覆面の風来坊外伝
〜三国志遊戯〜
     アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝3 〜三国志遊戯〜
    〜第1部・第04話 加速化する戦場〜
    半年ほど早く黄巾の乱が勃発した。テイゲン氏の隣国侵攻やソンケン父氏の早期攻略が火種
   となったのは言うまでもない。しかしこれはかえって好都合でもある。

    またミツキ達の活躍により、ソンサク氏の重大な大事故による死亡フラグは回避された。
   無双では仲間の幻影を用いられた精神的な呪いによるものだという演出だったが。ともあれ、
   これでソンケン父氏とソンサク氏の救出は成った。

    更に朗報なのが恩義に報いたいとして、共に共闘を願い出てくれた事だ。これはまたとない
   幸運な例でもある。まあそれを狙っての行動だったのだが・・・。

    熱血漢が揃う呉の面々が加勢してくれるなら、これほど心強いものはない。今では軍師的
   存在にもなりつつあるリョフ氏もいるのだ、恐れるものなど何もないわな。


    時は刻一刻と変化していく。俺達の存在が仮想三国志の世界をより一層早く進ませる。この
   流れは止まる事はないだろう。

    ならばその流れにこちらも乗り、加速度的に進軍するまでだ。遅れたらこの波に飲まれる
   のは言うまでもない。



ミツキ「おおぅ、見事な茶菓子ですなっ♪」
ソンケン父「ハハッ、お嬢がお話されていたではないか。今はこのぐらいでしか恩返しができんが、
      遠慮なく食してくれ。」
    リュウヒョウ氏の軍勢と対決する前に、一度ソンケン父氏達と合流する事にした。本来なら
   ボクヨウから動き出した黄巾党を迎え撃つべく動くべきなのだが。
ソンサク「こんな事言っちゃ失礼なんだが、お嬢があんな動きをするとは驚きだよな。」
コウガイ「そうですな。人は見掛けに寄らないというものでしょうな。」
   片っ端から茶菓子を頬張り続けるミツキを見つめるソンサク氏とコウガイ氏。彼女の小さな
   身体の何処にその凄まじい力があるのだと驚いている。この2人もかなりの屈強な男故に、
   そのギャップには驚きを隠せないのだろう。

ミツキ「そうそう、ソンサクちゃん。シュウユちゃん達はまだ合流しないわぅか?」
ソンサク「シュウユは何か別の動きをしているみたいだが、俺にはさっぱり分かんねぇわ。」
カントウ「彼は一歩先の流れを読みますからな。何か思い付いたのでしょう。」
ミツキ「流石は後の大都督わぅね。ソンケン弟ちゃんと一緒に・・・って、これは今は喋っちゃダメ
    だったわぅ。」
    上機嫌時の彼女は、ついつい隠し事を口にしてしまうクセがある。というか元来から隠し事
   が苦手でもあり、今の現状から未来に起こる事を喋ってしまった。
リョフ「コイツは妄想癖があってな。武将達の名前を聞くと、仮想戦闘を繰り広げるほどらしい。
    今のは気にするな、聞き流してやってくれ。」
ナツミA「何時もこんな調子なので・・・。」
ソンケン父「ふむ・・・まあ、分かった。」
   間隔空けずにリョフ氏からフォローされるというミツキ。これには史実や無双を知る面々は
   驚愕していた。かく言う俺もそうなのだが。まあ今は先の話を述べて不審に思われては仕方が
   ない。ここはこの手を用いていくとしよう。


ビィルガ「ところで、ソンケン父殿。今後の展開をどう読まれますか?」
ソンケン父「そうですな・・・。推測するに、蜂起した黄巾党は一団でラクヨウに攻め入ると考えて
      います。ただこちらが事を早立てた理由は、シンヨウとテンスイの脅威を読んでの事
      でしたが。」
オウイン「やはりそうなりますか。テイゲン氏はまだしも、トウタク氏の野心は果てしないものです
     からな。」
    ソンケン父氏もリョフ氏が考えていた通りの流れを読んでいた。彼らが動き出した切っ掛け
   はテイゲン氏の挙兵であり、そして西のトウタク氏を意識しての周辺への侵攻だろう。
ディルヴェズ「セイト・エイアンを収めるリュウエン氏、ナンチュウ・コウシを収めるモウカク氏。
       こちらも刺激を受けて動きかねませんね。」
ソンケン父「ああ、それは俺の方も感じています。特にモウカクの軍勢がどう出るかが気掛かりで、
      オウヘイやリュウヒョウを先に攻略した訳でして。」
リョフ「モウカク一派は動きを見せず、むしろ北側の動きが活発になっている。今は北の方が危険と
    取れるだろう。」
   例の如く大陸地図に将棋の駒を並べ、腕組みをしながら厳しい顔を浮かべるリョフ氏。それを
   茶菓子を頬張りつつ、色々と駒を動かすはミツキだった。

リョフ「お前なら、どう動くと思う?」
ミツキ「この場合は、殆ど後手に回らないと分からないわぅね。ただ超危険なのはソウソウちゃんに
    なるわぅ。師子身中の虫とはこの事を指し示すわぅか。」
    新たな駒をラクヨウに置く彼女。同地域に2つの駒が存在するが、それはカシン氏勢力と
   指摘のソウソウ氏の新勢力を意味していた。
ミツキ「テイゲンちゃんがでしゃばらなかったら、ソウソウちゃんはおそらく北上してシンヨウで
    挙兵していたかも知れないわぅ。ただそれはテイゲンちゃんの影響を受けて行ったと推測
    するに・・・でしゃばらなかったら動かなかったわぅね。」
リョフ「なるほど・・・。黄巾の乱が収まるまでは挙兵はしない、か・・・。」
ミツキ「ただでしゃばらなかったら、リョフちゃん達が存在していたとも思えるし。シンヨウでの
    挙兵はなかったと思うわぅ。やはりセオリー通りにキョショウで旗揚げが有力説になるかと
    思うわぅね。」
   ラクヨウにあるソウソウ氏軍団を見立てた駒をキョショウに進ませる。同地域は黄巾党一派が
   支配する地域。党首のチョウカク氏はボクヨウで鎮座しているため、キョショウでの旗揚げが
   最短ルートとも言えた。
ミツキ「間違いなくソウソウちゃんが台頭するわぅね。カコウトンちゃんにソウジンちゃんもいる事
    わぅし。」
リョフ「だそうだ。今はソンケン父が宿敵とする、リュウヒョウ一派を潰す方が先決だろう。それに
    より中央の安全は確保される。」
   チョウサとブリョウにある駒をコウリョウに進ませるリョフ氏。これで中央大陸の制圧で、
   基盤は磐石なものとなるだろう。


    その後も色々と模索を繰り返すリョフ氏とミツキ。というかこの場合は無垢に近い彼に、
   色々な生き様を施した彼女。言わば師弟であろうか。あの天下無双たるリョフ氏の師匠的存在
   がミツキというのは、何だか恐れ多い気がしてならない・・・。

    しかし、多岐多様のスキル・超絶的な明るさ・絶対にブレない生き様を持つ彼女。それに
   多大な影響を受けているのは間違いない。現にあの堅物で破天荒でぶっきらぼうな彼の生き様
   が激変しているのだから・・・。

    史実や無双の彼がこの様な存在だったら、武神と謳われて後世に残るカンウ氏を超える存在
   になったのだろうな。このパラレルワールドは実に不思議なものだわ。


ソンケン父「・・・1つだけ気掛かりな事があるんだが。」
ミスターT「俺達の行動、か?」
    ソンケン父氏がコウガイ氏が炒れた紅茶を味わっている。匂いまで嗅いで味わっている所を
   見ると、紅茶愛好家なのだろうか。まあその匂いを楽しむ場合は誰でもあるだろうからな。
   それはともかく、胸の内を静かに語り出す彼。それはやはり俺達の存在だろう。
ソンケン父「俺の命はおろか、息子のサクの命をも救って頂いた事には本当に心から感謝している。
      しかし・・・お主達の存在はこの乱世を根底から覆しかねない究極な存在に思える。
      お主達だけで天下を取れる力もあるのだろうが・・・。」
ミスターT「・・・何故俺達にまで気を配るか、だな。」
   俺の言葉に静かに頷くソンケン父氏。彼やソンサク氏を助けた時、俺達の強さを目の当たりに
   している。これだけの戦闘力を有しているのに、何故自分達の勢力を気にするのか。普通なら
   そう考えてもおかしくはない。

