〜第6話 因縁の対決〜
   アマギ達を助けてから4日が経過、俺は来るべき時を静かに待った。とは言うものの、俺達は
   その間しっかり自分の腕を磨きあう。アリーナに出場したり、地上に出て個人対戦等をした。
   妹達も出会った時より格段にレベルアップ、これなら足手纏いにはならないと確信もした。
   今は5人と共に俺の自室で休憩中である。そんな中、エリシェがある発言をした。
エリシェ「そう言えばユキヤさん。アマギさん達を助けた時、レイヴンズ・ネストを叩く以外に
     やる事があると言っていましたよね。それは何なのですか?」
ルディス「それそれ、私も気になっていたんだ。何なの?」
ユキヤ「レイヴンズ・ネスト創始者、そして守護神的人物のシェガーヴァだ。」
ミュナ「シェガーヴァ?」
   俺はまずシェガーヴァの生い立ちを話しだした。そうでなければシェガーヴァの意味が全く
   掴めないからだ。
ユキヤ「大破壊以前、一企業のプログラマーとして活躍。その後画期的な発明をした、それが
    レイヴンズ・ネストのメインコンピューターの雛型。直後世界規模で戦争が起こり、後に
    大破壊へと進んでしまった。それから約50年後、レイヴンズ・ネストが誕生。企業や
    ACを作り出し、世界を秩序あるものへ再生し始めた。そして今に至っている。」
テュルム「ちょ・ちょっと待ってよ・・・そのシェガーヴァって・・・今も生きているの?!」
   驚きを隠せないテュルムがそう話す。確かに人間の寿命は約100年前後、シェガーヴァが
   プログラマーとして活躍していたのは2世紀も昔の事だ。どう考えても生きている事自体
   おかしすぎる。俺はその事を詳しく話し出した。
ユキヤ「今も生きている、と言うよりは稼動していると言った方が合っているな。奴は死ぬ前に
    己の人格及び記憶や技術等を可能な限りデジタル化し、人工知能として後の世に残した。
    それが今のシェガーヴァ、時が生み出した冷酷な人工知能。言わばサイボーグ、生物の
    心の痛みや体の痛みを知らない完全最凶の機械人形だ。」
ルディス「そんなバケモノどうやって倒すのよ。どう考えても今の私達人間には考えられない思考で
     作られたものじゃない!」
   ルディスの答えは十中八九は正しい、凡人が考えれば絶対に倒せないものである。
ユキヤ「元は人間の本人が作り出したもの、この世に絶対はない。必ず倒せるさ・・・。」
   そう必ず・・・シェガーヴァを倒さねば・・・、世界は奴が思うがままの冷酷な形になって
   しまう。今の言い方で5人はシェガーヴァに対する疑問等を強めさせてしまった。
ティム「そのシェガーヴァって、レイヴンなのですか?」
ユキヤ「ああ、人工知能になってからレイヴンの技術を取得したらしい。しかも厄介な事にな、
    全世界のレイヴンのデータを元に組み上げられたロジックで作動する。もっとも奴自身が
    ACやレイヴンを作り出したんだ。当たり前ではあるがな。それが機械だけならいい、
    奴の元の姿は人間。人の思考を持つ機械人形、ほぼ完全無欠と言えるな。」
ミュナ「やっぱり倒すのは無理ですよ、どう考えても人間対ACと言えます。」
ユキヤ「だが欠点が2つある。1つ目は機械が故の行動のワンパターンさだ。これは機械には付き
    もので、そこを攻めれば大丈夫。」
テュルム「でもだから人間の思考等をインプットしたんでしょう、欠点が補えて完全無欠よ。」
   無理そうな問題を答える生徒みたいだ。無理もない、俺が考えても無理に近い事だからな。
   だが不可能ではない事を踏まえて5人に話し出す。
ユキヤ「まあ最後まで聞いてくれ。2つ目は人間であったと言う点。奴自身の元の人間像はかなり
    ヤバい奴だったらしく、精神的に大人になっていなかったらしい。人間の点で完全な人物
    なら完全無欠だが、その精神的欠点を攻めれば大丈夫だ。」
ティム「つまりワンパターンな行動と精神的な面を攻めれば勝てるという訳ですか。」
ルディス「上手くいきますかね・・・。」
ユキヤ「それに・・・。」
エリシェ「それに?」
ユキヤ「いや・・・何でもない。」
   俺はシェガーヴァとの因縁を話そうとしたが、途中で思い止まる。これは俺自身の問題だ、
   彼女達まで巻き込みたくない。だが今の反応で彼女達はシェガーヴァに対してますます疑いの
   念を強めたようだ。要らぬ事は言うものではないなとつくづく思う。
エリシェ「・・・ところでこれからどうするのですか?」
   気難しい雰囲気の中、エリシェの会話がその場の空気を切り崩した。これは幸いとばかりに、
   俺は今後の行動を話し出す。
ユキヤ「ACのメンテナンスが終わったら行く所がある。」
