アルティメット
エキサイティングファイターズ
外伝6
〜覆面の警護者〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝6 〜覆面の警護者〜
    〜第2部・第11話 最終話・再来する集団5〜
    残骸の山が覆い尽くすコミケ会場。しかし人的被害は全く以て皆無に終わった。むしろ1つ
   の催し物と化しているためか、ヲタクの面々は大歓喜極まりない状態になっている。

    恒例の後片付けを行った後も、コミケの催しを続けていった。本来なら不意の襲撃があれば
   即刻中止するのだがな。まあこの場に世界最強クラスの警護者集団がいるのだ。警護の観点
   からして安全極まりないとも言い切れる。

    ただ俺達がいる場所が戦場になるため、出来れば民間人を巻き込みたくはないのが本音だ。
   被害が出る出ないの話ではない。この繰り返しだと何れ必ず何らかのトラブルに見舞われる。
   そういった状態に至ってからでは遅いのだ。

    まあ一切合切引っくるめて丸く収まるのなら問題ないのかもな。バリアやシールド効果が
   あるのだ、自分達に向けられる攻撃だけで済ませる事もできる。全ては俺達次第という事だ。


    コミックマーケット自体が終了したのは深夜近くになった。通常ならその時間帯まで開催は
   しないが、ヲタクの面々をも巻き込んだ形にまで発展する。そう、次なる襲撃を総出で待ち
   構えたのだ。しかし徒労に終わった流れだが。

    それでもこの場合は完全に警護者という存在を認めて貰えた感じだろう。それは娯楽の世界
   にも当てはまる。凝り固まった軍勢ではなく、多岐多様な行動ができると認知されたのだ。
   これは大きな収穫だったかも知れない。戦一辺倒でないと証明できたと思われる。

    まあそれでも警護者は戦闘集団には変わりない。できればこの力自体を使わずに済めば良い
   のだがな・・・。俺達の戦いはまだまだ続く事になる。



ミスターT「・・・・・。」
    翌日も無礼講な感じが続いた。喫茶店に集まるや否や、ドンチャン騒ぎを開始し出す。漸く
   役割が終わり性転換状態から元に戻るも、副作用からか更に髪の毛が伸びたのだ。腰程ぐらい
   で纏めねば床に付いてしまうぐらいである。
ミスターT「俺はまた良い実験材料だわな。」
ミュセナ「ハハッ、まあそう仰らずに。実際にそこまで長時間の性転換を行った事はありませんし。
     まさかその様な副作用が出るとは思いもしませんでしたから。」
ミュティナ「何度か母上の様な体躯に変身した後も、髪の毛の伸びが早まったのは分かりました。
      それがここまで伸びるとは驚くべき事ですよ。」
   性転換などのノウハウを持つ3大宇宙種族をしても、俺の様に長時間その効果を用いた事は
   全くないようだ。ただマイナス面での副作用ではないため安心ではある。
シューム「流石に今度は切らないとマズいわね。」
ミスターT「以前のようなミドルヘアーにするわ。」
ナツミYU「了解、時間が空けば切りますね。」
ミスターT「流石は主婦だの。」
   厨房でテンヤワンヤのシュームとナツミYU、そしてデュリシラにミュセナ。4人とも現役の
   母親なだけに、髪の毛の手入れは上手いようだ。特にシュームとナツミYUの腕前はかなりの
   もののようである。娘達にも同じ様に手入れをしているとの事。

ミスターT「それと気になった事があるんだが・・・。」
ミュセナ「・・・もしかして、感じられますか?」
ミスターT「多分それだろう、薄っすらとなら。」
    常人では考えられない恩恵を得ていたからか、または性転換で全ての能力に目覚ましい女性
   へと変身していた効果からか。あのコミケの試合後から薄っすらと力を感じるようになった。
   特に今は目の前の3大宇宙種族の生命力を肌で感じるぐらいに至っている。そしてミュセナが
   言ったそれは、別の宇宙種族の生命力を感じだした事だ。
ミュティナ「最近新たに感じるこの力は、恐らくガードラント一族だと思います。カルダオス一族
      よりも新しい種族になりますね。」
ヘシュナ「おー、彼らですか。実力だと私達よりも遥かに弱く、3大宇宙種族より後に誕生した種族
     になりますね。」
ミスターT「へぇ・・・4大宇宙種族か。」
   一服しながら彼女達の話を聞き入る。どうやら俺は、ガードラント一族という新しい種族の
   生命の波動を感じ取ったようだ。ギガンテス一族の性転換ペンダント効果の恩恵とも言える。
   しかし未知数の種族である事も確かか。
エリシェ「問題は防衛省が新たな技術を開発した事です。しかも技術提供はガードラント一族が有力
     とあります。」
ルビナ「それはどの様な技術なので?」
ラフィナ「何でも装着する事で身体能力を向上化する装置だとか。ただ実際に実験は成功していない
     ようですが。」
デュリシラ「非常に危ないですよ。3大宇宙種族の方々が能力を認めたペンダントなら、その力は
      使い手の実力で十二分に威力を発揮します。マスターがそれを実証していますし。」
ミスターT「検証実験をせずに開発したという事か。秘密裏に動いていたと取るのが妥当だな。」
   実際にその技術力を持つ宇宙種族お墨付きの産物なら問題ない。幾分かの副作用は出ているが
   危険とは言えない範囲内だ。もし全くその能力を見極めずに実戦投入した場合は、かなり危険
   だと言える。