ミスターT「なら逆に1つ質問をいいかね。」
ソンケン父「ああ、何だね?」
ミスターT「俺達の今までの姿を見てきて、貪欲な私利私欲の一面を感じられたかい。ダンナ方を
      利用する様なドス黒い一念だ。」
    俺の問いに静かに首を横に振る。確かに彼らと戦いたいと狙っての救出もあるが、そこには
   私利私欲は一切ない。むしろ彼らに天下を取って貰いたいという一念の方が強い。だからと
   いってそれだけの理由で救出した訳ではない。
リョフ「俺達の時と同じだな。ソンケン父達の生き様に感化され、共に戦いたいというのが本音。」
ミスターT「そう、それが事実だよ。既にミツキ達を通して感じているとは思うが、ダンナ方への
      強い憧れの一念に邪念はなかったと思う。あれば江東の虎と謳われるソンケン父氏が
      いち早く気付くだろうに。」
ミツキ「狼ならぬ虎的直感わぅね。ただ・・・犬か猫かの差はあるわぅが・・・。」
リョフ「ハハッ、それなら動物的直感と言うべきだ。野性的直感とも言える。人間よりも遥かにその
    能力が優れているのだ、強かな一念など直ぐに読み取れてしまう。」
ソンケン父「・・・本当にそれだけなのか?」
ミスターT「ならば、向こう数年間は俺達の生き様を見続けてくれ。そこに強かな一念があれば、
      直ぐに見抜けると思うよ。論より証拠、訓練より実戦だわ。」
   一服を終えるとソンケン父氏達を見入った。どの人物も屈強の精鋭揃い。呉のシンボルカラー
   が赤とあるだけに、情熱の色が冴え渡る。熱血漢とはこの事だろうな。


    そこに仲間が颯爽と駆け付けてくる。隠密ハーズダント軍団を指揮している四天王の1人、
   ヴィエディアである。先に挙げたデストロイア以外に、彼女とフィルラウム・ディヴォガルが
   いる。各々は他の隠密軍団の指令や情報収集にも奔走してくれている。4人で分担する姿は、
   ナツミツキ四天王に匹敵しているだろう。
ヴィエディア「マスター、ラクヨウが動き出しました。カシン氏勢力のソウソウ氏が軍を率い、北の
       シンヨウに侵攻。同時にギョウよりエンショウ無双氏の軍がシンヨウを強襲。挟撃の
       ようです。」
ミスターK「当たりましたね、1つの推測が。それにミスターRさんの推測も。」
リョフ「だな。これで黄巾一派は当分様子見、か。」
   大陸地図のラクヨウにある駒とギョウにある駒をシンヨウに進める彼。半年前にリョフ氏が
   世話になっていたテイゲン氏の地域だ。いくら巨額の財宝を得て軍備を整えようが、覇道を
   地で行くソウソウ氏と名族たるエンショウ無双氏の挟撃を受ければひとたまりもない。

ミツキ「この場合は見捨てるわぅか?」
リョフ「ああ、そのぐらいの罰は与えさせろ。お前達のお陰で忘恩にはならなかったが、この弱肉
    強食という自然の摂理には従わさせる。あんな奴でも武将の1人だ、倒れる場所ぐらいは
    見定めると確信している。」
ミツキ「わぅわぅ。」
    至って平然と語るリョフ氏にウンウン頷くミツキ。既に彼とは縁を切っている現状だけに、
   これ以上の関わり合いは持たないとしたのだろう。この場合は忘恩とはならないだろうな。
   というか先に相手側からリョフ氏達を見切ったのだから、もう関わる必要はないわな。

ミスターH「連中、次はどう出ますかね。」
リョフ「ギョウへはチョウリョウとコウジュンが何度か攻めている。エンショウ無双の流れは大体
    掴めるだろう?」
チョウリョウ「そうですな。この場合はテイゲン殿を破ったソウソウ殿とエンショウ無双殿が、同
       地域で独立を果たすと思います。この場合はソウソウ殿ですな。」
コウジュン「次は共闘で河北を攻めるでしょうね。今度はエンショウ無双殿の軍勢が取るでしょう。
      これで死角は無くなると思いますぜ。」
    シンヨウの駒が除かれ、ソウソウ氏に見立てた駒が置かれる。そしてギョウのエンショウ
   無双氏の駒がホクヘイに進む。この構図は史実や無双でもお馴染みの河北制圧そのものだ。
   それが早まった展開になると推測できた。

ソンケン父「となると・・・シンヨウのソウソウがラクヨウに攻める、という訳か。」
ミツキ「おー、流石わぅ。」
チョウリョウ「カシン殿が敗退するのは間違いないでしょう。そのままチョウアンに逃げ込むと推測
       できますが・・・。」
コウジュン「テンスイのトウタクですな。」
リョフ「漁夫の利、だわな。」
    目まぐるしく動く地図上の駒達。シンヨウからラクヨウへ、ラクヨウからチョウアンへ。
   そしてテンスイからチョウアンへ、である。そしてその流れが見事に的中できるという部分、
   全ては手中で踊るに過ぎないという事か。何ともまあ・・・。

ソンサク「そうなると、黄巾の連中はダンマリのままっすかね?」
オウイン「いや、その逆だと思います。これを漢王朝の衰退が招いた失態だと民に強く言い続け、
     更に同志を募っていくと思いますな。唯でさえ今の世上は混沌としていますから。」
コウガイ「戦は戦を呼ぶ、ですな。」
    大陸北側が戦乱の渦と化している現状、これに顔を曇らせる三国志縁の面々だった。対して
   俺達の方は史実や無双とは異なった展開だが、全て回帰先が判明しているため動じていない。
オウイン「風来坊殿、南の方はどうでしょうか。」
ミスターT「ケンギョウやナンチュウの方か。今は動きを見せていないな。というかこっちの方は
      レッドパーティーが勢力を拡大するのが常なんだけどね。」
リョフ「レッド・・・ああ、なるほどな。だから今は全く動かない、か。」
   俺の例え話にオウイン氏やソンケン父氏達は意味不明だと顔をしかめるが、リョフ氏達はその
   略称を理解したようである。レッドは赤。そう、ソンケン父氏の呉の軍勢の事だ。本来なら
   大陸の南東は呉が支配していくのだが、今は中央で停滞中である。


ビィルガ「ともあれ、今後どうされます?」
ミスターT「・・・宿敵を利用する、それも1つの手だな。」
    今度は俺が駒を動かしてみた。コウリョウのリュウヒョウ氏の駒を北側に向ける。そのまま
   チョウサとブリョウの駒を南に移動させる。つまり従来の南進攻略そのものだ。
ミスターT「リュウヒョウ氏には北側からの壁になって貰う。その間に南に進み、完全に後方の憂い
      を消滅させようか。そうすればソンケン父氏の動揺も落ち着くだろう。」
ビィルガ「了解仕った。やるからには徹底駆逐をモットーとして動きましょうぞ。」
   徹底駆逐と語るが、彼が両手の拳を作るとその意味を仲間達は理解した。つまりプロレス技で
   大いに暴れようという事である。武器だと殺戮になってしまうが、拳の殴り合いなら喧嘩で
   済む。この場合はもう他勢力に喧嘩的殴り込みと言っていい。

ソンケン父「コウリョウの方からの進軍はどうされる?」
ミスターT「ソンケン父氏達だけなら攻めて来るだろうが、俺らがいるから来ないと思う。来たら
      どうなるかをダンナを助けた時に思い知っただろうからね。」
ミツキ「ぐふふ・・・そうですなぁ。」
リョフ「何度来ても構わん。その度に無力さを思い知らせればいいだけの事よ。」
    俺がそう言いつつ不気味に微笑むと、便乗してミツキとリョフ氏が不気味な程に微笑んだ。
   リョフ氏にこの様な技があるとは思わなかったが、怖さも相まって凄まじい恐怖度である。
   ミツキの方は相変わらず怖いのかノホホンなのか分からないが・・・。

ディルヴェズ「分かりました。先ずは数多くの特殊な兵団で苦戦させるという、モウカク殿の軍勢を
       叩きましょう。そうすれば南西からの侵攻は防げます。」
ソンケン父「・・・そうですな、了解致した。今は何も考えず、ただ前を進むのみとしましょう。」
ミツキ「そうそう、それでいいわぅよ。今は我武者羅と突き進むわぅ。結果は後から必ず付いてくる
    わぅから。」
    この場の雰囲気に飲まれ気味のソンケン父氏。そんな彼の背中をバシバシと叩くミツキ。
   彼は三国志の中でも一流の武将なのに、何という恐れ多い事をするものやら・・・。ただそれ
   を見てリョフ氏達・オウイン氏、果てはソンサク氏やコウガイ氏達すらも笑っているのだから
   凄いものである。それだけミツキの行動が純粋無垢という事になるのだろうな。

    とりあえず次の目標はコウシとナンチュウ。南蛮の大王と称されるモウカク氏が陣取る地域
   である。数多くの特殊な兵法を用いての戦闘とあり、初見のソンケン父氏達は苦戦しそうだ。

