アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝9 〜覆面の苦労人〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜 〜第1部・第3話 昇格試験への加勢6〜 防具屋へと足を運ぶ。同店は武器屋の隣に位置しているため、数分で訪れる事ができる。 店内に入店すると、やはりと言うべき、ザ・ファンタジーを彷彿とさせる様相に遭遇した。 店内に配置されている鎧や防具の数々には、とにかく圧巻としか言い様がない。 ただし、今回は主役となる4人の防具の見直しとなる。既に俺は銀貨91枚しかないため、 新規に購入する事は若干不可能だ。攻撃力に重点を置いてしまった、悪い例かも知れない。 防具屋店主「いらっしゃい、何かご用ですか?」 ミスターT「お初にお目に掛かる。彼らの防具の見直しに訪れた。」 俺達の入店を窺い、こちらへと歩み寄る店主。こちらも男性になるが、武器屋の店主とは 異なり細身である。しかし、覇気の方は並々ならぬものを感じ取れる。 店主に詳しい話を語り、店舗を案内して貰う。先にも挙げたが、今回は4人の防具の強化に なる。先ずは彼らの用事を済ませよう。 彼らが装備する各防具は、弱点を隠す一点集中型を施している。胸全体は無論、腰回り・ 両膝・両手である。全身鎧により覆い隠すのが一番良いが、それでは機動力が封殺される。 一点集中型の防御は、実に理に適ったものだ。 4人が防具を見直している間、俺は残りの銀貨91枚のうち50枚で行動してみるとする。 ミスターT「店主、銀貨50枚の予算で、彼女が装備できる防具は見繕えるか?」 防具屋店主「銀貨50枚ですか・・・。」 俺の言葉に、リドネイの全身を見渡す店主。彼の手腕からすれば、パッと見で適切な防具が 分かるのだろう。粗方見渡すと、店内で一番価格帯が安い場所へと案内された。 そこには、鉄を主原料とした防具が並んでいる。特に鎧の類ではなく、革の鎧に近いものに なる。所々に鉄を使っており、防御力を高めているようだ。 防具屋店主「あちらの方々の様な一点防御型であれば、こちらでギリギリ選べます。」 ミスターT「了解した。」 置かれている防具を手に取るリドネイ。やはり選んだのは、胸回りを守る軽装鎧だ。実際に 実戦を経験している彼女なら、何が大切なのかを熟知している。先の身体の無数の傷のうち、 その殆どは実戦で負ったものもあるだろう。 今回は軽装鎧で我慢して貰うが、何れ通常鎧を購入したい所だ。無論、鎧だけではなく、 足や腕の装備も忘れてはならない。 ここは、彼女に念入りに吟味して貰う事にした。俺が用いる防具ではないので、しっかりと 納得して貰う必要がある。彼女が選び終わるまで、俺も店内を物色して回った。 ちなみに俺の防具に関しては、警護者の特殊兵装で問題はない。一見すると、普通の衣服を 着用しているが、実際には非常に洗練された逸品の数々を用いている。 リドネイにも着用させた黒コートだが、特殊繊維を用いたオーダーメイドである。口径が 小さい弾丸は通す事がなく、日本刀の斬撃ですら斬り付ける事ができない。ただし、異世界 仕様の付与武器では耐えられないだろう。 ベストやロング、ズボンも特殊繊維を用いた逸品である。こちらは黒コート以上の防御を 誇っている。更に下着の上、各衣類の間に特殊スーツも着込んでいる。 以前にも挙げたが、複数の衣類を着込む事により、防御面の加算は大いに期待できる。軽装 で済むため、非常に身軽なのも利点だ。それに、意外なほど蒸し暑くない。 これらの特殊兵装を常用している事から、防御面を疎かにしてしまったのが実状だ・・・。 リドネイには悪い事をしてしまったわ・・・。 ともあれ、俺の防具事情に関しては、今は全く問題ない。警護者の特殊兵装が、この異世界 で何処まで通用するかは、今後の戦いが物語ってくれるだろう。 暫くすると、自分に合った防具を見繕ったリドネイ。