アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝8
〜覆面の探索者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝8 〜覆面の探索者〜
    〜第1部・第10話 守るべきもの3〜
ウインド(マスター、どうされますか?)
ミスT(俺はこのまま、ここに鎮座し続ける。お前さん達は、全ての女性陣に交戦状態に移行する
    可能性が高いと伝えて回ってくれ。)
ダークH(了解。)
    俺の指令を実行しだすウインドとダークH。リューヴィスの女性陣には驚かれるのを考慮
   して、今後も会話を念話で続ける。要らぬ混乱は招きたくない。
ミツキT(・・・小父様、メカドッグ嬢達から連絡が。商業都市に接近する部隊ありと。)
ダリネム(ちょっと早くないですか・・・。)
アーシスト(スミエ姉御が言った出撃のそれは、恐らく伝令者とかかも知れないね。それが部隊に
      到着すれば、本体が動きだすという流れだろうし。)
キャイス(・・・ミスTさんが自己嫌悪に陥るのが分かるわね。)
ミスT(同調者が増えてくれて有難いわ。)
   皮肉を込めて語ると、苦笑する一同。本来なら間違った思いなのだろうが、その現状などを
   窺えば、否が応でもそこに至ってしまう。俺の場合は、それが周りより多いだけである。
ファイサ(戦闘になった場合、どうします?)
ルマリネ(規模によっては、予め避難させないと危ないですよ。)
ミスT(先読み的ではなかったが、今までの修行でメンタル面の強化は至っている。殺人的な行為
    でなければ、動じないとは思う。)
ネルビア(了解です。皆さん方を信じて、不測の事態に備えます。)
   今現在は、リューヴィスの女性陣は非戦闘員だが、メンタル面の強化はなされていると思う。
   言い方は悪いが、怖じたりはしないだろう。それに、今後は更に強くなって貰わないと、色々
   と厳しい。

    それに、仮にバリアとシールドの防御機構で守れるとしても、精神面や魔力面の波動だけは
   防ぐ事ができない。人間の弱みに対しては、己自身で何とかしていくしかない。彼女達の底力
   を最大限発揮させねば、今後も連中に付け狙われるのは目に見えている。

    周りに悟られるかも知れないが、それでも思ってしまう。本当に人間を守る意味があるの
   かどうかと。ここまで私利私欲を貪り、多種族を絶滅にまで追い込む罪深き種族を。本当の
   安穏を最短で求めるなら、人類自体を抹殺すれば確実に達成できる。

    しかし、それは行き過ぎた考え、間違った行動そのもの。これも何度も諭されているが、
   それでもこの様相を突き付けられれば、否が応でも考えざろう得ない。


イザリア(・・・お主は、本当にそうして自己嫌悪に陥り易いのだな。)
    突然の念話に驚く。それは魔大陸に戻った魔王イザリアからのものだった。彼女自身、宇宙
   種族なので、念話が使えてもおかしくはない。
ミスT(驚いた・・・お前さんか、元気そうだの。)
イザリア(はぐらかさないで貰いたい。お主のその一念は、限りなくマイナスに至る。周りの面々が
     危惧するように、その行き先は破滅そのものだ。)
   怒りの雰囲気は出ていないが、相当苛立っているのが感じられる。エリシェとラフィナが、
   愚痴を聞いた時の初めての応対に近い。それだけ、心配してくれているとも取れる。
ヘシュナ(まあまあ、そう仰らないで下さい。イザリア様の思われる思いは、何度も味わってきて
     いますので。このぐらいで反論されては、本当に身と心が持ちませんよ。)
デュヴィジェ(小父様のその一念には、確かに呆れますけどね。それでも、本当の根幹は据わって
       いますし。同じ一族同士なら、その部分を感じられていると思います。)
イザリア(・・・すみません、少し熱くなり過ぎました。)
   冷静なようで熱くなる、か。デュヴィジェと同じデュネセア一族のイザリアだが、実に人間味
   溢れる言動をしている。そう、壁を作らず真っ向から対峙してくれるその姿勢だ。

