レイヴンの交戦記 〜甦る勇者達〜 登場人物 平西幸也 善心のシェガーヴァ ロストナンバーレイヴンズ面々 デュウバ=ドゥガ レイス=ビィルナ ブレナン=デスト ジェイズ=タルナ アマギ=デヴィル リルガス=ナグノ ディーア=リヴガ 敏田デェルダ 登場AC ウインドブレイド ヘル・キャット ロストナンバーレイヴンズ全機体 アドゥシェーサー ダーク・レディ ヘル・ナイト ジャインデビル ロスト・デヴィル クィッヅダート ガン・アタッカー フェザークラウン 〜第1話 因縁の過去〜 吉倉財閥へ移り住んでから早1年近くが経とうとしていた。地下都市では再び戦乱が起こり そうな気配が感じ取れる。だが希望を持つ俺らには何とも思わなかった。 エリシェ達もここでの生活に慣れ、アマギ達と共に地上復興へ向けて活躍している。俺は 単独行動を取り、困っている人々を助け善からぬ行動をする輩を排除して回った。今の俺の パートナーはレイス嬢。あれからかなり俺の事を気に入ってしまったらしく、ほぼ毎日俺の 行動を共にしている。 レイス「これであらかた片付きましたね。」 ユキヤ「ああ。これでここでのテロは治まるだろう。」 俺とレイスはアヴァロンバレー近郊に出没するテロリストを壊滅させた。これは周辺住民の 希望で、無償で請け負う。俺達の行動はボランティアだ。別に商売目的で行動している訳では 決してない。これほど物好きなレイヴンは他にいるだろうか。他のレイヴンからはタダ働きを しているにしか見えない。 レイス「それにしてもウインドさんはやり手ですね。」 レイスは俺が破壊したMTの残骸を見てそう呟く。俺の殆どの攻撃は斬撃によるもの。それと 射撃も使うが、専らはレーザーブレードによるものある。俺は斬撃などで相手の連携を乱し、 そこにレイスが射撃で一掃する。強化人間から人間に戻った彼女は、強化人間じみた行動が できない。通常の人間と同じ行動をする。その隙を俺がカバーする事によって凄まじい連携が 取れるのだ。 ユキヤ「お前さんの射撃率には敵わないよ。相手のどこを狙えば連携を乱せるか、的確な攻撃が できているからな。」 レイス「でもそれはウインドさんのサポートがあって初めてできるものです。」 ユキヤ「お前さんにも俺以外にしっかりとしたサポーターがいれば大丈夫だろうな。」 レイス「そうですね・・・。」 レイスが残念そうに呟く。俺は内容を知りつつも、何でなんだと問い質した。 ユキヤ「何だよその残念そうな物言いは。」 レイス「ウインドさんのその言い方・・・まるでどこかに行ってしまわれるように聞こえました。」 ユキヤ「・・・あれから1年近くが経つが、俺は一匹狼の方が性に合う。」 レイス「・・・もし他に行かれる所があるのなら、私も一緒に行きます。」 ユキヤ「フフッ、ありがとよ。だがあいつらが行かせてはくれないだろうな。」 俺はエリシェ達の事を思った。彼女達は表向きはアマギ達に協力しているが、根は俺と共に 旅に出たいというのが事実。俺の性格が彼女達に移ってしまったようだ。 レイス「とにかくミッションは無事終了、帰りましょう。」 ユキヤ「了解、帰還しよう。」 俺とレイスは愛機を動かし、吉倉財閥へと戻って行った。だが俺は何か言い表せない思いで 一杯だった。まるで誰かが帰ってくる気がしてならない。それに俺の研究ももうじき終わる。 これが完成すれば、アマギ達は更に行動しやすくなるだろう。それは後々分かる事であって、 今は触れない事にした。 ユキナ「お帰りなさい、ウインドさんレイスさん。」 吉倉財閥へ近付いて来た時、内部通信を通してユキナの声が響いた。彼女は財閥のシスオペを 担当しており、財閥の管理などを取り仕切っている。今や彼女の活躍は社長並の実績がある。 それもその筈、約1年前に遡る。吉倉財閥の社長として活躍していた吉倉勇司が不治の病に 犯されてしまったのだ。