フリーダムハート 自由なる勇将ヴィアラシュア 暗黒皇帝ディーラの野望 〜第3話 アシリアの生い立ち3〜 軍事国家グリーエ・・・。初代国王イーグによって建国された国。誕生当時は小規模の城や 町でしかなかったが、イーグと彼の友人リオルの活躍によって強国へと歩みだす。その後2人 の努力の結果、王国から軍事国家へと変わっていった。だがイーグ・リオル死後、グリーエは 急速に衰退。誕生当時の軍事レベルまで一気に下がってしまった。 しかし再びグリーエを立て直したのがイーグの弟子であるバフォル卿であった。バフォル卿は 亡きイーグ・リオルの思想を受け継ぎ、衰退しきっていたグリーエを世界最大の軍事国家へと 成長させる。だが決して無益な争いはせず、あくまで人々の為の国へという考え方であった。 今はバフォル卿の息子ディークが国を治めている。若干17歳という若さで苦労しながらも、 今のグリーエは彼に支えられている。 人々は語る、ディークはバフォル卿の生き写しであると。 カシス達はグリーエ城を見つめ、城の規模にも驚かされた。城外の庭園というべき外庭は、 それだけでギズ村に匹敵する大きさ。更に4倍の規模の王宮があるのだから驚きであった。 一同は日々手入れされている庭園を見つめ、その美しさに心を躍らせる。だがカシスだけは 不思議に珍しいとは思わなかった。 ゼラン「すっげぇ〜・・・。」 メイ「お花がいっぱい咲いてるよぉ〜!」 ゼロン「さすが世界一の国家ですな。軍事国家というからには、そこに住む人々の心も硬いものかと 思っていました。ですがこの環境を見ると、清き者達が多いようですな。」 ゼロンは足元に咲く花々を跪いて見つめる。メイとディールも同じくしゃがみ、花々をじっと 見つめた。 グリーエ兵「そう仰って頂けて光栄です。ここグリーエは人々との交流を目的とした活動を日頃から 行っております。軍事部門が世界最強と言われているのは、人々との交流を更に広める 為の力でしかありません。もし誤った使い方をすれば、多くの人々を困らせてしまう。 そうならない為にも我々一兵士全てが、常にこのような心構えをしています。」 ゼロン「そうですな、有り余った力は人を堕落させる。その小さきながらの貴殿の心構えや決意も、 大勢の者が思えば大きな力になる。必ず正しき力となる筈です。」 カシス「だが人間は有り余る力を持つと、要らぬ欲望が生まれる。それが今回のディーラの一件だ。 でもディーラが人の痛みを知る人物なら、もしかしたら・・・。」 カシスが考え込もうとした時、前方から数人の者達がこちらに来る。それを見たグリーエ兵は 敬礼をした。どうやらここの最高責任者クラスだとカシスは思った。 男性「ご苦労様です、後は私に任せて下さい。」 グリーへ兵「はっ、それでは持ち場に戻ります。」 グリーへ兵は男性と話すと、場外の担当地区へ戻って行く。 男性「初めまして。私はグリーエ第一王子、ディークと申します。」 カシス達はその場で簡単な自己紹介を始める。その後ディークの計らいで一同は大広間へと 案内された。そこでカシスはここに来た目的を詳しく話しだした。 ディーク「ディーラという者の軍勢がここに攻めて来ると?」 カシス「十中八九そうだと言っていいだろう。現にルッド港が襲撃を受けたからな。」 ディーク「分かりました。グリーエ全体の守備及び、迎撃部隊準備を行います。」 カシス「すまない。」 ディーク「それと・・・、そちらにいらっしゃるのは・・・アシリア様ですよね?」 ディークはカシスの隣にいるアシリアを見つめそう話す。アシリアは困った表情を浮かべ、 どう対処したらいいか考える。 アシリア「え・・え〜と・・・。」 カシス「アシリアは本当にここの姫さんなのか?」 ディーク「はい。亡きリオル様の娘です。一年前に突如失踪してから様々な国や町・村に捜索願いを 出したのですが、全く見つかりませんでした。」 アシリア「でも私は過去の記憶が・・・。」 そう話すアシリアに、カシスは過去に彼女が話した言葉を語りだす。 カシス「そうでもないぜ。以前に“庭園でエルフを見かけた”や、”私が住んでいた王宮へ”とか 言っていた。自分じゃ全然気付いていなかったかも知れないが、お前はやはり王宮出身の 皇女だ。」 ゼロン「となると記憶喪失であると考えられますな。時偶過去の記憶が蘇る、これは記憶喪失にある 典型的な症状ですから。」 イザルス「そうなると・・・どこで記憶喪失になったかですね。」 カシスはイザルスの発言である事に気が付く。それは何者かにキラーハウンドへ無理矢理変身 させられた事で、一時的に記憶が失っているのではないかと。 