ミスターT「そしてお前達が一番懸念しているのは、それをまだ暗躍している連中が得る事か。」
エリシェ「はい。その身体能力向上化の力は、従来の戦術を覆す事になるでしょう。まあ私達には
     3大宇宙種族の恩恵たる、バリアとシールドの効果があるので問題なさそうですが。」
ラフィナ「重要なのは、その能力を各無人兵器群に搭載する事です。更には有人兵器群に搭載し、
     既存の戦闘力を上回る事も考えられます。」
    無人兵器群が今以上の機動力を発揮すると、かなり厄介な事になってくる。仕舞いには人類
   が製造した兵器群への転用だ。空中兵器・地上兵器・海中兵器、どれを取っても相当な戦闘力
   となる。
ミスターT「何れは出るだろうと予測してはいたが・・・。」
ミュセナ「ガードラント一族のそれは、恐らく永住権などを得るための提携だったと思われます。
     そんな事をせずとも勝ち取れるものなのに。」
ヘシュナ「私が言うのも烏滸がましいですが、彼らはメンタル面の不安定さを抱えていますからね。
     そこを付け込まれた感じと取るのがよろしいかと。」
ミスターT「メンタルのスペシャリストが言うのだから間違いないわな。」
   今となってはヘシュナは各人の悩み相談室的な感じに至っている。他の2大宇宙種族にはない
   心の問題を誰よりも向き合ってきた証拠と言えた。悪い印象ではマインドコントロールとも
   言えるが、良い印象では占い師的な感じだろう。しかもそれは漠然としたものではなく、過去
   や現在を見定めての未来の予測だ。怖ろしいまでの的中率を誇るに至る。
ヘシュナ「メンタル面の部分は一歩間違えば大変な事になるというのに。」
ルビナ「ですね。特に私達は地球人を超越した能力を持っているだけに、悪い方に傾けば悪影響を
    与えかねません。」
ミスターT「例の善悪判断能力は発揮しないのか?」
ヘシュナ「ガードラント一族は私達よりも遥かに弱小種族である故に、その能力を高めるのではなく
     平均化させる事に焦点を置いて成長してきました。つまり善悪判断能力が発揮されず、
     誰でも使う事ができる。ここが一番性質が悪いですよ。」
ミスターT「つまり、もしお前達のそれぞれの十八番を具現化された時は・・・。」
   これはかなり厄介な展開になりそうだわ。善悪判断能力が働かない状態で力を出せるなら、
   その部分を形的に転写する事も可能だろうな。

    俺達が恩恵を与るペンダント効果は、善悪判断センサーたる部分で起動不起動を得ている。
   ヘシュナがヒール役を演じていた時は、自前の力すら出せずにいた。3大宇宙種族が高度な
   宇宙生命体であるために、自らストッパーを取り入れたとも取れる。

    しかしガードラント一族は彼らよりも弱く新しいため、その力を出さずに繰り出す事で生存
   してきたようだ。善悪判断センサーが働かずにそれら恩恵を得られるなら、これ程怖ろしい
   事はない。特に怖ろしいのは、3大宇宙種族の力を模写した場合だ。宇宙種族からすれば、
   それぞれの力の模写も容易だろう。

    ギガンテス一族は十八番、常人を逸脱した腕力と筋力。物質の重量を可能な限り超軽量に
   する技術に、宇宙船団のノウハウなど。

    ドラゴンハート一族は十八番、物質自体を言わばマイナス重力にして超能力的に浮遊させる
   能力と技術力。言わば反重力エンジンになる。これはギガンテス一族も同じだ。

    カルダオス一族は十八番、相手の精神力を操作ないし完全に操る。先の2大宇宙種族と同じ
   宇宙船団のノウハウも持っている。

    これらをガードラント一族が模写し、形的に具現化した場合が最悪となる。それを悪用する
   のなら、俺達への悪影響は計り知れない。特に衛星軌道上の宇宙船団に肉薄する事も可能だ。
   スペースシャトルを武装させれば、今の人類も宇宙空間で行動できるだろう。


