呆気なく決着が着いてしまう。 この場合は、4人の戦略ミスだ。ウェイスとナディトといった、攻守を定めたタッグなら、 女性陣の猛攻を防げていただろう。防御担当のウェイスやサイジアを留めようとしても、攻撃 担当のナディトとエルフィが近場にいるのだ。 だが、今回は防御担当のタッグのみ、攻撃担当のタッグのみで打って出てしまった。これが 明確な敗退理由だろう。まあ、女性陣のあの時間差攻撃を考えれば、攻守を備えたタッグでも 勝ち目は薄いと思われる。 地球でも、身内とプロレス技の検証実験を行った際も、今の様な結果に至った事があった。 ただ、あの時は女性陣の方が圧倒的戦闘力を見せ付けている。男性陣を完膚無きまでに粉砕 していた。一時期、女性陣の事が怖いとボヤいていたわ・・・。 ともあれ、4人の今後を考えると、今回のテスト試合は有意義な結果となっただろうな。 そんな事を考えていると、何と俺の方へ意識を向けだす女性陣。どうやらこの展開だが、 クアッドチーム対決ではなく、最終的にロイヤルランブル的な感じに定めたようだ・・・。 しかも、3人とも俺にターゲットを向けて来ている。非常に不利極まりない様相だ・・・。 ブーメラン投法で戻ってきた、左手の携帯十字戟を格納。そのまま、地面へと手放す。現状 は1つの獲物で応戦した方がいい。右手の携帯方天戟を構えつつ、3人に対峙した。 先に向かって来たのはトーラだ。特大剣二刀流の状態で俺に肉薄する。その彼女に向けて、 携帯方天戟を正眼の状態で突き出し突撃する。見た事がない戦術に、一瞬怯みを見せてくる。 その隙を逃さず、そのまま獲物を地面へと突き刺した。 突然、眼前に柱の如く獲物の柄が立ち塞がる。それを二対の特大剣で弾こうとしてきた。 その獲物に対して、俺はその場に跳躍しつつ、一回転しながら右肘を振るった。プロレス技の ダイビングエルボーアタックな感じだ。 目の前の携帯方天戟に、二対の特大剣を振り付けようとしている現状。今のトーラは頭上が 完全に無防備である。そこにまさか、相手が肉弾戦を挑んでくるとは思っていただろうか。 咄嗟に両手で防ごうと、手に持つ特大剣を離してしまう。 そんな彼女に、撚りを加えた。エルボーアタックと見せ掛けて、両手で小さな肩を掴みつつ 前転的に前に出た。負傷なら問題ないので、握力と前転運動を加えつつ、彼女を放り投げる。 この場合は、プロレス技の変形式ネックハンギングか。しかもそこに、運動エネルギーが 働いていた状態だ、意図も簡単に吹き飛ばされていく。 吹き飛んだ彼女を見送りつつ、俺は着地と同時に後ろへと倒れ込む。その俺に向かって、 2人の猛攻が掠っていった。その場で棒立ちしていたら、間違いなく一撃を受けていた。 倒れ込んだ先には、地面に突き刺さる携帯方天戟がある。それを背中に置きつつ、地面に 倒れ込む。と同時に、右手で柄を掴み、そのまま回転させるように獲物を振るった。 足元に襲い掛かってくる携帯方天戟に、咄嗟にジャンプして回避するテネットとリドネイ。 その中の、一番こちらに近いリドネイに対して、携帯方天戟の遠心力を使った立ち上がりの 蹴りを見舞った。プロレス技で例えるなら、変形型トラースキックだろうか。 機転的に放たれた一撃を、獲物で防ごうとする。しかし、回避に移った状態の彼女には、 若干の反応不足となったようだ。蹴りを胸へと受けて、そのまま吹き飛ばされていく。 蹴りからの体勢の立て直しをしつつ、最後の1人に向かい合う。既に回避から攻撃に回って おり、二対のダガーを突き刺し的にこちらへと向けてきたテネット。 既にトーラとリドネイは吹き飛ばされ、実質的に戦闘可能領域から離れている。それに、 これは実戦形式だが実戦ではないため、2人の敗退は決したと取ってよい。となれば、後は テネットのみを相手にするだけとなる。 そこで、こちらへと向けられた二対のダガーに、左手の掌を向ける。彼女の行動は、取り 消し不能な速度で繰り出されている。その刃が俺の左手を貫いた。だが、それこそが油断を 生む一撃になる。 流石のテネットも、まさか本当に相手を傷付けるとは思っていなかったようだ。左手に深々 と突き刺さるダガー群を見て、完全に怯んでしまっている。そこに、トドメの一撃を放つ。 携帯方天戟を放り投げ、右手で彼女の喉元に強烈な張り手を繰り出した。喉元を掴みつつ、 そのまま腕力にモノを言わせ、彼女を頭上へと持ち上げた。そして、地面へと叩き付ける。 プロレスで有名な豪快技の1つ、チョークスラム。地球出身の俺なら、定石的な技と知識 だが、異世界の彼女には初めて見る技だろう。地面に叩き付けられつつ、目を白黒させている のが印象深い。 こうして、不意のロイヤルランブル的な追加試合は幕を下ろした。遠方で見ていた4人は、 俺が繰り出したプロレス技に絶句している。ギャラリーとなる冒険者達も、同じ様に絶句した 表情を浮かべていた。 実際に近接格闘術を喰らった女性陣も、その様相に絶句している。やはりこの異世界では、 こうした格闘術を実際に使うのは希のようだ。特に獲物を使って戦う冒険者には、理解不能な 業物であろう。だからこそ、非常に特効性がある戦術となった。 それに、いきなり相手が近接格闘術を繰り出してくるとは、流石に予想し辛いだろう。俺も 相手の持つ獲物こそが、主軸で使う武器であると思ってしまう。だが、それこそが油断だ。 追加試合で戦った3人を見つつ、改めて気を引き締められる思いになる。これは地球での 警護者の活動で、非常に役に立つ戦術だ。今後の参考にさせて頂こう。 後半3へと続く。 |
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