その病名はガンと白血病。複数同時に発病する事はないのだが、彼の 場合は一瞬で全身に厄病が回ってしまったのだ。植物人間になってしまった彼は、脳波会話で 後継者にユキナを選ぶ。普通ならアマギかトム辺りを選ぶ所だ。だがユウジは見抜いていた、 ユキナの自分に対する献身的な心を。それは師弟関係と言った方がいい。ユウジは吉倉財閥の 全てを彼女に託すと、発病後僅か1週間でこの世を去ったのだ。余りにも呆気なさすぎる彼の 突然の死、財閥内は悲しみに暮れていた時期が半年続いた。そんな彼らを立ち上がらせたのは 俺の妹8人であった。彼女達の凄まじい活力と希望溢れる行動を見た彼らは次々に復活する。 そしてユウジの遺言であった「困っている人々を助けてくれ」という言葉を胸に、今も活動を 続けている。 レイス「ただいまユキナさん。」 ユキヤ「何もなかったか?」 ユキナ「大丈夫でしたよ。」 俺とレイスは愛機を専用ガレージへ待機させ、ユキナの元へ向かった。現在の最高責任者は 彼女だ、依頼遂行の全てを報告する必要がある。俺はそういう行動には慣れており、レイスの 分までユキナに報告した。 ユキヤ「以上だ。」 ユキナ「分かりました。お疲れ様です。」 ユキヤ「大丈夫か?」 ユキナ「何がですか。」 ユキヤ「財閥の管理だよ。今まで激務をこなしていたのはユウジだったからな。」 ユキナ「ユウジさんもこういった行動で困っている人々や私達も含めて助けて頂いていたんです。 ユウジさんの遺志をしっかり継がないと笑われてしまいます。」 力ある発言だ。彼女には激務の苦しみより、任された使命の方を重く感じる事なく楽しく 行っているのであろう。こう言ってしまってはユウジに申し訳ないが。だがこの感情で行う 事もユウジにとっては嬉しい事であろう。俺はそう信じたい。 ユキヤ「偉いなユキナは。1年前とは比べほどにならないぐらい強くなった。とにかくお前は何が あっても自分の信念を抱き頑張れよ。」 ユキナ「ありがとうございます!」 頭を下げて礼を述べるユキナ。彼女らしい対応だ。ユウジ死後先に立ち上がったのは他ならぬ 彼女自身。女性はいつの時代でも強い人物だ。 ユキヤ「さてと、パトロールにでも行ってくるかな。ユキナがしっかり頑張っているんだから、 俺も頑張らねば。お前達の先輩として。」 そそくさげに俺はガレージへと向かった。俺は発言でどうこうするタイプじゃない、行動を もってそれに応える方だ。それに今の世界の主役は俺じゃない、ロストナンバーレイヴンズの 彼らだ。俺は陰の戦いに徹すればいい。 ゴウ「よう。」 ガレージでは俺の愛機をゴウがメンテナンスをしている最中であった。俺達がここに来てから 吉倉財閥は更に変わった。武力行使は今の世界には必要だが、あくまでも善といえる行動に しか使用しない。イレギュラーとなるテロリスト軍団や善からぬ事を画策している輩達等。 そういった奴等を消去する事に俺達は武力を使っている。また財閥を守るためにも使用する。 今吉倉財閥の勢力は地球上にまで広がっている。だが表側の企業として出る事はない。それは 俺達の力が余りにも強大過ぎるからだ。これほど団結があるレイヴン達は他にはいない。 そしてここで活躍している人材は殆ど青年が多い。青年こそ歴史を変えゆく力がある、だから 吉倉財閥がここまで拡大したのだ。今の俺達に敵はいない。故に誤った道へ進まぬようにと 常日頃から自分自身へ言い聞かせている。もちろん俺もそうだ。 ユキヤ「相変わらずだなゴウは。」 ゴウ「そういうお前だってな。」 俺はゴウの近くまで行き、耳元近くで囁く。だがガレージは大きな雑音が響き合っているため 聞こえはしないと思うが。 ユキヤ「例のシステムは完成したか?」 ゴウ「完成したよ、いつでも動かせる。それと言われていたアレの構成も完成した。ここの地下倉庫 にがらくたと一緒に置いてある。」 