アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝9
〜覆面の苦労人〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜
    〜第1部・第02話 奴隷のダークエルフ2〜
    酒が入った4つの小ジャッキと、簡単なツマミを複数トレイに乗せる。それを持ちつつ、
   ギルドの指定のテーブルへと向かう。先程、入店した際に目が合った冒険者達がいる場所だ。

ミスターT「お初にお目に掛かる。情報が欲しいのだが、大丈夫か?」

    4人の元に近付くと、怪訝そうな表情を浮かべる彼ら。その彼らの前に、酒瓶とツマミを
   置いていく。喫茶店でも馴染みのある、ウェイターの立ち振る舞いだ。数十年ほど繰り返して
   いる姿が様になるのか、彼らの表情が変わりだした。

ミスターT「これは俺の奢りだ、遠慮せずに受け取ってくれ。」
冒険者1「は・・はぁ・・・。」

    酒瓶とツマミを置くと、近場にあった椅子を持って腰掛ける。俺の言動に呆気に取られて
   いるのだが、そこに悪気がないのを感じ取ってくれたようだ。徐に酒瓶を手に持ち、ゆっくり
   酒を飲みだした。

    俺は下戸であるため、酒自体は飲めない。飲めなくはないが、飲んだら最後、どうなるかは
   分からない。過去に身内達からは、以後は絶対に飲むなと言われた事がある・・・。

    冒険者達が落ち着くまで、俺の方も別途用意したツマミを摘みながら待ち続けた。この手の
   対話の場合は、とにかく時間を掛ける事である。


ミスターT「俺はミスターTと言う。貴方達は?」
冒険者1「ウェイスと言う。」
冒険者2「サイジアと言います。」
冒険者3「ナディトです。よろしくっす!」
冒険者4「エルフィと申します。よろしくです。」

    落ち着いた頃を見計らって、自己紹介を行った。不思議な事に、この4人は身内の中の4人
   と非常に似ていた。名前も雰囲気も、何処か彼らに似ている。

    と言うか、背丈が彼らとほぼ同じだ。身内達より若干低いと思われるが、体躯の方だけは
   冒険者故にガチムチである。これで格闘技が使えれば、なかなかのレスラー風であろう。

    ちなみに、4人とも人間の種族だ。一見すると多種族に見えなくもない。それだけ彼らが
   美形である証拠だ。羨ましい限りである・・・。

サイジア「なるほど、別の大陸から来たのですか。」
ミスターT「色々とあったからの。まあ、流浪の旅路は嫌いじゃないしな。」
エルフィ「胸中、お察しします。」

    読んだ通り、この4人は非常に気さくで物腰が柔らかな人物達だった。初見こそ怪訝な表情
   をされたが、悪気がない事を直感で察知してくれたようである。それに、より身近に接した
   事により、彼らが凄腕である事を痛感する。

ウェイス「今の世上は、非常に殺伐としている。気になるのが、王国と帝国とのイザコザだ。」
ミスターT「ふむ・・・。」
ナディト「これ、非常に面白いんすよ。王国側が帝国側に横槍を入れているというね。」
ミスターT「何か真逆な感じがするが・・・。」

    本当である。身内が語るネタは、大体が帝国が各国に横槍を入れる事が多い。強大な軍事力
   にモノを言わせ、他国へと侵略する様相だ。それが、どうやら横槍を入れられる側になって
   いるらしい。

    逆を言えば、今の王国側が危険な存在だろう。何でも、色々な力を手に入れだしてからは、
   各国への横槍が目立ちだしているとの事だ。詳しい事は分からないと言うが、恐らく直ぐに
   明るみに出てくると思われる。

    これに関して、念話にてティルネアに伺ってみた。だが、彼女も詳細は分からないようだ。
   そもそも、創生者たる彼女は、世界全体のプラス面とマイナス面のみ窺っている。王国だけを
   警視している事はできないしな。

    もしその行動が取れるのなら、俺が遂行者の任務に当たる必要はない。となると、彼女は
   俺の上司に当たる訳か。

    ともあれ、これらの不穏分子を監視する任務に当たるのが、遂行者たる俺の使命である。
   ある意味、警護者としての使命とも言えた。


ミスターT「共闘できる仲間を探しているんだが?」
ウェイス「ふむ、戦力の増強か。俺達で良ければと言いたいが・・・。」
サイジア「近々、ランク昇格のクエストがありまして・・・。」