テュルム「そこはどこですか?」
ユキヤ「元ムラクモ・ミレニアムが使用していた本社跡地だ。そこがシェガーヴァの根城となって
    いる。」
ルディス「だったら何で今まで見つからなかったの?」
ユキヤ「そこに侵入しようとする者や、ネットでアクセスする者は例外なく殺されている。侵入
    しようとした奴は、ナインボールが現れそれを消す。ネットでアクセスしようとする奴も
    一般レイヴンがネストの依頼により殲滅に向かう。過去何度となく挑む者達がいたが、
    全て消されているのが事実だ。」
エリシェ「酷い、血も涙もないとはこの事ですよ。」
ユキヤ「だから今度こそ消してやるんだ、絶対にな!」
   俺の決意ある意見に5人は驚いた様子だ。もっとも俺をそうさせるのは、過去のある出来事が
   切っ掛けではあるが・・・。そう・・・あの出来事・・・。とそこにメカニック長から通信が
   入る、どうやらメンテナンスが終了したようだ。俺達はガレージへと向かった。もしかしたら
   最後の決戦になるかも、そんな言葉が脳裏に過ぎる。
ルディス「小父さん、メンテは終わった?」
   ガレージに着いた後、ルディスがメカニック長にそう話した。だがメカニック長は厄介そうな
   顔をして話し出す。
メカニック長「ああ、しっかり済ませといたよ。だがウインドブレイド以外のACにちょっと問題が
       起きた。」
ミュナ「それは何なのですか?」
メカニック長「メインシステムにエラーが出るようになっている、この修復にあと30分ぐらいは
       かかりそうだ。」
ティム「30分か、案外短いわね。」
ユキヤ「5人はメンテが済んだら来てくれ、先に行っている。」
エリシェ「そ・そんな、危ないですよ!」
   俺が単独で向かうと話したら、エリシェ達は血相を変えて俺の事を思い止ませようとする。
   しかも彼女達の顔は本気だ、滅多な事では引き下がらないだろうな。だが俺はそれを踏まえて
   心配そうに見つめる5人の右手を俺の右手と重ねる。そして俺は出来る限りの明るさで話し
   出した。
ユキヤ「大丈夫、心配するな。俺がお前達を残して死ぬわけないだろう?」
ルディス「・・・その言葉、絶対信じるからね。」
   そう話した後、ルディスが俺らの手の上に左手をのせる。他の4人も同じく左手を重ね、俺を
   見つめた。俺は彼女達を見つめると、涙ぐんでいる事に気が付く。相当心配している事がよく
   分かった。そして俺とシェガーヴァの因縁の深さを見抜いたようである。
エリシェ「もし私達を出し抜こうとしたら、それなりの報復はさせてもらいます。」
   エリシェが冗談も含めてそう話す、俺に対する彼女なりの精一杯の言葉に聞こえた。
ユキヤ「ハハッ、大丈夫だから。」
   5人を見つめ、俺はそう話した。そして誓う、必ず戻ると・・・。まあ後から彼女達も来ると
   思うが。俺は愛機ウインドブレイドに乗り込み、家族に見守られながらガレージを後にした。
   向かう場所は元ムラクモ・ミレニアム本社跡、そこにシェガーヴァが待っている。そう・・・
   相手はただいるのではなく、俺を待っているのだ。

   ・・・数時間後、俺は目的の場所へ到着した。入り口付近に愛機を待機させると、そのまま
   本社跡内へ入って行く。内部は薄暗く、所々に空いた穴から光が差し込める不気味な所だ。
ユキヤ「シェガーヴァ、いるんだろう。俺一人だ、隠れてないで出て来な。」
   俺の声が誰もいない本社跡内へ響き渡る。誰もいなさそうだが、俺は確実にいると確信する。
   そう考えた直後、大振動と共にACがこちらへ向かって来る。限りなく暗い黒色と深い青色の
   機体に橙色が不気味に浮かぶカラーリング、シェガーヴァが駆るACヘル・キャット。
シェガーヴァ「・・・ユキヤ・・か。」
   放たれた声は人間が発する物ではない、合成音声に程近い。ナインボールのパイロット、いや
   人工知能であるハスラー・ワンの方が人間的な声である。
ユキヤ「相変わらずな奴だな・・・。」
シェガーヴァ「何しに来た・・・。」
ユキヤ「解かっているくせに。アマギ達や俺の家族達の一件にお前が絡んでいるのだろう。皆は
    自由になったんだ、これ以上手を出すのは止めてもらいたい。」
シェガーヴァ「私をよく知っているのであれば、どう答えるかは承知の筈だ。それは出来ない相談、
       あれらはイレギュラーな存在だ。世界の秩序ある再生を妨害するものは絶対に排除、
       それが私の絶対の正義・・・。」
   喜怒哀楽が全く無いような声で、シェガーヴァはセオリー通りの答え方をした。まあ別な意味
   での期待していた答え方はあるが。