ユキヤ「分かった。」 レイス「何のお話をなさっているのですか?」 突如レイスが割って入る。俺はきわめて冷静な態度で話しだす。 ユキヤ「ウインドブレイドのコンピューターにエラーが入っててな。それをゴウに修理すようにと 言ったんだ。こう雑音がひどいと近くで言わないと聞こえないからな。」 レイス「そのエラーの件ですが、この前修復したと思いますが。」 さすが黒い魔女、俺の心の内を読んでくる。前の依頼の時、俺は単独で出たいが為にレイスに 同様の嘘を言った事がある。それをしっかり覚えていたようだ。 レイス「またくだらない事で盛り上がっていたのですね。ウインドさんとゴウさんは仲がよろしい ですから。」 レイスはあえて触れなかったようだ。今の発言でそう取れる。だがいつまでも隠し通せる事 ではなさそうだ。俺は思い切ってレイスには真実を話そうとする。 ユキヤ「本当の事を聞きたいか?」 レイス「・・・ウインドさんが困らない程度なら。」 俺はゴウに目配りをし、同意を求めた。ある意味この事は誰かに知られてはいけない。特に ロストナンバーレイヴンズには。だが現実は厳しく、俺達を疑うレイスが目の前にいるのだ。 俺はレイスを大型ガレージの地下に連れて行った。そこに答えがある。 レイス「こんな所に何があるのですか?」 ユキヤ「黙って付いて来てくれ。」 地下3階のジャンクパーツ品保管所まで行くと、俺達はゴウに指定されていた巨大なある物を 目撃した。それは約1年前に因縁の対決で撃破した、シェガーヴァのACヘル・キャットで ある。 レイス「こ・・・これは・・・。」 ユキヤ「シェガーヴァのAC、ヘル・キャットだ。俺の予備パーツを使い、あの決戦時と同じ組み 合わせで待機させてある。もっとも彼は強化人間だ、肩武装は強化人間に合うように交換 してあるが。」 レイス「ど・・・どうしてこんな物を・・・、一体何を考えているのですか?」 レイスは腰のホルスターに手を当て、拳銃を取り出す。そして俺に銃口を向け、真意を問い 質してきた。その表情はいつものレイスじゃない、黒い魔女たるレイス=シャドウだ。だが 俺は向けられた死の銃口を何とも思わず、彼女が知りたがっている真意を話しだした。 ユキヤ「俺の罪滅ぼしだよ。近いうちに大規模な戦争が起こる確信がある。それらを乗り越えた 先には更なる戦いが待ち受けている。その時の為にシェガーヴァを作りだした、もっとも オリジナルではなくコピーだがな。」 俺がそう話すと、突如ヘル・キャットのコクピットハッチが開き出す。レイスは驚き、銃口を そちらへ向ける。中からは先の決戦と同じサイボーグのシェガーヴァが現れた。 シェガーヴァ「物騒だな黒い魔女。」 レイス「貴方は・・・本当にシェガーヴァさん?」 シェガーヴァ「偽りを言ってどうする、何の説得にもならない。むしろ死の銃口を向けらてもなお、 お前に真実を話したウインドの方が説得となる筈だがな。」 レイスは納得した表情を浮かべる。シェガーヴァの話した事は事実である。半信半疑では あるが、レイスは拳銃をホルスターへ戻した。それが表向きの納得という行動であろう。 ユキヤ「身体の方はどうだ?」 シェガーヴァ「大丈夫だ、きわめて良好。それに以前と違って心が晴れ渡る気分だ。」 ユキヤ「難しかったぜ、お前の悪心となる部分を完全消去するのは。約1年間かかったからな。」 シェガーヴァ「今までの悪行は言葉では詫びない、行動で返すつもりだ。」 ユキヤ「ああ、そうしてくれ。」 俺は確信が持てた、今のシェガーヴァは俺達の味方である事が。悪心が完全に消え去ったのは シェガーヴァ自身がそれを望んでいたから。彼なりに罪滅ぼしをどうするかという事を考えて いるのであろう。敵同士な部分が大多数であったが、シェガーヴァ自身とは長い付き合いだ。 だから尚更に確信できた。 レイス「あの・・・。」 