フリーダムハート 自由なる勇将ヴィアラシュア 暗黒皇帝ディーラの野望 〜第1話 モンスター討伐2〜 アシリア「う・・し・しまった・・・。」 アシリアは土石の下から這い出ようとしたが、下半身が下敷きとなっており身動きが取れない 状態だった。それを見たカシスは何も言わず動き出す。 カシスは2人に無理に動かないように話し、土石の規模や数を調べる。確認が終わると2人の 前に立ち、目を瞑り魔力を高めだす。 直後覆い被さっている土石が宙に浮き、それを確認すると2人は自力でその場から離れる。 2人がその場から離れるのを確認すると、カシスは白銀の剣を構え物凄い勢いでそれらを突き 始めた。カシスの突きによって土石全ては砂塵に変わり、地面へ降り注ぐ。 アシリアと戦士は痛みを堪えながらではあったが、カシスの行動に驚きの顔をしていた。 カシス「大丈夫か?」 カシスは2人の傷の具合を見て回る。戦士の方はその場に動かないでいたから軽症で済んだ。 だがアシリアの方は土石落下の勢いで両足が骨折していた。 カシス「あんたの方は大丈夫そうだが、アシリアは両足骨折だ。」 戦士「すまない・・・、俺の為にあんたまで巻き込んでしまって。」 アシリア「いいんですよ、困った時はお互い様じゃないですか・・・。」 戦士の申し訳なさそうな話にアシリアは明るく振舞う。だが顔の方は痛みを堪えるのに必死の ようであった。 カシス「俺の方がもっと困る・・・、だがこの場合は助けねばならんな。」 カシスは渋りの発言をしているが、行動は誠実さにあふれている。カシスは回復系上級魔法 フヴィルズを2人にそれぞれ唱え傷を癒す。いきなり痛みが消えたのに2人は驚き、自分の 身体を見て回る。 カシス「これでいい、立てるだろ?」 アシリア「あ・・本当だ、それに痛みが全然ありませんよ!」 子供のように嬉しがるアシリア、それを見てカシスは呆れながら話しだす。 カシス「だから言ったんだ、足手纏いになるから付いて来るなと。」 アシリア「・・・ごめんなさい・・・。」 カシス「でもまあ、お前と彼が助かったんだから良しとするか。」 カシスは落ち込むアシリアの頭を優しく撫でる。アシリアはそれに笑顔で応えるのであった。 そこに戦士が感謝の意を述べる。顔には満面の笑みが浮かんでいた。 戦士「お2人さん、助けてくれてありがとよ。」 カシス「構わんさ。」 アシリア「自己紹介がまだでしたね。私はアシリア、こちらはカシスさんです。」 戦士「俺はゼランと言うんだ、よろしくな。」 カシス「ところで何故ここに倒れていたんだ?」 ゼラン「落盤だよ。俺がここを通ろうとしたら、頭にこれぐらいの岩が落ちてきやがった。」 ゼランはジェスチャーで頭に当たった岩石を示す。その大きさに2人は驚いた。なんと料理で 使用する大釜並の物であったからだ。 アシリア「よ・・よく頭が平気でしたね・・・、普通死んでしまうと思いますが。」 カシス「おそらくゼランが瞬時に頭を下げたんだろう、そのおかげで直撃を免れたんだ。」 カシスの発言にゼランは驚く。それは自分がとった行動を、カシスは簡単に悟ったからだ。 ゼラン「す・すげぇな〜・・・俺がその時とった行動を当てるなんて。」 アシリア「さっき私達を助けてくれた行動も凄かったし・・・。」 2人はカシスの天性的な能力に驚きの顔を隠せない。そんな2人をよそに話を続ける。 カシス「それで・・・、ゼランはこれからどうするんだ?」 ゼラン「もちろん俺も行くぜ。ここのモンスターどもを倒し、賞金で美味いものを沢山食うんだ。」 アシリア「賞金か〜、私も新しい服を買いたいなぁ〜・・・。そういえばカシスさんは報酬の賞金で 何をするのですか?」 カシス「賞金などいらない。俺が欲しいのは目的ある充実した時。付いて来るのは構わんが、自分の 身は自分で守れよ。」 そう語ると一足先に最下層に向かうカシス。アシリアとゼランも急いでカシスの後を追った。 地下へと向かう最中、2人の脳裏ではある事を気にしていた。それはカシスの瞳が深い灰色に 濁っていたからである。 2人はカシスが盲目の可能性である事を考えたが、カシスは人と話す時しっかり相手の目を 見ながら話している。今までの行動を見る限りには考えられない。 2人が導き出した結論は、カシス自身が生きる希望を捨てている事しか思いつかなかった。 アシリアとゼランは話題を作るためにカシスに話し掛けるが・・・。 ゼラン「な・なぁカシス、お前さんどこの出身なんだ?」 