ユキヤ「・・・そうか、やはりそれがお前の答えか・・・。なら・・・今日こそは貴様を消さな
    ければならない、今の世界に不要・・・イレギュラーな存在の貴様を。俺の友人・家族、
    そして俺自身の為に!」
シェガーヴァ「現状況を判断して物事を下せ、少しでも動けばお前が消えるという現実を考えろ。」
   怒りも無ければ憎しみもない、そんな感情でシェガーヴァはそう話す。ヘル・キャットは右腕
   主力武器のレーザーライフルの銃口を俺に向ける。死の深淵とも言うべき穴が俺を威圧した。
ユキヤ「それはどうかな、もう少し単独で来た事を考えろ。」
   俺がそう話した直後、レーザー弾がヘル・キャットの左腕上部部分を貫く。ヘル・キャットの
   ヘッドアイが弾道の先を見つめる、その先には俺の愛機が突撃して来る。ウインドブレイドは
   小型ミサイルを発射、ヘル・キャットはミサイルを回避すべく右側へ移動した。
シェガーヴァ「増援か。」
ユキヤ「バカ言え、俺のACだ。遠隔操作で動かしている。」
   ヘル・キャットが回避行動に移っている間、俺は近くに来たウインドブレイドに颯爽と乗り
   込む。これで五分五分の戦いができる。
ユキヤ「これで互角だな。」
シェガーヴァ「甘いな。」
   今度はシェガーヴァがそう話した直後、大型ミサイル弾とパルス弾がこちらへ飛来する。俺は
   愛機をジャンプさせ、飛来する大型ミサイル弾とパルス弾を回避した。そして飛来した弾道の
   先をモニターを通して見つめる、重装甲AC・標準ACがブースターダッシュを使い現れる。
   標準ACには見覚えがあった。テュルムと出会った時に現れたスウィフトである。
ユキヤ「・・・あんたは・・・あの時のスウィフトか?」
レイヴン1「フィルシークだ、悪いがお前の敵に回る。」
レイヴン2「久し振りだな、俺はメルフォーレ。以前会った事があるだろう?」
   この声には聞き覚えがあった、ミュナとティムを助ける時に戦った奴だ。
ユキヤ「・・・ミュナとティムの時の奴か、生きていたとは。」
シェガーヴァ「3対1、これでイレギュラーのお前を排除する。」
   1対3、ちょっと辛いな。2体なら何とかなるが、3体はさすがにキツイ。そう思った直後、
   後方から小型ミサイル弾・パルス弾・バズーカ弾が3体のACへ向かっていった。相手側は
   向かって来る弾を散開して回避する。俺はレーダーを見る、5つの点が映っていた。これは
   どう考えてもあいつらしかないな。
テュルム「それはどうかな。」
ルディス「6対3よ、文句ある?」
エリシェ「間に合いましたねユキヤさん、私たちが来たからには安心して下さい。」
   俺の左右に5体のACが並ぶ、妹達が駆け付けて来てくれた。この時だけはこう思った、
   “ありがてぇ”と。だが事の発端は自分にある、なぜならば5体のACのエラーは俺が行った
   事だからだ。シェガーヴァと1対1で話す為に。
ミュナ「あいつは・・・まさか・・・。」
ティム「へぇ〜生きていたの、じゃあ今度こそ引導を渡してやるわ。」
   ミュナとティムはメルフォーレのACブラック・ボールを見つめてそう話す。彼女達は未だに
   心の中で奴の事を忘れずにいたのだろう。
ユキヤ「ミュナとティムは重装甲ACのメルフォーレを、テュルムとルディスはスウィフトの
    フィルシークをやってくれ。俺とエリシェはシェガーヴァをやる。」
ルディス「OK!」
ミュナ「任せて兄さん!」
   テュルム&ルディス・ミュナ&ティムは散開し、それぞれの目標となるACに攻撃を開始。
   相手側もこれに応じ、迎撃し始めた。俺とエリシェはシェガーヴァと対峙する。

   ミュナとティムはメルフォーレを対峙していた、2人の中には過去の怒りが蘇る。
ミュナ「生きていたとはね、しぶとい男だこと。」
ティム「あの時の礼はタップリするわよ。」
メルフォーレ「フッ、ガキがよくほざく。俺を殺せると思うなよ。」
   ブラック・ボールは大型ロケット弾と大型ミサイル弾をミュナとティムのACに放った。
   ミュナのACマスターフィンヴはブースターを咆哮させ、その場から浮かびだし回避。そして
   左肩武器の4連装小型ミサイルを相手目掛けて放つ。ティムのACシューヴァドゥナは
   ブースターダッシュを連続させ、左右に回避しながら右腕主力武器のバズーカ砲を連射する。
   メルフォーレは左右からの攻撃のうち小型ミサイル弾を回避、ブースターダッシュしながら
   左右に移動する。だが一方しか回避対処できず、ティムが放ったバズーカ弾を立て続けに
   受けた。その衝撃で右肩武器の大型ロケットポッドが吹き飛ぶ。
メルフォーレ「く・小癪な・・・。」
