アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第11話 海への対策2〜
    夜中を進む荷馬車。騒音の問題もあり、非常に静かな移動となる。野生の魔物や夜盗との
   遭遇を警戒しながらのものだ。まあ、周りの女性陣は、来るなら来てみろという雰囲気だが。
   頼もしいと言うしかない。

    ちなみに今回は、メカドッグ筐体のメカドッグ嬢達が10人ほど護衛に着いてくれている。
   当然、ヒドゥン状態の様相である。司令塔のミツキTがリューヴィスにいるため、メカドッグ
   嬢達は独立行動となる。

    まあ、従来のAIシステムを遥かに超えるロジックを持つため、それは正に生きていると
   言うべきだろう。機械式のワンコロ軍団とも言えた。

イザリア「その自然と発せられる闘気は、魔力に近いですよね。」
ミスターT「ん? ああ、殺気と闘気のそれか。ドギツイものじゃなくても、それが滲み出ている
      感じなのか。」
イザリア「ええ、かなりの強さです。」
    獲物の調整をしていると、静かに語り掛けてくる。イザリアの戦闘力からして、魔力や闘気
   には敏感に反応するのだろう。俺の方は、殺気と闘気を放ってはいないのだが・・・。
エメリナ「常に恐々しさを醸し出しているのは、そのお力によるものでしたか。」
ミスターT「意識してはいないんだがの。」
フューリス「ご自身は感じられていませんが、実際には相当な力ですよ。」
   興奮気味に語る彼女達。実際に魔力が闘気に近いものだとは窺っていたが、ここまで滲み出て
   いる事に驚くしかない。となると、身内の面々は誰もがそれに該当するだろう。特にミツキや
   ナツミAにシルフィアも当てはまる。
テューシャ「戦士や闘士の方々が放たれる闘気ですが、それが魔力に近いと言うのは窺っています。
      ただ、ここまで明確に差があるのは初めて見ましたけど。」
ミスターT「俺達地球組と宇宙種族組は、魔力や魔法の魔の字すら知らんからな・・・。」
ウインド「電撃を放ったり、治癒をしたりするのは、5大宇宙種族のペンダント効果によるものに
     なりますからね。」
ダークH「私達は、ただ単体で戦闘力が高いだけで、他を除けば皆様の方が遥かに強いですし。」
   荷馬車の操縦を担う2人が、羨ましそうにボヤく。確かにそれは、俺にも言えてくる。

    宇宙種族組たる5大宇宙種族は、その種族の力により各種の能力を発揮できる。各々が特化
   型の力を持ってはいるが、実際には全ての力を出す事は可能だ。例えば、カルダオス一族の
   ヘシュナが、ドラゴンハート一族のルビナの電撃を繰り出せる、といった感じである。

    対して、地球組たる地球人の俺達は、特質的な能力は一切ない。己の身体のみが最大の武器
   となり、そこに殺気や闘気の心当てや、力の出し加減の触りなどの力があるぐらいである。
   端から見れば魔法的に見えるが、実際には闘気の部類に当てはまるだろう。

    それら欠点を補ってくれているのが、5大宇宙種族の能力が込められたペンダントとなる。
   それを地球組と宇宙種族組の全員が所持している。正に天下無双的な力だ。

ミスターT「イザリアさんは、各ペンダントを持たずとも、それなりの能力を発揮できるのか?」
イザリア「できますよ。ただ、ここで数万年を過ごすうちに、魔力や魔法という概念に目覚めた感じ
     になりますけど。」
ウインド「特質的な能力ですよね。デュヴィジェ様とは異なる力ですし。」
ダークH「でしたら、正に努力の賜物のですね。」
ミスターT「初対面時に分かったが、生粋の努力家そのものだしな。」
    傍らにいるイザリアの頭をポンポン叩く。それに顔を赤くして嬉しがっている。完全に魔王
   の威厳はそこにはない。それは、宇宙種族たるデュネセア一族の1人としてだ。
エメリナ「・・・何だか、家族ぐるみの感じで羨ましいです。」
ミスターT「まあねぇ・・・。お前さん達には悪いが、イザリアさんはデュヴィジェさんの遠縁に
      なるからの。義理の娘の1人になるし。」
イザリア「恐れ多いですよ。全てにおいて、デュヴィジェ女王様には敵いませんし。」
ミスターT「・・・彼女が女王様ねぇ・・・。」
   徐に一服しながら呟く。改めて振り返ると、とんでもない人物が出揃っている感じか。