    やはり事前に全て分かっているか否かでは雲泥の差だ。SF映画で良くある未来を知る者が
   過去で暴れるというのは、本当に利に適った動きとも言えるだろう。まあ今回のこの展開が
   正にそれそのものなのだが・・・。


    本人は薄々は気付いているとは思うが、今後の軍団の総司令はソンケン父氏に一任したい。
   何れ呉に天下を任せたいと思っている。魏でも蜀でも晋でも問題はないのだが、晋はまだ誕生
   すらしていない。魏は覇道が気に食わず、蜀は身勝手な君主が好きになれない。

    南蛮のモウカク氏軍団という手もあったが、ここは4猛将伝で大変お世話になった呉に全て
   委せる事にしよう。まあこちらは彼らと共に暴れられれば全く問題はないのだが。



ミスターTA「うへぇ・・・南蛮ってこんな気候だったんですか・・・。」
ソンケン父「噂には聞いていたが・・・これ程とはな・・・。」
リュウジN「蒸し暑さとジメジメ感が最悪ですな・・・。」
    亜熱帯に近いコウシの陽気。ブリョウより南下したのだが、その直後から凄まじい蒸し暑さ
   に襲われ出した。日本の梅雨の時期とかなり近い。
リョフ「チョウセンの調子はどうだ?」
オウイン「この気候で少しバテ気味になっていますな。まあ慣れるまでは致し方がないかと。」
シューム「今まで普通の気候だったからねぇ、バテるのは仕方がないわよ。まあそれも全て自身の
     経験として残るから、今は堪えて我慢しなさい。」
ナツミYU「免疫力がない子供はこういった環境は危ないけど、だからこそ慣れる最大のチャンス
      でもありますからね。可愛い子には旅をさせろと言うぐらいだから。」
   チョウセン嬢のバテ気味に、義父のオウイン氏と未来の婿のリョフ氏が心配そうにしている。
   それを全く気にせず一蹴するはシュームとナツミYU。流石は母親パワーである。子育ての
   事に関しては無敵だわ。

シェガーヴァ「マスター、ここの攻略後はどうされるので?」
ミスターT「コウシとナンチュウの後はナンカイを潰して一応一段落だろうね。まあ確実に東の勢力
      が殺気立つのはどうしようもないが。」
ソンケン父「なるほど、その構図なら最小限の防衛で済みますな。」
ミスターT「後は国力増強に人材育成を徹底しよう。特に後継者育成は絶対に疎かにしてはダメだ。
      これを甘く見る勢力は必ず内部から自壊していく。これだけは強く進言するよ。」
ソンケン父「了解致した。」
    海賊退治で名を馳せたソンケン父氏達なだけに、修羅場を潜ってきた回数は他の英傑よりも
   多いと確信している。だからこその後継者育成である。事実、オウセイ氏との対決時に長男の
   ソンサク氏がいるのが何よりの証拠だろう。同時期のソウソウ氏やリュウビ氏達は後継者は
   おらず、彼だけが先駆の道を走っている。

    そのソンサク氏の弟、ソンケン弟氏。史実や無双では彼が呉の完全な礎を構築する猛者に
   至っていく。その後の没落は仕方がないにせよ、このソンケン父氏の家族だけは他にない程の
   結束力を持っていると言えるだろうな。

    歴史は三代目までが築くというが、本当にそう思う。しかしその後の流れは後継者育成に
   掛かっていると断言していい。ここを疎かにすると本当に没落してしまう。


ミツキ「そうだ、コウガイちゃん。マティマティカを覚えてみるわぅか?」
コウガイ「な・・何ですかいそれは・・・。」
ミツキ「ぐふふ・・・超クールな必殺技わぅ♪」
    ミツキの言葉に仲間達はニヤリと微笑む。6エンパではマティマティカに近い無双乱舞を
   放つコウガイ氏。超絶的には動けないにせよ、その場で持ち上げて決めるなら上出来だ。
ミツキ「ソンサクちゃんはコンビネーションアタックとシャイニングウィザードわぅね。それだけ
    軽快に動けるなら、問題なく決められるわぅ。」
ソンサク「ほほぉ・・・面白そうっすな!」
ミツキ「ソンケン父ちゃんはクローズラインわぅかね。リョフちゃんはチョークスラムでキマリわぅ
    けど。」
ミスターAK「無難な所ですね。ツームストンパイルドライバーもいいですが、打ち所が悪いと首の
       骨を折りかねませんし。」
   意外なほどにプロレスに精通しているミスターAK。今の武将達の体格や力を分析して、一番
   効率がいい技を挙げだした。リョフ氏クラスの体格ならチョークスラムなどは絶大な効果を
   発揮するのは間違いない。

    早速ミツキがプロレス技を簡潔的にレクチャーしだした。それに直ぐ順応していく所が見事
   としか言い様がない。三国志の武将達は基本的な戦闘力は遥かに高い。だからだろうな。

    まあその業物を実際に繰り出すとなると話は別となってくる。俺達の方も本当の実戦という
   ものは、行いだしてまだ日が浅い。この半年間は大陸中を回り、情報収集だけだったからな。

    ともあれ、基本技を憶えておけば後は応用を利かせるだけのものだ。彼らなら十二分に使い
   こなす事ができるだろう。


カントウ「殿、敵の斥候らしき軍勢が多数接近中!」
ソンケン父「む、来たか。風来坊殿、どうなされる?」
ミスターT「斥候はこちらが引き受ける、ダンナ方は中枢へと進軍を。後方の憂いは俺達が完全に
      断ち切るから、全力で攻略してくれ。」
ソンケン父「了解した!」
    斥候は気になる所だが、南蛮の特殊兵団だった場合は苦戦が強いられる。本来なら彼らに
   対峙させ、免疫を持たせるべきなのだろう。そこは次のナンチュウで決めるとして、今はこの
   コウシを潰すとしよう。



フィルラウム「ふむ、敵の斥候は猛獣部隊ですね。」
リュリア「おぉーっ、トラさんやゾウさんが暴れてるぅーっ!」
シューム「それ、他人事じゃないんだけどね・・・。」
    風来坊の世界観なら、実物は動物園ぐらいでしか見れない猛獣達。それを目の当たりにして
   大喜びのリュリア。そんな彼女の姿に呆れ顔のシュームである。ミツキに匹敵する楽観主義の
   娘には、流石に参りもののようだわ。
コウジュン「ハハッ、お嬢もミツキ殿にスゲー似てますなぁ。」
チョウリョウ「左様ですな。この様な若い女子が縦横無尽に暴れられる現状。風来坊殿の軍勢は自由
       があって羨ましい限りで。」
   幼いチョウセン嬢にメロメロだったチョウリョウ氏とコウジュン氏。それはリュリアにも同じ
   様な雰囲気である。しかしそれは癒しの存在というものであり、恋愛には発展しない模様だ。
   確かに野郎色濃い乱世では、女性は高みの華とも言える。

リョフ「ふむ・・・風来坊達が強い理由は、これも1つあるのだろうな。戦場は男の場だと思って
    いたが、お前達の大多数は女性が占めている。」
ミスターT「この乱世だと通用しない法則だが、時代は女性の力こそが全てとなっていくよ。その時
      こそ争いなど起きない世上になっていくからね。リョフ氏にとっては戦えなくなるのは
      死活問題だとは思うが、チョウセン嬢の事を思えば理想の世界だと思う。」
リョフ「まあ確かにな。戦えなくなるのは虚しいが、チョウセンが幸せに生きられる世界なら悪くは
    ない。」
    戦いを第一としたリョフ氏が絶対話さないであろう事を述べる。彼ほど戦いがない世界が
   窮屈と感じる事はない。しかしその世界がチョウセン嬢にとって住み易いのならと言うのだ。
   これを聞いた史実と無双を知る俺達は感極まるしかなかった。また義父たるオウイン氏も彼の
   発言に感極まっているようである。

ミスターR「リョフさん、何も争いがない世界がつまらないという事じゃないっすよ。例のプロレス
      という枠組なら、エンターテイメントとして戦う事ができます。まあ殺し合いじゃない
      ので、殺伐とはしませんけどね。」
リョフ「確かにそのプロレスとやらも、肉体を駆使しての戦いとも言える。本気で戦う事ができない
    のは時代の問題で仕方がないが、そういった戦いの場も面白いものだろうな。」
    猛獣部隊をどう退けるか模索している中でのリョフ氏の発言。やはりテイゲン氏から独立を
   果たした後の成長振りが凄まじいものである。彼自身は根っからの悪人とは思えないので、
   用は育て方に問題があったと言える。半ばテイゲン氏のいい加減な教育には呆れるものだわ。