ティム「悔しかったら反撃すればぁ〜。」
ミュナ「そうそう、私達のようなガキになめられては頭に来るでしょぉ〜?」
メルフォーレ「き・・貴様らぁ〜・・・。」
   2人の挑発に徐々に怒りだすメルフォーレ、だが行動の方は全くなっていなかった。2人の
   左右からのアタックになす術がない。しまいにはティムがレーザーブレード攻撃を見舞われ、
   左腕が切り落とされる不始末。もうメルフォーレには勝ち目はなかった。
ミュナ「そろそろトドメをさすわよティム。」
ティム「OK、やっちゃいましょう。」
   マスターフィンヴはブースタージャンプで浮上、シューヴァドゥナはブースターダッシュで
   突進。2体のACは相手の視界に入らないように接近、ブラック・ボールに近付いていった。
ミュナ・ティム「今度こそ消えちまいな!」
   2体のACはレーザーブレードを発生、ブラック・ボール目掛けて一閃した。2人の息の
   合った連携攻撃は、コアパーツとレッグパーツのジョイント部分を切り落とす。それぞれが
   離脱した後、メルフォーレはブラック・ボールと共に粉々に吹き飛んだ。
ミュナ「やったぜ!」
ティム「ナイスアタックミュナ!」
   2人は粉々になったブラック・ボールを一瞥すると、他に戦っている仲間の下へ向かった。

   テュルムとルディスはフィルシークと対峙しており、ヒット&アウェイを繰り返しながら攻撃
   を繰り返している。
テュルム「まさかあんたと闘うことになるとはね。」
ルディス「兄さんと過去に何があったかは分かりませんが、兄さんの邪魔をするのならば殺す!」
フィルシーク「やってみな、俺も黙ってやられはしないぜ。」
   テュルムのACブレディスフィヴはブースタージャンプと同時に、右肩のデュアルミサイル
   ポッドと右肩の6連装ミサイルポッドを解放。無数の小型ミサイル弾がフィルシークのAC
   スウィフト・改を追撃する。ルディスのACフィーンヴェナスはブースターダッシュを使い、
   スウィフト・改を中心に円を描きながら右腕主力武器の連射型ライフルを放ち続けた。
   フィルシークのACスウィフト・改はメルフォーレのブラック・ボールより機動性が高いが、
   やはり2人同時の攻撃にはなす術がない。随時放たれる小型ミサイル弾やライフル弾を受け
   続け、攻撃により左肩の4連装ミサイルポッドと右肩の中距離レーダーが爆発する。
フィルシーク「く・・くそっ・・・レーダーが・・・。」
テュルム「ついでにヘッドアイもいかが?」
   レーダーを破壊されたスウィフト・改にブレディスフィヴがブースターダッシュで接近、左腕
   からレーザーブレードを発生させ相手のヘッドユニットを突き刺す。これでスウィフト・改の
   視界は完全に断たれた。
ルディス「悪いが消えてもらう。」
   ほぼ行動停止状態になったスウィフト・改に今度はフィーンヴェナスが接近し、左腕から
   レーザーブレードを発生。ジェネレーター部分へ突き刺しなぎ払う。ルディスが離脱後、
   フィルシークはスウィフト・改と共に爆発。メルフォーレ同様呆気なく撃破された。
テュルム「さすがルディスちゃん。」
ルディス「ヘヘッ、それ程でもぉ〜。」
   テュルムとルディスもスウィフト・改の残骸を一瞥すると、他の仲間の下へ向かった。

   俺とエリシェはシェガーヴァと対峙している、それには少しだけ時間を遡る必要がある。
エリシェ「こいつがシェガーヴァ・・・。」
   エリシェはシェガーヴァのACヘル・キャットをコクピット内部から見つめ、まるで悪魔を
   見ているかのような口調で話す。そう、シェガーヴァのACは悪魔に酷使していた。以前俺が
   闘ったゼラエルよりは控えめだ、まだ奴の方がヤバい存在だった。だがシェガーヴァは何かが
   違っていた、それは人間ではない事である。ゼラエルは破壊神のような奴であったとしても、
   まだ人間である。だがシェガーヴァは機械人形、清い血や汚れた血すら流れていない奴だ。
   それが奴を初めて見る者は悪魔と感じるのだろう。いや悪魔という言葉すら似合っていない、
   何もない殺人機械人形。これほど恐ろしい物は他にないだろうな。
ユキヤ「気を付けろよ、奴は強い。甘く見ていると痛い目を見るぞ。」
シェガーヴァ「・・・それがユウカ・アキナ・リュラの代わりか、その点が愚かと言うのだ。」
   ・・・この時俺の中でシェガーヴァに対する感情が爆発。奴の放った過去の出来事の言葉、
   これほど腹の立つ言葉はなかった。
ユキヤ「・・・貴様・・・彼女達を侮辱するのか・・・、彼女達を殺したのは貴様だろ!!!」
シェガーヴァ「お前が殺したようなものだろう、他人の責任にするな。愛する者達を守れない哀れな