ミツキ(むぬっ? イザリアちゃんは、デュヴィジェちゃんと同じ血を引く姉妹わぅ?)
デュヴィジェ(いえ、同じデュネセア一族ですが、血は繋がっていません。他のお姉様方も同じで、
       一族は同じでも血筋が同じではありませんし。)
イザリア(貴方が・・・覇王デュヴィジェ様・・・。本当に光栄です、初めてお会いできました。)
ミスT(覇王ねぇ・・・。)
    デュヴィジェの素性を知ったイザリアが、今まで見た事がない雰囲気を放っている。同じ
   一族のトップたる存在に、初めて出逢った感じだろう。確かに以前、彼女は一族の下っ端だと
   言っていた。
ミツキ(ぬぅーん、不思議わぅ。デュヴィジェちゃんの幼少期に面倒を見たTちゃんが、実年齢では
    遥かに小僧的な部分がわけわかめわぅ。)
デュヴィジェ(宇宙種族は、人間種族の時間と空間が全く異なりますからね。イザリア様が数万年前
       にこの異世界に降り立つも、地球ではたった数年前になりますし。)
ヘシュナ(補足ですが、ここと地球との時間の流れはかなり異なりますよ。マスターがこの世界に
     到来してから4ヶ月が経過していますが、地球ではまだ4日程度です。)
ミスT(はぁ?! 待った・・・まだ4日も経ってないのか?!)
ヘシュナ(はい。ここでの1年は、地球での12日ですね。)
ミツキ(ぬぅーん! 正に浦島太郎状態わぅ!)
   開いた口が塞がらない・・・。地球から異世界惑星に召喚されて4ヶ月ぐらい経過したが、
   地球ではまだ4日しか経過していないというのだ。一体どんな仕様なのか、変な興味が湧いて
   来るわ・・・。

デュヴィジェ(私達宇宙種族は、時間と空間を超越する術を持っています。遥か永劫の流れを生きる
       存在でも。イザリア様方は、その途方もない年月を使い、この世界の調停者と裁定者
       を演じていらっしゃった。本当に凄い事ですよ。)
イザリア(そんな・・・烏滸がましい限りです。仮にも宇宙種族の端くれ、目の前の課題を乗り越え
     ねば意味がありません。これはデュネセア一族の指針でもあります。)
ヘシュナ(宇宙種族の総意の指針ですよ。まあ、マスターが所属の警護者も同じ概念ですけど。)
    サラッと語る内容だが、宇宙種族の彼女達にとっては相当な覚悟とも言える。それは、俺達
   が所属する警護者にも通じる概念だ。不思議な縁だが、俺は宇宙種族と同じ生き方をして来た
   と言える。
シルフィア(とにかく、魔王役を徹底してくれているイザリアさんを困らせない事ね。君の要らぬ
      右往左往は、私達にとっても苦痛の何ものでもない。周りを支えたいと思うなら、以後
      は可能な限り抑えなさい、分かった?)
ミスT(仰る通りに致します・・・。)
   念話を通して、凄まじい一念を放つシルフィア。殺気と闘気でもない、正真正銘の一念だ。
   恐々しさではなく、純粋な戒めの一撃。それに、心から感謝するしかない。



イザリア(久方振りの対話に酔い痴れたいが、来訪者が訪れたようだ。)
ミスT(ああ、俺の方からもハッキリと見える。)
    僅か数十分ほど念話での雑談をすると、イザリアより到来する存在が告げられる。この能力
   だが、何でも念話と魔力は相互に反応するようで、魔力側で周辺の感知ができるとか。俺には
   理解できない概念なので、今は己の目で見たもので判断するしかない。

    商業都市の東側門、そこから現れる複数の人物。騎兵に重装兵が連ね、その先導には護衛
   付きの重厚な馬車がいる。明らかに重役が乗ってます、と言いたげな様相だ。

    兼ねてからトラガンの女性陣には手を打って貰っているため、俺が小さく合図をすると、
   現れた連中がいる道路の店舗や家屋が閉じられていく。裏口より遠方に脱出するようにとも
   伝えてある。