シューム「それで、ここはどうするの?」
コウジュン「流石に動物相手だと瞬発力の問題でヤバいっすよ。」
チョウリョウ「それに虐待とも取れてしまいますし。」
    流石にトラやゾウなどには格闘術は厳しいものだ。武器を使えば容易だが、それでは殺戮に
   至ってしまう。できる限り無血で終了させたい。ならば・・・完全な戦意喪失を狙うか。
ミスターT「・・・魔法を使ったのなら、あの技も使うか。ルビナさんや、アレを頼むわ。」
ルビナ「だ・・大丈夫ですかね・・・。」
ミスターT「全ての種族の頂点に君臨しているから、猛獣部隊の無力化も問題ないだろう。無血革命
      といきませう。」
ルビナ「そうですか、了解しました。・・・人間どもよ、刮目せよっ!」
   やはり本気としか思えない台詞を口にし、眩い輝きを放ちながら竜変化を行うルビナ。直後、
   目の前に超巨大な人型の竜が出現する。それに猛獣部隊はおろか、リョフ氏達はこの世のもの
   以外を目の当たりにしたかのような驚愕の表情をしだした。まあ確かに普通に考えると、まず
   在り得ないものなのだが。

    地上では最強クラスの動物と言えるトラやゾウ。人知というか動知というのか、それすらも
   超越したドラゴンの前には驚愕せざろう得ない。本能的に勝てない相手だと直感するのが通例
   だわな。

    そして極め付けは大咆哮である。免疫がある俺達ですら竦み上がるのに、免疫がないリョフ
   氏達やこの世界の住人には特効薬以上の効果があった。事実、猛獣部隊のトラやゾウは我先に
   逃げ出していく。同じく猛獣使いの兵士達も脱兎の如く去っていった。究極とも言える存在を
   目の当たりにすれば、誰だってこうなるわな。

    そう、俺がリョフ氏と初めて対峙した時もそうだった。史実や無双では知っているのに、
   いざ対峙すると足が震えてしまった。リョフ氏が持つ猛将という凄さの前に、普通の人間は
   シドロモドロになる事。ドラゴンルビナが諸々にそうさせているように、本当に痛感せざろう
   得ないわ。


リョフ「な・・なんなんだ・・・。」
チョウリョウ「こ・・古来の文献で見掛ける・・・竜というものでしょうか・・・。」
コウジュン「こ・・こえぇ・・・。」
    猛将3人組がエラい驚愕し続けている。たった1回の大咆哮で敵を退けたのはまだしも、
   ドラゴンルビナの姿に恐怖しているのが痛感できた。
ドラゴンルビナ「本来なら用いてはいけない呪われた力の1つなのですが・・・。」
ディルヴェズLK「竜変化は戦略を根底から覆しかねない強大な力ですからね。しかしマスターが
         仰られる無血革命を行うには、これほど好都合なものはありません。用は使い方
         次第ですよ。」
ミスターT「俺はリョフ氏との初対面の時、あの足が竦み上がるのを体感した。自分よりも強大な力
      を持つ者に対して、弱者はやはりタジログのが世の常だね。」
リョフ「今は・・真逆なのが何とも言えんがな・・・。」
   猛獣部隊が一斉に逃げ出した事により、今現在の戦闘は終了となる。遠方の偵察を行った後、
   人間型に戻るルビナ。強大なドラゴンが人間に戻る様を見ても、やはりリョフ氏達は驚愕して
   いた。力とは何なのかをマザマザと見せ付けられたような様相である。

ルビナ「お騒がせ致しました。」
ミツキ「大騒動間違いなしだったわぅね。」
ルビナ「フフッ、まあそうですね。しかしマスターが思われた一念、私はマスターには到底敵わない
    と思っています。存在そのものの格の差を見せ付けられていますし。」
リョフ「それだけの戦闘力を有しているのにか・・・。」
    真紅の甲冑に身を包み、ドラゴンへの変身も可能とあるルビナ。そんな彼女をもってしても
   俺には敵わないと豪語しだす。それに驚愕よりは呆れ顔になるリョフ氏達だ。まあ俺みたいな
   優男の何処に、人知を超越するドラゴンを超える戦闘力を持っているのか。ここが最大の疑問
   と言えるのだろうな。
ミスターT「ともあれ、無血革命は完成だな。後はソンケン父氏達の方を攻略して終了か。」
ミスターS「先発隊として先に向かっていますね。」
ミツキ「わたも一緒にいくわぅよ!」
   殆ど待機状態だった俺達。するとミスターSがソンケン父氏達への加勢に赴くと述べてきた。
   それに便乗する仲間達だった。直ぐさま部隊を編成し、次の戦場へと赴いていく。


ミスターT「リョフ氏達は行かないのか?」
リョフ「彼らだけで十分だろうに。それよりも俺はお前の底知れぬ強さに興味が湧いてきたわ。純粋
    な力とは何なのか、それをお前と居る事で得られそうだ。」
ミスターT「そうかねぇ・・・。まあ、最短は彼女の存在ですな。」
    オウイン氏すらも驚愕したドラゴンルビナの姿に、幼いチョウセン嬢は全く動じていない。
   これに周りは驚くが、流石は女性であろうか。史実は分からないが、無双の彼女は殆ど動じる
   事がない。見定めた千里眼を持つ才女と言えるだろうな。すると俺の元に駆け付けてくる。
   この屈託のない笑顔には心が洗われるようだ。その彼女を優しく抱き上げた。
ミスターT「今だから言うが、俺達が知るチョウセン嬢は成人に近い状態で現れている。リョフ氏の
      パートナーとして共に戦い、唯一心を許す存在と言える。ただこれも俺達が知る中で、
      オウイン氏の死去によりリョフ氏をも利用して誓願を達成しようとする一面も。」
オウイン「な・・何とそんな事が・・・。まさか・・・もしミスターS殿方が私達を助けて下さら
     なかったら・・・。」
ミスターT「数年後にトウタク氏の部下に殺されるね。まあ俺達の目が黒い内は、ダンナ方を絶対に
      死なせたりはしないが。」
リョフ「お前のその決意は痛いほど理解できる。ただ本当の流れだと、チョウセンにすら利用される
    クチか。」
ミスターT「でも実際にはダンナと共に歩みだすんだがね。」
   胸の中にいる幼いチョウセン嬢がとても策士に至るとは思えない。オウイン氏とリョフ氏の
   落胆に近い表情を窺えば痛感できる。だがこの世界ではその限りではないわな。

ミスターT「ともあれだ、一応の死亡ルートは回避したとも思える。そのために俺達がいるんだ。
      そこは大船に乗った気でいてくれ。」
ミスターR「無双のリョフさんの裏切り率ったら酷いものですからねぇ。」
リョフ「そ・・そんなに酷いのか・・・。」
ミスターR「ダンナが出る作品によっては凄まじいものですよ。」
    ミスターRが本線の流れのリョフ氏を語ると、本人はかなりショックを受けたようである。
   しかし今の彼にもその命は存在していると思う。まあ俺達がいればその命は必ず抑えてみせる
   けどな。
ミスターT「まあでも、この場限りではそうはさせない。俺達の持ち得る力を全て使ってでも、史実
      や無双の流れとは絶対違うのを勝ち取ってやるわ。」
ディルヴェズ「マスターは犠牲に関して本当に良く思っていませんからね。特にそれが仲間という
       事なら、我が身を投げ打ってでも救い出すのが信条。」
ミスターR「リョフさんが言うあれですわ、己が道を貫き通せというものですな。さあ、会話はこの
      程度に済ませて進みましょうや。」
リョフ「そうだな。次は俺も暴れさせて貰うとするか。」
ミスターR「おー、リョフさんの本気見れそうですな。」
ミスターT「モウカク氏と面白い対決が見れそうだわ。」
リョフ「よく分からんが、まあ任せておけ。」
   ニヤリと笑うリョフ氏に何時になく燃え上がる俺達。現実の彼を知る面々は、その姿の中に
   純粋に猛者と対決を望む一念を感じずにはいられない。

    史実や無双の裏切り常習者の行動を未然に防ぎ、ミツキ独特の敬い・労い・慈しみの精神を
   享受した。何よりチョウセン嬢の存在が彼を一段と大きくも優しい熱血漢に変貌させたのだ。
   これほど嬉しいものはない。