       人間、それを踏まえて愚かと言うのだよ。分かるかね?」
ユキヤ「・・・殺してやる・・・、貴様・・貴様だけは許さない・・・。」
   この時思った、シェガーヴァの挑発に乗っている自分がいる事を。だがこの時ばかりはどう
   しようもなかった。でもそれを醒めさせる一声が放たれる。
エリシェ「やめなさいユキヤ、怒れば奴の思う壺よっ!!!」
   内部通信の音声がエリシェ側によって最大に上げられ、そこに彼女の覚醒の声が響き渡った。
   俺はこの一声で我に返る、エリシェには頭が下がる思いだった。
ユキヤ「・・・ありがとよエリシェ、おかげで我に返った。シェガーヴァよ、貴様の思惑通りに
    事が運ばなくて残念だったな。」
シェガーヴァ「ならば同じ事を繰り返すまでだ。エリシェ・テュルム・ルディス・ミュナ・ティムを
       殺し、お前を絶望の底に叩き落す。」
ユキヤ「ヘッ、ユウカ・アキナ・リュラを殺した事を自ら答えたな。」
シェガーヴァ「だからどうした、イレギュラーの者やその人物全てを根絶やしにするのが私の正義。
       どこが間違っている?」
ユキヤ「貴様の存在自体が間違っている。それにさっきエリシェ達を殺すと言っていたがな、
    それは不可能だ。3人はレイヴンではなかった、普通の女の子達だからな。だが彼女達は
    違う、なぜなら5人は腕利きのレイヴンだからな。メルフォーレやフィルシークの2人に
    4人を殺させようと考えているようだが、それなりの腕と覚悟を持った奴でなければ
    逆に消されるぜ。」
   直後本社跡内に爆発音が響く、ここでミュナとティムがメルフォーレを撃破した時間になる。
   同じく本社跡内に爆発音が響いた、こちらはテュルムとルディスがフィルシークを撃破した
   時間になった。どうやら今の2度の爆発音でシェガーヴァはかなり驚いているようである。
   それは4人が戦い終わり駆け付けて来たのにもかかわらず、呆然と立ち尽くしているからだ。
   数分してシェガーヴァが徐に話し出す。
シェガーヴァ「バ・・バカな・・・奴らは私の算出したデータでは、ハスラー・ワン以上の実力を
       持っている筈だ・・・。それが何故・・・。」
ユキヤ「なっ、いった通りになっただろう。」
シェガーヴァ「信じられん・・・絶対信じるものか・・・。」
   俺の話しにも全く耳を貸さず、ただ呆然と呟くシェガーヴァ。
エリシェ「ハスラー・ワンがどれぐらいの力量を持っているかは分かりませんが、今の私達よりは
     弱いと思います。現にハスラー・ワンを超える2人を倒しているのですから。」
   エリシェの話しは正しかった。ハスラー・ワンが強いのは俺でも充分頷ける、だがしょせんは
   機械人形。行動パターンは一定だし、複数のAC相手では対処しづらいのが現状だ。
シェガーヴァ「フン・・・まあいい、たとえ私を倒した所でここからは生かしては帰さん。社外では
       ナインボールが周りを囲っているだろう。総勢100体のACを倒せるかな?」
   なんとシェガーヴァはナインボールを社外に配置していると言う。それも1体や2体ではなく
   総勢100体と話した。さすがに6人と言えども100体のナインボールはキツすぎる。
   そう心の中で呟いた直後、社外で爆発音が立て続けに起こった。そして後方から1体のACが
   俺達の元へ歩み寄る。
アマギ「悪いが表のナインボール軍団は俺の家族達が交戦中だ、破壊神軍団を軽く撃破した歴戦の
    強者揃い。ナインボール軍団が全滅するのも時間の問題だろう。」
   懐かしい声が内部通信を通して流れる、最強レイヴンで俺の後輩の吉倉天城の声であった。
   どうやら救援として駆け付けてくれたようである。実にありがたいと思わざろうえない。
アマギ「貴様のような奴がいるから世界が汚されるんだ。本当に世界を再生させたいなら、貴様から
    先に消えろ。貴様こそがこの世界のイレギュラー的な存在だ。」
   なんとも力強い発言だろうか、これこそ世界を救うと思う者の発言だ。シェガーヴァの断言
   する秩序ある世界の再生論とは格が違いすぎる。
シェガーヴァ「クッ・・・。」
   シェガーヴァ自身も何も言えないようだ。もっともどう考えても奴の正義は偽りの正義、本人
   自身それを充分承知の上であろう。
ユキヤ「どうするよシェガーヴァ、まだ殺り合うのか?」
シェガーヴァ「・・・当たり前だ、お前達は力を持ち過ぎた。力を持ち過ぎる者は・・・。」
アマギ「全てを壊す・・・か。」
   やはりと言うべき答えであった。ならば取るべき行動はただ一つ・・・。
