アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第3話 大都会の喧騒1〜
    鉱山での討伐クエストと、シュリーベルの襲撃事変。これらを無事終えた俺達は、街の英雄
   扱いになっていた。とは言うものの、まだ魔王軍は数多くいるため、油断はするなと伝えて
   いった。それに、この街に俺達がいるとなると、今後は襲撃対象になりかねない。

    そこで、俺達が大都会に移動するという事を大々的に触れ回った。街の住人達は残念がって
   いるが、要らぬ火種が残るのは良しとしていない。そこが唯一の安心材料だろうか。つまり、
   シュリーベルから出て行く事には、半分は賛成してくれている事だ。

    大都会に移動するには翌日。その間までに色々と準備に取り掛かった。


ミスターT「・・・魔物も生命体の1つ、か。」
ミツキT「永遠に終わらない闘争、とも。ですが、当事者が何をしたかも重要です。ならば、警護者
     としての役割と、冷徹無慈悲なまでに遂行すべきですよ。」
ミスターT「・・・今じゃ一端の警護者だしな。」
    冒険者ギルドの隅に座り、束の間の休息を取る。傍らに座るミツキTだが、全身鎧の甲冑姿
   が様になりだしていた。まあ、中身は蛻の殻の状態なのだが・・・。
ネルビア「お・・お疲れ様でした・・・。」
ミスターT「お疲れ様。」
   全ての作業を終えて戻ってくる妹達。住人達や冒険者ギルドから揉みくちゃにされたようで、
   戦っていた時よりもゲッソリとしている。
カネッド「えー・・・何からお話すれば良いのやら・・・。」
ミスターT「困っている時は、何も話さず黙り込むのも一興よ。」
ミツキT「小父様が黙り込むと、話し掛けない限り動きませんからね。困ったものですよ。」
ミスターT「ふん、言ってろ。」
   極度の緊張による凝縮状態の妹達。しかし、ミツキTとのやり取りを窺って、自然と笑って
   しまっていた。場の雰囲気を行動で覆していく、ミツキ流の生き様の1つである。

アクリス「あの・・・お姉様、とお呼びすれば良いのでしょうか。」
ミツキT「何でも構いませんよ。ただ、実年齢は7歳で止まっていますけど。」
アーシスト「7歳ですか?! た・・達観し過ぎている気が・・・。」
ミスターT「軽く経緯を語るとするなら・・・。」
    俺は支障を来たさない範囲で、ミツキTの境遇を妹達に語った。7歳で逝去した身だが、
   それからは永遠とも言える時間を過ごしてきた。実質的に凄まじい年齢の女傑である。
ファイサ「そ・・そんな事があるとは・・・。」
ミスターT「それだけ、生命力は無限大だしな。時間と空間を超越し、近くも遠く、遠くも近く、
      常に共に存在している。俺がこの世界に飛ばされたのも同じ原理らしい。その俺を察知
      して馳せ参じたのがミツキTさんだ。」
ミツキT「肉体を持たない精神体の場合は、実質的に無限大の行動力を得られますからね。」
   自慢気に語るミツキTが、近場にある紅茶を一同に振る舞っていく。地球でもそうだったが、
   彼女は非常に気が利く秘書的存在である。疲れ知らずなため、その行動力は計り知れない。
ルマリネ「となると・・・その甲冑の中は・・・。」
ミツキT「あ・・はい、この様になっています。」
   言うか否か、被っている鉄仮面を取り外す。そこには何もなく、ただガランとした空間だけが
   存在している。それに恐怖に慄きだす妹達。
ミスターT「こらそこ、アンデットじゃないんだから。」
ミツキT「魔生命系でしょうかね。」
ミスターT「リビングアーマーとでも名乗るか。」
   再び鉄仮面を装着し、何気なく普通の行動を続けるミツキT。俺との会話の普通さを窺い、
   開いた口が塞がらない状態の妹達である。
ジェイニー「と・・とにかく、助かった事には変わりありません。本当にありがとうございます。」
ミツキT「お気になさらずに。小父様が一目置かれる方々です。厳守せねば失礼極まりません。」
ダリネム「小父ですか・・・う〜ん・・・。」
   小父という言葉に首を傾げる彼女達に、細かい事は気にするなと素振りを見せるミツキT。
   実際に彼女に小父と呼ばれるようになったのは、生前の時にまで遡る。
ミスターT「俺が17歳の時、彼女は7歳だった。10歳差になるが、まあ小父的な感じだろう。」
ミツキT「万般に渡って、色々と学ばせて頂きましたからね。」
メラエア「確かに、父娘の様に見えますよ。」
   先の恐々しさは何処へやら、徐々に打ち解けだしていく妹達。これもミツキTが気質である、
   誰とでも打ち解ける性質の恩恵だろうな。地球にいるミツキも同じ性質を持っている。