ユキヤ「すまないなレイス、驚かせちまって。」 レイス「いいえ、詫びる方は私の方です。理由をお聞きする前に貴方を敵と思ってしまって、本当に 申し訳ありませんでした。」 深々と頭を下げて詫びるレイス。その行動がどれだけ本当の事かが伺える。また彼女は悪を 放って置けなかったのだろう。だがら先走った行動を取ったのだ。 シェガーヴァ「レイスよ。一連の事態を申し訳ないと思うのであれば、私の事を話さないで貰えれば 嬉しいのだが。」 レイス「はい、絶対話しません。命に掛けて誓います。」 シェガーヴァ「すまんな。」 合成音声で話される言葉は虚しいものがあるが、暖かみというものが感じられる。俺と彼女も そう感じ取れた。 シェガーヴァ「ウインド、イレギュラーが発生した。時期にこちらへ攻めて来る。」 ユキヤ「ああ、俺も薄々感じ取れる。それに・・・懐かしい奴らとも会えそうだ。」 レイス「懐かしい人とは?」 ユキヤ「・・・いずれ分かる。」 俺はそう話し、今は触れない事にした。誰が来るかは俺にもシェガーヴァにも分かっていた、 だがレイスがそれを知ると善からぬ行動に出る可能性がある。 ユキヤ「時が来るまでシェガーヴァは待機していてくれ。」 シェガーヴァ「了解した。必ず期待に応える行動をする。」 シェガーヴァはヘル・キャットのコクピット内部へ入って行った。そしてコクピットハッチが 閉まり、ヘル・キャットは物言わぬ巨人と化す。俺とレイスはゴウがいる1階の大型ガレージ へと戻っていった。 ゴウ「どうだった?」 ユキヤ「完全に味方だ。必ずこちらの期待に応えてくれる。」 ゴウ「分かった。それとレイス嬢、この事は内密にな。」 レイス「分かっています。」 レイスの表情を見ればその決意がよく分かった。それに彼女は生真面目だ。こちら側の思考を しっかり理解してくれている。その後俺は愛機ウインドブレイドに乗り込み、パトロールへと 出かけた。パートナーはお馴染みのレイス、そしてガレージで愛機のメンテナンスをしていた キュム。場所はフォートガーデン近郊、以前メールにて不審な武装集団が現れたとの事だ。 この頃平西財閥だけでは地下都市を支える事は難しくなってきだし、それがかえって過激派を 出現させてしまっている原因でもあった。元クロームや元ムラクモの系列企業も存在したが、 平西財閥には遠く及ばない。ゆえにここが管理すればいいではないかという投げやりな態度を 取る事が頻繁に起きている。だが奴等は善からぬ事を企んでいるのは確かであった。一説に よると、地球から遠く離れた火星をテラフォーミングする計画を実行しているとか。火星まで 今の武力構造を持ち込むのはいかがなものかと思うが・・・。まったくもって人間は争いが 好きな種族なんだなとつくづく思う。 ほぼ緑が再生しつつある地下都市内を、3体のACが歩行しながら進む。そんな中キュムが 今回の依頼内容を内部通信を利用して聞いてきた。 キュム「その武装集団を撃破するんですか?」 ユキヤ「善からぬ存在であれば、イレギュラーに過ぎないからな。排除するまでだ。」 レイス「ウインドさん、デュウバについてはご存知ですか?」 ユキヤ「デュウバか・・・。デュウバ=ドゥヴァリーファガ。舞うように行動する事から、別名 華の剣士とも言われていた。だが彼女の育ての親の敏田デェルダを誤って殺害してから、 華の剣士は氷の魔剣士と言われるようになった。強化人間作成機関ソニックブレイズに 拉致されると、彼女は無理矢理人体改造され強化人間へ。氷の魔剣士はさらに凍てつく 行動を繰り出すようになったという。今から約2年前の事か・・・。その後はレイス、 お前が体験してきた通りだ。」 レイス「・・・もう一度彼女に会えないでしょうか・・・。」 この一言で俺は悟った。シェガーヴァと会話していた時に話した懐かしい人物と出会える、 この事を聞いたレイスはデュウバと出会えるのだと直感したのだろう。