    猛獣部隊を撃退後の会話を終え、ソンケン父氏達の元へと向かう俺達。既にミスターSを
   中心とする先発隊が護衛に向かったが、問題なく終えられるだろう。



ソンケン父「中央からの攻撃を全て防ぐんだ!」
ソンサク「親父、左右から挟撃してきやがった!」
コウガイ「右翼は儂に任されぃ、左翼はカントウ殿にお任せ願いたい!」
カントウ「お任せ下され!」
    俺達がソンケン父氏本隊と合流した時、何と大変な騒ぎになっていた。ミスターS達も奮戦
   するも、敵の数が尋常じゃないぐらい攻め寄せていたのだ。ただこちらは猛獣部隊ではなく、
   一般の軍団や弓矢や突き刺し攻撃が効かない軍団である。南蛮の特殊軍団は怖ろしいものだ。
ミスターT「あら・・・まだ終わってなかったのか。」
ミツキ「Tちゃ〜ん、それはないわぅよ。」
ミスターS「猛獣部隊よりは楽ですが、数の方は圧倒的にこちらが多いですよ。まあ大苦戦はして
      いないのが実状ですけどね。」
   目の前の兵士をプロレス技でダウンさせていくミツキ達。特にミスターSの見切った中から
   繰り出される攻撃は凄まじいものだ。ソンケン父氏達も武器で応戦するものの、それは防御に
   限っての話。攻撃は全員プロレス技なのが何とも言えない。まあ大多数はジャブやストレート
   の一撃でのしていくものなのだが。

デストロイア「マスター、どうやらこのコウシには総大将や頭となる武将はいなさそうです。」
ミスターT「へぇ、珍しいな・・・。」
チョウリョウ「殆ど誰かしらの武将を配置し、守備に徹するのが定石なのですが。ともなると、本隊
       はナンチュウに集結していると取るのが妥当かと。」
ソンケン父「ただ特殊兵団はコウシに集結させているみたいだな。永延に続く増援に仲間達の士気も
      参り気味に近いが。」
ミスターT「武器でやり合えれば楽なんだけどね。ただそうすると殺戮になりかねない。」
リョフ「戦場での私情は命取りだが、可能な限り無益な戦いは避けたい所だな。」
    方天画戟の柄の部分で相手を殴り、エルボーアタックでダウンさせていくリョフ氏。彼も
   武器は使うクチだが、トドメは打撃のノックダウンなのが何とも言えない。チョウリョウ氏も
   コウジュン氏も武器は態勢崩しに用い、攻撃は打撃で行う所も凄いものである。

ビィルガ「これはもう、大規模なプロレス集団そのものですな。」
ミスターT「ハハッ、違いないわ。」
ミスターAK「どんな戦いでも最終的には肉弾戦に至りますからね。その真骨頂がこれだと確信して
       ますよ。それに思う存分暴れられますし。」
ミツキ「体格の差でテコの原理を利用しないと、持ち上げる事が不可能なのが辛いわぅね。」
リョフ「フッ、お前の場合だと機動力では俺を遥かに凌駕しているではないか。」
ミツキ「おー、リョフちゃんからお墨付き貰っちゃったわぅー♪」
    不覚にもリョフ氏に一気に攻め寄る敵兵士達。方天画戟で防御するも、押され気味になって
   しまう。そこに脱兎の如く駆け付けるはミツキ。同じくリュリアやミュティラ3姉妹も駆け
   付けて来た。彼の背中を踏み台にして、そこから相手目掛けてダイビングエルボーアタックを
   放つのだった。
ミュティヌ「やりましたじぇー!」
ミツキ「うっしっし、わた達の連携は最強わぅね!」
リョフ「・・・お前達の機転溢れる行動には感嘆せざろう得ないわ。」
ミツキ「お前らぁー、そんな武がわた達に通用するとでも思っているわぅかぁ!」
リュリア「目にもの見せてくれるじゃー!」
   ミツキ・リュリア・ミュティヌが暴れ出す。それに便乗する姉のミュティラとミュティナ。
   この2人が普段から落ち着いているのが、この時ばかりは同じように暴れているのが何とも
   言えない。それに呆れ顔も同調して付き合うリョフ氏だった。何ともまあ・・・。


シェガーヴァ「ビィルガ殿、精鋭軍団の準備完了しましたぞ!」
ビィルガ「おお、そうか。よし、一気に反転攻勢に移る! ただし、相手はノックダウンでな!」
ゼラエル「ふほほっ、お任せあれぃ!」
    ハーズダント・ヴァスタール・ヴィアシールの混成軍団の準備が整ったらしい。自然死以外
   での死去が訪れない脅威の軍団である。そして彼らに位置付けられているのは、相手を生か
   して征する活人技だ。意思がない兵団とも言える彼女達にそれが担えるかどうか気になる所
   なのだが。

    先鋒はゼラエル達が担い、その後を精鋭軍団が連ねていく。3種族の性質上、超鉄壁とも
   言える防御面は凄まじいものだ。

    彼女達と連携して挑んでいけば、どんな戦場でも苦戦せずに挑めるだろう。言い方は悪くは
   なるが、壁としては事実上最強の存在である。

ミスターT「ソンケン父氏、彼女達と共に進軍を開始してくれ。絶対に倒れない不死身の軍団だ。
      合間を縫っての攻撃なら問題ないかと。」
ソンケン父「了解した!」
ソンサク「よっしゃー、行くぜぇー!」
ミツキ「攻めかましたれぇー!」
    それぞれの生身の武将や兵士達に3種の不死身の軍団を護衛に付けていく。彼女達を壁に
   すれば全く問題なく動けるだろう。ディルヴェズ達からの話だと、味方の護衛を最優先として
   創生したとの事だ。本当に怖ろしい業物だな。


    不死身の精鋭軍団の投入は戦況を一変させていった。南蛮ご自慢の特殊兵団も不死身の彼女
   達には為す術がない。防御面では最強の壁となっているため、味方の猛攻は凄まじいまでに
   至っている。

    そして極め付けが誰も戦死者を出していない所だ。それは味方はもちろんの事、敵ですらも
   一切死者を出していない。まあ負傷者は物凄い数に至ってはいるが・・・。

    更に味方の士気が凄まじいまでに上がっていった。武器での殺伐とした殺し合いではなく、
   拳による肉弾戦は爽快感を生むに至る。人や動物達を殺害したという後ろめたさは一切発生
   する事がなく、それでいて戦を十二分に満喫できるのだ。

    プロレス技を用いた肉弾戦の戦いは、この仮想三国志の世界には燦然と輝く最強の武勇と
   言えるのだろう。事実、あのリョフ氏が清々しい表情で戦っているのが何よりの証だ。

    三国志の時代をプロレス技で征する、か。これはもう超絶的な特効薬そのものだろうな。



    不死身の精鋭軍団の登場で戦況が激変、圧倒的有利に戦闘を終える事ができた。ソンケン父
   氏達が矢面で本隊の侵攻を阻止してくれていたお陰で、不死身の彼女達を準備できたのだ。

    そして全員がプロレス技による肉弾戦で応戦。負傷者は数多く出たが、死亡者が誰1人とも
   出ていないのが奇跡そのものである。

コウガイ「風来坊殿、捕縛した兵士達はどうなされるので?」
ミスターT「ああ、全員ナンチュウへと連れて行くよ。モウカク氏に返さねばならんし。」
リョフ「ハハッ、お前ならそう言うと思ったわ。敵の戦力増強を防ぐには、卑怯極まりない処断を
    実行するのが最短と言える。ただそれでは殺戮そのもの、憎悪の連鎖しか生み出さない。」
ミツキ「そうわぅね。それに相手が生きていれば、再び試合ができるというものわぅよ。」
    通常の兵団と特殊兵団の兵士達を全員捕縛するも、手当てを開始しだす不死身の精鋭軍団。
   攻撃と防御以外にも医療の力も備わっており、各員が救急セットを持つほどの念の入り用だ。
   それに相手は驚愕の表情を浮かべると共に、その人間味溢れる手厚い行動に感動している様子
   であった。

リョフ「それに痛感した事もある。縁の下の力持ちの存在をな。お前達が言う俺は他者を見下した
    発言をするという事だ。特に全てを雑魚扱いらしいな。それがどうだ、彼らがあってこそ
    俺達の戦いが成り立っているではないか。最強の武と言うのは、共に戦い共に得るものだと
    確信した。俺だけが目指しても全く意味を成さない。」
ミツキ「・・・何か悪いものでも食べたわぅかね・・・。」
    驚愕の発言をするリョフ氏。史実はどうか分からないが、無双では他者を見下し雑魚やカス
   呼ばわりするのが通例だ。だが彼が述べた言葉は、その兵士達を称えるものだ。本当に変革
   したと言わざろう得ない。そんな彼にミツキが態と呆れ顔で接するも、同じく肩を竦めて呆れ
   顔で応対する所も凄いものだ。

リョフ「・・・そうだな、ならば俺の生き様はこうしよう。お前達が知る俺自身に、俺は宣戦布告を
    しようか。そんなに悪逆に近いのなら、もし現れたなら真っ向勝負で潰してやる。ソイツと
    同じ生き様など下らない。なら俺は真逆の道を進む!」
ミスターR「・・・絶対変なもの食べましたよね、彼・・・。」
ミツキ「それか素体わぅか・・・。」
リョフ「ハハハッ、まあ構わんさ。俺は俺自身だ、お前達が知るマイナスの俺自身には至らん。真逆
    のプラスの俺自身に至ってやるわっ!」
ミスターT「う〜む、嬉しいには嬉しいが・・・。」
    マイナス面の自分自身にエラい対抗心を出しだすリョフ氏。無双で通例の裏切り常習犯の
   彼とは雲泥の差と言える。俺達が知る彼がマイナス面であれば、今目の前にいる彼がプラス面
   そのものだ。これには彼を知る俺達は変な恐怖を感じずにはいられない。