ミスターT「さて・・・予定通り、明日は大都会に“大々的”に向かうとするか。」
キャイス「陽動作戦も兼ねたものですからね。」
ネルビア「この街から、私達が完全に撤退した事を知らせませんと。」
カネッド「冒険者ギルドの方でも、手を打ってくれているようですし。」
    今後、この街に俺達がいる事を認知されないようにするには、完全撤退を演じるしかない。
   大都会ならば、多少目がいったとしても問題はない。
ミスターT「要らぬ横槍を気にするとなれば、勇者一行がどう出てくるか、だが。」
ミツキT「こちら以上に目立つな、と言って来そうですからね。」
ミスターT「個人戦闘力は向こうの方が上手だと思うんだが。」
アクリス「私達の真骨頂は、連携による団体戦ですし。」
アーシスト「連携ありきの戦闘ですよ。スタンドプレイじゃ、得られるものも得られません。」
   一端に物を言う様になったが、正にその通りだわ。それだけ成長した証拠だろうな。

    推測の域だが、恐らく勇者一行の方が個人戦闘力は遥かに上手だろう。相当の手練れがいる
   と予測できる。だが、団体戦闘力なら妹達も引けを取ってはいない。先程のスケルトン掃討
   作戦時を伺う限り、相当な実力に至ったと言える。

    全ての戦術や戦略は、個人プレイより複数プレイでこそ真価を発揮してくる。特に妹達は
   全員孤児院出身で幼馴染同士、その絆は凄まじいものだと痛感している。勇者一行がどの様な
   繋がりかは知らないが、この部分では一切引けを取らないだろう。

ミツキT「大丈夫ですよ。今度からは私も加勢致します。小父様が敬愛される妹様方、その皆様を
     守ってこそ警護者というもの。万事お任せ下さいませ。」
ネルビア「・・・本当にありがとうございます。」
カネッド「ミツキT姉にはお世話になりますぜ。」
ミスターT「達観度を除けば、お前さん達の妹分になるんだがな・・・。」
ミツキT「フフッ、そうとも言いますね。」
    俺のボヤきに周りは笑い合う。実年齢が7歳で止まっているミツキTに、妹達の現年齢は
   15歳、8歳差の姉妹そのものである。だが、実際には俺をも超越する高年齢のミツキTだ。
   俺達の母親的存在とも言えるのだから。
カネッド「このまま一気に、魔王軍を叩き潰して回りましょうや!」
ダリネム「やったりますぜ!」
ミスターT「まるで蛮族だな・・・。」
ミツキT「ハハッ、何とも。」
   勢いをつけた妹達が一気盛んに吠え捲くる。実際に力を付け出している事と、シュリーベル
   での実力が英雄クラスである事、名実共に見事としか言い様がない。その姿を見たギルド職員
   が頬笑ましい視線を送って頷いている。その彼らに小さく頭を下げた。

    この姿勢は決して奢っている訳ではない。言わば、己自身を鼓舞激励、叱咤激励をしている
   に過ぎない。仮に奢っているのであれば、もっと突っ込んだ勢いになるはずだ。それを見抜け
   ないギルド職員達ではあるまい。

    下積み時代を長く経て来た事により、この街での妹達の総合評価は凄まじい域にまで至って
   いるようだ。ならば、それに甘んじる事なく、己にできる事をし続けるのみ。もし、道を踏み
   間違えようとするなら、その都度正していけば良いだけだ。

    何だか、今では彼女達の保父的存在になりつつあると実感せざろう得ない・・・。



    そして翌日、作戦通りに大々的に大都会へと出発した。それはパレードで出送りをすると
   言ったものではなく、冒険者ギルドなどの情報部門からの発信である。これなら、大都会以外
   の都市などにも情報が行き交うだろう。当然それは、魔王軍にも伝わる筈だ。