もっとも俺もそう直感 している。それに・・・レイスも知っている彼女も・・・。そして真の敵は、奴だという事も 直感できた。 ユキヤ「・・・・・。」 俺は沈黙を以ってレイスに答える。後の思考は彼女自身に任せよう。 キュム「そうなると・・・ブレナンにも会えるのかな?」 キュムもレイス同様、言葉の真の意味を知ったようだ。俺はキュムにも沈黙を以って答える。 レイス「分かりました。今は依頼に集中しましょう。」 キュム「そうだね。」 引き際もまたしっかり弁えている。さすがロストナンバーレイヴンズレディース。女性の鏡的 存在だ。 レイス「そろそろ目的地近くです。」 ユキヤ「不意打ちもありえるかも知れない、気を付けろよ。」 キュム「了解。」 フォートガーデンと言えば上級階級の人物ばかりが住む都市。だが今のフォートガーデンは 犯罪者のハーレムと化していた。理由はクロームとムラクモによる企業間の争いで、上部の 住居者が数多く非難したからだ。元クローム・ムラクモ企業の社員は何かと狙われやすく、 それはかつての企業間の争いの当て付けでもあった。争いを起こしたのは社員ではないが、 要は誰でもよかったのである。彼らほど虚しい人間はいない、可哀想な奴らだ・・・。 俺達は愛機を慎重に進ませ、辺りに気を配りながら進む。ACがフォートガーデンの中央へ 進んだ時、コクピット内部まで聞こえる程の爆発音が鳴り響いた。俺はコクピットモニターや レーダーを見つめたが、敵影らしき姿はない。 ユキヤ「2人とも、レーダーに反応は?」 キュム「ありません。」 レイス「こちらもありません・・・、いや待って・・・現れました。距離約12500。向かって 10時の方向です。」 俺はレイスが示した10時の方向を見つめる。見つめた先にはACらしき機影が見えた。だが あれはACなのか、どう見てもMTにしか見えない。直後俺のACが大きく揺れる。敵AC から放たれた弾が当たったようだ。しかもこの反動はグレネードランチャーから発射された グレネード弾クラス。次の瞬間俺のACは反動で地面へと倒れ込む。その間レイスのAC ダークネススターが左肩のレーザーキャノン発射体勢に移る。無防備なレイスをキュムのAC デビルクラスターが庇う。だが敵の火力は強かった。庇いに入ったデビルクラスターは、再び 相手が放ったグレネード弾を直撃、後方のダークネススターへ思いっきりぶつかる。その際に ダークネススターのレーザーキャノンが、デビルクラスターとの接触で砲身がグシャリと 曲がってしまう。 キュム「クッ・・・なんだこいつは・・・。」 レイス「気を付けて、こちらに近付いて来ます。」 俺はウインドブレイドの体勢を立て直すと、右腕武器のレーザーライフルを相手ACに射撃。 放たれたレーザー弾は敵ACへ着弾する。だがそんな事を気にも留めず、ブースターダッシュ を使いこちらへ突進してくる。俺は同じくブースターダッシュを行い、ウインドブレイドを 敵ACへ突撃させた。そして左腕からレーザーブレードを発生させ、相手に斬撃を見舞う。 だが敵ACはその場にジャンプし、ブレードの間合いから離れる。攻撃は空振りに終わった。 ユキヤ「こいつは・・・。」 俺は視界からさっと消えた敵ACの姿を見て驚いた。と言うか既に気づいていたが。その 独特のフォルムは軽装型ACで、カラーリングはデュウバ=ドゥガが駆るアドゥシェーサーと 同じであった。つまり搭乗者はデュウバという事になる。だが今の一瞬でこちらを気付かない 訳がない、おそらくは洗脳されている可能性がある。 レイス「そ・・・そんな・・・、あ・あれは・・・アドゥシェーサー・・・。」 キュム「アドゥシェーサーって・・・デュウバさんの?」 ユキヤ「迎撃しろ、今のデュウバは敵だ!」 