カシス「分からん、物心ついた時には旅をしていたからな。」 アシリア「ギズ村に来る前はどこを旅していたのですか?」 カシス「そんな事を聞いて何になるんだ。」 カシスはその場に立ち止まり、2人を向き辛そうな顔で応えた。アシリアとゼランは焦りを 隠そうとしながら話しだす。 アシリア・ゼラン「コ・・コミュニケーションをとってお互いを分かり合おうと・・・。」 カシス「・・・お心遣い感謝する。だが俺の過去を詮索するのはやめてくれ、あまり思い出したく ない。」 そう話すと歩きだすカシス。彼の発言でアシリアとゼランも空しくなってしまった。2人は 黙ってカシスの後を追う。 普通の人間なら何らかの反応を返してくる所だが、カシスの場合は全く好ましく思っていない 様子であった。 3人の歩行音のみが虚しく木霊する洞窟内を歩き続ける事数分後、3人は洞窟の最下層へと 到着した。 と同時にモンスター達から発する強い殺気とこの場の雰囲気に、アシリアとゼランは大きく 動揺する。だがカシスは全く平然としていた。 ゼラン「な・・何なんだこの殺気は・・・。」 アシリア「こ・・怖い・・・。」 怯えるアシリアとゼラン。だがそれ以上の殺気と闘気を放ち、カシスは相手側に話し掛ける。 カシス「姿を現しな化け物ども。それともこのアジトごと消されたいか?」 カシスの発言に更に怯えるアシリアとゼラン。2人の目に映っているのはカシスではなく、 まるで殺人気のような者であった。 その後カシスの言葉に反応するかのように、ボスらしきモンスターと部下のモンスター達が 現れる。総勢10体のモンスターを前に、アシリアとゼランは倒せるのかと脳裏に過ぎる。 そんな2人をよそにカシスは出現したモンスター達の種族を当て出す。 カシス「スケルトン・キラービー・ヘッジホグ・ゾンビ・スライム、ボスのフォーススケルトンの 計10体か。」 フォーススケルトン「ココマデキタニンゲンハハジメテダナ。フフッ・・・オマエタチノホウカラ コロサレニクルトハ、オメデタイヤツラダナ。」 直後アシリアとゼランの身体に異常が起こる。まるで金縛りにあったかのように、身体の自由 を奪われる。しかしまたもカシスは悠然としている。 ゼラン「だ・・だめだ・・・身体が動かない・・・。」 アシリア「こ・これは一体・・・。」 カシス「精神束縛魔法ルードディームだ、生物及び不死属をも麻痺させる魔道師達の初級魔法。」 雄弁に語るカシスを目の当たりにし、フォーススケルトンは驚愕した。 フォーススケルトン「ナ・・ナニ・・・ナゼマホウガキカナイ!」 カシス「フッ・・・。」 カシスはニヤリと笑みを浮かべると魔法を唱えだす。アシリアとゼランに状態回復最強魔法 ラウディルフォーズを放ち、ルードディームの精神束縛から解放した。 アシリア「あ・・動ける・・・。」 ゼラン「本当だ・・・、カシス済まねぇ。」 カシス「後方支援は任せて奴等を倒しな。今のお前達なら簡単に倒せるだろう。」 そう話しながら再び何らかの魔法を唱えるカシス。それを気にするよりも大勢のモンスター達 を今の力量で倒せるかと戸惑うアシリア。 しかしゼランは猛然とモンスター達に襲いかかった。 ゼラン「アシリアさん、考えても埒があかないぜ。とにかく行動あるのみっ!!!」 そうアシリアに話しながら、近くにいるスケルトン2匹に鉄の斧を振り下ろす。その凄まじい 勢いが1体に直撃、スケルトンは粉々に砕け散った。 それを見たアシリアも自分にもできると思い、カシスから受け取った鉄の剣を握り締める。 アシリア「私も負けてられないっ!!」 そう叫ぶとヘッジホグ目掛けて突撃し、鉄の剣を突き刺した。突進による突き刺しの勢いに ヘッジホグは一撃で絶命する。 フォーススケルトン「オ・オノレ・・・イマイチド・・・?!」 フォーススケルトンは再び精神束縛魔法ルードディームを唱えようとしたが、既にカシスが 行動に出ていた。フォーススケルトンが使った同じ魔法をモンスター達に放っていたのだ。 そう先程魔法を唱えていたのはルードディームであった。 カシス「毒には毒をもって制す、貴様等にはお似合いの魔法だな。」 モンスター達が動けないと分かった2人は更に勢いを増し、1体ずつ確実に倒していく。 この時から2人はカシスが仲間思いだと気付きだした。それは自分なら簡単に倒せる相手を こちらに倒させてくれた事である。もっとも、意地の悪い奴はカシスが動かなくてもいいから と考えるかもしれない。