    俺は空間倉庫からマデュース改3挺を取り出し、それぞれの腕に装備する。そのまま、侵入
   して来た連中の方へと歩みを進めた。すると、颯爽と行動を開始する連中。騎兵や重装兵が
   道の端に並ぶと、重馬車の扉が開き、中から人が降りてくる。

    その出で立ちや表情を見て確信が持てた。相当な権力を持つ貴族であり、どうしようもない
   カスであるという事だ。生理的に受け付けない事を、生命の次元から直感させてくる。また、
   付き添いの2人の執事的な人物もまた、生理的に受け付けない雰囲気をしている。

ミスT「・・・ここには如何様で訪れた?」
執事1「伯爵様が自らお出でになられたのだ、控えろ凡俗。」
執事2「貴様の様な軽々しい女が出る幕ではない。」
    執事の言葉に、怒るより苦笑してしまう。俺の気質からして、変人扱いされる方が性分に
   合うため、軽々しい女と言われて変な感動を覚えてしまった。そして、コイツ等が俺の本質を
   見抜けていない証拠となる。
伯爵「事を荒だてるな。女は需要が高い、それも活用する事が可能だろう。」
ミスT「なるほど・・・。」
   大凡の見当は付いていたが、こうもどうしようもないカスが出ると流石に萎える。しかし、
   念話を通して感じている身内達は、青褪めるかの様な殺気を出して怒りだしている。
伯爵「さて、ここを引き払って貰おう。ここは私の管轄下であり、ここにいる女共は全て私の所有物
   である。聞く所、貴様は好き勝手に暴れてくれていたようだが、質が高まるのなら良いと放置
   していたのは正解だったな。」
ミスT「その件に関して、尋ねたい事が幾つかあるのだが?」
執事1「下郎が! 立場を弁えろ!」
伯爵「まあ待て、ここは寛大な心で聞いてやろうではないか。」
   この手のカスはどうしようもないわな・・・。同時に、何時でも自分達を暴れさせろと、念話
   から凄まじい殺気が飛んでくる。そこら中に身内がスタンバイしているのが何とも言えない。

    両手と人工腕部に持つマデュース改を、俺の背後に間隔を空けて地面に突き刺す。あえて
   丸腰だと見せる演出でもあるが、それが“カモフラージュ”になる事も踏まえての配置だ。

ミスT「まず1つ。1ヶ月前のここは、お前さんが思う通り質は良くなかった。もし私が何もせずに
    いたとしても、ここに来たと言う事か?」
伯爵「先程も言っただろう、質が高まったために訪れたと。この手のハーレムを態と構築すれば、
   それに釣られて癒そうとする聖者らしき存在が現れる。治療されれば、それなりに使える女に
   なるのは言うまでもない。」
ミスT「つまり、商業都市はお前さんの悪知恵と私利私欲により、ここのお嬢さん方を食い物にする
    算段だった訳か。」
    この対話やこの様相は、念話の応用と俺の身体を媒体として、ここに住む女性陣やトラガン
   の女性陣、身内達全員に伝わっている。最初は怒り心頭の総意だったが、ここまで腐った存在
   を窺い、かなりの呆れた雰囲気となってきた。対して、俺の方は徐々に怒りが湧き上がりだし
   ている。
ミスT「2つ、ここのお嬢さん方を何処に連れて行くつもりだ?」
伯爵「王城周辺に住む貴族は、慰めものに使う道具を必要とするのもいる。そこに売り払う流れだ。
   貴様もそこそこ質が良さそうだな。こんな辺境な地にいるより、私の元に来るといい。破格の
   待遇を用意しよう。」
ミスT「残念だが、私は結構傷物でね。お目に適うものではないと思うが。」
伯爵「貴様の評価をするのは、貴様自身ではない、この私だ。貴様の素性など要らぬ。」
   人はここまで堕ちるものなのか・・・。地球での各事変では、己の私利私欲で地球自体の住人
   を食い物にしようとしていた連中もいた。この世界でも、こうした愚物がいる事に、本当に
   嫌気が差してくる・・・。

    後半へと続く。

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