俺のACを飛び越えると、レイスとキュムの所まで進み出る。そして右腕武器の拡散機関銃を キュムのACデビルクラスターに発射、撃ち出される弾丸がACの装甲を蜂の巣に変える。 そんな中キュムも負けずと同型武器で反撃。放たれた弾丸はアドゥシェーサーの脚部を撃ち 抜き、レッグパーツを大破させた。体勢が崩れたアドゥシェーサーはそのまま地面へ転倒し、 ダークネススターの目の前で停止した。俺は反撃の事を考え、レーザーライフルでそれぞれの 武装を破壊。アドゥシェーサーは全ての武器を破壊され、完全に行動不能となる。 レイス「デュウバ、デュウバなの?!」 レイスはコクピットから降り、行動不能となったアドゥシェーサーへと歩み寄る。その声に 応えるかのようにコクピットハッチが開き、中からレイスが一番会いたがっていたデュウバが 現れた。だが俺の睨んだ通り、彼女の様子がおかしい。 デュウバ「・・・敵は・・・排除する・・・。」 デュウバは腰のホルスターから拳銃を取り、レイス目掛けて発砲する。その瞬間レイスは死を 覚悟したようだが、俺は愛機を2人の間へ進ませ弾丸を受け止める。弾丸はレッグパーツに 当たり、跳弾して地面へと着弾した。俺は2発目の弾丸を撃とうとしているデュウバに左腕の 人差し指を使った突きをする。ACの人差し指はデュウバの右手に当たり、衝撃で拳銃を 地面へと落とす。更にACの左手を使い、デュウバを握りしめる。当然死なない程度だ。 ユキヤ「レイス、デュウバの頭を調べてくれ。洗脳する何かがある筈だ。」 俺はデュウバを握っている左手を差し出すと、レイスはデュウバの頭を調べだした。そこに 心配そうにキュムも駆け付けてくる。 レイス「ヘッドバンドみたいなのが装着されています。これでしょうか?」 ユキヤ「とにかく外してみてくれ。」 レイスは洗脳の元のヘッドバンドをデュウバの頭から取り外す。直後デュウバは大きく叫び、 ぐったりとうなだれる。 レイス「デュウバ・デュウバ、大丈夫?!」 デュウバ「・・・う・・、・・レ・レイス・・・?」 レイス「・・・よかったぁ・・・本当に・・・。」 泣きだすレイス。その姿は女性ではなく、まるで女の子のようである。それだけデュウバが 大切な人物なのだと痛感した。俺は握りしめているデュウバを解放すると、レイスが彼女に 抱き付く。その暖かさ溢れる行動に目頭が熱くなる。 デュウバ「私は・・・どうして・・・。」 ユキヤ「敵に洗脳されていたんだろう。」 俺はコクピットから出てデュウバに話し掛ける。デュウバは俺の姿を見るや否や、驚いた表情 をする。 デュウバ「あ・・・貴方は・・・風の剣士!」 ユキヤ「俺を知っているのか?」 デュウバ「知っているも何も・・・私がレイヴンになったのは貴方を憧れてです。」 レイス顔負けの子供のような表情で、俺に熱弁するデュウバ。相当感激している様子である。 その姿にレイスは呆気気味であった。 レイス「そうだったんだ、初めて知ったわ。」 ユキヤ「それより聞きたい事があるんだが。」 デュウバ「何でしょうか?」 ユキヤ「いつ頃クローン転生した、それとクローン転生させた奴は誰だ?」 レイスは驚きの表情を浮かべる。それは俺が全て知っていた事を知ったからだ。デュウバは 質問の答えを話しだす。 デュウバ「クローンとして転生したのは半年前です。転生させた人物は、シェガーヴァ。」 レイスは再び驚く。デュウバを転生させた人物がシェガーヴァである事に気付いたからだ。 激怒しながら俺に話しだすレイス。 レイス「知っていたんですね、何もかも。それに敵としてデュウバを利用するとは!」 ユキヤ「ガレージ地下で言わなかったか、約1年掛けてシェガーヴァの悪心を取り除いたと。 デュウバ自身が言っているじゃないか、半年前に転生したとな。」 レイス「・・・・・。」 ユキヤ「デュウバ、他には誰が転生した?」 