だが仲間思いだと決定付けたのはカシスの瞳の色であった。 彼の瞳が灰色だと気付いた時より、淡い灰色になっていたからである。それに灰色の瞳が薄ら いだ事によって、カシスの本当の瞳の色に気付く。見ると吸い込まれそうな紫色、それを見て すぐに直感したのである。 アシリア「さあ、後はフォーススケルトンのみ。」 2人は次々にモンスター達を倒し、いつの間にかフォーススケルトン1体になっていた。 フォーススケルトン「グ・・ヒキョウナ・・・。」 カシス「矛盾している。貴様も同様の手口で罪もない人間を殺しているんだろ、自業自得だ。」 ゼラン「そう言うこった、消えちまいなっ!!!」 ゼランは立ち続けているフォーススケルトンに跳躍。脳天に身体全体の勢いを乗せた鉄の斧を 振り下ろした。振り下ろされた鉄の斧は頭蓋骨を砕き、フォーススケルトンは灰の如く崩れて いく。 ゼラン「ふう〜っ・・・これで一件落着・・・?!」 ゼランが気を抜こうとした時、突如洞窟全体が揺れだした。どうやらフォーススケルトンが 侵入者用のトラップを解放し、カシス達を道連れにするつもりらしい。 直後揺れにより崩れた岩石が出口を塞ぐ。それを見たアシリアとゼランは死を直感する。 ゼラン「クソッ・・・出口が塞がれちまった・・・。」 アシリア「私達・・・こんな所で死ぬんだ・・・。」 諦めるアシリアとゼラン。だがカシスは平然と2人の肩に手を置き話しだす。 カシス「そうでもないさ。」 直後3人はその場から消え、地上へ瞬間移動した。2人は崩れゆくアジトを見つめ、助かった 事に気付くとどっと力が抜けていくのであった。 アシリア「ち・・・地上だ・・・。」 ゼラン「どうなってやがるんだ・・・。」 カシス「移動脱出魔法ヴェーブ、これがあればどんな所からも抜け出せる。」 その場に座り込む2人を見つめ、カシスが意地悪そうに話す。 カシス「言わなかったか、後方支援は任せて奴等を倒せと。これには脱出も含まれていたんだよ。」 ゼラン「カシスよう・・・、脱出できるなら早く言ってくれよ〜・・・。」 アシリア「本当にもうっ・・・カシスさんのイジワルっ!」 ふてくされる2人にカシスはニヤリと微笑む。その笑顔を見た2人は気づいた。カシスの瞳が 灰色から紫色に変わっている事に。その吸い込まれそうな紫色の瞳を見つめた2人は、何とも 言えない気分になる。 アシリア「カ・・カシスさん・・・瞳の色が・・・。」 勢いついてそう話すアシリア。カシスは白銀の剣を鏡代わりに瞳を見つめる。アシリアは 余計なお世話だと言われる気がしたが・・・。 カシス「・・・フフッ・・・仲間というのもいいかもしれないな。ありがとうアシリア・ゼラン。」 カシスのこの言葉に2人は唖然とする。それは絶対言いそうにない言葉を喋ったからだ。 アシリア・ゼラン「・・・・・。」 カシス「どうした?」 ゼラン「・・・お前が礼を言うなんてな。」 アシリア「私・・・てっきり余計なお世話と言われるかと・・・。」 カシス「おいおい・・・それはないだろう。」 カシスがそう話すと2人は笑いだした。カシスは心中でこう思う。今回の依頼報酬は充実な 時以上に素晴らしいものを手に入れたと。 村長「カシス殿!」 とそこにギズ村村長と村人数人が駆けつけてきた。洞窟が崩壊した時に地鳴りが起こり、何事 かと思ったからである。そしてカシス達の姿を見た村長達は、安堵の笑みを浮かべた。それは ここに向かった全員はカシスを信頼している者達で、彼なら確実に事を運んでくれると確信 していたからだ。 カシス「村長、見ての通り。モンスターのアジトは崩壊、奴等もしっかり全滅させた。」 そう話すと崩壊した洞窟を指差す。村長達はそれを見て驚いた。 村長「・・・さ・さすがカシス殿。貴殿なら我等の願いを叶えてくれると信じていた。」 カシス「俺1人の力ではありません、彼と彼女がいたから可能だったんです。俺より2人を褒めて あげて下さい。」 村長達にそう告げると2人にウインクをする。この行動が表向きにせよ、2人はカシスにより 好感を深めた。 村長「分かりました。とにかく村へ戻りましょう、詳しいお話などはそこで。」 カシス達は村長達と共にギズ村へ戻った。戻る最中、カシスは妙な胸騒ぎを感じる。それは これからの激戦の前触れであった。 第1話 3へ続く |
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