ユキヤ「・・・じゃあ消してやる、お前は俺達人間にとって大きく力を持ち過ぎた者だ。人間の
    生きる秩序を破壊する者は、人類に代わって排除する。」
   俺がそう話した直後、ヘル・キャットは徐に動き出した。俺も愛機を動かす。シェガーヴァは
   愛機をブースタージャンプさせ、頭上を取ろうとした。俺は愛機を右旋回させながら相手の
   死角へ入り、右側面に進み出ると思わせる。案の定こちらの思惑通り、ヘル・キャットは
   左旋回しながら右側を向く。こちらから見ると右肩側面を無防備に向けていた。俺は右腕主力
   武器のレーザーライフルを2発連続に放った。放たれた2発のレーザー弾はヘル・キャットの
   ヘッドパーツと右腕主力武器のレーザーライフルを撃ち抜き、視界と腕武器の能力を奪う。
シェガーヴァ「ク・・・クソッ・・・。」
ユキヤ「立ち止まっていていいのか?」
   行動不能に近いヘル・キャットに容赦なく愛機を突進、その間に大出力レーザーブレードを
   発生させる。そして擦れ違いざまに青い太刀を放った。ヘル・キャットはゼラエルの駆る
   ダークエンペラー同様、コアパーツとレッグパーツジョイント部分を切断。直後大爆発し、
   粉々に吹き飛ぶ。ゼラエル同様呆気ない最後であった。
ユキヤ「あばよシェガーヴァ。」
   俺は地面に降り注ぐヘル・キャットの破片を見つめ、そう呟く。3人の命を奪った憎き悪魔、
   “しっかりケリは着けたぜ”俺は心の中で3人に向けてそう呟いた。
アマギ「やったなウインド、さすがだよ。俺でさえあのような強者を一撃には倒せない、やっぱ俺の
    先輩が成せる技だ。」
ユキヤ「ありがとよ。それと後ろ盾すまない、さすがにナインボール100体は俺達だけでは
    倒せそうもない。」
アマギ「いいって事、俺なんかあんたに何回助けられたか。お安い御用だよ。」
   素晴らしい友を持ったなと俺は思う。吉倉天城、これほど偉大な青年はいるものではない。
エリシェ「なんかアマギさんって、ユ・・・ウインドさんの弟さんみたいですね。」
ルディス「そうそう、言葉等を聞いているとそう思えてきます。」
   まったく要らん事をよく話す、だがそれが彼女達のいい所かもしれないな。
アマギ「ありがとうございます、そう仰っていただけると嬉しいですよ。」
   アマギも俺や家族以外ではしっかり敬語を話している。さすがだなと思った。
テュルム「さあさあ、アマギさんのご家族の方々の加勢に行きましょう。まだまだ暴れ足りないし、
     ご家族の方々の腕前も見てみたいしね。」
ミュナ「賛成〜!」
アマギ「気遣ってくれてありがとう。」
ユキヤ「行こうぜ。」
   礼を述べるアマギを誘い、俺達は社外でナインボール軍団と交戦中の家族達の加勢に向かう。
   俺は社内から去っていく時、後部モニターで再びヘル・キャットの残骸を一瞥しながら去る。
   因縁の相手シェガーヴァ、奴の事は生涯忘れないだろう。

   社外ではアマギの家族達がナインボール軍団と交戦中だった。さすがアマギの家族達、あの
   元最強ACナインボールに互角以上の戦いをしている。アマギ自身が認める事だけあるなと
   つくづく思う。
ユリコ「そっちは任せたわよ!」
ミリナ「分かりました!」
   ナインボール1機につき、家族側は2人1組で対戦している。ナインボールはさすがに2体の
   AC相手には、なす術もなく倒されていく一方であった。
スミス「レイスさん危ないっ!!」
   スミスという人物が内部通信を通してレイスにそう話す。レイスのACはナインボールに
   背後から攻撃されそうになっていた。直後レイスの機体を庇うようにして1体のACが進み
   出る、エリシェのACウインドフェザーだ。エリシェは右腕主力武器のレーザーライフルを
   ナインボールに向け発射、放たれたレーザー弾はナインボールのヘッドパーツを撃ち抜く。
   そこに庇われてばかりではいられないとばかりに、レイスのACが攻撃態勢に移った。左肩
   武器のエネルギーグレネードランチャーを展開し、ナインボールにエネルギー弾を放つ。
   ヘッドパーツを撃ち抜かれたナインボールはそれを回避せず直撃。エネルギー弾の破壊力で
   ナインボールは粉々に爆発した。
レイス「危ない所をありがとうございます、え〜と・・・。」
エリシェ「三島エリシェと申します。よろしくお願いしますレイスさん。」
レイス「エリシェさんですか、ありがとうございます。」
   危ない2人だ、戦場で立ち止まり会話通信をしている。俺は2人の邪魔をしようとしている
   ナインボールをレーザーライフルで迎撃、ジェネレーターを撃ち抜かれたナインボールは
   爆発する。
ユキヤ「お2人さん、話しは後にしなよ。先に機械人形を破壊しようぜ。」