    確かに、近場で共闘している5大宇宙種族の面々は、同族の頂点に立つ存在となる。女王と
   言われて大変慕われてもいた。しかし、俺からすれば普通の女性達であり、何も変わった所
   など全くない。特殊能力を除けば、本当に何処にでもいる女性達にしか見えないのだから。

    そう思っていると、両手を自分の両手で握り締めてくるイザリア。その顔を見ると、何と
   号泣していたのだ。流石にこれには慌ててしまう。

イザリア「・・・貴方様のお力は、その部分に帰結するのでしょうね・・・。相手が宇宙種族でも、
     分け隔てない姿で接してくれている・・・。」
ミスターT「・・・色々とあったんだな。」
    俺の一言で、より一層号泣しだす。その彼女を胸の中に抱き寄せた。それを見た他の5人も
   貰い泣きをしている。数万年を生きてきたイザリアにとって、その涙が全てを物語っていた。

    魔王と呼ばれるまでに至った経緯を、俺達は一切知らない。異世界組の3人ですら知らない
   だろう。今に至るまでに、どれだけの苦痛を耐えてきたのか想像すらできない。それでも、
   今こうして彼女は生きている。それが唯一無二の真実である。

    デュネセア一族の派生として、今も宇宙種族の概念を貫く。警護者と共通する、調停者と
   裁定者を実行する姿を見ると、イザリア自身の覚悟の現れを感じずにはいられない。


デュヴィジェ(小父様、ありがとうございます・・・。)
ヘシュナ(マスターのその一念、我々にも痛烈なまでに伝わってきました・・・。)
ミスターT(・・・今は心中読みウンタラの茶化しは入れんよ。)
    胸の中のイザリアが落ち着くのを見計らってか、デュヴィジェとヘシュナから念話が入る。
   イザリアへ向けた思いが、念話を通して伝わったようである。それは、5大宇宙種族だけでは
   なく、人間の身内にも伝わったようだ。
スミエ(昔からそうでしたよ。誰であっても、分け隔てなく接していた。特に孤児院にいた時は、
    お子様方に大変人気でした。)
カネッド(あ・・姉御、マスターも孤児だったのですか・・・。)
ダリネム(祖母と仰っていたので、てっきり一緒にお過ごしだったのかと・・・。)
スミエ(血の繋がりはあれど、色々とありましてね。ちなみに、彼の両親は消息不明です。)
アーシスト(・・・サラッと言い切る所が・・・。)
   俺が孤児である事を知った妹達。そして、いたであろう両親の事も知って愕然としている。
   確かに俺自身、両親の記憶は全く以て覚えていない。しかし、今の俺としては、目の前の面々
   の方が遥かに大切だ。こちらの方を重要視したい。
ファイサ(・・・何故そこまで割り振れるのですか・・・。)
ミスターT(前に言ったと思う。俺は今この瞬間を大切にしたい。昔はそれなりに知りたいと思って
      いたらしいが、ミツキTの素体の逝去と共に、人が簡単に死ぬ事も痛感させられた。
      ここに来た当初は、地球に戻る術がないと思っていたのだが、異国の地だろうが何処
      だろうが、死ぬ時は死ぬからな。)
シルフィア(その割り振り度、本当に昔から変わらないわね。まあ、それがあるから、今の君を構築
      できているんだろうけど。)
スミエ(そうですよね。下手に未練があった場合、それは要らぬ思考を生み出す恐れも出てくる。
    警護者である手前、要らぬ考えは致死に至る。航空機事変により記憶喪失になってからの
    方が、遥かに警護者として動き出しましたし。)
   同じ孤児として、心から悲しんでいる妹達。それに3人もしかり。だが、地球での各行動が
   壮絶的であったため、記憶を失ってからが本当の戦いとも言えた。皮肉な話である。

    後半へと続く。

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