シルフィア「はいはい、お話はそのぐらいにして次に進みましょうか。」
ミツキ「えぇ〜、今いい所だったわぅよ。」
ナツミA「リョフさんが存在そのもので示しだしていますから分かっていますよ。」
リョフ「そうだな、次の猛者がいる場所に向かうとしようか。」
    方天画戟を背中に括り付け、両腕はチョウセン嬢を抱きかかえる彼。それに満面の笑みを
   浮かべて喜ぶ彼女。今のリョフ氏は本当に心から安らいでいる事が痛感できた。
ミスターT「・・・唯一無二のパートナー、か。この2人は何が何でも守ってみせる。」
ウエスト「ああ、そうだな。」
   そんな2人を一服しながら見つめる俺とウエスト。発した言葉に込めた一念は、色々な思いを
   込めたもの。それに盟友達は頷いてくれていた。

ナツミYU「目の黒い内は絶対に不幸にはさせない、そうですよね。」
シューム「私達が合流する風来坊本編でもそうでしたからね。」
ミスターT「ナッツが言う名言そのものだ。纏めて守り通せば全て丸く収まる。それにこの場なら
      超絶的な力も備わっている。全ての力を使ってでも、な。」
シューム「フフッ、その並々ならぬ強い執念には恐怖すらも感じるわね。でも限りなく強く優しい。
     その部分に触れた者はシビれて動けなくなるわね。」
    自然と寄り添ってくるシュームとナツミYU。その2人を担ぎ、それぞれ両肩に載せた。
   普通なら絶対に無理であろう自重なのだが、この場限りでは何でもできるわな。
リュリア「母ちゃんも至福の一時の表情してるにゃ〜。」
ミツキ「風来坊本編では奥さんわぅからね。そういうリュリアちゃんもそうわぅよ。」
リュリア「にゃはは、でもこの場合は娘同然の年代なんだけどねぇ。」
ミスターA「・・・間違いなく犯罪の年齢ですよ・・・。」
ミスターR「まあまあ。」
   設定年齢だと10歳のリュリア。それが妻候補の1人にミスターAは呆れ顔である。確かに
   彼の言う通り、犯罪そのものだろう。否定は全くできないが・・・。


    雑談とコミュニケーションを終えて、一路ナンチュウへと進軍していく俺達。当然の如く
   捕虜にした敵兵士達も全員だ。彼らをモウカク氏達に返さなければならない。

    ちなみにコウシの攻略は成ったが、敵武将が1人もいなかったのが気になる所だ。これは
   モウカク氏の所に大集結しているのは間違いない。

    まあ進む先が厳しいとあっても、進む以外に道はない。天下統一の道はまだまだ始まった
   ばかりである。





リュウジN「これはまた・・・一段と蒸し暑さが襲ってきますな・・・。」
アフィ「アンタは寒い所以外はへっちゃらだからねぇ。」
    ナンチュウへと進軍した俺達とソンケン父氏の軍団。コウシでもかなりの蒸し暑さだったの
   だが、ナンチュウは更に凄まじいほどの環境である。ただ既に順応しだしているため、コウシ
   攻略時の辛さは全くない。まあコウシの完全制圧とナンチュウへの進軍には数週間掛かった
   ため、否が応でも順応してしまったのだがな。
ミスターT「今回は最前線で戦うクチか。」
リュウジN「それはそうでしょう。ビィルガ殿やディル殿、それに三国志縁の方々がいらっしゃる
      ではないですか。俺もできれば最前線で戦いたいものですからね。」
アマギH「俺だってリーダーやるよりは最前線で戦いたいものですよ。でも纏める存在がいないと
     軍団は乱れてしまいますからね。」
ソンケン父「う〜む・・・何時の時代も統制は厳しいものですな。」
   一服しながら語るソンケン父氏。風来坊本編でのトムMにソックリな言動である。彼も居酒屋
   の覇者と呼ばれるほどの猛者故に、ソンケン父氏と通じる所があるのだろうな。言わば男臭さ
   である。

    ソンケン父氏が手をかざし進軍停止を促す。すると突然目の前の森から大量の敵兵士達が
   出現しだすではないか。特殊兵団ではないものの、その数はかなり多いものだ。
ソンサク「おいでなすった!」
ソンケン父「密集陣形を取ってくれ、このまま押し切るぞ!」
ミスターS「了解!」
   不死身の精鋭軍団が先鋒を切り、その合間を俺達が戦うスタイルは定着した。防御面では最強
   の壁とも言えるため、背後は一切気にしなくて済む。

リョフ「捕虜達の安全を確保だ、無駄な犠牲は一切出すなよ!」
ビィルガ「後方の憂いは全てお任せを、思う存分暴れて下され!」
チョウリョウ「承知仕った!」
コウジュン「暴れてやりましょうぜ!」
    戦場全体を見渡して動いていたリョフ氏達。その彼らに防御面は任せろと語るビィルガ。
   それに応えるべく全力での応戦を語り出した彼らだった。もちろんそれは武器による防御で
   あり、攻撃は素手による打撃や投げ技という展開だ。もう彼らにもプロレスラーとしての血が
   目覚めだしているようだわ。


    突然、目の前の茂みからブーメランのような武器が飛んでくる。それが俺の胸に直撃した。
   反動で後方に思いっ切り吹き飛ばされてしまう。

    この飛刀は・・・シュクユウ嬢か。突然の奇襲に周りは驚愕しだしていた。やはり戦いは
   一筋縄ではいかないという事だな。

リョフ「大丈夫か?!」
ミスターT「・・・怖ろしい防衛能力だわ・・・。」
    倒れた俺の元に仲間が駆け付けてくる。あのリョフ氏も一緒なのが何とも言えない。そして
   胸に直撃したと思った飛刀、何とミツキに流浪人本編で施された人口腕部が受け止めていた。
   何時の間にか背中から黒色の両腕が出ている。
ミスターMI「へぇ・・・この飛刀はシュクユウお嬢ですか。」
ミスターT「奇襲とはやるねぇ・・・。出てきなさいな、お嬢。」
   俺が語るや否や、颯爽と俺達の周りを敵兵士達が囲み出す。そこに現れるは破天荒な格好の
   才女、モウカク氏の奥さんことシュクユウ嬢だ。

シュクユウ「・・・アンタ、飛刀の直撃を受けていた筈じゃ・・・。」
ミスターT「これがなかったら即死級のダメージでしたの。」
    リョフ氏に肩を貸して貰い、背中から出現している人口腕部を彼女に見せる。それに驚愕の
   表情を浮かべるのは定石だろう。この現実世界に非現実のものを見せているのだから。
ミスターT「そうだ、試合の前に返す方々がいるよ。」
   緊急事以外での人口腕部の使用は行わないため格納し、ぶつけられた飛刀をシュクユウ嬢に
   返した。そしてビィルガ達に促し、捕虜として連れていた南蛮兵士達も彼女達に戻す。案の定
   その行動に驚愕の表情を浮かべる彼女。また仲間の兵士達も同じであった。

シュクユウ「お・・お前達・・・無事だったのかい?!」
南蛮兵士1「へ・・へい・・・。」
南蛮兵士2「捕縛されても俺達を殺さず・・・、手当てなど好待遇して頂きまして・・・。」
ミスターT「俺達は殺しが楽しみな殺人集団じゃない。純粋に戦いを求めて彷徨う流浪人だ。上出来
      な勝負ができればそれで十分だよ。」
リョフ「それに俺達が望むのはお前達の頭、モウカクとの一騎打ちだ。純粋な勝負にこそある。」
ミスターT「彼の言う通りさ。まあでもそちらがこちらの撃滅を望むのなら・・・黙ってはいない。
      徹底的に潰しに掛かるが、どうするね?」
    風来坊や流浪人で十八番の殺気と闘気の心殺し、これを彼らに放つ。これもドラゴンルビナ
   の様に人知を超えた姿に顔を青褪めているのが何とも言えない。まあともかく、俺達は相手を
   殺す事を狙ってはいない。大陸の統一が主題になるが、それは副題とも言える。本題は純粋な
   勝負にこそあるのだから。