ミスターT「・・・引っ掻き回すかねぇ。」
ミツキ「おおぅ、潜入操作わぅか?」
ミスターT「トラガンに潜入した時と同じ感じか。今回は通常の覆面以外に、完全に顔を覆う仮面も
      使う。またお前達には悪いが、敵対勢力として動いた方が良さそうだ。」
    ガードラント一族と防衛省などに接近するには、現状の警護者では悟られる怖れがある。
   ここは完全に所属不明の傭兵的な存在で接近するのが良いだろう。
ミュセナ「性転換はどうなされますか?」
ミスターT「今回は野郎の方が好都合かね。女性の場合は言い方は悪いが舐められる。ガードラント
      一族は男女の差別はなさそうだが、地球人はそうはいかない。ヘシュナの場合でも、
      よく何事もなかったと思うし。」
ヘシュナ「確かに。私が単独だったらどうなっていたかは分かりません。いくら宇宙種族と言えど、
     数の暴力の場合は屈する可能性もありますし。」
ミツキ「今度はわたが守るわぅね!」
ヘシュナ「すみません、本当にありがとうございます。」
   この場合だと地球人のミツキからの補佐としては、宇宙種族からすれば微々たるものだろう。
   特にギガンテス一族やドラゴンハート一族は逸脱した能力を持っている。カルダオス一族も
   そうだが、ヘシュナはその中で一番弱いのだ。だからこその精神操作能力になる。
ミスターT「ミツキは本当に強いぞ。周知の通りの明るさとかではない、その生命力はお前達3大
      宇宙種族を遥かに超えている。」
ルビナ「フフッ、ご存知ですよ。これだけ生命力が輝かしい人物は滅多にいません。ナツミA様も
    シルフィア様もしかり。」
ミスターT「彼らがいれば全く問題ない。それに今回はかなり危うい展開になりそうだ。ここは過去
      に演じ切った“恐怖の暴君”で引っ掻き回そうか。」
ナツミA「うぇ・・・アレを演じるのですか・・・。」
   俺が言った“恐怖の暴君”を聞いたナツミAが驚愕しだす。当時それを見ていたミツキや、
   四天王も同じく恐怖に震えだした。過去に演じ切った悪役の代名詞とも言える様相だ。

シルフィア「後聞きで知ったけど・・・相当な存在だったとか。」
ミツキ「私達を助けてくれた時のものですが・・・。」
ミスターT「ああでもしないと懲りなかったからな。今回も恐らくその感じになるだろう。それに
      総意が無事なら安いものだ。徹底的に演じてやる。」
    当時の様相を知るのは、ナツミツキ姉妹にナツミツキ四天王のみ。恩師はデュリシラを国外
   に脱出させる際、久方振りの再会以外には会っていない。つまり6人しかその姿を知らない事
   になる。
ミスターT「シューム、後で前の髪型に戻してくれ。動き出すなら早い方がいい。」
シューム「わ・・分かったわ。」
ミスターT「以前実戦テストで行った“イルカルラ”も出すか。」
デュリシラ「ええっ・・・ヤバくないですか・・・。」
ミスターT「以前はね。今はペンダント効果で何とかなる。それに警護者ミスターTと差異を付ける
      のなら、このぐらいはしないと連中にバレるだろう。墓堀人ドクターTで通す。」
ミツキ「うへぇ・・・。」
   姉妹と四天王の恐怖する姿に、周りの面々も感化されて恐怖しだしている。この6人は滅多な
   事では動じない。その6人が動じている様相は、筆舌し尽くし難いものだろうな。

    とにかく、事が重大になり掛けている。それに俺達の存在は世界中が知っていると言える。
   唯一の例外を除いて。それを演じ切り、敵側から引っ掻き回すとしよう。


    翌日には各々準備に取り掛かりだす。俺はシュームに散髪して貰い、当時用いていた装備を
   持ち出した。原始的な武装になるが、精神的な揺さ振りを掛けるため行動すらできなくなる。

    格闘外交が喧嘩による無血革命なら、この戦術は恐怖外交と言うべきか。威圧の次元では
   ない、生命体自体が必ず通る死という概念を突き付けるものだ。それに今はペンダント効果で
   その力を増幅させる事もできる。仕舞いには魂狩りを実演できた“イルカルラ”を投入して
   みよう。

    今度からの戦いは生半可なものではなくなる。宇宙種族のテクノロジーが一般に広まれば、
   既定概念を覆す戦闘と化していく。仮に至ったとしても、それを発動させなくさせる手法も
   兼ねている。恐怖というマイナス面の力を。

    第2部、完。

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