デュウバ「レイス・ブレナン・デヴァス・ジェイズ・デヴィル・ミオルム・リルザー・ゼラエル・ リルガスさん・ディーアさん・デェルダさんです。」 レイスは3度の驚きの表情を、キュムも驚きの表情を浮かべる。レイスは他の面々がクローン として転生したのは薄々分かってはいたようだが、育ての親のデェルダまでが転生した事に 驚いたようだ。キュムはブレナンが転生した事に驚いている。これで9人の鬼神・紫の魔神・ スミスの妹達が、過去の強者達が復活したという事になった。 キュム「ブレナン・・・。」 レイス「デェルダさんまで・・・。」 デュウバ「アマギ=デヴァス・ミオルム=エビル・リルザー=ガーヴ・ゼラエル=バルグは敵と 取っていいでしょう。ですがブレナン・レイスのクローン・初代アマギさんのクローン・ ジェイズ・リルガスさん・ディーアさん・デェルダさんは味方です。当然ながら私も。」 ユキヤ「すまないな、わがままさせちまって。」 今の発言に3人は不思議そうな顔をする。何故にわがままなのか、それが分からないようで あった。その点についてキュムが意味を聞いてくる。 キュム「ウインドさん、どの点がわがままなんですか?」 ユキヤ「クローンとしての復活だよ。デュウバ、正直言ってもう転生したくないと思っていたん じゃないか?」 デュウバ「・・・はい、楽になりたいと思っていました。」 ユキヤ「その考え方を知ったシェガーヴァが、お前達をクローンとして転生させた。もっとも レイスが知っている彼じゃない、1年前に俺が倒したシェガーヴァがクローンとして転生 させたんだよ。さっきデュウバがクローンとして転生したのは半年前だと言っていたが、 それは目覚めた時期が半年前。実際にはユウカ達と同じく転生してたんだ。」 デュウバ「そうだったのですか・・・。でも・・・私は何をする為に転生したのでしょうか?」 ユキヤ「分からないか?」 俺は愛機から降り、デュウバの目の前まで行き話しだす。デュウバは真剣そうに俺の顔を 見つめる。 ユキヤ「生きて罪滅ぼしをしろと言う事だよ。人間死んじまったら何もできない。死ねば罪滅ぼし と考える事があるようだが、それは絶対に間違っている。生きて罪滅ぼしをする。これが 罪滅ぼしだと思うがな。善のシェガーヴァも言っていた、行動で応えると。行動こそが 罪滅ぼし、それで救われる人物がいるんだから。そうだと思わないか?」 涙を流しながら頷くデュウバ。彼女自身死ねば解決すると思っていたようだが、今の発言での この行動が心に響いたのだろう。生きていればいい事がある、また助けられる人物もいる。 これこそが罪滅ぼし、俺はそう信じたい。 デュウバ「・・・ありがとう・・ございます、私にチャンスを下さって・・・。」 ユキヤ「転生させたのはシェガーヴァだがな。」 デュウバ「いいえ、ご存知です・・・。ウインドさんとシェガーヴァさんは長い付き合いだと言う 事を。ウインドさんがシェガーヴァさんにそう仰ったんだと思います。行動で応える、 これが何よりの証だと思います。本当にありがとうございました。」 デュウバは俺の両手を握り締め、再び涙を流しだす。今までの彼女はどうすれば罪滅ぼしが できるかと考えていたようだ。だが今の彼女にはそんな悩みはないと直感する。これこそが 真の華の剣士、デュウバ=ドゥヴァリーファガなのだろう。 デュウバ「決めました、私の罪滅ぼし。それはレイスや皆さんを助ける、そしてイレギュラーとなる 人物を排除する事です。そして・・・私の命、ウインドさんにお預けします。」 凄まじい闘気が満ち溢れるデュウバ。その姿に驚くレイス、このような姿を見たのは初めてで あろう。 レイス「あの・・・ウインドさん・・・。先程といい、疑ってしまって申し訳ありませんでした。」 ユキヤ「気にするな、俺がハッキリ言わなかったのが悪いんだからな。だが前もって話してたら、 お前が善からぬ行動に出る可能性があると考えた。