アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第1部・第4話 超長距離精密射撃2〜
    雑談をしながら海岸に到着。対岸には目的地の羽田空港が見える。今も引っ切り無しに飛び
   立つ航空機に、ニューヨークへ赴いた際の恐怖のフライトが脳裏を過ぎった。

    身体が震え出して来るが、俺の手に優しく手を沿えるシルフィア。それに一瞬にして震えが
   止まるのが何とも言えない。


    改めて自己紹介を行う面々。伝説の警護者たるシルフィアの前で、現在進行形の警護者の
   女性陣は恐る恐るといった形である。ミツキとナツミAは完全に慣れたようで、アッケラカン
   としているのが見事であるが・・・。

    またここに赴く際、シュームが全員分の弁当を作っていた。それを披露すると、女性陣が
   大いに湧きだした。しっかり恩師の分まであるのだから見事である。それを摘みだす彼女達。


シルフィア「今も飛行機はダメみたいね。というか高い所はダメか。」
ミスターT「思い出せませんが、その余波だと思いますよ・・・。」
    サンドイッチを頬張りながら語る彼女。会心の出来だとシュームにアイコンタクトをする。
   嬉しそうに微笑む姿を見ると、母親パワーを感じずにはいられない。
シューム「先程も何度かアプローチをしたのですが、恐怖心の方が強いようで全く・・・。」
シルフィア「はぁ・・・君も罪な男よね・・・。」
   呆れ顔で見つめてくる恩師に、何だか申し訳なくなってくる。確かにシュームやナツミYU
   からすれば、それ相応の決意で述べたと思う。それが殆ど無碍にされた事は、俺でも虚しさが
   否めない。
シルフィア「まあ実際に高所恐怖症なのは事実だから、そこは大目に見てあげて頂戴な。」
シューム「ええ、それはまあ・・・。」
シルフィア「逆に地上で口説き落とせばOKだし。」
シューム「ほほぉ〜・・・それは確かに。」
   恩師の同性の肩を持つという一面に、呆れるよりも驚くしかない。俺が知る限りでは、この様
   な姿は初めて見る。それか何度か見ていたとしても、俺自身が忘れてしまったという事か。
   やはり虚しさは否めないわな・・・。

ナツミYU「ところで、お嬢様。今まではどちらを回られていまして?」
ミスターT「お嬢様ねぇ・・・。」
シルフィア「何よ、実際にそうなんだから仕方がないじゃない。」
ミスターT「はぁ・・・。」
    何だろうか。あの堅物で気が抜けないとされている恩師の姿じゃない。というかこの様な
   姿が当たり前だったのか。う〜む・・・。
エリシェ「補足致しますと、国内最大規模となるホテル運営グループ会社の社長令嬢ですよ。」
ミスターT「マジか・・・。」
シルフィア「相当大昔の事よ。何不自由ない世界に嫌気が差して、年齢1桁の時に警護者の道に進み
      出したけど。」
ミスターT「それで俺が拾われたと・・・。」
   この部分は改めて知ったわ。というか俺が恩師に半ば拾われたのは、記憶を失う前の話だ。
   しかもまだ警護者として至っていない時である。


シルフィア「例の航空機事変では君の大活躍で私達も助かったんだけどね。ナツミYUさんや他の
      強者の方々もしかり。」
ナツミYU「そうですね。ただそれが原因で、貴方は記憶を失ってしまった。」
シルフィア「私もそうだけど、君には返し切れない恩があるのよ。」
ミスターT「当時の俺が、後を期待して動いたとは思えないのですがね・・・。」
    一服しながら語る。強かな野心があっての手助けじゃないのは明白である。ただ自分は当時
   の記憶は既にない。彼女達が言う当時の自分の行動から伺うしかないのが現状だ。
シルフィア「何を愚問、としか言えないけどね。当時の君は、自分が何とかすると豪語して動いて
      いた。あの瞬間の君は、間違いなく利他の一念で突き動いていた。私達を命懸けで助け
      ようとね。」
ナツミYU「事故直後は貴方以外、誰1人として怪我はない状態でした。見事な緊急着陸技術だと、
      航空関連に所属する仲間が感心していましたから。」
シルフィア「フライトシミュレーターで培った技術で命を救う、ねぇ。ゲーマーの私でも、とても
      できる業物じゃないわね。」
   余っていたサンドイッチを全部平らげるシルフィア。それにシュームは驚いているようだ。
   恩師は見掛けに寄らず大食漢だからな。満足そうに紅茶を啜る姿は、本当に何処にでもいる
   女性としか思えない。