    非常に申し訳なさそうに語る彼ら。ランク昇格のクエストは、指定されたクエストを攻略
   できれば、冒険者ランクがアップするらしい。ただこの場合、加勢者がいる場合は、攻略対象
   の相手や目的物が2倍になるとも。

    彼らの現在のランクはBランクらしく、昇格クエストが成功すればAランクとなるようだ。
   1回までなら仮失敗という形にしても良いらしいが、2回目は完全に失敗扱いになると言う。
   初回だけは、彼らだけで挑みたいようである。

ミスターT「なるほど、了解した。となると、何か良いプランはあるか?」
ナディト「気乗りしないと思いますが、奴隷などはどうでしょうか?」
エルフィ「対象の奴隷にもよりますが、手頃で入手できると思います。」
ミスターT「奴隷、か・・・。」

    その言葉にゾッとしてしまうのは、俺が現代人故だからだろうな。確かに即戦力にはなる
   とは思うが、人身売買によって力を得るのは良いのかどうか・・・。

ティルネア(この世界では、奴隷制度は当たり前に存在しますので。)
ミスターT(地球での価値観を用いるのは、無粋な感じという訳か・・・。)

    フォロー的に言葉を入れてくれる彼女。創生者たるティルネアがそう言うのだから、それは
   致し方がないのかも知れない。地球の日本の価値観が根付いている俺には、非常に受け入れ
   難い様相である。

    しかし、資金さえあれば、即戦力となる人材が直ぐに得られる。これは確かに有難い事では
   ある。俺がどう割り振るかで全てが変わるのなら、今はその力を享受するしかない。


ミスターT「色々と情報をありがとな。」
エルフィ「気にしないで下さい。お役に立てれば幸いです。」
ナディト「敬遠されがちの俺達に、声を掛けてくれただけ有難いです。」

    屈託のない笑みを浮かべるエルフィとナディト。やはり、身内の面々に非常に似ている。
   その2人の言動に苦笑いを浮かべるサイジアとウェイス。こちらも身内の面々に似ていた。

    各作品で登場する見た目の存在なら、この4人は間違いなく序盤の横槍冒険者と言える。
   しかし、目の前の4人は非常に気さくで温和、そして義理人情に厚い男達だと確信が持てた。
   警護者の生き様で培った、直感と洞察力の賜物だわな。

    ただ、敬遠されがちという発言が気掛かりだが・・・。この場合、見た目で怖がれる存在
   だという事かも知れない。かく言う俺も同じ境遇を経験済みなので、その思いは痛いほど理解
   ができる・・・。

    4人に小さく頭を下げて、冒険者ギルドから退店する。ナディトが挙げた、奴隷の売買を
   行っている店舗へと向かった。目的の場所は彼から伺っているため、直ぐに目的地へ向かう
   事ができた。



    目的地に向かう際、ティルネアより詳細な情報を伺った。

    この世界の奴隷制度は、各作品のと何ら変わらない。主従関係なのは相変わらずであり、
   裏切りを防止するために首輪や隷属魔法による拘束を用いるという。首輪による拘束という
   事なら分かるが、隷属魔法がある事には驚くしかない。

    ただ、これらの拘束具は、完全には束縛できるものではないらしい。特に主の行動次第
   では、それらの束縛は直ぐに解けるとの事。裏切りを防止できるなら、できればそういった
   拘束具は用いたくはない。

    まあ、この考えは俺個人の我欲に近い。俺自身が理不尽・不条理な概念を嫌うため、奴隷
   制度自体を敬遠している部分もあるからだろう。しかし今は、異世界の仕様として割り振る
   のが無難だな。

    ちなみに、奴隷を用いるのは、戦闘員の増加や各種雑用への配置が通例との事。各作品でも
   挙がる、慰めものとしても用いられているようだが、警護者である手前それは完全なるタブー
   そのものだ。

    そもそも、地球での警護者の位置付けは、そう言った人として扱う事をしない勢力に対して
   への介入だ。この場合は問答無用で武力行使を行い、救出後には徹底的に壊滅を図っている。

    そんな警護者の中の1人たる俺が、奴隷を用いる事になる事実。そう思うと、実に罪深い
   行いとしか言い様がない。まあここも、異世界仕様と割り振るべきだろうな・・・。

    中半2へと続く。

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