    一応、不測の事態の対策としては、ペンダント効果の転送による瞬間移動が可能である。
   この場合は俺がシュリーベルなどに飛び、不測の事態を対処するという流れになるだろう。
   ミツキTには妹達の専属護衛を任せ切りにしたい。

    もし、地球からの増援が到来するのであれば、更に突っ込んだ行動が可能となる。しかし、
   余りにも力を出し過ぎるとパワーバランスを崩しかねない。調停者と裁定者の役割、これを
   しっかり担い続けねばな。


    荷馬車に揺られる事、数時間後。無事何事もなく大都会へと到着した。そう、本当に何事も
   なく到着できた。妨害工作があると踏んでいたが、要らぬ考えだったようである。

    そして、大都会の規模を見て度肝を抜かされた。先のシュリーベルの数十倍の規模の大都市
   だったのだ。故に大都会という呼び名が付けられたのだろう。これなら、先の襲撃など埃を
   払う程度のものだっただろうな。問題は、ここでの俺達の動向がどうなるか、である。

    ちなみに、この大都会の正式名称は、カルーティアスとの事だ。かなり昔に街を救ったと
   される、英雄の名前を拝借したらしい。


カネッド「す・・すげぇ・・・。」
ダリネム「こんなデカい街、見た事がないっすよ!」
ミスターT「何とも。」
    まるで小さな子供のようだわ。まあでも、シュリーベルが最大規模のものだと思っていたと
   言っていたからな。それに数十倍の規模となれば、こうなるのは当たり前か。
ミスターT「どうする? 情報収集をするなら、分かれて行動した方が良いか?」
ミツキT「ですね。ただ、不測の事態に備えて、小父様単独での行動が良いかと。私は皆様方と一緒
     に行動をします。」
ミスターT「分かった。連絡はアレで頼む。」
   俺の言葉に、裏方のメカドッグ嬢達を動かしていくミツキT。その中で、4人ほど俺の護衛に
   就いて貰った。表には姿を出せないが、各ペンダント効果を使えば具現化は可能である。

    俺達は別行動を取り、大都会の情報収集を開始しだした。先にミツキTとメカドッグ嬢達で
   探索をしてくれているが、情報は常に新しいものが良い。他の16人のメカドッグ嬢達も、
   縦横無尽に動き回ってくれているようだ。


    確かに、大都会と言われるだけある。武器防具に道具類、衣類や雑貨、多種多様なものまで
   取り扱っている。恐らく、この異世界で最大規模の大都市だろう。勇者一行が屯するのも十分
   肯ける。

    また、冒険者ギルドも多数あり、お互いに切磋琢磨しているようだ。無論、俺達が赴く先は
   シュリーベルの同系列ギルドである。既に紹介状も頂いていた。他にも自警団や騎士団も存在
   しており、極め付けは大都市の中央に鎮座する王城だろう。

    通常の異世界作品物なら、こうした大都市の王城に召喚者として招かれるケースが多い。
   俺の場合は地方の、しかも草原に放り込まれた感じだったが・・・。変人と言われても、全く
   反論の余地はない・・・。

ミツキT(なるほど・・・。)
ミスターT(どうした?)
ミツキT(例の勇者一行がいました。どうやら、貴族出のようで、色々とボンボンな感じです。)
ミスターT(平民出じゃないのか。となると・・・。)
    今後の考えられる横槍の予想は、偏見による差別思考だろう。特に妹達は全員、孤児院の
   出身である。言い方は悪いが、平民以下の境遇だ。連中の情報収集能力が高いのなら、確実に
   そこを突いて来るだろう。
ミツキT(ただ、別の勇者一行の話も耳にしました。今はこの大都会にはいないようですが。)
ミスターT(どちらかが偽者という事か。)
ミツキT(私は今いるコイツ等の方が、偽者だと断言しますがね。)
ミスターT(ハハッ、そう怒りなさんな。)
   かなりのご立腹の様子のミツキT。前にも挙げたが、彼女は理不尽・不条理の概念が大嫌いで
   ある。俺も同じクチだが、彼女の方が遥かにその度合いは強い。特に、生まれによる偏見が
   超絶的に嫌いとの事。これは、病床前と病床時に受けた差別が原因でもあるという。