ミツキ「シュクユウちゃん、ここはモウカクちゃんの所に案内してくれないわぅか?」
ナツミA「確かに私達の目的はこの地の制圧ですが、貴方達の生活を脅かすような事は致しません。
     彼らソンケン父様の軍勢の後方の憂いを絶つためのものです。」
シュクユウ「・・・そうだね、アンタ達の目は嘘を言っている目じゃない。分かった、信じるよ。
      ただダンナはあたいより気難しいからね、覚悟してくんな。」
ナツミA「ありがとうございます。」
ミツキ「流石は無双の元祖姉御わぅね、露出度も相まってウハウハわぅ♪」
シュクユウ「アッハッハッ、面白い事いうねぇアンタ!」
    ミツキのサラッとした茶化しの発言すらも素直に受け止める彼女。シュクユウ嬢の姉御肌的
   な生き様は、気に入った相手はトコトン気に入るといった雰囲気である。シュームとは同じ
   性格であっても、その属性は炎と氷といったものか。

シューム「・・・何か私の事を思ったでしょ?」
ナツミYU「私も感じました・・・。」
ミスターT「何故そうなる・・・。」
シルフィア「T君ね、女心を甘く見過ぎよ。些細な事でも敏感に反応するのが女。そして2人は君を
      心から好いているから尚更見抜くわよ。」
ミツキ「まだまだ甘いわぅね。」
    トムMご自慢の紅茶を飲みながら語るミツキ。何時の間に用意されたのか分からないが、
   その寛ぎ状態に俺は笑ってしまう。ただその笑いがシュームとナツミYUにとっては馬鹿に
   されたと勘違いしてしまったようで、不貞腐れた表情で俺を睨んでいる。流石にシルフィアは
   今の笑いが2人へのものではない事を理解してくれたようだ。


    敵には牙を向くシュクユウ嬢だが、家族同然の南蛮兵士達への厚遇に感嘆。俺達をリーダー
   のモウカク氏に会わせてくれると語ってくれた。それに彼女が登場するまでの戦闘で負傷した
   南蛮兵士達も同じく手当てを行う姿に、感嘆よりも呆れ顔で見ているのが何とも言えない。

    それでもこれが俺達の生き様だわ。いや、俺自身の生き様と言うべきか。それに同調して
   くれているのが仲間達である。そうでなければこの軍団は成り立っていない。あの天下無双の
   リョフ氏やその仲間、そして江東の虎ことソンケン父氏とその仲間も同調はしてくれてない。

    純粋なまでに生き様を貫いていく。無双でのリョフ氏のその生き様と同じだ。しかしそこに
   大切な人を守る一念が重なれば、より一層強みを増していくのは言うまでもない。

    この南蛮の王妃とも言えるシュクユウ嬢も、その部分を感じてくれていると確信している。
   でなければ敵の軍勢を総大将たる南蛮大王モウカク氏に会わせる事などしないわな。



リュリア「うわぉーっ! 前よりもトラさんやゾウさんが一杯いるぅーっ!」
シューム「もう慣れっこね・・・。」
    王妃シュクユウ嬢により南蛮大王モウカク氏の居城へと招かれた俺達。いや、その居城前で
   連絡を受けた彼が待ち構えていた。この場合は警戒心で待つ方が正しい。そして周りには猛獣
   部隊や特殊兵団が数多く待機している。有事に備えてのものだろう。それを見て、リュリアが
   大歓喜極まりない状態に。呆れ顔だが仕方がないといった雰囲気のシュームに笑ってしまう。
シュクユウ「アンタ、そんなに警戒しなくても平気だよ!」
モウカク「母ちゃん、何を言うんだ。相手は敵だ、未知の大陸から現れた連中だぞ!」
シュクユウ「はぁ・・・先発隊の家族達がどういった扱いを受けたか、聞かされてないんだ?」
モウカク「皆殺しにあったんだろうが、絶対許せねぇ!」
   う〜む、モウカク氏は勘違いしているようだわ。シュクユウ嬢が俺の顔を見て呆れ顔で溜め息
   を付いてくる。どうやら思い込みが激しいようで、この場合は流石の彼女も手に負えない様子
   である。

    そこにソンケン父氏が誘導、捕虜にしていた南蛮兵士達全員を連れて来て貰った。案の定、
   それに驚愕するモウカク氏。彼の姿にニヤリと笑うシュクユウ嬢だった。これには釣られて
   笑うしかないわな。

    まさかの仲間達との再会に沸き上がる南蛮兵士達。最前線の面々は本陣の面々と二度と会う
   事ができないと思い、本陣の面々は最前線の仲間達が皆殺しにあったと思っていたようだ。

    その中で、厳しい表情を浮かべながらモウカク氏に詰め寄るシュクユウ嬢。それに彼は子供
   の様に震え上がる。この後の展開は大体予想が付く・・・。

シュクユウ「だからさぁ・・・密偵や偵察の連絡はしっかり聞くようにと言ったじゃないか!」
モウカク「そ・・それはそうだが・・・。」
シュクユウ「かぁ・・・アンタって人はぁ・・・。」
モウカク「うわぁ〜! 叩くのは勘弁してくれぇ〜!」
    物凄い激怒の表情を浮かべながら、彼をどつきだするシュクユウ嬢。それに青褪めて謝罪
   しだすモウカク氏だった。この構図はリュウジNとアフィ・ネデュラとミュセナといった姿と
   本当によく似ている。カカア天下とは正にこの事だろう。

ナツミYU「また何か思ったでしょ!」
ミスターT「ちゃう・・・お前達じゃない。」
シューム「殆ど同じじゃないのよ、心中でカカア天下は正にとか言っちゃって!」
ミスターT「・・・化け物かお前達は・・・。」
ルビナ「本当に女心を分かっていませんよね・・・。」
    竜族のルビナ達なら心中読みは分かるが、シュームやナツミYUにも見事に見透かされた。
   本当に女性心というのは分からない・・・。俺の分身たるミスTに入れ替われば、この感覚が
   分かるのだろうか・・・。う〜む・・・女心は謎だわ・・・。

モウカク「しかし・・・大王としてのプライドはある。家族を助けてくれた事は心から感謝するが、
     相手が侵略者なら応じなければメンツが立たん!」
シュクユウ「アンタねぇ・・・。」
    大王としてのプライドか、確かにそれは見せねばならないな。と考えていたら、動き出した
   人物がいた。猛者との対戦を楽しみにしているリョフ氏だ。ゆっくりとモウカク氏の前へと
   進み出ていく。
リョフ「ならば、俺と一騎打ちで勝負しようか。もちろん武器は使わん、素手でのぶつかり合いだ。
    それとも・・・一介の武将に怖じて、勝負する気にはなれないか。南蛮最強の大王の名が
    聞いて呆れるわな。」
モウカク「な・・なんだと?!」
   そう言いながら俺やミスターR達を見つめウインクしてきた。そう、リョフ氏との初対面時の
   対応と同じだった。ミツキやミスターRがリョフ氏に本気を出させるため、態と挑発的な発言
   をしたのだ。それを今度は彼がモウカク氏に行うとは。本当に凄い武人に至ったものだわ。

リョフ「見せてみろ、お前の本当の武勇を!」
ミツキ「武王リョフの御前である。頭が高い、控えおろう!」
リョフ「お前なぁ・・・。」
ミツキ「にゃはは、続けてわぅ♪」
    見せ場だったその場を見事にぶち壊すミツキ。それに張り詰めた空気が一瞬にして崩れた。
   当然ながら周りは爆笑しだしている。シュクユウ嬢や彼女の仲間達も笑っていた。

    持っていた方天画戟を近場にいたミツキ預け、構えの姿勢を取るリョフ氏。本来なら武器
   での応戦となるところを、肉弾戦で雌雄を決しようと持ち掛けた。その姿を見たモウカク氏、
   彼も近場の仲間に鬼神手甲という拳用の武器を預けだした。

    ジリジリと間合いを取りながら様子を窺う両者。リョフ氏の実力は身内最強のものだが、
   モウカク氏の実力もかなりのものだ。これはいい試合が見れそうだな。



ディヴォガル「すみません、マスター。隠密部隊から連絡が。」
ミスターT「どした?」
    リョフ氏とモウカク氏の対戦を観戦しようとしたが、そこにディヴォガルが駆け付ける。
   また近場にいたオウイン氏とビィルガも同じく呼び掛けられた。
ディヴォガル「シンヨウが陥落しました。テイゲン氏は居城内で最後まで交戦するも捕縛され、後に
       処断されたそうです。」
ミスターT「倒されたか・・・。」
ディヴォガル「そしてソウソウ氏がシンヨウで独立。ギョウのエンショウ無双氏と共にホクヘイへと
       侵攻を開始したそうです。」
オウイン「ふむ・・・となるとカシン殿の勢力が弱体化しましたな。」
ビィルガ「黄巾党の進軍とトウタク氏の進軍、間違いなく挟撃を受けますね。」
   即席で軍議を開始しだす俺達。すると観戦をしていた南蛮兵士達が近場にあった木材を持参。
   何と簡易テーブルを作り出したではないか。