そう考えるとカシスは迷わずアシリアに近づき、彼女の額に手を当てる。その行動に何事かと 驚き、カシスに問い質す。 アシリア「な・・何ですか?」 カシス「以前キラーハウンドに変身していた時があっただろ、その時に一時的に記憶を失ったのかも しれない。今からそれを回復させてみる。」 アシリアはとりあえず訳が分かり安心する。というか彼の話す事を完全に信じている彼女だ。 安心するのは当然であろう。 カシスは再度アシリアの額に手を置き、状態回復最強魔法ラウディルフォーズを唱えた。淡い 光が彼女の額を包み、一同は一時的失われた記憶の回復が成功するのを見守り続ける。 カシス「どうだ?」 アシリアは辺りを見回す、その表情には懐かしさによる笑みが浮かんでいた。 アシリア「・・・・・あれっ、私・・・確かバルコニーで外を眺めていて・・・。それで・・・、 そう・・・モンスターに捕まったんだ。」 カシス「成功らしいな、キラーハウンド以前の記憶が蘇った。」 ゼラン「へぇ〜・・・その魔法は記憶喪失も回復させるのか。」 カシス「状態回復最強魔法だからな、当たり前だ。しかし魔法といえど絶対じゃない。不可能な場合 もあるさ。」 アシリア「ディークさん、それに皆さんも。」 アシリアはディーク達を見ると、再び懐かしそうな表情を浮かべる。何年も会っていなかった 人々を見るかのように。 ディーク「よかった、やはりアシリア様でしたね。」 アシリア「ありがとうカシスさん。記憶を蘇らせてくれて。」 カシス「礼には及ばないよ。」 アシリアは改めてカシス達に自己紹介を始める。それを見たカシスは本当のアシリアに戻った 事を実感した。以前と違いお転婆風な性格がなくなり、お淑やか風な方へと変わる。むしろ 皇女となるとこのような性格が当たり前だと思った。 ディーク「ギッシュさん、そろそろ準備に取り掛かってください。」 ギッシュ「分かりました。」 小柄なホビット族のギッシュ。手先が器用な種族であり、彼等にものを作らせたら右に出る者 はいない。彼はディークの発言を聞くと、すぐさまその場を去っていく。カシスは何事かと ディークに問い質した。 カシス「どうしたんだ?」 ディーク「祝賀パーティーですよ。アシリア様がグリーエに帰られた事を祝して。」 メイ「わぁ〜いっ!」 ゼラン「パーティーか〜・・・フフフッ。」 メイはパーティーという言葉に大はしゃぎする。またゼランもパーティーの出し物を想像し、 ニヤケ顔になった。その他の面々も嬉しそうである。 カシス「まったく・・・。」 カシスは呆れ顔で皆を見つめる。だが心中では嬉しいのであった。 その後一同は祝賀会の時間までの間、城下町や場内を見物に行った。好奇心旺盛な性格が一同 を動かすのか、そんな彼等を見つめカシスは深い溜め息をつく。 それから数時間後、カシスは独り城門の近くで夕焼け空を見つめていた。重騎士との戦いから 既に5時間が経過。他の面々は相変わらず城下町や場内を散策している。 そこにゼロンが駆け付けて来る。顔には笑みを浮かべながらであった。 ゼロン「カシス殿、今回はありがとうございました。おかげさまでグリーエ近衛兵の一員に入団する 事ができましたよ。」 ゼロンはカシスに頭を下げて礼をした。カシスは構わないといったジェスチャーをする。 カシス「よかったな、願いが叶って。」 ゼロン「カシス殿のおかげです。ディーク殿にこの事をお話ししたら即座に許可が下りました。」 カシス「正直怖かったんだな、兵士に入団できるかどうか。」 ゼロン「はい。やはり人種柄の問題が怖かったですよ。ですが話してみるものですね。勇気が沸き、 見方が変わりました。」 カシス「これからだ、これからが勝負だぜ。色々とな・・・。」 カシスは赤々に染まった夕焼け空を見つめながらそう呟く。ゼロンにはまるで彼がこれから 起こる事を予期しているかのような口調に聞こえた。 ゼロン「ところで、カシス殿はこれからどうなされるので?」 カシス「分からん、グリーエ襲撃の件を伝えるのが目的だったからな。」 ゼロン「そうですか。」 カシス「だが理由は分からんが、ディーラの一行が俺を付け狙っているらしい。降りかかる火の粉は 払わねばならんからな。」 ゼロン「よかったら私もお手伝い致します。カシス殿には色々とお世話になりましたから。」 ゼロンは迷いのない力強い発言をする。カシスは心の底からゼロンに感謝した。 カシス「・・・すまんな。」 カシスは心中で大きな悩みを抱えていた。それはここにいれば自分のせいで皆に迷惑がかかる というものだ。