だからあえて話さなかったんだ。」 デュウバ「レイス、私に免じてウインドさんを許してあげて。」 レイス「はい、申し訳ありませんでした。」 すっかり俺の肩を持っているデュウバ、レイス以上に気に入っているようだ。 キュム「あの、デュウバさん。初めまして、キュム=エウァルと言います。」 デュウバ「改めて、デュウバ=ドゥヴァリーファガです。よろしくねキュムちゃん。」 キュム「よろしくお願いします。」 姉的存在のデュウバ。ロストナンバーレイヴンズ面々内でレイスは姉的存在である。その彼女 以上に姉に見えるのがデュウバ。レイスが姉的存在ならデュウバも同じ。不思議なものだな。 ユキヤ「どうするデュウバ、一緒に行動するか?」 デュウバ「一旦悪のシェガーヴァの所へ戻ります。近日中に平西財閥へ攻め込むつもりのようです。 その時7人と私は貴方達の方へ付きます。共に悪を打ち倒しましょう。」 デュウバはレイスが持っているヘッドバンドから洗脳装置を取り外し、再び頭に装着する。 そして大破寸前のアドゥシェーサーのコクピットへ乗り込む。その最中俺はデュウバに話し 掛けた。 ユキヤ「デュウバ。」 デュウバ「何でしょう?」 ユキヤ「気をつけてな。」 これにはお前もがんばれとの意味が込められていた。それを聞いたデュウバは笑顔で答える。 デュウバ「あ・・・は・はいっ!」 赤面しそう答えると、コクピットハッチを閉める。アドゥシェーサーはレッグパーツに負担が 架からないように、ゆっくりと歩行しながら本拠地へと戻って行った。 ユキヤ「これからが大変になるぜ。」 レイス「心得ています。」 キュム「ありがとねお兄ちゃん。」 ユキヤ「どういたしまして。」 俺達はそれぞれ愛機のコクピットへと乗り込み、平西財閥へ帰還しようとした。だが直後銃声 音が鳴り響き、俺のACに軽い衝撃が走る。コンソールのレーダーを見ると敵影らしき点が 12個表示されている。これが本命のテロリストか。 テロリスト1「貴様らだな、排除に来たレイヴンは。」 ユキヤ「だったら何だと言うんだ、クズどもが。」 テロリスト2「ふざけるなぁ!」 テロリストが乗るMTファットボールドが俺の愛機へパンチを繰り出そうとする。俺は愛機の 左腕からレーザーブレードを発生させ、カウンターでファットボールドの胸部を突き刺した。 コクピット部分を貫かれたファットボールドは、直後大爆発を巻き起こし飛散する。愛機は MTの爆発に巻き込まれたが、これぐらいの爆発ではACに傷一つ付ける事はできない。俺は 負傷したダークネススターとデビルクラスターを守るように動きだし、残りのテロリストを 排除していった。 約数分後、ファットボールドの残骸が辺り一面散らばっている。MTの戦闘力などACのそれ より到底及ばない。それにレイヴンの技術が高ければACの戦闘力は更に上がる。ここが ACとMTとの、レイヴンと一般人との大きな差であった。 キュム「凄い・・・あっという間に全滅・・・。」 レイス「敵がこちらを狙って来るかと思っていたけど、そんな余裕すらなかったみたい。」 ユキヤ「イレギュラーは即刻排除、これが平西財閥の方針だろ?」 レイス「フフッ、確かに。」 キュム「じゃあみんなの所へ帰ろう。」 ユキヤ「やれやれ、こっちも気の早い事だこと。」 俺はキュムの発言に苦笑いする。まったくユウカ達と同世代の女の子はパワフルで参る。 俺達は敵がいないか見回りながら、平西財閥へと帰還した。その道中2人にデュウバと会った 事やクローンで転生した人物の事を話さないように固く口止めする。今話してしまっては レイスがそうしたであろう善からぬ行動をする可能性がある。時が来たら話すとしよう。 第2話へ続く |
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