南蛮兵士1「ヘヘッ、ダンナの気配りへのお返しですぜ。」
南蛮兵士2「俺達にはこのぐらいしかできませんが。」
ミスターT「・・・すまない、恩に着るよ。」
    俺は彼らに向かって深々と頭を下げると、同じく彼らも頭を下げて去って行った。彼らの
   生き様はモウカク氏の家族愛の派生だろう。恩には報恩で返すと。ソンケン父氏達の生き様
   とも通じる所があるわ。


ディヴォガル「現状の流れはこうですね。」
オウイン「ギョウのエンショウ無双氏は何度かホッカイにも侵攻しているそうですが、結果は出せて
     いない状況のようです。」
ミスターT「黄巾党の勢力も結構なものになってきているだろうな。カシン氏の勢力は殆ど無いに
      等しい。ラクヨウとチョウアンは風前の灯だな。」
    ディヴォガル指摘の元、リョフ氏が発祥の勢力図作成。大陸地図に将棋の駒を置いていく。
   シンヨウでソウソウ氏が独立勢力となり、カシン氏勢力の台頭とも取れる位置付けに至った。
ミスターT「今は利害一致で動いているが、何れソウソウ氏とエンショウ無双氏との対決は絶対に
      避けられない。むしろまだ黄巾党が残っているため、確実に生き残れるかという保証は
      どこにもないわ。」
オウイン「その隙を突き、トウタク殿がテンスイからチョウアンへ侵攻。下手をすればセイリョウと
     カンチュウも手中に収める可能性がありますな。」
ビィルガ「早期に対策を打たないと、北側は大混乱に陥りますぞ。」
   腕を組みながら模索する。今の現状は従来の史実や無双とは全く異なる展開に至っている。
   エンパシリーズの醍醐味とも言える、国取りの様相そのものだ。

    1つの天秤の崩壊、テイゲン氏の挙兵。それは報告にあった、戦いに敗れた彼の処断により
   消滅した事になる。

    もう1つの天秤の崩壊、リュウヒョウ氏の軍備増強。しかしこれは俺達が強烈な威圧で抑え
   付けているため、でしゃばった真似はしないだろう。したとしても北側への侵攻か同盟程度に
   しか至らない。

ミスターT「・・・唯一の対抗馬はソンケン父氏軍勢と俺達、か。」
オウイン「今の規模からしたら、それが現実になってきますね。」
ビィルガ「黄巾党は4地域を統治して沈黙を守る。更に追加情報としては、世上の不平を煽ぎつつ
     同志を募っているとも言います。ただ善悪で考えると、本当に太平を求めているのなら
     善でしょう。そう信じたいものですが・・・。」
ミスターT「テロリスト集団にならなければいいんだがね・・・。」
    黄巾党の起こした黄巾の乱は、漢王朝の腐敗を契機に農民信徒を募っての蜂起した集団との
   戦い。確かに理由は漢王朝の腐敗を正すという名目だが、そこに王道と民を慈しむ心があれば
   全く異なってくる。ただ漠然と大陸を統一して独裁政権を敷くのなら、それこそ倒すべき存在
   になるのだが・・・。


    即席の軍議を行ってから、暫く経つと周りが沸き上がる。俺達は軍議を一旦中断してそちら
   に赴くと、何と試合は終わっていた。

    結果はリョフ氏の勝利だったそうだ。しかし膝を着いて息をしている所を見ると、圧勝では
   なく善戦していたと言えるのだろうか。対してモウカク氏は完全にダウンしており、意識は
   あるようだが起き上がる雰囲気を全く見せない。

    仲間の話では拮抗した戦いが展開され、どちらも一撃が重く本物のプロレス試合を見ている
   と豪語していた。流石は天下無双のリョフ氏と、南蛮最強の戦士モウカク氏だわ。



ミツキ「ありゃ、どこに行ってたわぅか?」
ミスターT「ちょっと勢力変化が見られてね、緊急の軍議をしてたんだわ。う〜む・・・試合を見た
      かったが・・・。」
    ディルヴェズに2人への魔法の治療を頼み施して貰った。その人知を超えた力に、案の定
   魔法を初めて見る面々は驚愕している。しかしリョフ氏達は何度も見ているため、助かると
   いった雰囲気だが。
ディルヴェズ「これで大丈夫でしょう。」
リョフ「すまない。」
ミスターT「リョフ氏、シンヨウが陥落した。テイゲン氏は処断され、同地域はソウソウ氏が独立を
      したそうだよ。」
リョフ「・・・そうか・・・。」
   そう呟くと、ゆっくりとその場に立ち上がる。そして北側と思われる方向を向いて、静かに
   一礼をしだした。その意図を察知した俺達やチョウリョウ氏・コウジュン氏も同じ様に一礼を
   する。

    曲がりなりにも俺達を支えてくれた一時があるため、テイゲン氏への一礼は恩義を返す事に
   なる。結果的に絶縁となったが、これこそが師恩と言えるわな。

    史実や無双の設定では、トウタク氏の誘惑でテイゲン氏を裏切り殺害するリョフ氏。しかし
   その彼が恩義に報いて、処断されたテイゲン氏に哀悼の意を表したのだ。

リョフ「・・・あんな奴でも、俺達に休める場所を与えてくれた。経緯はどうあれ、リスペクトは
    しないと忘恩の輩になるからな。」
ミスターT「そうだね。」
    一礼を終える彼の表情は毅然としているが、雰囲気からして物悲しさが出ている。一時は
   養子縁組という間柄だっただけに、根底には親子の絆があったのだろう。
チョウリョウ「欲が無い時は無類の戦士として武を振るわれていましたが、欲望と言うのは怖ろしい
       ものですな。」
コウジュン「いや、そもそもリョフ殿を恐れていた時点で間違いだしたのでしょうね。風来坊殿が
      仰っていた、我が子を慈しむ心が強ければ結果は変わっていたと思いますぜ。」
ミスターT「・・・ともあれだ、忘恩の輩にならないでくれてありがとう。悪道に陥っても、受けた
      報恩はしっかりと返さねばね。」
リョフ「ああ、そうだな。お前達から痛いほど教えられてきたからな。」
   今も物悲しさを醸し出す彼に近付くミツキ。背中を軽く叩く姿から、そこに込められた一念は
   激励だと痛感する。その彼女の頭を優しく撫でるリョフ氏だった。

    これで彼の生き様は確定的なものとなったに違いない。恩義に溢れる猛将という流れが。
   現実ではカンウ氏が武神として崇められているように、今のこの場ではリョフ氏が武神として
   称えられるのは間違いないわ。


ミスターT「さて・・・モウカク氏、これで満足したかい?」
モウカク「・・・ここまで純粋に勝負を行い負けた、これ以上の満足感はないわ。南蛮の大王として
     リョフとお前達に感謝する。」
    リョフ氏の純粋無垢の闘争本能に感化されたのか、潔く負けを認めたモウカク氏。最後は
   やはり純粋な殴り合いが一番対話になるのだろうな。武器での応戦では相手を殺すまで戦う
   ため、そこに慈しみなど出せる筈がない。戦いの場がなくなると嘆いていたリョフ氏だが、
   このプロレス道なら生涯現役の戦士として戦う事ができるだろう。
シュクユウ「ダンナは感傷に浸っているからソッとしておいておくれ。代わりにあたいが話に応じる
      からね。」
ミスターT「すまない。」
シュクユウ「ところで、肝心の目的を詳しく聞いていなかったんだが?」
ミスターT「ああ、そうだったわ。一旦小休止して、詳しい話でもしようか。」
ミツキ「勝利の酒を持ってこ〜いわぅ! ・・・あ、飲めないや。紅茶持ってこ〜いわぅ!」
ミスターT「何とも・・・。」
   締め括りはミツキの一声だった。それに周りは爆笑してしまう。この超絶ムードメーカーには
   本当に敵わないわな・・・。


    一騎打ちの試合を終えた俺達は、シュクユウ嬢の案内で彼らの居城へと案内された。純粋に
   勝負に転じ、そこで勝敗が決まったための配慮だという。

    強い者は正しい、という弱肉強食の理が根付く南蛮。しかしそこに込められた強い執念と
   信念を感じ取ってくれたようで、快く応じてくれたのだろう。

    そもそも彼らを倒して征服しようとは、これっぽっちも思っていない。彼らとの素手での
   対話で分かり合い、盟友という流れに至れれば万々歳だ。

    これで後方の憂いは絶てただろう。まあそれは今後の俺達の行動次第という事になるが。
   まあモウカク氏もシュクユウ嬢も根っからの熱血漢だから、こちらの意図を汲んでくれると
   確信している。

    第1部・第05話へと続く。

    後半へと続く。

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