ミスターT(何処の世界でも、人間が犯す罪は同じという事だな。)
ミツキT(人間と言うより、生命体に備わる業病でしょうね。それに気付き、誤った考えだったと
     改めていけるかが勝負所ですよ。)
ミスターT(連中は、悪い見本の代表格とも言えるわな。俺達も肝に銘じておかねばの。)
    本当にそう思う。この業病的要因は、俺達にも内在していると言い切れる。何時何処で出現
   するか分からない。常日頃から己を律し続け、それらを封じ込める必要があるしな。
ミツキT(ミツキ様の生き様が、どの世界でも特効薬だと痛感させられます。)
ミスターT(あー・・まあねぇ・・・。良い意味で変人だからな、彼女は・・・。)
ミツキT(フフッ、本当にそう思います。)
   自然と笑みが溢れてくる。存在そのもので鼓舞激励に叱咤激励をするミツキの生き様は、本当
   に見習うべき指針とも言えてくる。超自然体で繰り出されるその力は、純粋無垢の一念だわ。
ミツキT(戒めてくれる存在がある事が、どれだけ大切なのかと思い知らされますよね。)
ミスターT(そうだな。周りあっての己自身、ここを忘れてはならないわ。)
ミツキT(感謝感謝の連続ですよ。)
   常に精進せよ、それがミツキ流の生き様である。それは何も難しい事をするものではなく、
   目の前の存在を励まし支え抜く事が淵源となる。その繰り返しが、世上の抗争などを撲滅する
   特効薬になるのだから。それを自然体で繰り出す彼女は、やはり超人的と言うしかない。

ミスターT(とりあえず、指定の冒険者ギルドで合流するか。)
ミツキT(了解です。現地で落ち合いましょう。)
    粗方の情報収集は取れたので、向こうの街が紹介してくれた冒険者ギルドで落ち合う事に
   した。今はこの喧騒に慣れるのが最優先だろう。

    しかし・・・どうも人混みは慣れない。俺自身の気質の問題もあり、1人でのんびりとして
   いる方が性分に合う。この大都会は、まるで地球の秋葉原を思い浮かべる。

    いや、向こうの方が遥かに良いわ。それは、ヲタク気質の方々が数多く居る聖地でもあり、
   同じ趣味などを持っている強者がいるからだ。過去の依頼時には共闘にまで発展した戦友でも
   あり、今では盟友の域にまで達している。

    過去にはコミケの会場で襲撃を受けた事があった。あれがヲタクの方々との接点というの
   だから、何処でどう化けるか分からないものだわ。これも大切な縁というものなのだろうな。



    シュリーベルで紹介された、冒険者ギルドで落ち合った俺達。同系列のギルドだが、その
   規模はケタ違いに大きい。各種依頼も凄まじい数が出揃っている。同時に、その内容は結構な
   難易度となっている。

カネッド「これは・・・恐ろしい難易度で・・・。」
ダリネム「迂闊に手を出せば、無事では済まされませんね・・・。」
    掲示板に掲載された各種依頼を見て回る妹達。どの依頼内容も凄まじいまでの難易度で、
   それらを見て戦々恐々の状態になっている。同時に好奇心も出ているのだろう、瞳を輝かせて
   いるのが何とも言えない。
ミスターT「ここでも方針は変わらんよ。一番低い難易度のクエストから慣れていこう。その積み
      重ねが礎になる。」
ネルビア「勿論ですよ。流石にあの戦いを見させて頂いた手前、無駄な行動は慎みませんと。」
ミスターT「黒ローブ戦か。あんなの、ウォーミングアップに過ぎないのだが。」
   一服しながらボヤいてみせる。それを聞いた妹達は呆然としていた。その彼女達を見て小さく
   笑うミツキTである。
ミスターT「ゲームの中での魔王戦などは、想像を絶する戦いになるからな。あんな程度で驚いて
      いたら、直ぐにやられちまうぞ。」
ミツキT「物理・魔法・特殊、どの攻撃をとっても半端じゃありませんからね。」
アーシスト「何か・・萎えてきます・・・。」
ミスターT「何とも。」
   異世界での魔王や大魔王の戦闘力は、各種ゲームの連中と同じ力なのかは不明だ。しかし、
   それ相応の凄まじい攻撃を繰り出してくるだろう。それがラスボスという存在だしな。

    中半へと続く。

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