レイス「はいっ!」
   俺より年上と思われるレイスが子供のような声で応対してきた。これが彼女の本当の姿だと
   思う。俺とエリシェ・レイスは他のナインボールを倒しに行った。

トム「クソッ・・・さすがに辛いか・・・。」
   トムがコクピット内でそう呟く、いくら最強ACマスターウェポンであっても機動力では
   ナインボールの方が上だ。1機のナインボールに翻弄され、徐々に追い詰められていった。
   丁度ナインボールがトムと反対側に並んだ時、グレネード弾がナインボールの背後を襲う。
   グレネード弾の破壊力でナインボールの両肩武器が粉々に吹き飛んだ。ナインボールは爆発の
   勢いでマスターウェポン側に押し出される。トムは左腕武器のレーザーブレードを発生、接近
   するナインボールのコアユニット目掛けて青い刀剣を突き刺した。前からの攻撃と後ろの爆発
   に挟まれ、ナインボールは粉々に吹き飛ぶ。マスターウェポンはナインボールの爆発にはビク
   ともせず、さすが重装甲ACだと思った。
ゴウ「まったく、俺がいないと何も出来ないのか?」
トム「せ・・先輩!!!」
   通信に珍しい人物の声が流れてきた。俺達の専属メカニック長こと岡林剛である。元レイヴン
   だったとは聞いていたが、まさかACに乗って現れるとは・・・。ゴウも相当の世話好きだな
   と思った。
ゴウ「お前の背後はカバーする、お前は全力で前の敵を潰せ。」
トム「分かった、後ろは任せるよ。」
   お互い配置を通信で話し合うと、2体のACは動き出した。そしてそれは最強ACの再来とも
   言うべき行動をし始める。トムは後ろを守られている事に安心し、前に現れるナインボールに
   グレネードランチャーで迎撃する。破壊力抜群のグレネード弾の直撃を受け、ナインボールは
   粉々に砕け散る。トムの背後にはゴウが守っており、こちらもグレネードランチャーで近付く
   ナインボールを迎撃していった。ゴウのACグランドウェポンから放たれるグレネード弾の
   威力に、ナインボールは木っ端微塵に吹き飛ぶ。まさに難攻不落の大要塞のようである。

テュルム「大丈夫ですか?」
   アスカという人物を攻撃しようとしていたナインボールを、テュルムのACは左腕武器の
   レーザーブレードで切り払い追い返す。そしてテュルムはアスカに通信を入れ、安否を気に
   かける。
アスカ「ありがとうございます〜、危なかったでしたよ。」
ザーディン「アスカ大丈夫か?!」
   テュルムによって追い返されたナインボールを右腕主力武器のスナイパーライフルで迎撃し、
   ザーディンが同じく安否を気遣い通信を入れてきた。
アスカ「大丈夫よ、この方に助けてもらったから。」
ザーディン「ありがとうございました、アスカを助けてもらって。」
テュルム「いいって事。私は諏川テュルム、よろしくねアスカ・ザーディン。」
ザーディン・アスカ「よろしくお願いしますテュルム先輩!」
   ザーディンとアスカから見ればテュルムは先輩に当たるのか、何とも不思議なものだな。
   その後3人は迎撃したナインボールを撃破、その後も連携で次々とナインボールを撃破して
   いった。その後も俺達はアマギの家族達と一緒に、ナインボール軍団を倒していく。相手側は
   こちらの行動になす術がなく、次々に破壊されていった。所詮機械人形、人間という者が
   操らなければ真の力は発揮できない。シェガーヴァの奢りが生み出した、機械人形を束縛する
   鎖。ナインボールはこの鎖に雁字搦めに締め上げられている。それゆえナインボールは真の
   力を発揮できずに倒されていくだけであった。

   数時間後、俺達はナインボール軍団を全て撃破。これで全ての戦いが終わったに思われた。
キュム「やったぁ〜・・・やっと終わったぁ〜。」
ユリコ「さすがに今回はキツかったね。」
   アマギの家族達は内部通信を使い、それぞれ安堵の声で話し合っている。そんな中俺は何故か
   懐かしい雰囲気に捕らわれ、元ムラクモ・ミレニアム本社跡の入り口付近まで愛機を動かす。
エリシェ「どうなされたのですか?」
   エリシェが俺の行動を見て愛機を近付かせてくる。俺はエリシェを気にもせず、本社跡内を
   見つめていた。そこに・・・信じられない人物が現れたのだ。
ユキヤ「そ・・・そんな、死んだ筈なのに・・・なぜだ・・・。」
   それはシェガーヴァによって殺されたユウカ・アキナ・リュラの3人であった。
アマギ「誰なんだ彼女達は?」
   俺らの行動を気にしてアマギが近付いて来た。俺は側にいるエリシェとアマギに事の説明を
   話しだす。