革と鉄を用いた軽装鎧に、腰回りと 両膝に両手の防具群だ。価格は銀貨50枚だったのだが、初利用という事で銀貨40枚へと 値切る事ができた。 こちらは先に清算を済ませて、直ぐに彼女に着用して貰った。衣服の上から装備するので、 店内でも問題なく着用できる。これで俺達の準備は完了だ。 ただ、今度は4人の方が、長時間の吟味をしだしている。先の昇格試験の様相を踏まえて、 防具の見直しをして回っていた。こちらも資金の方は問題なさそうなので、納得できるまで 動いて貰うしかない。 俺の方も武器屋と同じく、防具屋でも色々と手に取って物色して回った。実際に恩恵に与る 事はないのだが、それでも異世界事情を踏まえれば、どれも逸品ばかりで興味をそそられる。 これも地球では、レプリカによる調度品でしかない。西洋の騎士鎧は無論、日本の戦国時代 の鎧などもそうだ。しかもエラい重いため、機動力を殺がれるのは言うまでもない。 警護者の世界は迅速性を求められるため、これらの重装備は非常に厄介である。ただし、 致死性を孕む獲物と対面する際は、重装備は非常に心強い相棒だ。俺が用いている特殊兵装 よりも、更に重特殊兵装になれば、マグナムの弾丸すら防ぐ事ができる。 後はもう、直感と洞察力を駆使した先読みで動くしかない。殺られる前に殺れ、警護者界の 暗黙のルールでもある。あくまで、護衛対象の完全警護が最優先課題なのだから。 ちなみに、道具に関しては問題はない。その最大の理由は、創生者ティルネアより与った、 回復治癒支援魔法がそれだ。回復薬に治療薬は、各魔法で十分賄える。実際にリドネイの傷と 病を完全回復させるに至っている。その効力は折り紙付きだ。 更に言えば、その効果は未知数だが、支援魔法も十分期待できる。身体能力の強化が可能と あれば、被弾率・・・被ダメージ率は激減する事になる。 ティルネアと念入りな打ち合わせをした際の恩恵は、ここで真価を発揮する形になった。 万能戦闘戦術は警護者のモットーとする所なので、これは非常に有難いものだ。 余談だが、身内と遊んだ際のプレイスタイルでは、聖職者系の支援キャラが一番シックリと きた。今回の異世界での立ち位置は、正に支援キャラそのものである。 ただし、食糧事情に関しては疎かにはできない。長時間の遠征となれば、キャンプ道具は 必須となる。携帯食料で済ます事ができるが、できれば魔物を食材とした料理も考えるべきで あろう。 となれば、それなりの調理器具が必要になる。そこで、4人が吟味している間に、道具屋 へと足を運んでおいた。見繕ったのは、先に挙げた携帯食料と調理器具だ。調味料なども多く 入手しておいた。 キャンプを張るなら、こうした調味料の方が断然必要になってくる。下手をしたら、調理 器具以上に必要になる。幾ら美味たる魔物の食材でも、それを引き立たせる調味料がなければ 宝の持ち腐れだ。 地球での喫茶店の運営でもそうだったが、各種の材料を揃える際は、やはり調味料が一番 重要だったしな。その後に、各種食材となってくる。最後はまあ、調理をする者の腕次第だ。 俺も手料理ができるので、遠征の際の食事当番は申し分ない。全てにおいて補佐に回れる 警護者は、本当に重宝されるわな。 とりあえず、合計で銀貨30枚ほど費やし、遠征の道具群は全て揃える事ができた。残りの 銀貨は21枚である。予備の軍資金としては申し分はない。 道具屋での吟味を終えて、防具屋へと戻る。何と、まだ4人の防具調整は終わっていない。 これには呆れてしまったが、それだけ本気である証拠だ。 リドネイの方は、防具屋の陳列を直しだしている。見事なお節介焼きだが、彼女らしいと 思うしかない。防具屋の店主も嫌な顔をしていない。むしろ、彼女の配置の仕方に感心して いた。 戦闘も可能であり、店舗の調整も可能な彼女。その潜在能力には脱帽するしかなかった。 後半4へと続く。 |
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