シルフィア「君の命懸けの戦いと、その後の警護者への道に周りが奮起しだしてね。ナツミYUさん
      なんか、その後の活躍は目覚ましいものだったわ。伝説の二丁拳銃ガンマンとしての
      腕前も、その頃からだったからね。」
ナツミYU「恐縮ながら・・・。」
エリシェ「シルフィア様も努力されていらっしゃいましたよね。私達の大企業も何度か妨害工作を
     されて、その度に貴方様に助けて頂きましたから。」
シルフィア「T君やシュームさん出身の孤児院を守ってくれているんだからね。そのぐらいの恩返し
      は当たり前よ。」
エリシェ「本当にありがとうございます。」
    今もエリシェの大企業連合の出資を受けている孤児院。それでどれだけ助けられているか
   分からないとの事だ。その報恩に恩師が報いている姿に、俺も貢献できていれば幸いだが。
シルフィア「君のその一念、以後のエリシェさんの依頼を受け持つ事で返しなさいな。」
ミスターT「うぇ・・・心中読むんですか・・・。」
シルフィア「私に隠し事は不可能よ。」
   自慢気に語るシルフィアに落胆するしかない。その姿に周りは笑っている。彼女の場合は恩師
   である手前、頼り甲斐のある妹そのものなのが何とも言えない。シュームやナツミYUとは
   全く真逆の存在だろう。



シルフィア「・・・さって、残り2時間だけど。そろそろ向かおうかしらね。」
    雑談に盛り上がる中、駆け付ける人物に気付いて語り出す恩師。その人物にエリシェが頭を
   下げだした。どうやら例のキャンピングカーの一件だろう。
エリシェ「後をお願いしても大丈夫です?」
運転手「お任せを。喫茶店の近くに停車しておきます。」
ミスターT「駐禁大丈夫かね・・・。」
ウインド「これを置いておけば大丈夫ですよ。」
   何やら資料を手渡すウインド。それと俺が渡した鍵を持って、グローブライナーの元に向かう
   運転手さん。その中、エリシェが新しい鍵を手渡してくる。

ダークH「ウインドが渡したものですけど、警察庁長官直筆の駐車禁止免罪状です。」
ミスターT「・・・はぁ・・・。」
    呆れるしかない。まさか警察庁長官直筆の駐車禁止免罪状とは・・・。確かにウインドと
   ダークHに掛かれば、その手の行使は造作もないだろう。しかしまあ・・・。
シルフィア「力があるなら、最大限使ってこそね。後悔してからでは何もかも遅い。君が命懸けで
      守ってくれた時が顕著じゃない。」
ミスターT「まあそうなんですがね・・・。」
ミツキ「ここは素直に認めるわぅよ。」
   遣る瀬無い雰囲気の俺の背中をバシバシ叩くミツキ。彼女達の言い分は分からなくはない。
   だが圧倒的な力を前にすれば、誰だってこうなるわな・・・。

シルフィア「では目的地に向かいましょうか。運転はT君に任せるわ。皆さんをしっかりエスコート
      してあげなさいな。」
ミスターT「はぁ・・・分かりましたぬ。」
    弁当セットを片し終えたシュームを見計らい、一同して駐車場へと戻った。何時の間にか
   一同と打ち解けているシルフィア。登場時の戦々恐々の雰囲気は何処へやら・・・。まあこの
   姿こそが本来のものだろうな。

    何度も思うが、本当に真女性は強い。周りにいる女性陣の底力は、有無を言わず最強である
   と言わざろう得ない。その彼女達を支える事こそが、俺の役目なのだろうな。


    駐車場に戻ると、見事なキャンピングカーが鎮座していた。内部を窺ったが、この規格なら
   20人以上は乗れそうな感じだ。現状の面々が窮屈にならなくて済みそうだ。

    キャンピングカーと言うだけあり、トイレ・シャワー・キッチン・ベッドと至れり尽せり
   である。小型発電機も完備している事から、本格派仕様とも言えるわ。


    運転は俺が担当、他の女性陣は後ろでワイワイガヤガヤと騒がしい。ここ葛西臨海公園から
   羽田空港まで1時間以内で到着できる。それまでは満喫して貰うとしよう。

    ちなみに車両の後方にトレーラーも牽引している。最大の理由は本物に近いパニッシャー
   などの兵装を置くためだ。これらも全て先読みして手配したエリシェの采配、見事としか言い
   様がないわ・・・。

    後半へと続く。

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