だが彼等の存在もまた自分にとって必要なものなのだと思っている。これも 紛れもない事実である。 しかしそんな悩みとは裏腹に、一つだけの決意は断固たるものであった。それは悪は絶対に 滅する事。それが今まで様々なものを見つめ、体験して生きてきた自分なりの決意である。 ゆえにこうやって人々に好かれるのであると直感もしている。 “これも自分にとって避けられない試練なんだな”、カシスは心中でそう呟いた。 そこに見知らぬ3人が話し掛けてくる。3人のうちの2人は人間とは全く異形の姿をしている ケンタウロスの種族。カシスはそのうちの1人を見て、懐かしい表情を浮かべる。 男性「お久し振りですカシスさんっ!」 カシス「ライルか、大きくなったな。」 ライル「色々と苦労しましたから。今はグリーエ騎士団の見習いとして頑張っています。」 カシス「そうか、よかったな。」 カシスはライルの側にいる女性が気になっていた。まあライルもそういう年頃だと思うので ある。 カシス「そちらの女性達は?」 女性1「初めまして、私はミウリスと申します。ライルとはグリーエ騎士団の同期生です。」 カシス「ライルが同期か、色々と困るだろ。」 ミウリス「そ・・それほどでも・・・。」 ライル「もう何言ってるんですかカシスさんは。」 呆れた表情でライルは語る。ミウリスもそんな会話を聞き嬉しそうだ。 カシス「こちらの女性は?」 女性2「初めまして、グリーエ重騎士団員のファエルといいます。」 カシス「俺はカシス、よろしくな。」 カシスが自己紹介を終えると、ファエルは握手を求めてくる。どうやらファエルはこういった コミュニケーションを取っているらしい。カシスはファエルと握手を交わす。 彼女もメイ・ディール同様に、尖った耳を持つエルフ族の少女であった。 ライル「カシスさん、こちらの方は?」 ゼロン「失敬、私はゼロン。よろしくライル殿・ミウリス殿・ファエル殿。」 ゼロンの立ち振る舞いに3人は憧れの瞳で見つめる。先輩の指導を見ているかのように。 ライル「初めまして、ライルといいます。」 ミウリス「ミウリスです、よろしくお願いします。」 ファエル「ファエルといいます。」 ゼロン「うむ、いい目をしていらっしゃる。ここグリーエの騎士団が最強な訳が分かりますな。この ような若者が次の世代を支える見本となる、しっかり修行を行いなさい。」 ライル・ミウリス・ファエル「ありがとうございます!」 その後3人とコミュニケーションを取りだしたカシスとゼロン。過去話から今に至るまでの事 を嬉しそうに語るライル。そんな彼の意外な一面にミウリスは微笑ましい視線で見つめる。 ファエルもメイとディールと同じぐらいの年代にも関わらず、言動はどこも大人びていた。 だがその大人びている性格は、別のものが関係しているとカシスは直感する。だがあえて触れ ずに接し続けた。 更に数十分後、迎えの兵士パーティーの時間になると告げてきた。一同は場内に戻って行く。 案内された先は先ほどディークと会話をした大広間。しかし先程見た大広間とは違い、華々 しいパーティー会場となっていたのであった。 カシス「大張り切りだな。」 カシスは作業の先陣をとっているディークにそう話す。ディークは2人に気づくと作業を他の 者に任せ、カシス達の方へ歩み寄って来る。 ディーク「年に数回はこうやってパーティーを開いています。慣れものですよ。」 全く目の前にいるのは同世代の男性とは思えない。カシスは彼に脱帽した。まるで自分の父親 のような気がする。彼も彼なりに色々と努力しているなと思うのであった。 ゼロン「この祝賀会は城内の方々だけで?」 ディーク「違います、城下町でも同じような祝賀会を開きます。城下の方々にも楽しんで頂かないと 可哀想ですから。」 そこに遅れてゼラン達が帰って来る。やはり大広間の変わり様に驚いていた。 ゼラン「おおっ・・・パーティーらしくなってきやがったな!」 メイ「楽しみたのしみっ!」 子供のようなゼランとメイを見つめ、苦笑いを浮かべるカシス。そのはしゃぎようは子供その ものである。 その後祝賀会開催までの間、ライル・ミウリス・ファエルの4人とコミュニケーションを取り だした。ライル・ミウリスの姿は初対面一同に驚きを与えるが、すぐに打ち解ける。またメイ とディールは同族であるファエルとすぐに打ち解け、大はしゃぎで騒ぎまわっている。しかし 先程述べた通り、2人よりファエルの方が大人っぽく控えめな方であった。 第3話・4へ続く |
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