エリシェ「こ・・この方達が死んだと言っていたユウカさんアキナさんリュラさんですか?!」
アマギ「おそらくシェガーヴァがクローンで造り上げた奴だろう。」
ユキヤ「・・・そう信じるしかないだろうな、だがこの胸の高鳴りは一体・・・。」
   俺は愛機を降り、3人の元へ駆け付ける。近くで見ればみるほど彼女達と思わざろうえない。
ユキヤ「・・・お前達は本当にユウカ・アキナ・リュラなのか?」
   俺の問いに彼女達はそれぞれ腰に着けている拳銃ホルスターから拳銃を手に取り、俺に弾丸を
   放ってきた。放たれた弾丸は俺の右肩・右腕・左膝に命中し、地面へ転倒する。この行動を
   見たテュルム達やアマギの家族達は本社跡入り口に集結した。
エリシェ「ユキヤさんっ!!!」
   エリシェが外部通信を使い俺に話し掛けて来た。アマギは右腕主力武器の連射型ライフルを
   3人に向ける。俺はアマギに手を出すなというジェスチャーを送った。
ユキヤ「・・・どうしたんだお前達・・・。」
   俺の2回目の問いに3人は1人ずつ話しだす。
ユウカ「・・・私達を・・・。」
アキナ「・・・何故殺した・・・。」
リュラ「・・・何故助けなかった・・・。」
   その言葉は俺の心に容赦なく突き刺さる。俺はシェガーヴァが彼女達を殺したと豪語したが、
   実際には俺が殺したようなものだった。と言うか助けられなかったと言えばそうにも言える。
   だが俺のせいで3人が死んだのは事実、シェガーヴァにも責任があったが俺自身にもあった。
ユキヤ「・・・お前達は俺に何をしろと言うんだ?」
   俺の3度目の問いに3人は再び拳銃を向け、銃弾を放つ。今度は右胸・右膝に2発当たる。
ユウカ・アキナ・リュラ「・・・死ね・・・。」
   3人は同時にそう話す。これが彼女達が思っていた事なのか・・・、そうだとしたら俺は
   これに従うべきなのかもな。俺は諦めかけた、だがエリシェ達やアマギ本人及び家族達が
   それを許さなかった。皆はそれぞれ外部スピーカーから俺を擁護する発言をし始める。
ユリコ「あんた達なに考えてるのよ、色々な形でお世話になった人でしょう!!!」
キュム「そうです、今は憎んでいても以前は慕っていたのでしょう?!」
レイス「あなた達を助けられなかった事は事実だとしても、ウインドさんはあなた達のような人を
    再び作らせない為に今も動いているのです!」
ルディス「少し抜けている所もあるけど、あなた達を守れなかったって今も悔やんでいるのよ!」
エリシェ「ユキヤさんの事も少しは考えて下さい。・・・もしそれでも殺そうとするのであれば、
     私があなた達からユキヤさんを守り・・・あなた達を殺します!」
   皆の発言で3人の行動が止まった。3人は拳銃を地面に捨て、俺の方へ徐に歩み寄って来る。
   俺は近くに来た3人を倒れながら見つめ、徐に話しだした。
ユキヤ「・・・すまなかった、お前達がそんな事を思っていたなんて・・・。俺はシェガーヴァの
    せいにしていた、辛い現実から逃げる為に・・・。だがそれではいけないとお前達が
    こういう形で教えてくれた、俺はそう取りたい。今度はお前達を守ってみせる、絶対に
    守ってみせる・・・。俺が命を賭けてな・・・。」
   俺の発言に3人は涙を流しながら俺に抱きついてきた。そして大泣きして詫びるのだった。
   彼女達の体の温もり、これは以前彼女達を抱きしめた時と同じだった。クローン・・・、
   シェガーヴァの奴・・・奴がこんな事をしてくれたのか。今となっては確かめようがないが、
   目の前の現実を見れば納得がいく。いぎな事をしてくれるな、シェガーヴァは・・・。
   エリシェ達やアマギ達が俺の元へ駆けつけて来る。エリシェ達は俺の前で大泣きし、アマギの
   家族であるユリコ・キュム・レイス達は貰い泣きをしていた。本当に優しい者達だ、俺はそう
   思わずにはいられなかった。だからこそ俺を救い、3人をも救ったのだからな・・・。
   最終決戦は意外な形で幕を下ろした。シェガーヴァに人の心があった事に驚いている。だが
   自分も情けない、相手を憎むだけでいるとは。シェガーヴァの心の中にこういう感情があった
   事を全くもって疑っていた。この時ほど自分が情けないと思った事はない。シェガーヴァにも
   1つ教わった、人を信じる心を持てという事を・・・。少し前までは憎むべき敵だったが、
   今は全く違う。感謝するべき友だ。“ありがとよ、シェガーヴァ”俺は心の中でそう呟いた。
                               第7話へ続く

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